

タイムマシン | Time Machine (2019)
3.2/5.0 映像作家の袴田くるみによる、SFアニメーション短篇。 過去の出来事と自身の振る舞いを悔いて生きる男と、彼が大切に思っていた者たちを巡る物語。 性暴力を受けた主人公の友人がとった悲劇的な行動を止めるために、タイムマシンを開発して時を遡りたいと願う男。 苦く忘れがたい過去の記憶と、友人が受けた屈辱が描かれる。 監督の作劇の軸として、人間の加虐 / 被虐の残酷さとの向き合いがあるのだろうと感じられる。 物語自体には大きなツイストは見つけられないものの、今作の画づくりには独特なアートディレクションのセンスで惹きつける力を感じる。 スタッフロール後の幻想的なラストシーンも美しい。 ただ、近未来SFな世界観からは物語との実質的な関連や必然性を見つけられず、その描かれ方もやや凡庸で、ちぐはぐな印象を覚えた。 https://filmarks.com/movies/86342/reviews/208222344
11月30日


回路 | Pulse (2000)
4.3/5.0 「CURE」「クリーピー 偽りの隣人」等、ホラーやサスペンスジャンルで話題作を製作し続ける黒沢清が脚本・監督を手掛けたホラー映画で、カンヌ国際映画祭に出品され、国際映画批評家連盟賞を受賞、米国ではリメイクもされている作品。 主演の麻生久美子をはじめ、加藤晴彦、小雪、有坂来瞳といった (製作当時の) 若手俳優達が出演している。 観葉植物を販売する会社で働く主人公の同僚が不可解な自殺を遂げてから、その周辺では人々が黒い影を残して消え去るという怪現象が発生するようになる。 一方、加藤晴彦が演じる大学生は「幽霊に会いたいですか」と表示されるウェブサイトに遭遇し、PCの操作に詳しい友人を頼りながらその調査を進めるが、次第にその友人も異常な行動を取るようになっていく。 世界ではどんな異変が起きているのか、なぜそれが起き始めたのか、「幽霊」とは何なのか… 黒沢清監督の恐怖演出は、安直なジャンプスケア等に頼らず、俳優の身体演技、そして画の構図と明暗および音という、極めてオーセンティックな要素で構成されていて、他の映画監督とは一線を画するものを感じ
11月16日


ミーガン 2.0 | M3GAN 2.0 (2025)
3.1/5.0 AIを搭載したハイテク人形のミーガンの暴走描写が話題になった1作目の高評価を受けて製作されたSF映画の続篇で、1作目で監督を担ったジェラルド・ジョンストンが監督・脚本を続投している。 製作会社も前作に引き続き、予算は抑えながらもクリエイターに創造の自由 (裁量) を大きく与えるスタイルで話題作を次々と送り出しているブラムハウス・プロダクション。 前作にて暴走の末に破壊されたAI人形ミーガンのアルゴリズムを秘密裏に転用して開発された軍用アンドロイドが、そのシミュレーション中に暴走し人々を殺害する。 ミーガンの開発者だった主人公とその姪も否応なくそのアンドロイドが引き起こす混乱に巻き込まれていくが、ミーガンがネットワーク上で生存していたことが分かる、という導入。 人型の殺人マシンが人間を襲うというプロットの傑作映画といえば「ターミネーター (1984)」および「ターミネーター2 (1991)」だが、今作は明らかに (確信犯的に) その設定を参照していることが分かる。 1作目では主人公を殺そうと襲ってきたキャラクターが2作目では頼もしい
10月25日


