

バトルランナー | The Running Man (1987)
3.2/5.0 アメリカを代表する作家のスティーヴン・キングが別名義で発表した小説を原案とするSFアクション映画。 「ターミネーター (1984)」で一躍スーパースターとなったアーノルド・シュワルツェネッガーが主演している。 世界経済が崩壊し、資源不足と貧富格差が広がる近未来。 警察権力によって独裁統治されていたアメリカにおいて、国民に残された数少ない娯楽はTVショー、特に出場者の殺し合いを生中継するという過激なバラエティ番組「ランニングマン」だった。 無実の罪で拘束された主人公は、その番組のプロデューサーに目をつけられ、「ランニングマン」へ出場することに同意させられてしまう。 スティーヴン・キング (今作においてはリチャード・バックマンという名義) の作品といえば、多くの人が思い浮かべるのはやはりホラージャンルになりそうだけれど、今作は舞台設定こそディストピアなものの、とてもあっけらかんとした空気を帯びている。 良くも悪くも、80年代のハリウッド映画が持っていた軽さや勢いが映画全体に感じられる。 敵対する武装者達と主人公達の過激なバトルも、今観
Mar 1


ウェポンズ | Weapons (2025)
4.0/5.0 長編監督デビュー作の「バーバリアン (2022)」で一躍脚光を浴びたザック・クレッガーが脚本・製作・監督するホラー映画。 出演はジョシュ・ブローリン、ジュリア・ガーナー、ベネディクト・ウォン、オールデン・エアエンライクと豪華。 小学校のあるクラスの児童17人が、深夜2時17分に家を飛び出し、行方不明になるという事件が発生する。 そのクラスの担任だった教師、学校長、行方不明児の保護者といった様々な人物の視点と行動から、不可解な事件の真相が明らかになっていく。 何よりも、予告篇でも象徴的に使われていた「子どもたちが深夜に両手を広げて疾走する」画の不気味さが印象的。 伝統的な (ジャンプスケアも含む) 演出と、今まであまり観たことがない意外性たっぷりな恐怖演出の組み合わせが見事で、効果的なカメラワークやコントラスト設計および音効演出もあり、物語にぐっと惹き込まれる。 また、映画の視点が様々な登場人物に切り替わりつつタイムラインを何度か戻って同じシーンを違う角度から描くことで、全体の物語はもちろんのこと、それぞれの人物のバックグラウンドや
Feb 15


V/H/S ビヨンド | V/H/S/Beyond (2025)
3.5/5.0 怪奇現象や超常現象が記録されたビデオテープ (ファウンド・フッテージ) というテイのホラーアンソロジーシリーズの1篇で、予算は抑えめながらかなり過激なグロテスク描写やショッキングな展開が特徴。 今作はSFホラー (異生物との遭遇) を共通テーマに、それぞれの短篇が製作されている。 「ABDUCTION / ADDUCTION」監督: ジェイ・チール 2.7/5.0 ドキュメンタリーの製作班が事故物件に入り、記録撮影を行う。 アンソロジーの縦軸として幕間に入るが、それっぽい雰囲気以上でも以下でもなく、特には印象に残らない。 「STORK」監督: ジョーダン・ダウニー 3.5/5.0 幼児誘拐事件の真相究明・解決のために武装して廃屋へ乗り込む警官達のボディカメラ映像。 めちゃくちゃ過激でド派手なガンバトルと、VFXに頼り過ぎない手作り感溢れる怪物の造形が見どころ。 「DREAM GIRL」監督: ヴィラット・パル 3.4/5.0 インドの映画製作現場に突入したメイキングビデオの撮影スタッフによる記録映像。 人気女優に迫ろうとするスタッ
Feb 15


夢追いウサギ | Burrow (2020)
3.9/5.0 ピクサー製作による「SPARKSHORTS」シリーズの1篇。 マイホームを手に入れようと頑張るけれどなかなか上手くいかないウサギの物語。 人付き合い (動物付き合い) が苦手で、作り笑顔で他者と距離を置きつつひとりで何でも行おうとするウサギの性分が痛いほど分かる。 誰の心にも多かれ少なかれあるであろうそういった部分の描き方が本当に上手だなと感じる。 また、ウサギが描いたマイホームの設計図が信じられないほどアホ過ぎて可愛く、それが提示される冒頭から笑ってしまいつつ、ぐっと心を掴まれる。 監督のユーモアのセンスが自分だけに特別強く刺さる種類のものなのかも知れないけれど、他にも1箇所すごく笑える短いシーンがあった。 かと思えば、焦るあまりに自分だけでなく他者も巻き込むトラブルを招いてしまったウサギの悲しい表情がとても切なく、涙が出そうになった。 テーマや結末は特別に斬新なものではないかもしれないけれど、短い時間で演出レベルの高さが何度も味わえる秀作。 https://filmarks.com/movies/94715/reviews/2
Jan 31


