

V/H/S/85 (2023)
2.8/5.0 怪奇現象や超常現象が記録されたビデオテープ (ファウンド・フッテージ) というテイのホラーアンソロジーシリーズの第6弾。 製作予算は比較的抑えられながら、過激なグロテスク描写やショッキングな展開が特徴。 今作は1985年当時のホームビデオ文化を軸に、それぞれの短篇が製作されている。 「Total Copy」監督: デヴィッド・ブルックナー 2.1/5.0 アンソロジーを横断して映画全体の冒頭・幕間・終盤に入るメインフレーム。 大学の研究チームが変身生物を確保し実験する様子が記録されていく。 怖がるべきか笑うべきか微妙な気持ちになる結末が印象的。 「No Wake」監督: マイク・P・ネルソン 2.7/5.0 人里離れた湖を訪れた若者グループが何者かによる銃撃のターゲットとなる。 若者達がどのように生き延びるかという話なのかなと思いきや、予想外の展開がある。 「God of Death」監督: ジジ・ソール・ゲレーロ 2.5/5.0 1985年に実際に発生したメキシコ大地震をモチーフとした1篇。 テレビ局での生放送中に地震が発生し、
Jul 11


ひつじ探偵団 | The Sheep Detectives (2026)
4.0/5.0 レオニー・スヴァンによる小説を原作とするミステリー映画で、可愛いコメディ仕立てながら本格的な推理が展開する斬新な作品。 実話をベースにした超重量級な物語が展開する「チェルノブイリ」の企画・脚本・制作総指揮を担ったクレイグ・メイジンが脚本を手掛けている。 舞台は英国の田舎に位置するのどかな村。ヒュー・ジャックマンが演じる羊飼いのジョージが、ある朝死体で発見される。 殺人事件のような物騒な事件と無縁だった村人達は、その死因を早々に決めつけて片付けようとするが、ジョージが大切に飼っていた羊達はそうではなかった。 毎晩ジョージから探偵小説を読み聞かせてもらっていた羊達はその内容をきちんと理解していて、ミステリーもののルールを (羊なりに) 知っていたのだ。 ジョージの死の真実を突き止めるため、羊達は独自の捜査を始める。 様々な個性をもつ羊達の可愛らしさと、探偵ものとしてのシリアスな展開のギャップがとても新鮮で面白く、ついニコニコしてしまう。 ミステリーものの定石通りに手がかりを探り、ドタバタが起きつつも少しずつ真相に迫っていく羊達の純粋な
Jul 5


カッコウ | Cuckoo (2024)
3.9/5.0 アルプス山奥のリゾート地を舞台とするドイツ・アメリカ合作の映画で、ハンター・シェイファー主演。 脚本・監督はドイツ出身のティルマン・シンガー。 あるきっかけで米国からドイツへ引っ越すことになった主人公とその家族が、一癖ある現地の人物達と親交していく中で、怪異と遭遇する。 アルバイトをすることになったリゾートホテルで宿泊者が異常な行動をとったり、主人公の妹が超音波のような高音を発したり… 外界と隔絶された世界に何が潜み、何が起きているのかを、主人公は目にしていくことになる。 ネタバレを避けるため詳しい内容を書くことは控えるが、スリラーやホラーといったひとつのジャンルに当てはめにくく、SF的な解釈も含め鑑賞者に想像の余地が大きく託される脚本で、その読後感がとてもユニーク。 ハンター・シェイファーの存在感や演技力の高さはもちろん、ティルマン・シンガーの独特な演出センスも全篇に渡り光っている。 白黒明快でいわゆるお手本的な物語の展開とは全然違う形の脚本で、鑑賞していてやや混乱する部分もあるけれど、その混乱の後味も含めての映画体験が設計され
Jul 5


私がビーバーになる時 | Hoppers (2026)
3.7/5.0 ピクサー製作のアニメーションで、自然と文明社会の共存をテーマに、動物達の視点と人間達の視点の両方で描かれるアドベンチャー映画。 同社にてストーリーボードアーティストを務めてきたダニエル・チョンが脚本・監督を担っている。 オレゴン州のビーバートンに住む主人公のメイベルは、祖母との大切な思い出がある湿地が市の道路建設計画で埋め立てられようとしていることを知り、それを推進する市長のジェリーと衝突する。 計画を止めるためにはビーバー達を呼び戻すことが鍵だと考えた主人公は、湿地からいなくなってしまった彼らを探し始める。 ドタバタながら無駄がないピクサーらしいコメディ演出が健在で、物語の運びに安定感がある。 主人公があるきっかけでビーバー (型のロボット) に自身の意識を転送し、動物達と会話ができるようになって知る、人間界とは違う動物界の掟が新鮮かつ残酷で驚きがある。 物語の展開としては混乱なく整理されていながら、動物と人間あるいは善と悪といった単純な二項対立ではなく、それぞれの側のキャラクターに複層的な行動原理や葛藤が設定されているところに
Jul 5


