

ハウス・オブ・ダイナマイト | A House of Dynamite (2025)
4.2/5.0 「ハート・ロッカー」「ゼロ・ダーク・サーティ」等、戦争を題材にした超重量級の作風で有名なキャスリン・ビグローが監督を手掛けた政治スリラー映画。 レベッカ・ファーガソン、ジャレッド・ハリス、イドリス・エルバ他の一流俳優達が出演している。 発射元が不明な大陸間弾道ミサイルが米国本土へ向けて放たれ、それが到達するまでの十数分に米国政府や米軍がどのようにその事態と向き合い対処していくかが、群像劇で描かれる。 フィクションでありながら、まるで鑑賞者もその状況下に巻き込まれているような緊迫感を生み出す撮影・劇伴・編集の全てが凄まじい。 絶望の状況に置かれた時、それぞれの関係者が何を選択し行動するのか、あるいはしないのかが重く描かれていくが、この作品が特徴的なのは、中心的に描かれる人物を変えながら、ミサイルが発射されてから米国へ到達する瞬間までの十数分が3回に渡って繰り返されるところ。 ひとつの事実に対し語る人物 (主観) を変えて物語を複層的に描き、それによって逆に真相が見えにくくなる作劇手法は、黒澤明監督の「羅生門 (1950)」から羅生門
1 日前


ミーガン 2.0 | M3GAN 2.0 (2025)
3.1/5.0 AIを搭載したハイテク人形のミーガンの暴走描写が話題になった1作目の高評価を受けて製作されたSF映画の続篇で、1作目で監督を担ったジェラルド・ジョンストンが監督・脚本を続投している。 製作会社も前作に引き続き、予算は抑えながらもクリエイターに創造の自由 (裁量) を大きく与えるスタイルで話題作を次々と送り出しているブラムハウス・プロダクション。 前作にて暴走の末に破壊されたAI人形ミーガンのアルゴリズムを秘密裏に転用して開発された軍用アンドロイドが、そのシミュレーション中に暴走し人々を殺害する。 ミーガンの開発者だった主人公とその姪も否応なくそのアンドロイドが引き起こす混乱に巻き込まれていくが、ミーガンがネットワーク上で生存していたことが分かる、という導入。 人型の殺人マシンが人間を襲うというプロットの傑作映画といえば「ターミネーター (1984)」および「ターミネーター2 (1991)」だが、今作は明らかに (確信犯的に) その設定を参照していることが分かる。 1作目では主人公を殺そうと襲ってきたキャラクターが2作目では頼もしい
2 日前


罪人たち | Sinners (2025)
4.2/5.0 「クリード チャンプを継ぐ男」や「ブラックパンサー」シリーズの脚本・監督を手掛けたライアン・クーグラーによるホラー映画で、同監督作の多数で主演もしくは重要な役柄で出演してきたマイケル・B・ジョーダンが今作でも1人2役で主演している。 1930年代のアメリカを舞台に、単なるホラーとしてではなく、人種差別や黒人文化についてのテーマが組み込まれた物語になっていて、さすがはライアン・クーグラーと感じる。 マイケル・B・ジョーダンが演じる双子の兄弟はギャングとして生きてきたが、故郷のミシシッピに戻り、黒人たちが自由に集えるダンスホールを立ち上げる。 当時の米国は禁酒法と白人至上主義によって黒人の娯楽が著しく制限されており、黒人達は宗教と音楽、特にブルースとゴスペルによって自己を支えてきたという実際の歴史的背景が重い。 黒人のために作られたそのダンスホールに白人の音楽家がの一団が現れるが… というところから、映画のジャンルが複雑に転回していく。 表層的にこの作品を見れば吸血鬼が登場するホラー映画ということになるが、今作での設定やモチーフはあく
2 日前


ファイナル・デッドブラッド | Final Destination: Bloodlines (2025)
3.8/5.0 惨劇を予見して回避した主人公やその周辺人物達がその後も見えない死神に命を付け狙われるという「ファイナル・デスティネーション」シリーズの6作目で、今作が初メジャー作品の監督となるアダム・スタインとザック・リポフスキーが手掛けたホラー映画。 基本的な物語の導入は前述の通りで、氏の描かれ方もこれまでのシリーズの「ピタゴラスイッチ」的な仕掛けを踏襲していて怖いが、今作が過去作と明らかに違っていて面白いと感じたのは、ただこれまでの基本設定だけを踏襲したマンネリな続篇としてではなく、過去作で起きた全ての惨劇に理由と起源があり、それらが俯瞰的につながる巧妙な脚本になっていたところ。 もちろんそれは後付けの設定ではあるが、ただ人間が死神に追われて大変な目に遭うというパニック映画を越えた物語の語られ方になっていたところには感心した。 とはいえ、恐怖と笑いは紙一重であるとはよく言われるが、今作でも思わず笑ってしまいそうになるほどの趣向を凝らした仕掛けの連鎖とグロテスクさで死が描かれるので、痛い描写が苦手な人には鑑賞をおすすめできない。...
2 日前


