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Cinema Review

ハウス・オブ・ダイナマイト | A House of Dynamite (2025)

  • 執筆者の写真: Shoji Taniguchi
    Shoji Taniguchi
  • 10月26日
  • 読了時間: 2分

4.2/5.0

「ハート・ロッカー」「ゼロ・ダーク・サーティ」等、戦争を題材にした超重量級の作風で有名なキャスリン・ビグローが監督を手掛けた政治スリラー映画。

レベッカ・ファーガソン、ジャレッド・ハリス、イドリス・エルバ他の一流俳優達が出演している。


発射元が不明な大陸間弾道ミサイルが米国本土へ向けて放たれ、それが到達するまでの十数分に米国政府や米軍がどのようにその事態と向き合い対処していくかが、群像劇で描かれる。

フィクションでありながら、まるで鑑賞者もその状況下に巻き込まれているような緊迫感を生み出す撮影・劇伴・編集の全てが凄まじい。

絶望の状況に置かれた時、それぞれの関係者が何を選択し行動するのか、あるいはしないのかが重く描かれていくが、この作品が特徴的なのは、中心的に描かれる人物を変えながら、ミサイルが発射されてから米国へ到達する瞬間までの十数分が3回に渡って繰り返されるところ。

ひとつの事実に対し語る人物 (主観) を変えて物語を複層的に描き、それによって逆に真相が見えにくくなる作劇手法は、黒澤明監督の「羅生門 (1950)」から羅生門スタイルとも呼ばれるが、今作では焦点が当たる人物が移り変わりながら、ミサイルが米国に到達するという非情な事実だけが覆らない。

誰にとっても避けがたい悲劇を描くにあたり、それらを感傷的に描くのではなく、あくまでもドキュメンタリのような一定の距離感で描くというハードな演出が、キャスリン・ビグローの監督作品ならでは。


この映画は、ミサイルによって甚大な被害を受けると知った米国がどのような行動を取るのかについて描いたり、勧善懲悪的にやられたらやり返すといった行為を描くといった戦争アクションでは全くなく、米国をはじめとする人々が「爆弾が詰まった家」に住んでいるということをただ鑑賞者に強烈に思い出させ、その爆弾が炸裂したらどうなるのかを否応なく想像させる装置として製作されている。

核兵器と隣合わせな現代社会の黙示録として、より多くの人が鑑賞するべき映画だと感じる。

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Shoji Taniguchi | 谷口 昇司

Creative Director

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美術大学にて映像を中心に学び

現在はマーケティング業界で働き中

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