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Cinema Review

サブスタンス | The Substance (2024)

  • 執筆者の写真: Shoji Taniguchi
    Shoji Taniguchi
  • 6月21日
  • 読了時間: 2分

4.5/5.0

フランス出身のコラリー・ファルジャが脚本・監督を手掛けたSFボディホラーで、カンヌ国際映画祭にて脚本賞を受賞し、アカデミー賞で5部門にノミネートされた話題作。

主演のデミ・ムーアは今作にてゴールデングローブ賞の主演女優賞を受賞している。


デミ・ムーアが演じる往年のハリウッドスターのエリザベスは、年齢とそれに応じた外見を理由にレギュラー番組から降板させられる。

自身の衰えを自覚しながらも、かつて手にした栄光と賞賛を忘れられず絶望するエリザベスだが、「より良い自分を生み出す」という違法な薬物「サブスタンス」を手に入れるという導入。


「より良い自分」として生まれるもうひとりのエリザベス = スーを演じるマーガレット・クアリーのゴージャスな存在感は素晴らしく、作品の世界のみならず今後の実際のハリウッドでもスーパースターとして活躍していくことは間違いないだろう。

だが、やはり今作において何よりも強烈なのは、かつて一世を風靡しながら紆余曲折あってキャリアに行き詰まっていたデミ・ムーアというスターの存在感だ。

エリザベスという役柄は、デミ・ムーアという俳優によってしか演じられなかったのではないかと感じるほど。


今作が独特なのは、アート性が高い画づくりが基調としてありながら、デヴィッド・クローネンバーグ等に代表される往年のボディホラー (VFXよりも実物エフェクトや特殊メイクを重視) の再来でもあり、かつルッキズムが蔓延しながら承認欲求が肥大する一方の現代社会に対する鋭い批評が根底にあり、それらが渾然一体となりながら物語として結実している点にある。

ボディホラーとしてのグロテスクな物理的表現と、美と若さへの哀しくも愚かな執着というグロテスクな精神性が掛け合わさって、唯一無二ともいえる読後感が残る。


SF好きの視点で鑑賞すればリアリティラインの低さが気になるところもあったが、終盤における「いくらなんでもそんなわけあるか!」と感じるような展開の連続を目にした時、この作品はそもそも全篇が寓話として作られていて、リアリティがどうこうという些末な議論とは別のところに位置するものなのだと理解できた。


コラリー・ファルジャ監督の、心を抉られるような女性(達)の心理描写と、女性をモノとしてしか扱えない男性達の醜さの描写と、全てを突き放すような結末の描写に、驚かされながらも感心してしまった。

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Shoji Taniguchi | 谷口 昇司

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美術大学にて映像を中心に学び

現在はマーケティング業界で働き中

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