ゼイ・ウィル・キル・ユー | They Will Kill You (2026)
3.8/5.0 「IT」二部作や「ザ・フラッシュ」の監督を担ったアンディ・ムスキエティが製作し、ロシア出身のキリル・ソコロフが監督を務めた密閉空間からの脱出型ホラーアクション。 「デッドプール2」や「ジョーカー」に出演し鮮烈な印象を残したザジー・ビーツが、高度なアクションを主演で担っている。 主人公のメイドは、マンハッタンの超高級マンションに住み込みで働かせてもらうことになる。しかしそのマンションの実態は、ほぼ全ての住人が悪魔崇拝者で、悪魔に捧げる生贄を求めているという恐るべきものだった… という導入。 住人達は、悪魔との契約で不老不死の存在となっており、主人公が何度とどめを刺しても復活する。 そうではない生身の主人公はどんどん追い詰められながらも、マンションに潜入した本当の目的である妹の救出を果たしたうえでの脱出を試みる。 この映画のみどころは、やはりそのアクション演出の面白さだと言い切ってしまって差し支えないだろう。 血みどろでグロテスクな表現は多いものの、キレとケレン味に溢れるアングル・カッティング・ライティング・サウンドディレクション等の
Jul 5


パニック・フライト | Red Eye (2005)
3.5/5.0 ホラー映画シリーズの金字塔ともいえる「エルム街の悪夢」の創造者でもあり、「スクリーム」シリーズを手掛けたことでも有名なウェス・クレイヴンが監督を手掛けたスリラー映画。 「HELP / 復讐島」や「アバウト・タイム」のレイチェル・マクアダムスが主演し、「オッペンハイマー」で主演を務めたキリアン・マーフィが共演している。 高級ホテルのフロントマネージャーを仕事とする主人公の女性は、その滞在地から自宅へ戻るために向かった空港で、ある男性と出会い親近感を持つ。 飛行機に搭乗すると、偶然にも臨席がその男性だった… という、まるでラブコメディのような導入。 しかし、ホラーの巨匠ウェス・クレイヴンの作品なので、物語がそのままのトーンで続くはずはなく、そこからショッキングな展開が続く。 様々な表情や役柄を演じ分けられるキリアン・マーフィの演技力の高さがよく分かる。 誰もが認めるであろうレイチェル・マクアダムスの美しさはさておき、その様々な表情の変化が面白い。ただか弱い女性を可哀想に演じるのではなく、飛行機内という限定空間で葛藤・勇気・使命感といっ
Jul 5


かくかくしかじか | Blank Canvas: My So-Called Artist’s Journey (2025)
3.2/5.0 漫画家の東村アキコによる同題の自伝的漫画作品を原作とする青春ドラマ映画で、永野芽郁が若き日の東村アキコを、大泉洋がその恩師の絵画教室の先生を演じている。 主人公の明子は、漫画家になるという夢を持ちながら特別な努力をせずダラダラ過ごしている高校生。 "美大出身の漫画家" という箔がほしい主人公は、あるきっかけから美大受験のために絵画教室へ通うことになるが、そこで出会った先生の指導はとにかく厳しいスパルタ式で、困惑したりぶつかりながら絵と向き合っていくことになる。 自身が東村アキコ先生と同じ金沢美術工芸大学の卒業生で在学期間も重複していたことや、作品内に大学のキャンパスや金沢の街の描写がたくさんあると聞いたこともあって原作を読み、その物語に心を打たれたので、映画版はどんな作品になっているだろうと気になり鑑賞した。 映画の中で描かれる、絵画教室で石膏像と向き合う息が詰まる時間や、入試実技試験 (デッサン) の焦燥感、制作課題からの逃避を繰り返す日々が当時の自分にもたくさんあったこと等を思い出し、ほろ苦い気持ちになった。...
Jun 29


人間農場 | Human Farm (2024)
3.0/5.0 山田玄徳による8分程度の短篇で、48時間で映画を制作するThe 48 Hour Film Projectというイベントで制作・上映されたものとのこと。 社会人養殖場で出荷される時を待つ人々と、その管理人についての物語。 テーマはいわゆる「指示待ち人間」が増えているという社会批評とその風刺だということは、分かりやすいほどに分かる。 その描かれ方も、48時間という限られた時間 (と当然ながらロケーションや予算も) の中で具現化するという意味では、成功しているように見える。 制約が多い条件下だと中途半端なVFXや小手先の編集テクニックに走って画が安っぽくなりがちだけれど、今作はそうはせずに可能な限り撮ったままの画づくりをベースに成立させようという作り手達のスタンスを感じられた。 これは自分の好みの問題なのかも知れないと思うけれど、邦画ならではの俳優達の演技のわざとらしさや稚拙さが、どうしても時々垣間見えてしまうところが物語への没入の妨げになり、そこを残念に感じてしまう。 今作の出演者達は舞台演劇の俳優中心だろうか、ややオーバーアクトで戯
Jun 20