マキシーン | MaXXXine (2024)
3.4/5.0 ホラー作品を多く手掛けてきたタイ・ウェストが脚本・監督を担う「X3部作」の完結篇で、1作目の「X (2022)」と2作目の「Pearl (2022)」に続き、新世代の俳優達の中でも個性がひときわ輝くミア・ゴスが主演するホラー映画。 シリーズ3作目となる今作の主人公は、「X (2022)」の主人公でもあったマキシーン。 ポルノビデオへの出演で人気を得ながらもハリウッドで真のスター俳優になることを夢見る主人公が、新作ホラー映画のオーディションに挑み、見事主演の座を勝ち取る。 一方で、ハリウッドでは連続殺人鬼「ナイト・ストーカー」による凶悪な事件が続発しており、主人公の周辺でも俳優達が次々と殺害されていく。 やがて主人公の前に、彼女が経験した惨劇を知る者が現れる。 ここ10年ほどずっと繰り返されているような印象もある、映画やドラマにおける80年代カルチャーの再現は、特に目新しい部分はない。 が、タイ・ウェストによる演出は丁寧かつ安定的で、物語の世界観構築が上手だなと感じる。 なんといっても主人公役を担っているミア・ゴスの強烈な存在感やカ
2 日前


ジェン・ブイ シーズン2 | Gen V Season 2 (2025)
4.1/5.0 エリック・クリプキが企画・製作総指揮を担うSFドラマ「ザ・ボーイズ」のスピンオフシリーズのシーズン2。 「ザ・ボーイズ」の世界設定や登場人物を共有しながら、こちらのドラマではスーパーヒーローを養成するための学校を舞台に物語が展開される。 「ザ・ボーイズ」のコミック原作やドラマシリーズの世界は、マーベルやDCの映画シリーズのように超人達が存在しながらも、それらの大半の本質がヒーローではなくヴィランであるという大きな特徴がある。 堕落と腐敗、あるいは狂気に塗れた世界の描写は凄まじくも、ただ悪趣味にふざけるだけではなくその描写自体が米国の現状の強烈な風刺になっているところがとても面白いのだけれど、今作は主な舞台を学校に限定しながら脚本が構成されていることもあり、ややスケール感がこじんまりしている。 ただ、主人公とその仲間や周辺人物達それぞれに丁寧な背景設定や苦悩が用意されていて、若者達の成長ストーリーとしてきちんと成立しているところに脚本の巧みさを感じる。 また、それぞれ個性的な超人的能力 (超能力) が発揮されるシーンはダイナミックで
2 日前


マーベル・ゾンビーズ | Marvel Zombies (2025)
2.8/5.0 マーベル・シネマティック・ユニバース (MCU) に属するアニメーションで、「ホワット・イフ…?」シリーズの監督・製作総指揮を担ったブライアン・アンドリュースが今作でも監督を担っている。 脚本は「デッドプール&ウルヴァリン」の脚本も手掛けたゼブ・ウェルズ。...
10月11日


エイリアン: アース | Alien: Earth (2025)
3.6/5.0 「SHOGUN 将軍」の製作で一躍注目を集めたFXが製作した「エイリアン」シリーズ初のドラマで、タイトルの通り地球を舞台に「エイリアン」の物語が展開するSFホラー。 「ファーゴ」や「レギオン」の原案と脚本で高い評価を得たノア・ホーリーがショウランナーを担い、...
10月11日


ピースメイカー シーズン2 | Peacemaker Season2 (2025)
3.4/5.0 これまでのDC映画に登場し人気を博したキャラクターの、ジョン・シナが演じる「ピースメイカー」を主人公に、DCEU (DCエクステンデッドユニバース) のシリーズとして製作されたシーズン1から新生DCU (DCユニバース)...
10月11日


野生の島のロズ | The Wild Robot (2024)
3.9/5.0 「ヒックとドラゴン」や「シュレック」シリーズを製作してきたドリームワークス・アニメーションが手掛けるSFアニメーション映画で、ピーター・ブラウンによる児童文学「野生のロボット (The Wild Robot)」を原作としている。...
9月14日


デッドリー・ハンティング | Prey (2021)
2.9/5.0 ドイツ製作のNETFLIX映画で、90分弱でコンパクトにまとまった、大自然を舞台に展開するサスペンス。 ドイツ出身のトーマス・ジーベンが脚本・監督を担っている。 恋人との結婚を控えた主人公とその兄や友人達が、バチェラー・パーティ...
9月14日


トワイライト・ウォリアーズ 決戦!九龍城砦 | Twilight of the Warriors: Walled In (2024)
4.0/5.0 かつて香港に実在した巨大なスラム街「九龍城砦 (九龍城寨)」を舞台とするアクション映画で、香港映画史上最大の観客動員数を記録した大作。 余兒 (Yuyi) による小説「九龍城寨」を原作に、香港映画界で高い評価を得ているソイ・チェンが監督を担っている。...
9月6日


アリータ: バトル・エンジェル | Alita: Battle Angel (2018)
3.8/5.0 木城ゆきとによるSF漫画「銃夢」を原作とするサイバーパンクアクション映画で、巨匠ジェームズ・キャメロンが脚本・製作を、「フロム・ダスク・ティル・ドーン」「シン・シティ」「グラインドハウス」等のアグレッシブなアクション演出で評価が高いロバート・ロドリゲスが監督...
9月1日


アイズ・オブ・ワカンダ | Eyes of Wakanda (2025)
3.6/5.0 マーベル・シネマティック・ユニバース (MCU) に属するアニメーションで、「ブラックパンサー」を中心に描かれた国家ワカンダの歴史が、全4話を通じて紐解かれていく構成。 各話ごとに全く違った時代と場所で、ワカンダの戦士たちが暗躍する物語が描かれる。...
9月1日


84m² (2025)
3.9/5.0 韓国製作のNETFLIXオリジナル映画で、「スマホを落としただけなのに」の韓国版リメイクを監督したキム・テジュンが脚本・監督を担っている。 韓国都市部の不動産事情や都市生活者のストレスを題材にした、いかにも韓国映画らしい心理サスペンス。...
9月1日



























