

Nightborne (2026)
3.5/5.0 「第9地区 (2010)」や「チャッピー (2015)」等のバイオレンスSFを得意とする南アフリカ出身のニール・ブロムカンプ監督による、全篇が生成AIで製作されているショートフィルム。 ピーター・ワッツによるSF小説「Echopraxia」の世界観が参照されている。 主人公の米軍兵士は、戦闘によって死亡するが、極秘の軍事プログラムによって「復活」する。 死者を兵器として再利用する非情な世界が描かれる。 ブロムカンプ監督が新たに設立したAI製作スタジオ「Barley Studios」からの初作品となる今作は、監督がこれまで手掛けてきた作品群で見られたドキュメンタリー風の証言映像や軍事記録映像と映画的ビジュアルのコラージュで構成されており、監督の持ち味が映像生成でも具現化されているところがとても興味深い。 生成にはSeedance 2.0が使われていながら、実在人物 (俳優) の顔と声や人間の手によるコンセプトアートが用いられており、表現の核の部分はAI任せになっていないという点が、映像のリアリティや全体的な品質の担保につながっている
Jul 23


ニュー・ミュータント | The New Mutants (2020)
3.6/5.0 旧20世紀FOX (現20世紀スタジオ) が製作してきたアメコミ映画原作「X-MEN」シリーズの13作目で、「ハッピーエンドが書けるまで (2012)」や「きっと、星のせいじゃない。(2014)」を手掛けたジョシュ・ブーンが脚本・監督を担っている。 X-MENシリーズの中心的存在であるウルヴァリン、サイクロップス、ジーン・グレイ、プロフェッサーXといったキャラクター達は登場せず、既存シリーズの物語との関連性もほとんどないが、世界観は共有されている。 ネイティヴ・アメリカンをルーツに持つ主人公を含む5人の若者達は、ある施設に隔離されることになる。 彼らはそれぞれ特殊能力を持つミュータントで、自らを医師と名乗る女性の管理下に置かれ、全てを監視された生活を余儀なくされる。 若者達ははじめ衝突しながらもお互いを理解していくが、やがて施設内で怪奇現象が発生しはじめる。 主人公を演じたブルー・ハントをはじめ、アニャ・テイラー=ジョイ、メイジー・ウィリアムズ、チャーリー・ヒートンといった新世代のスター俳優達の存在感が瑞々しく輝いており、作品のト
Jul 19


マーズ・エクスプレス | Mars Express (2023)
3.9/5.0 フランス製作のSFアニメーション映画で、監督は今作が初監督作となるジェレミー・ペランが担っている。 カンヌ国際映画祭で初上映され、後に劇場公開もされた作品。 舞台は23世紀の火星。 地球から火星に戻った主人公の私立探偵とアンドロイドの相棒は、行方不明になった大学生の捜索という依頼を受ける。 調査が進むにつれて、主人公達が探っている真相が単なる失踪事件ではないことが分かってくる。 典型的な探偵ものの導入で始まりつつ、火星移住やロボットの進化が実現した超未来の世界が描かれながら展開する物語が面白く、美女や美男といった類型的な造形ではなくリアリティとドライさが重視されたキャラクター達が描かれるアニメーションの質感がとても魅力的。 「AKIRA (1988)」「攻殻機動隊 (1995)」「パプリカ (2006)」等の日本のSFアニメーションや、それらに影響を受けて製作された映画「マトリックス (1999)」シリーズへのオマージュが明らかに感じられるが、浅い剽窃ではなく敬意をもって承継された新たな作品という印象がある。 主人公達がたどり着く
Jul 19


入国審査 | Upon Entry (2023)
4.3/5.0 ベネズエラ出身のアレハンドロ・ロハスとフアン・セバスチャン・バスケスが共同で脚本・監督を手掛けたサスペンス。 移民としてバルセロナで暮らす2人の実体験から着想を得たという、ほぼワンシチュエーションで展開する低予算映画。 主人公はバルセロナ在住のベネズエラ人のディエゴとスペイン人のエレナで、事実婚の関係にある。 エレナが米国のグリーンカード抽選に当選し、移民ビザを取得できたことをきっかけに、2人は米国への移住を決意する。 しかし、2人が降り立ったニューヨークの空港での入国審査カウンターで、別室へ連行され、移民局の審査官に尋問されることになる。 海外旅行をしたことがある人ならば誰でも経験があるといってもいいだろう、入国審査カウンターで味わう緊張。 この映画ではその瞬間から事態がどんどんと悪化していき、その展開に息が詰まる。 審査官による鋭い尋問によってエレナが知らされていなかったディエゴの過去が明らかになる脚本と、ぐらつき始める主人公2人の関係性。 過剰な劇伴もVFXもカメラワークも使わず、丁寧でオーソドックスなアングルと俳優達の演技
Jul 18