ハン・ソロ / スター・ウォーズ・ストーリー | Solo: A Star Wars Story (2018)
3.9/5.0 「スター・ウォーズ」シリーズの重要な登場人物である密輸業者のハン・ソロが、いかにして相棒のチューバッカや愛機ミレニアム・ファルコンと出会い、アウトローとして生きていくことになったかが描かれるスピンオフ作品。 「スパイダーマン: スパイダーバース」シリーズを手掛けたフィル・ロード & クリス・ミラーが監督していたが途中降板となり、名匠ロン・ハワードがその座を引き継いでいる。 脚本は「スター・ウォーズ」映画版の脚本を手掛けてきたローレンス・カスダンと、その息子のジョナサン・カスダン。 孤児として苦しい生活を送るハンとキーラは、宇宙へと逃亡することで転機を狙うが、ハンだけが脱出に成功し、離ればなれになってしまう。 パイロットとなりキーラを迎えに行くことを誓うハンは入軍し、送り込まれた戦地であるギャング達と出会い、運命が急展開していく。 超有名SFシリーズの象徴のひとつともいえるハン・ソロと、ハリソン・フォードが演じたそのキャラクターを、違う俳優が引き継ぎ演じることには相当のプレッシャーがあっただろうと想像できる。 オールデン・エアエンラ
Jun 20


スター・ウォーズ / マンダロリアン・アンド・グローグー | Star Wars: The Mandalorian and Grogu (2026)
3.7/5.0 ジョージ・ルーカスが創造した超有名スペースオペラ映画シリーズのスピンオフとしてDisney+で配信された実写ドラマ「マンダロリアン」の劇場版。 ルーカスの最後の愛弟子でありその意思とビジョンを継ぐ者といわれるデイヴ・フィローニが脚本と製作を、フィローニと共にスター・ウォーズの数々のドラマシリーズの製作総指揮を務めてきたジョン・ファヴローが監督を担っている。 銀河帝国が反乱軍に打ち破られて崩壊し、まだ政情が安定しない時代。 厳しい掟に従って生きるマンダロリアンのディン・ジャリンと、まだ子どもながら50歳という長命種族のグローグーは、賞金稼ぎとして新共和国軍の依頼に応えることで生計を立てていた。 帝国の復権を狙う存在を察知した新共和国軍は、それを防ぐために2人へ新たな依頼をする。 スター・ウォーズといえばライトセーバー、ジェダイナイト、シスの暗黒卿、そしてフォースといった数々の神話的要素と、埃や汚れにまみれて生活感が感じられる宇宙船や戦艦というSF要素が掛け合わさった唯一無二の世界観が特徴だが、今作にはフォースを除いた前者の要素がほと
May 25


ザ・ボーイズ ファイナル・シーズン | The Boys Season 5 (2026)
3.2/5.0 エリック・クリプキが企画・製作総指揮を担うSFドラマ「ザ・ボーイズ」の最終シーズン。 DCやMARVEL等のスーパーヒーローものと現代社会を痛烈に風刺した同題のコミックを原作としつつ、ドラマ独自で展開してきた物語の完結篇。 巨大企業の管理下にあるスーパーヒーロー達が実は腐敗していて社会を揺るがす脅威となり、特殊能力を持たない一般人達がその打倒のために無謀な闘いを挑むという物語が遂に最終局面を迎える。 最強のヒーローでありながらその幼稚過ぎる頭脳で傍若無人に振る舞うホームランダーは、文字通りの神として米国に君臨しようとする。 ホームランダーへの復讐に命をかける「ザ・ボーイズ」のリーダー、ブッチャーは、スーパーヒーロー全員に死をもたらすウイルス兵器を完成させる。 シーズン1 第1話の衝撃的な開幕から強烈に心を掴まれ、毎シーズンが配信される度に鑑賞してきたドラマシリーズだったけれど、シーズン4あたりから少しずつその脚本や展開に綻びが目立つと感じてきた。 それでも今回のティザービジュアル達にはとてもワクワクして、最終シーズンにふさわしい怒
May 24


