

ドロップ | Drop (2025)
3.5/5.0 「ハッピー・デス・デイ」シリーズの監督や「パラノーマル・アクティビティ」シリーズの脚本・製作を担ってきたクリストファー・ランドンが監督を担ったシチュエーションスリラー。 予算は限定しながらも製作者の創造的自由を最大限に重視する方針のブラムハウス・プロダクションズ製作。 レストランでの初デートへ赴いた主人公のスマートフォンに、AirDrop (作品内ではDigiDrop) で匿名のメッセージと画像が送られてくる。 最初はいたずらのように思えたそれは、段々と脅迫めいた内容に変わっていき、やがて妹に託して自宅に置いてきた息子の情報が届くようになる。 DigiDropで通信できる距離はせいぜい15m程度で、脅迫者は主人公のすぐそばにいる誰か。その正体と意図は何なのか… という導入がスリラーとして斬新で、その状況設定に惹き込まれる。 デートの相手をはじめ、自分以外の誰かに助けを求めることが犯人に止められている状況で、主人公がその場を取り繕いつつどのように状況を打破するのかという展開は面白い。 当然ながら犯人は誰だろうと考えながら登場人物全員
Jan 12


プレデター: バッドランド | Predator: Badlands (2025)
3.9/5.0 残虐描写が過激なSFアクション「プレデター」シリーズに属する作品で、同シリーズ復活の立役者ともいえるダン・トラクテンバーグが監督を務めており、有名俳優姉妹の妹、エル・ファニングが出演している。 誇り高い戦闘一族の若者の主人公が、掟を破ったことをきっかけに、最悪の地 (バッドランド) といわれる惑星へ送られる。 主人公はその惑星の頂点捕食生物を狩ることで真の戦士として一族に認められるために、試練に挑む。 これまでのシリーズで人間たちが対峙してきた異星人を主人公に設定するという、視点を逆転する着想が面白い。 相棒として登場するアンドロイド (シンセティック) が、機能はしているものの下半身を失っているという設定も斬新で、それが物語の展開や奇抜なアクションにしっかり活かされているところも上手い。 何より、陽気でチャーミングなアンドロイドと、冷酷で合理的な同型のアンドロイドの二役を演じるエル・ファニングの魅力が素晴らしい。 過去にクロスオーバーした「エイリアン」シリーズのファンにはたまらないであろう演出も後半にかけてたくさんあり、監督の作
Jan 12


フロッグ | I See You (2019)
3.9/5.0 俳優でもあるデヴォン・グレイが脚本を執筆したクライムサスペンス。 NETFLIX映画「iBOY」や「ナイトティース」を手掛けたアダム・ランドールによる監督作品。 15年前に連続少年誘拐殺人事件が発生した小さな町で、再び同様の事件が相次いで発生する。 過去の事件の犯人は逮捕されていることから、混乱する警察。 事件を捜査することになった刑事の家庭は、パートナーの不倫をきっかけに家族関係が崩壊している。 そして刑事の家では超常現象のような不可解な出来事が起こり始める… 舞台を限定した小規模のサスペンスを思わせる序盤から、中盤にある視点の大転換、そして終盤で真相が明らかになる展開と、何度もツイストする脚本の構成が巧み。 ネタバレを避けるため細かい部分への言及は避けるが、前半での様々な違和感や恐怖が後半で納得や別の恐怖に変化する演出が見事だと感じた。 出演している俳優達は誰もが知る著名な人物達ではないけれど、それぞれがそれぞれの役回りを理解しながら高い演技力を発揮することで、真相が明らかになった際の強い衝撃に結実している。...
Jan 4


裸の銃を持つ男 | The Naked Gun (2025)
3.2/5.0 レスリー・ニールセンの主演で80〜90年代に3シリーズが製作されたコメディのリブートで、ニールセンが演じた警部補の息子という設定の主人公を演じるのはリーアム・ニーソン。 「チップとデールの大作戦 レスキュー・レンジャーズ」を手掛けたコメディアンのアキヴァ・シェイファーが脚本と監督を担っている。 銀行強盗が発生し、特捜隊警部補の主人公がひとりで制圧するも、貸金庫からあるデバイスが盗まれる。 デバイスには世界を揺るがす危険なプログラムが入っていた、という導入。 クリストファー・ノーラン作品かと錯覚するほどの (もちろん意図的にそうしているであろう) やたらに重厚なオープニングのつかみが面白く、予告篇にも使われている主人公の初登場シーンでは展開を知っていても笑ってしまった。 他にも、ミッション・インポッシブルシリーズの有名なシーンのパロディもあってニヤニヤと笑える。 もちろん、他映画作品のパロディ以外にも笑ってしまうシーンはいくつもある。 個人的には、雪だるまが登場するシーンの意味不明さと狂気的なまでの長さを感じる一連が最も面白かった。
Dec 31, 2025