パラレル 多次元世界 | Parallel (2018)
3.3/5.0 メキシコ出身のアイザック・エスバンが監督を担ったカナダ製作のSFスリラー。 シェアハウスで生活するソフトウェア開発者とその友人の4人の若者達は、屋根裏部屋で奇妙な大鏡を発見する。 鏡の向こう側には並行世界が存在し、自分達や知人とそっくりな人々もそちらの世界で暮らしていた。 並行世界の時間が自分達の世界よりも180倍早く進むことを知った4人は、その "時差" を利用してビジネスや夢の実現を成功させようとする。 並行世界という設定はSFとしてベタなものの、そこに時間の速度差が存在するという点にアイデアがあり、物語の展開方法が面白い。 別世界としながら描かれるシチュエーションはほぼ共通なため、画づくりにかける予算を抑えられるという製作観点での工夫も賢いなと感じる。 導入・危機・発見・成功・より大きな危機… という定石が丁寧におさえられている脚本構成と演出がある。 終盤にかけて登場人物達の欲望がエスカレートしていく展開には面白さがありながら、鑑賞中にある程度予想がつく内容を越えない、凡庸な印象もある。 そして、それぞれの世界や人物の視点の
Jul 18


移動都市 / モータル・エンジン | Mortal Engines (2018)
3.8/5.0 フィリップ・リーヴによるYA小説を原作に、「ロード・オブ・ザ・リング」シリーズで映画史に名を刻んだピーター・ジャクソンが脚本・製作を手掛け、ジャクソンの作品の多くでストーリーボードアーティストや視覚効果スーパーバイザーを担当してきたクリスチャン・リヴァースが初監督を担ったSF大作。 「アンブレラ・アカデミー」で印象的な役どころを演じたロバート・シーハンや、「マトリックス」「ロード・オブ・ザ・リング」シリーズ等の著名作品で活躍するヒューゴ・ウィーヴィングが出演している。 超兵器による最終戦争で文明社会が崩壊してから1,000年以上が経過した地球で、人類は移動する都市を建造し、大都市が小型都市を "捕食" することで支配する世界を生きていた。 巨大移動都市ロンドンは、他の都市を捕食しながら、東方にあり強固な壁で守られている固定都市シャングオの支配を目論んでいる。 そのロンドンの歴史学長であり開拓者でもあるサディアスに復讐を誓う少女と、歴史学ギルドの見習い青年は、巨大な陰謀と争いに巻き込まれていく。 何よりも特筆すべきは、原作で描かれた
Jul 12


The Moon (2023)
3.9/5.0 韓国映画界のヒットメーカー、キム・ヨンファが脚本・監督を手掛けたSF映画で、韓国では屈指の人気を誇る俳優のソル・ギョングが主演を担っている。 韓国初となる有人月面探査ロケットが3名のクルーを乗せて宇宙へ飛び立ったが、太陽風の影響で地上との通信トラブルが発生し、その対応中の事故によって危機的状況に陥る。 宇宙に孤立したクルーを救出するため、過去に有人ロケット爆発事故の責任を取ってKASC (韓国航空宇宙センター) を去っていた責任者が呼び戻される。 冒頭での主要登場人物のキャラクターや物語設定の説明が、とても洗練されていて分かりやすい。 また、科学考証やリアリティを突き詰めて考えればツッコミどころもあるのだろうけれど、鑑賞している間はそのあたりを気にせずに物語へ没入してしまう脚本の巧みさがある。 SFでありつつアクションは控えめでヒューマンドラマ中心、かつ分かりやすい敵役や大規模な闘いが存在しないながらも、宇宙と地上の両方で物語が次々と展開していき、それぞれ力量ある俳優達の演技にも惹きつけられて、退屈する時間がほぼない。...
Jul 11