猫とピットブル | Kitbull (2019)
3.9/5.0 ピクサー製作による「SPARKSHORTS」シリーズの1篇。 野良猫とピットブルの闘犬の出会いと転機を描くアニメーション短篇。 猫が暮らす廃材の段ボールの家の近くに、ピットブルが連れてこられる。当初警戒していた猫は、夜になって傷を負い戻ってきたピットブルを見る。 人間側の都合や背景が描かれることはなく想像するしかないというところが、主人公である猫と犬が置かれた状況の疑似体験になっており、演出が上手だなと感じる。 テーマは特別に新しいものではないけれど、犬猫好きの自分としては、必要最小限の枚数で十分魅力的に描かれる猫や犬のいかにもな動きと、2匹がたどり着く結末にとても心を打たれた。 ピクサー製作の長篇アニメーションには素晴らしい作品がたくさんあるが、必要最小限の要素と展開で描かれる短篇の完成度の高さにも驚かされる。 https://filmarks.com/movies/83033/reviews/211675617
Jan 31


誕生日シンドローム | Twenty Something (2021)
3.8/5.0 ピクサー製作による「SPARKSHORTS」シリーズの1篇。 21歳の誕生日を迎え、姉に連れられ初めてクラブへ行くことになった女性が主人公。 主人公が感じる不安な心理が、アニメーション表現ならではの手法で描かれており、そのチャーミングなアイデアが面白い。 ひとりの人間だから思考も成熟度も単一ということではなく、様々な自分が内面に存在している。 自分に比べると随分大人に見える他者もひょっとすると同じなのではないか、自分だけが未成熟で場違いな存在だと思う必要はないのかもしれない。 主人公の葛藤と心境変化の描かれ方がとてもスマートで、温かい読後感が残る素敵な短篇だった。 https://filmarks.com/movies/99398/reviews/211675565
Jan 31


心をつむいで | Purl (2018)
3.6/5.0 ピクサー製作による「SPARKSHORTS」シリーズの1篇。 金融企業に入社した毛糸玉の女性を主人公にして描かれる、社会と個人の関わり方についての物語。 意気揚々と新しい職場に乗り込む主人公だったが、男性ばかり (しかも全員が同じようなスーツと顔つき) の空気やカルチャーに圧倒され、無理やりにでも自分を合わせていく。 一連のシーンがピクサーらしいユーモラスな演出で描かれていて楽しいけれど、社会人ならば誰でも一度は味わったことがありそうな状況に、心が痛くなる。 本来の人間性や個性を抑圧してまでも組織や社会に溶け込むことが本当に必要なのか? という重めの問いとそれについての製作者からの回答を、15分程度の時間と軽妙な演出を通して鮮やかに提示できているところに、ピクサーという集団のクリエイティビティの高さをあらためて感じた。 https://filmarks.com/movies/87749/reviews/211675526
Jan 31


ドロップ | Drop (2025)
3.5/5.0 「ハッピー・デス・デイ」シリーズの監督や「パラノーマル・アクティビティ」シリーズの脚本・製作を担ってきたクリストファー・ランドンが監督を担ったシチュエーションスリラー。 予算は限定しながらも製作者の創造的自由を最大限に重視する方針のブラムハウス・プロダクションズ製作。 レストランでの初デートへ赴いた主人公のスマートフォンに、AirDrop (作品内ではDigiDrop) で匿名のメッセージと画像が送られてくる。 最初はいたずらのように思えたそれは、段々と脅迫めいた内容に変わっていき、やがて妹に託して自宅に置いてきた息子の情報が届くようになる。 DigiDropで通信できる距離はせいぜい15m程度で、脅迫者は主人公のすぐそばにいる誰か。その正体と意図は何なのか… という導入がスリラーとして斬新で、その状況設定に惹き込まれる。 デートの相手をはじめ、自分以外の誰かに助けを求めることが犯人に止められている状況で、主人公がその場を取り繕いつつどのように状況を打破するのかという展開は面白い。 当然ながら犯人は誰だろうと考えながら登場人物全員
Jan 12