ザ・メッセージ | I Still See You (2018)
3.5/5.0 モデル・歌手・俳優として様々活躍するベラ・ソーンが主演するSFサスペンス。 ダニエル・ウォーターズによる10代向けのYA (Young Adult) 小説「Break My Heart 1000 Times」を原作としているらしい。 ある研究をしていた施設が大爆発を起こし、数百万人が志望するという大惨事から10年後。 その後の世界では、犠牲者達の残像 (Remmnants = 残存者) が誰にでも見える形で出現し始める。 主人公は面識のない残存者が残した「逃げろ (RUN)」というメッセージに恐怖するが、その意味と真相を追求していく。 幽霊のような存在と生者が共存するようになった社会という設定が、SFとしてすごく面白い。 主要登場人物を絞って、小さな街を舞台に展開するサスペンスとしての面白さはある。 真相が見えてきたと思いきや何度かツイストする脚本の展開も、設定が活かされていて捻りがきいている。 現題の「I still see you」の意味が初めて分かるシーンではなるほどそういうことかと感じ、ラストシーンでそこに別の意味が生まれ
Dec 31, 2025


クラウド | Cloud (2024)
3.4/5.0 「回路」「CURE」等のホラーやサスペンスジャンルで著名な黒沢清が脚本・監督を手掛けたサスペンススリラーで、菅田将暉が主演し、共演として古川琴音・荒川良々・窪田正孝等が出演している。 町工場で働きながらインターネットでの転売ビジネスで糊口を凌いでいた主人公の周囲で、不可解な出来事が相次いで起こり始める。 主人公が無自覚にバラ撒いてきた憎悪の種が、顔の見えないネット上での情報のやりとりで肥大化し、やがてそれらが主人公のもとへ一気に極限状況となって戻ってくる。 黒沢清監督らしさともいえる重くも美しいトーンと、日常的な風景へシームレスに異常なモチーフが入り込んでくる恐怖の描き方は健在で、さすがと感じる。 最低限の人間性はありそうながらまともな会話が通じなそうでもある危うい主人公を演じる菅田将暉の俳優としての力量も感じられる。 菅田将暉以外の俳優達も、監督の演出力もあってか、それぞれ何かが不安定な人間に見える役柄を好演していて、息苦しさや居心地の悪さが持続する。 けっこうなウェイトがとられていた後半の壮絶な展開は自分には意外だったが、ハリ
Dec 31, 2025


ヴァスト・オブ・ナイト | The Vast of Night (2019)
3.5/5.0 映写技師として働いていたアンドリュー・パターソンが、自身で資金調達のうえ初監督作品として製作した長篇映画。 スラムダンス映画祭にて最優秀ナラティブ長編観客賞を受賞し注目されたSFミステリー。 1950年代、米国の小さな田舎町で発生する怪事件。 若きラジオDJの男と電話交換手の少女の視点から、隠されていた真相が明らかになる夜が描かれる。 SFジャンルではありながら (低予算のため) 派手なVFXによる見せ場はほとんどなく、もっぱら会話劇と「音」の演出に重心が置かれている。 また、俳優達の演技レベルがとても高いことと、会話シーンを中心に何度か使われている固定アングルの長回しが効果的で、物語の世界へ没入できる。 まるで「音」だけで物語を想像して楽しむラジオドラマを聴いているような、新鮮な感覚。 ただ、結末にはある程度のカタルシスはあるものの、全ての謎が解き明かされる脚本ではなく、良くも悪くも鑑賞者に解釈の余地を大きく残す形になっているため、物語の細部まで明快に理解したい派と想像の余韻を味わいたい派で好みが分かれそう。...
Dec 25, 2025