タイムハント 時間操作 | Riot for the Dove (2023)
1.2/5.0 監督・脚本・主演をマイケル・ラザールが務めた低予算のSF映画。 メキシコの犯罪組織に監禁されている少女は、特殊な能力を持っていた。 組織はその能力をある特殊装置の入手のために利用している。 特殊な装置とは、時間を数秒だけ巻き戻せるという異星文明由来の代物だった。 米政府長官はある探偵に少女の救出を依頼する。 超能力 x タイムトラベルものという好きなジャンルだったため鑑賞したが、低予算で製作された作品であることを大前提として理解していても、そのあまりにも稚拙な演出と編集に驚かされた。 VFXを多用した派手な画がなくとも、しっかり準備されたストーリーボードがあっての撮影や編集がされていれば絶対こんなことにはならないだろうと感じる雑な作り。 まず全般的にカット割りがめちゃくちゃ過ぎて、そのシーンで誰がどこに配置されていて誰と何をしているのかがほとんど全く分からないという編集に、作品の世界に没入することを著しく妨げられてしまった。 台詞の音質もカットや話者ごとで明らかにブレがあり気になってしまうし、楽曲や音効の入り方も終わり方も笑ってし
Jul 11


V/H/S/85 (2023)
2.8/5.0 怪奇現象や超常現象が記録されたビデオテープ (ファウンド・フッテージ) というテイのホラーアンソロジーシリーズの第6弾。 製作予算は比較的抑えられながら、過激なグロテスク描写やショッキングな展開が特徴。 今作は1985年当時のホームビデオ文化を軸に、それぞれの短篇が製作されている。 「Total Copy」監督: デヴィッド・ブルックナー 2.1/5.0 アンソロジーを横断して映画全体の冒頭・幕間・終盤に入るメインフレーム。 大学の研究チームが変身生物を確保し実験する様子が記録されていく。 怖がるべきか笑うべきか微妙な気持ちになる結末が印象的。 「No Wake」監督: マイク・P・ネルソン 2.7/5.0 人里離れた湖を訪れた若者グループが何者かによる銃撃のターゲットとなる。 若者達がどのように生き延びるかという話なのかなと思いきや、予想外の展開がある。 「God of Death」監督: ジジ・ソール・ゲレーロ 2.5/5.0 1985年に実際に発生したメキシコ大地震をモチーフとした1篇。 テレビ局での生放送中に地震が発生し、
Jul 11


ひつじ探偵団 | The Sheep Detectives (2026)
4.0/5.0 レオニー・スヴァンによる小説を原作とするミステリー映画で、可愛いコメディ仕立てながら本格的な推理が展開する斬新な作品。 実話をベースにした超重量級な物語が展開する「チェルノブイリ」の企画・脚本・制作総指揮を担ったクレイグ・メイジンが脚本を手掛けている。 舞台は英国の田舎に位置するのどかな村。ヒュー・ジャックマンが演じる羊飼いのジョージが、ある朝死体で発見される。 殺人事件のような物騒な事件と無縁だった村人達は、その死因を早々に決めつけて片付けようとするが、ジョージが大切に飼っていた羊達はそうではなかった。 毎晩ジョージから探偵小説を読み聞かせてもらっていた羊達はその内容をきちんと理解していて、ミステリーもののルールを (羊なりに) 知っていたのだ。 ジョージの死の真実を突き止めるため、羊達は独自の捜査を始める。 様々な個性をもつ羊達の可愛らしさと、探偵ものとしてのシリアスな展開のギャップがとても新鮮で面白く、ついニコニコしてしまう。 ミステリーものの定石通りに手がかりを探り、ドタバタが起きつつも少しずつ真相に迫っていく羊達の純粋な
Jul 5


カッコウ | Cuckoo (2024)
3.9/5.0 アルプス山奥のリゾート地を舞台とするドイツ・アメリカ合作の映画で、ハンター・シェイファー主演。 脚本・監督はドイツ出身のティルマン・シンガー。 あるきっかけで米国からドイツへ引っ越すことになった主人公とその家族が、一癖ある現地の人物達と親交していく中で、怪異と遭遇する。 アルバイトをすることになったリゾートホテルで宿泊者が異常な行動をとったり、主人公の妹が超音波のような高音を発したり… 外界と隔絶された世界に何が潜み、何が起きているのかを、主人公は目にしていくことになる。 ネタバレを避けるため詳しい内容を書くことは控えるが、スリラーやホラーといったひとつのジャンルに当てはめにくく、SF的な解釈も含め鑑賞者に想像の余地が大きく託される脚本で、その読後感がとてもユニーク。 ハンター・シェイファーの存在感や演技力の高さはもちろん、ティルマン・シンガーの独特な演出センスも全篇に渡り光っている。 白黒明快でいわゆるお手本的な物語の展開とは全然違う形の脚本で、鑑賞していてやや混乱する部分もあるけれど、その混乱の後味も含めての映画体験が設計され
Jul 5