プレデター: バッドランド | Predator: Badlands (2025)
3.9/5.0 残虐描写が過激なSFアクション「プレデター」シリーズに属する作品で、同シリーズ復活の立役者ともいえるダン・トラクテンバーグが監督を務めており、有名俳優姉妹の妹、エル・ファニングが出演している。 誇り高い戦闘一族の若者の主人公が、掟を破ったことをきっかけに、最悪の地 (バッドランド) といわれる惑星へ送られる。 主人公はその惑星の頂点捕食生物を狩ることで真の戦士として一族に認められるために、試練に挑む。 これまでのシリーズで人間たちが対峙してきた異星人を主人公に設定するという、視点を逆転する着想が面白い。 相棒として登場するアンドロイド (シンセティック) が、機能はしているものの下半身を失っているという設定も斬新で、それが物語の展開や奇抜なアクションにしっかり活かされているところも上手い。 何より、陽気でチャーミングなアンドロイドと、冷酷で合理的な同型のアンドロイドの二役を演じるエル・ファニングの魅力が素晴らしい。 過去にクロスオーバーした「エイリアン」シリーズのファンにはたまらないであろう演出も後半にかけてたくさんあり、監督の作
Jan 12


フロッグ | I See You (2019)
3.9/5.0 俳優でもあるデヴォン・グレイが脚本を執筆したクライムサスペンス。 NETFLIX映画「iBOY」や「ナイトティース」を手掛けたアダム・ランドールによる監督作品。 15年前に連続少年誘拐殺人事件が発生した小さな町で、再び同様の事件が相次いで発生する。 過去の事件の犯人は逮捕されていることから、混乱する警察。 事件を捜査することになった刑事の家庭は、パートナーの不倫をきっかけに家族関係が崩壊している。 そして刑事の家では超常現象のような不可解な出来事が起こり始める… 舞台を限定した小規模のサスペンスを思わせる序盤から、中盤にある視点の大転換、そして終盤で真相が明らかになる展開と、何度もツイストする脚本の構成が巧み。 ネタバレを避けるため細かい部分への言及は避けるが、前半での様々な違和感や恐怖が後半で納得や別の恐怖に変化する演出が見事だと感じた。 出演している俳優達は誰もが知る著名な人物達ではないけれど、それぞれがそれぞれの役回りを理解しながら高い演技力を発揮することで、真相が明らかになった際の強い衝撃に結実している。...
Jan 4


裸の銃を持つ男 | The Naked Gun (2025)
3.2/5.0 レスリー・ニールセンの主演で80〜90年代に3シリーズが製作されたコメディのリブートで、ニールセンが演じた警部補の息子という設定の主人公を演じるのはリーアム・ニーソン。 「チップとデールの大作戦 レスキュー・レンジャーズ」を手掛けたコメディアンのアキヴァ・シェイファーが脚本と監督を担っている。 銀行強盗が発生し、特捜隊警部補の主人公がひとりで制圧するも、貸金庫からあるデバイスが盗まれる。 デバイスには世界を揺るがす危険なプログラムが入っていた、という導入。 クリストファー・ノーラン作品かと錯覚するほどの (もちろん意図的にそうしているであろう) やたらに重厚なオープニングのつかみが面白く、予告篇にも使われている主人公の初登場シーンでは展開を知っていても笑ってしまった。 他にも、ミッション・インポッシブルシリーズの有名なシーンのパロディもあってニヤニヤと笑える。 もちろん、他映画作品のパロディ以外にも笑ってしまうシーンはいくつもある。 個人的には、雪だるまが登場するシーンの意味不明さと狂気的なまでの長さを感じる一連が最も面白かった。
Dec 31, 2025