罪人たち | Sinners (2025)
4.2/5.0 「クリード チャンプを継ぐ男」や「ブラックパンサー」シリーズの脚本・監督を手掛けたライアン・クーグラーによるホラー映画で、同監督作の多数で主演もしくは重要な役柄で出演してきたマイケル・B・ジョーダンが今作でも1人2役で主演している。 1930年代のアメリカを舞台に、単なるホラーとしてではなく、人種差別や黒人文化についてのテーマが組み込まれた物語になっていて、さすがはライアン・クーグラーと感じる。 マイケル・B・ジョーダンが演じる双子の兄弟はギャングとして生きてきたが、故郷のミシシッピに戻り、黒人たちが自由に集えるダンスホールを立ち上げる。 当時の米国は禁酒法と白人至上主義によって黒人の娯楽が著しく制限されており、黒人達は宗教と音楽、特にブルースとゴスペルによって自己を支えてきたという実際の歴史的背景が重い。 黒人のために作られたそのダンスホールに白人の音楽家の一団が現れるが… というところから、映画のジャンルが複雑に転回していく。 表層的にこの作品を見れば吸血鬼が登場するホラー映画ということになるが、今作の設定やモチーフはあくまで
10月25日


ファイナル・デッドブラッド | Final Destination: Bloodlines (2025)
3.8/5.0 惨劇を予見して回避した主人公やその周辺人物達がその後も見えない死神に命を付け狙われるという「ファイナル・デスティネーション」シリーズの6作目で、今作が初メジャー作品の監督となるアダム・スタインとザック・リポフスキーが手掛けたホラー映画。 基本的な物語の導入は前述の通りで、氏の描かれ方もこれまでのシリーズの「ピタゴラスイッチ」的な仕掛けを踏襲していて怖いが、今作が過去作と明らかに違っていて面白いと感じたのは、ただこれまでの基本設定だけを踏襲したマンネリな続篇としてではなく、過去作で起きた全ての惨劇に理由と起源があり、それらが俯瞰的につながる巧妙な脚本になっていたところ。 もちろんそれは後付けの設定ではあるが、ただ人間が死神に追われて大変な目に遭うというパニック映画を越えた物語の語られ方になっていたところには感心した。 とはいえ、恐怖と笑いは紙一重であるとはよく言われるが、今作でも思わず笑ってしまいそうになるほどの趣向を凝らした仕掛けの連鎖とグロテスクさで死が描かれるので、痛い描写が苦手な人には鑑賞をおすすめできない。...
10月25日


マキシーン | MaXXXine (2024)
3.4/5.0 ホラー作品を多く手掛けてきたタイ・ウェストが脚本・監督を担う「X3部作」の完結篇で、1作目の「X (2022)」と2作目の「Pearl (2022)」に続き、新世代の俳優達の中でも個性がひときわ輝くミア・ゴスが主演するホラー映画。 シリーズ3作目となる今作の主人公は、「X (2022)」の主人公でもあったマキシーン。 ポルノビデオへの出演で人気を得ながらもハリウッドで真のスター俳優になることを夢見る主人公が、新作ホラー映画のオーディションに挑み、見事主演の座を勝ち取る。 一方で、ハリウッドでは連続殺人鬼「ナイト・ストーカー」による凶悪な事件が続発しており、主人公の周辺でも俳優達が次々と殺害されていく。 やがて主人公の前に、彼女が経験した惨劇を知る者が現れる。 ここ10年ほどずっと繰り返されているような印象もある、映画やドラマにおける80年代カルチャーの再現は、特に目新しい部分はない。 が、タイ・ウェストによる演出は丁寧かつ安定的で、物語の世界観構築が上手だなと感じる。 なんといっても主人公役を担っているミア・ゴスの強烈な存在感やカ
10月25日