大洪水 | The Great Flood (2025)
3.7/5.0 韓国製作のNETFLIX映画で、「The Witch 魔女」や「梨泰院クラス」にて一躍注目を浴びたキム・ダミが主演している。 あえてジャンルを定義すればディザスターということになると思うけれど、様々なジャンルがミックスされているところが作品の個性になっている。 南極に小惑星が衝突した影響で海面が急激に上昇し、地球規模の超巨大津波が発生する。 AI研究者でシングルマザーの主人公は、ひとり息子を連れて自宅マンションの屋上を目指すが… という導入。 災害パニックものとしてのスリルの上手な描き方や演出の安定感はさすが韓国映画といった印象で、本物らしく描写することが難しいとされている水のVFXの品質も非常に高く、絶望的な状況に没入してしまう。 何よりも、キム・ダミの表情や身体演技のレベルの高さに惹きつけられ、思わず主人公に感情移入してしまう。 全ての韓国映画にあてはまることではないと思うけれど、家族の間に生まれる「情」の演出にかけては、やはり韓国の凄みを感じる。 脚本の核心部分について書こうとするとどうしてもネタバレになりそうで難しいが、単
Dec 21, 2025


デスプルーフ in グラインドハウス | Quentin Tarantino's Death Proof (2007)
3.9/5.0 攻めた作風でありながら巨匠の地位にまで登りつめたといってもいいであろうクエンティン・タランティーノが脚本・撮影・監督を担ったバイオレンスアクション映画。 アクション俳優としての地位を確立しつつも様々なジャンルの映画に出演する演技派俳優のカート・ラッセルが印象的な悪役を演じており、スタントウーマンのゾーイ・ベルは本人役として出演。ロザリオ・ドーソンやメアリー・エリザベス・ウィンステッドもゾーイの友人役で出演していて、さすがタランティーノ映画という豪華さ。 「耐死仕様 (デス・プルーフ)」に整備した自動車を持つスタントマン・マイクが、若い美女達を襲う。 しかし美女達もただ無力に逃げ回るばかりではなく、反撃に転じ復讐を果たそうとする。 物語をまとめるとたったそれだけ? と思ってしまうほどシンプルだけれど、タランティーノ映画とあって、やはり会話劇をはじめとする様々な演出が面白く、退屈する瞬間がない。 この映画で描かれている時代は現代 (映画が製作された2007年) でありながら、70年代に米国のドライブイン等でよくかかっていた当時の低予算
Dec 21, 2025


Ostinato (2023)
https://www.netflix.com/title/81923258 3.1/5.0 曲作りに苦心する音楽家を描くカナダ製作のNETFLIX短篇アニメーション。 音楽用語における「Ostinato (頑固な)」は、一定の短い音型を何度も繰り返すという意味。 楽曲における不協和音 (不安定で緊張感がある音の組み合わせ) を頑なに避けながら作曲をする音楽家が、次第にそれを取り入れることで、予想外にドラマチックな楽曲を形にしていく過程が描かれていく。 特筆すべき演出や展開はなかったけれど、上質で美しい小品だった。 https://filmarks.com/movies/120330/reviews/209284382
Dec 21, 2025


トロン: アレス | Tron: Ares (2025)
3.8/5.0 世界で初めてCGを表現に取り入れた (公開当時は) 革新的な映像で、今でもカルト的な人気を誇るSF映画「トロン (1982)」シリーズの第3作で、「デアデビル: ビーン・アゲイン」や「エラゴン 遺志を継ぐ者」等に関わったジェシー・ウィグトウが脚本を、「マレフィセント2」等を手掛けたヨアヒム・ローニングが監督を担っている。 サイバー空間上で活動する人工知能プログラムを現実世界に実体化する技術が発明された未来。 ディリンジャー社は無限のリソースから何度でも複製できる実体のAI兵士を世間に発表し軍需産業で覇権を握ろうとするが、その技術は未完成で、現実世界では29分で実体が活動限界を迎え崩壊してしまうという不都合な事実が隠されていた。 一方、ディリンジャー社の競合であるエンコム社を率いる研究者は、その29分の壁を打破する「永続コード」を発見する。 AI兵士のアレスはディリンジャー社の指令に従い、その「永続コード」をエンコム社から奪おうとする。 主人公のAI兵士を演じるジャレッド・レトは、紛れもない名俳優でありながら割と役を選ばない印象もあ
Dec 15, 2025