ザ・メッセージ | I Still See You (2018)
3.5/5.0 モデル・歌手・俳優として様々活躍するベラ・ソーンが主演するSFサスペンス。 ダニエル・ウォーターズによる10代向けのYA (Young Adult) 小説「Break My Heart 1000 Times」を原作としているらしい。 ある研究をしていた施設が大爆発を起こし、数百万人が志望するという大惨事から10年後。 その後の世界では、犠牲者達の残像 (Remmnants = 残存者) が誰にでも見える形で出現し始める。 主人公は面識のない残存者が残した「逃げろ (RUN)」というメッセージに恐怖するが、その意味と真相を追求していく。 幽霊のような存在と生者が共存するようになった社会という設定が、SFとしてすごく面白い。 主要登場人物を絞って、小さな街を舞台に展開するサスペンスとしての面白さはある。 真相が見えてきたと思いきや何度かツイストする脚本の展開も、設定が活かされていて捻りがきいている。 現題の「I still see you」の意味が初めて分かるシーンではなるほどそういうことかと感じ、ラストシーンでそこに別の意味が生まれ
Dec 31, 2025


クラウド | Cloud (2024)
3.4/5.0 「回路」「CURE」等のホラーやサスペンスジャンルで著名な黒沢清が脚本・監督を手掛けたサスペンススリラーで、菅田将暉が主演し、共演として古川琴音・荒川良々・窪田正孝等が出演している。 町工場で働きながらインターネットでの転売ビジネスで糊口を凌いでいた主人公の周囲で、不可解な出来事が相次いで起こり始める。 主人公が無自覚にバラ撒いてきた憎悪の種が、顔の見えないネット上での情報のやりとりで肥大化し、やがてそれらが主人公のもとへ一気に極限状況となって戻ってくる。 黒沢清監督らしさともいえる重くも美しいトーンと、日常的な風景へシームレスに異常なモチーフが入り込んでくる恐怖の描き方は健在で、さすがと感じる。 最低限の人間性はありそうながらまともな会話が通じなそうでもある危うい主人公を演じる菅田将暉の俳優としての力量も感じられる。 菅田将暉以外の俳優達も、監督の演出力もあってか、それぞれ何かが不安定な人間に見える役柄を好演していて、息苦しさや居心地の悪さが持続する。 けっこうなウェイトがとられていた後半の壮絶な展開は自分には意外だったが、ハリ
Dec 31, 2025


ヴァスト・オブ・ナイト | The Vast of Night (2019)
3.5/5.0 映写技師として働いていたアンドリュー・パターソンが、自身で資金調達のうえ初監督作品として製作した長篇映画。 スラムダンス映画祭にて最優秀ナラティブ長編観客賞を受賞し注目されたSFミステリー。 1950年代、米国の小さな田舎町で発生する怪事件。 若きラジオDJの男と電話交換手の少女の視点から、隠されていた真相が明らかになる夜が描かれる。 SFジャンルではありながら (低予算のため) 派手なVFXによる見せ場はほとんどなく、もっぱら会話劇と「音」の演出に重心が置かれている。 また、俳優達の演技レベルがとても高いことと、会話シーンを中心に何度か使われている固定アングルの長回しが効果的で、物語の世界へ没入できる。 まるで「音」だけで物語を想像して楽しむラジオドラマを聴いているような、新鮮な感覚。 ただ、結末にはある程度のカタルシスはあるものの、全ての謎が解き明かされる脚本ではなく、良くも悪くも鑑賞者に解釈の余地を大きく残す形になっているため、物語の細部まで明快に理解したい派と想像の余韻を味わいたい派で好みが分かれそう。...
Dec 25, 2025


大洪水 | The Great Flood (2025)
3.7/5.0 韓国製作のNETFLIX映画で、「The Witch 魔女」や「梨泰院クラス」にて一躍注目を浴びたキム・ダミが主演している。 あえてジャンルを定義すればディザスターということになると思うけれど、様々なジャンルがミックスされているところが作品の個性になっている。 南極に小惑星が衝突した影響で海面が急激に上昇し、地球規模の超巨大津波が発生する。 AI研究者でシングルマザーの主人公は、ひとり息子を連れて自宅マンションの屋上を目指すが… という導入。 災害パニックものとしてのスリルの上手な描き方や演出の安定感はさすが韓国映画といった印象で、本物らしく描写することが難しいとされている水のVFXの品質も非常に高く、絶望的な状況に没入してしまう。 何よりも、キム・ダミの表情や身体演技のレベルの高さに惹きつけられ、思わず主人公に感情移入してしまう。 全ての韓国映画にあてはまることではないと思うけれど、家族の間に生まれる「情」の演出にかけては、やはり韓国の凄みを感じる。 脚本の核心部分について書こうとするとどうしてもネタバレになりそうで難しいが、単
Dec 21, 2025