私がビーバーになる時 | Hoppers (2026)
3.7/5.0 ピクサー製作のアニメーションで、自然と文明社会の共存をテーマに、動物達の視点と人間達の視点の両方で描かれるアドベンチャー映画。 同社にてストーリーボードアーティストを務めてきたダニエル・チョンが脚本・監督を担っている。 オレゴン州のビーバートンに住む主人公のメイベルは、祖母との大切な思い出がある湿地が市の道路建設計画で埋め立てられようとしていることを知り、それを推進する市長のジェリーと衝突する。 計画を止めるためにはビーバー達を呼び戻すことが鍵だと考えた主人公は、湿地からいなくなってしまった彼らを探し始める。 ドタバタながら無駄がないピクサーらしいコメディ演出が健在で、物語の運びに安定感がある。 主人公があるきっかけでビーバー (型のロボット) に自身の意識を転送し、動物達と会話ができるようになって知る、人間界とは違う動物界の掟が新鮮かつ残酷で驚きがある。 物語の展開としては混乱なく整理されていながら、動物と人間あるいは善と悪といった単純な二項対立ではなく、それぞれの側のキャラクターに複層的な行動原理や葛藤が設定されているところに
Jul 5


ゼイ・ウィル・キル・ユー | They Will Kill You (2026)
3.8/5.0 「IT」二部作や「ザ・フラッシュ」の監督を担ったアンディ・ムスキエティが製作し、ロシア出身のキリル・ソコロフが監督を務めた密閉空間からの脱出型ホラーアクション。 「デッドプール2」や「ジョーカー」に出演し鮮烈な印象を残したザジー・ビーツが、高度なアクションを主演で担っている。 主人公のメイドは、マンハッタンの超高級マンションに住み込みで働かせてもらうことになる。しかしそのマンションの実態は、ほぼ全ての住人が悪魔崇拝者で、悪魔に捧げる生贄を求めているという恐るべきものだった… という導入。 住人達は、悪魔との契約で不老不死の存在となっており、主人公が何度とどめを刺しても復活する。 そうではない生身の主人公はどんどん追い詰められながらも、マンションに潜入した本当の目的である妹の救出を果たしたうえでの脱出を試みる。 この映画のみどころは、やはりそのアクション演出の面白さだと言い切ってしまって差し支えないだろう。 血みどろでグロテスクな表現は多いものの、キレとケレン味に溢れるアングル・カッティング・ライティング・サウンドディレクション等の
Jul 5


パニック・フライト | Red Eye (2005)
3.5/5.0 ホラー映画シリーズの金字塔ともいえる「エルム街の悪夢」の創造者でもあり、「スクリーム」シリーズを手掛けたことでも有名なウェス・クレイヴンが監督を手掛けたスリラー映画。 「HELP / 復讐島」や「アバウト・タイム」のレイチェル・マクアダムスが主演し、「オッペンハイマー」で主演を務めたキリアン・マーフィが共演している。 高級ホテルのフロントマネージャーを仕事とする主人公の女性は、その滞在地から自宅へ戻るために向かった空港で、ある男性と出会い親近感を持つ。 飛行機に搭乗すると、偶然にも臨席がその男性だった… という、まるでラブコメディのような導入。 しかし、ホラーの巨匠ウェス・クレイヴンの作品なので、物語がそのままのトーンで続くはずはなく、そこからショッキングな展開が続く。 様々な表情や役柄を演じ分けられるキリアン・マーフィの演技力の高さがよく分かる。 誰もが認めるであろうレイチェル・マクアダムスの美しさはさておき、その様々な表情の変化が面白い。ただか弱い女性を可哀想に演じるのではなく、飛行機内という限定空間で葛藤・勇気・使命感といっ
Jul 5