ジェン・ブイ シーズン2 | Gen V Season 2 (2025)
4.1/5.0 エリック・クリプキが企画・製作総指揮を担うSFドラマ「ザ・ボーイズ」のスピンオフシリーズのシーズン2。 「ザ・ボーイズ」の世界設定や登場人物を共有しながら、こちらのドラマではスーパーヒーローを養成するための学校を舞台に物語が展開される。 「ザ・ボーイズ」のコミック原作やドラマシリーズの世界は、マーベルやDCの映画シリーズのように超人達が存在しながらも、それらの大半の本質がヒーローではなくヴィランであるという大きな特徴がある。 堕落と腐敗、あるいは狂気に塗れた世界の描写は凄まじくも、ただ悪趣味にふざけるだけではなくその描写自体が米国の現状の強烈な風刺になっているところがとても面白いのだけれど、今作は主な舞台を学校に限定しながら脚本が構成されていることもあり、ややスケール感がこじんまりしている。 ただ、主人公とその仲間や周辺人物達それぞれに丁寧な背景設定や苦悩が用意されていて、若者達の成長ストーリーとしてきちんと成立しているところに脚本の巧みさを感じる。 また、それぞれ個性的な超人的能力 (超能力) が発揮されるシーンはダイナミックで
10月25日


マーベル・ゾンビーズ | Marvel Zombies (2025)
2.8/5.0 マーベル・シネマティック・ユニバース (MCU) に属するアニメーションで、「ホワット・イフ…?」シリーズの監督・製作総指揮を担ったブライアン・アンドリュースが今作でも監督を担っている。 脚本は「デッドプール&ウルヴァリン」の脚本も手掛けたゼブ・ウェルズ。...
10月11日


エイリアン: アース | Alien: Earth (2025)
3.6/5.0 「SHOGUN 将軍」の製作で一躍注目を集めたFXが製作した「エイリアン」シリーズ初のドラマで、タイトルの通り地球を舞台に「エイリアン」の物語が展開するSFホラー。 「ファーゴ」や「レギオン」の原案と脚本で高い評価を得たノア・ホーリーがショウランナーを担い、...
10月11日


ピースメイカー シーズン2 | Peacemaker Season2 (2025)
3.4/5.0 これまでのDC映画に登場し人気を博したキャラクターの、ジョン・シナが演じる「ピースメイカー」を主人公に、DCEU (DCエクステンデッドユニバース) のシリーズとして製作されたシーズン1から新生DCU (DCユニバース)...
10月11日


アリータ: バトル・エンジェル | Alita: Battle Angel (2018)
3.8/5.0 木城ゆきとによるSF漫画「銃夢」を原作とするサイバーパンクアクション映画で、巨匠ジェームズ・キャメロンが脚本・製作を、「フロム・ダスク・ティル・ドーン」「シン・シティ」「グラインドハウス」等のアグレッシブなアクション演出で評価が高いロバート・ロドリゲスが監督...
9月1日


84m² (2025)
3.9/5.0 韓国製作のNETFLIXオリジナル映画で、「スマホを落としただけなのに」の韓国版リメイクを監督したキム・テジュンが脚本・監督を担っている。 韓国都市部の不動産事情や都市生活者のストレスを題材にした、いかにも韓国映画らしい心理サスペンス。...
9月1日


アマチュア | The Amateur (2025)
3.4/5.0 ロバート・リテルによる同題小説を原作とするサスペンス映画で、ドラマ版「スノーピアサー」の監督や製作総指揮を担ったジェームズ・ホーズが監督を担っている。 主演は「ボヘミアン・ラプソディ」でフレディ・マーキュリー役を演じ高い評価を得たラミ・マレック、その妻役を「...
9月1日


ロングレッグス | Longlegs (2024)
3.8/5.0 ホラー映画界の新鋭とも評されるオズグッド (オズ)・パーキンスが脚本・監督を担い、米国にて記録的なヒットとなったホラー映画。 「神は銃弾」等に出演し、スポーツ選手としても活躍するマイカ・モンローが主人公のFBI捜査官を、名優であり怪優であるといってもいいであ...
9月1日


28年後... | 28 Years Later (2025)
3.8/5.0 ダニー・ボイル監督 x アレックス・ガーランド脚本による英国発のSFホラー「28日後…」シリーズの3作目で、ジャンルとしてはいわゆるゾンビものといえる映画作品。 タイトル通り、1作目の物語から28年後の物語が描かれる。...
8月17日



