プロジェクト・ヘイル・メアリー | Project Hail Mary (2026)
4.3/5.0 「火星の人 (The Martian)」で一躍注目を浴びた米国の小説家、アンディ・ウィアーによる小説を原作とするSF映画で、「スパイダーマン: スパイダーバース」の製作・脚本を手掛けたフィル・ロード & クリス・ミラーが監督を、「ブレードランナー 2049」や「ファースト・マン」で主演したライアン・ゴズリングが主人公を演じている。 主人公が目覚めると、自分が記憶を失っていることに気づく。 そこは地球から約12光年も離れた場所にある宇宙船の中で、同乗したとみられるクルーは既に死んでいた。 主人公は自分が何者だったのか、なぜ宇宙船に乗り込むことになったのかを思い出そうとする。 そして、太陽の温度が謎の現象によって低下し、人類が数十年内に滅亡する危機にあるという記憶がよみがえってくる。 その回避方法発見のため孤独な探索を続ける主人公は、人類文明によるものではない宇宙船を発見する… 回想シーンで描かれる地球での日々以外の宇宙パートのほぼ全部がライアン・ゴズリング (と、その相棒となる異星人) の芝居で構成されていながら、楽観主義と物悲しさ
May 17


テレビの中に入りたい | I Saw the TV Glow (2024)
3.8/5.0 その個性的かつ内省的な作風で近年注目を集めているジェーン・シェーンブルンが脚本と監督を務めたA24製作のサイコホラーで、「ブゴニア」や「哀れなるものたち」主演の俳優エマ・ストーンが製作に携わっている作品。 物語の始まりは90年代で、現実世界に居場所がないと感じている主人公の少年は、深夜に放送されていた「ピンク・オペーク」という番組に強く惹かれ、あるきっかけから出会った少し年上の少女の家でそれを一緒に観ることになる。 少女から「好きなのは女子? それとも男子?」と聞かれた少年は、「テレビ番組が好き」と答える。 トランスジェンダー女性でノンバイナリという自身のセクシャリティを公表するジェーン監督だからこそこれほど高い解像度で描けるのだろうと感じる、周囲と自身の間にある溝や息苦しさが、少年と少女の視点を通して可視化されている。 現実逃避の一環として深夜にTVを観るという誰にでも一度は経験がありそうな行為から、自己認識の揺らぎとの向き合いといった哲学的なテーマへ大きく飛躍する物語の展開が面白い。 物語の本筋とは強く関連しないけれど、大胆な
May 10


トランスミッション 観てはならない結末 | Transmission (2023)
3.3/5.0 英国出身のマイケル・ハーストが脚本・監督した実験的な作風のモキュメンタリホラー中篇。 様々なトーンの映像が交錯しながら物語が展開する、多重構造形式の作品。 ある老人が深夜にTVの電源を入れると、失われていたはずのSF映画が放送され始める。 「トランスミッション」というタイトルのその映画に登場する宇宙飛行士達は「虚空 (ヴォイド)」と呼ばれる現象の調査中に、長く行方不明となっていた宇宙船を発見する。 その船内に残されていた記録映像には、虚空からの謎の信号を受信してから乗組員達の様子がおかしくなっていったことが判明する… という導入。 70年代の懐かしいトーンを思い起こさせるSF劇中劇 (映画) を軸としながら、冒頭で登場した老人がTVのチャンネルをザッピングするように、その劇中劇製作にまつわるドキュメンタリや立てこもり事件現場からの生中継等の番組が映し出されるという、なかなか独特な構成となっている。 ネタバレは避けるが、断片的に感じられたそれらの映像群がやがてひとつの結末に収斂していく脚本は挑戦的で面白い。 粗が気になる部分があった
May 7


ワーキングマン | A Working Man (2025)
3.2/5.0 「フューリー」や「エンド・オブ・ウォッチ」等で知られるデヴィッド・エアーが脚本・監督し、シルヴェスター・スタローンが共同脚本と製作を担ったアクション映画。 「エクスペンダブルズ」シリーズでスタローンと長く共演してきたジェイソン・ステイサムが主演している。 建設現場で働く退役軍人の主人公は、同僚や娘の安全を何よりも大切にしながら生活している。 現場上司の一人娘が失踪し、主人公はその捜索をする中で、人身売買組織の存在に気づいていく。 エアー監督 x ステイサム主演の「ビーキーパー」を鑑賞したことがあるアクション映画ファンにはほとんど同じ映画に見えるのではと思うほど、直球で混じり気なしのステイサム映画。 ステイサムはもはやどの作品でもステイサム以外の人物には見えず、そういう言外の約束があるかのよう。 脚本からはスタローン独特の美学が感じられるがそれも僅かで、深く考えずに鑑賞できるB級映画といえる。 主人公が救いに向かう女性役が、ただ泣いたり叫んだりするステレオタイプな弱者としての描かれ方ではなく、脅威に対して勇敢に立ち向かう形で描かれて
May 6























