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Cinema Review

かくかくしかじか | Blank Canvas: My So-Called Artist’s Journey (2025)

  • 7 minutes ago
  • 3 min read

3.2/5.0

漫画家の東村アキコによる同題の自伝的漫画作品を原作とする青春ドラマ映画で、永野芽郁が若き日の東村アキコを、大泉洋がその恩師の絵画教室の先生を演じている。


主人公の明子は、漫画家になるという夢を持ちながら特別な努力をせずダラダラ過ごしている高校生。

"美大出身の漫画家" という箔がほしい主人公は、あるきっかけから美大受験のために絵画教室へ通うことになるが、そこで出会った先生の指導はとにかく厳しいスパルタ式で、困惑したりぶつかりながら絵と向き合っていくことになる。


自身が東村アキコ先生と同じ金沢美術工芸大学の卒業生で在学期間も重複していたことや、作品内に大学のキャンパスや金沢の街の描写がたくさんあると聞いたこともあって原作を読み、その物語に心を打たれたので、映画版はどんな作品になっているだろうと気になり鑑賞した。

映画の中で描かれる、絵画教室で石膏像と向き合う息が詰まる時間や、入試実技試験 (デッサン) の焦燥感、制作課題からの逃避を繰り返す日々が当時の自分にもたくさんあったこと等を思い出し、ほろ苦い気持ちになった。


スパルタながら真っ直ぐで誰よりも主人公の将来のことを思う恩師の先生を演じた大泉洋の存在感は素晴らしく、クセが強い俳優ではあるけれど、今作はぴったりの配役だと感じる。

永野芽郁が演じた若き頃の東村アキコは、主人公としての華があり演技も決して悪いものではないのだけれど、演出づけの弱さもあってか、原作漫画に描かれていた若者ならではの底なしの軽薄さや卑怯さ、後ろめたい気持ちを抱えながら前に進む人間の業の深さといった要素を見つけることが難しく、その上澄みの部分だけが浅く表現されているように見えた。

そのこともあってか、絵画教室から美術大学へ進学し漫画家としてデビューして名を成していく主人公の物語が、実際には大変な苦労や挫折がたくさんあったはずなのに、まるでトントン拍子だったような印象になっているところが残念。


結末についても、映画版では原作漫画の内容から大きく改変されて主人公の心の救済が明確に描かれているが、良くも悪くも物語として分かりやす過ぎると感じる。

きっと一生解決しない痛みを心に持ち続けながら、それでも漫画家として描き続けていくと覚悟を決めた東村アキコという作家の哀しい美しさを、映画版でも観たかった。


それらはさておき… 金沢美術工芸大学の卒業生のひとりとして。

大学生活パートのロケーションに金沢美大の実際のキャンパス (東村さんや私が通っていた頃の旧キャンパス) が使われていて、飽きるほどその足元を通ったエントランスホールのニケ像や大階段の空間が、当時と全く同じ空気で再現されていたことがとても嬉しかった。

ボロボロのロッカーがひしめいて日中でも真っ暗な、絵の具や埃で薄汚れた狭いあの廊下は、間違いなく自分の青春の一部だったと思う。

cinemagirls

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Shoji Taniguchi | 谷口 昇司

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美術大学にて映像を中心に学び

現在はマーケティング業界で働き中

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