アンキャニー 不気味の谷 | Uncanny (2019)
3.7/5.0 人間と見分けがつかないほどの精巧な肉体と知能を持ったAIと、共に過ごすことになった2人の人間の会話劇を中心に展開するサスペンスSFの中篇。 出演者は「スコット・ピルグリム VS. 邪悪な元カレ軍団」に出演していたマーク・ウェバーと、日本では知名度が低いが米国のドラマに出演しているデヴィッド・クレイトン・ロジャース、ルーシー・グリフィスのほぼ3名。 監督のマシュー・ルートワイラーは、ジェームズ・ガンが今のように超メジャーになる以前に脚本・監督を手掛けた密かな名作「スーパー!」で製作総指揮を担っていたらしい。 テクノロジー雑誌の記者の女性が、独占取材として訪れた極秘AI研究施設にて、天才研究者とその研究者が生み出した人型AIと出会う。 記者は人型AIとして紹介された人物の挙動にとまどいながらも、3人で過ごす時間を通してその研究成果を観察・記録していく。 劇中に何度か登場する、研究者と人型AIが行うチェスを行うシーンを通して物語のテーマが隠喩的に見えてくる脚本が面白い。 SFジャンルながら派手なVFXは全くといっていいほど存在せず、低予
Nov 30, 2025


タイムマシン | Time Machine (2019)
3.2/5.0 映像作家の袴田くるみによる、SFアニメーション短篇。 過去の出来事と自身の振る舞いを悔いて生きる男と、彼が大切に思っていた者たちを巡る物語。 性暴力を受けた主人公の友人がとった悲劇的な行動を止めるために、タイムマシンを開発して時を遡りたいと願う男。 苦く忘れがたい過去の記憶と、友人が受けた屈辱が描かれる。 監督の作劇の軸として、人間の加虐 / 被虐の残酷さとの向き合いがあるのだろうと感じられる。 物語自体には大きなツイストは見つけられないものの、今作の画づくりには独特なアートディレクションのセンスで惹きつける力を感じる。 スタッフロール後の幻想的なラストシーンも美しい。 ただ、近未来SFな世界観からは物語との実質的な関連や必然性を見つけられず、その描かれ方もやや凡庸で、ちぐはぐな印象を覚えた。 https://filmarks.com/movies/86342/reviews/208222344
Nov 30, 2025


ロスト・バス | The Lost Bus (2025)
3.9/5.0 2018年に米国で発生した史上最悪級の大規模山火事「キャンプファイア」に着想を得た、事実に基づくサバイバル映画。 リジー・ジョンソンの著書「Paradise: One Town's Struggle to Survive an American Wildfire」を原作として、「ボーン・アイデンティティ」シリーズや「ユナイテッド93」等でリアリティが高い作風に定評のあるポール・グリーングラスが脚本・監督を担う。 山火事を生き延びた実在のバス運転手をマシュー・マコノヒーが、教師をアメリカ・フェレーラが演じている。 カリフォルニア州の小さな街で発生した山火事が、強風と乾燥で瞬く間に街を飲み込み、住民たちは混乱に陥る。 経済面や家族との関係においてどん底にいたスクールバス運転手の主人公は、臨時運転手依頼を受けて小学生たち22名と教師1名を乗せ避難を開始するが、街から脱出するための経路は炎と煙で閉ざされ、外部との通信手段も絶たれ、主人公たちは炎が取り囲む状況に閉じ込められてしまう。 さすがポール・グリーングラスの演出力というべきか、まるで
Nov 30, 2025


マニブスの種 | manibus seeds (2021)
2.1/5.0 俳優 兼 映画監督の芦原健介による短篇で、新型コロナ禍にあった2021年に製作された作品。 工場で働き質素に暮らす主人公のもとに届いた差出人不明の封筒には、謎の植物の種が入っていて… という導入。 あえてジャンルを定義すればSFホラーということになるのかなと思うが、結末には少し意外性があり、面白かった。 新型コロナ禍という、人類史上体験したことのない規模の環境激変によって起きたコミュニケーションのあり方の変化が、脚本に反映されているように感じる。 ただ、おそらく限定された予算でたくさん工夫して製作されたものであろうと想像はしつつも、種が成長して出現する生物のチープさにはうーんと感じてしまった。VFXがどうこうではなく、単純に演技づけに問題があるような… 主人公を演じる菅野貴夫は寡黙な役を好演していると感じたし、その職場の同僚の女性を演じる小島彩乃の存在感も良かった。 が、俳優達の表情の変化や身体演技で十分に表現 (意図伝達) できるだろうと思える些細な内容まで、その全てを台詞にして喋らせてしまう演出は、やはり気になってしまった。.
Nov 30, 2025




























