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Cinema Review

ロスト・バス | The Lost Bus (2025)

  • 執筆者の写真: Shoji Taniguchi
    Shoji Taniguchi
  • 1 日前
  • 読了時間: 3分

3.9/5.0

2018年に米国で発生した史上最悪級の大規模山火事「キャンプファイア」に着想を得た、事実に基づくサバイバル映画。

リジー・ジョンソンの著書「Paradise: One Town's Struggle to Survive an American Wildfire」を原作として、「ボーン・アイデンティティ」シリーズや「ユナイテッド93」等でリアリティが高い作風に定評のあるポール・グリーングラスが脚本・監督を担う。

山火事を生き延びた実在のバス運転手をマシュー・マコノヒーが、教師をアメリカ・フェレーラが演じている。


カリフォルニア州の小さな街で発生した山火事が、強風と乾燥で瞬く間に街を飲み込み、住民たちは混乱に陥る。

経済面や家族との関係においてどん底にいたスクールバス運転手の主人公は、臨時運転手依頼を受けて小学生たち22名と教師1名を乗せ避難を開始するが、街から脱出するための経路は炎と煙で閉ざされ、外部との通信手段も絶たれ、主人公たちは炎が取り囲む状況に閉じ込められてしまう。


さすがポール・グリーングラスの演出力というべきか、まるで自分もその危機的状況に放り込まれたと錯覚してしまうような没入感があり、ハラハラしながら鑑賞してしまう。

事実を扱うドキュメンタリー番組の製作に携わってきたキャリアを持つ監督の文脈の力が、今作においても存分に発揮されていると感じる。

VFXも効果的に使用されていながら、撮影時間帯をマジックアワーのみに限定したり、バス車内のライティングもリアリティを重視し設置せずに撮影するといった随所でのプロフェッショナルなこだわりが、映像のリアリティを飛躍的に高めている。


配役についても同様で、実際の山火事発生時に消防活動の責任者だった人物やその同僚といった人々を本人役として出演させることが、リアリティの向上に寄与している。

主人公役を担ったマシュー・マコノヒーの「落ちぶれてしまった人間」を演じる俳優力も素晴らしく、映画が始まってしばらくの間は、無名だが相当に演技力のある俳優が主人公を演じているのだと勘違いしてしまったほど。

八方塞がりな状況にある主人公が究極の選択を迫られるシーンは、自分のことのように身につまされたし、その選択の結果と行動には感動させられてしまった。

浮世離れしたスマートでスーパーヒーローだけが世界を救うのではなく、現実世界のヒーローは私たちと同じような悩みと苦しみを抱えながら生きる小さな人間だったのだ。


映画的脚色はありながらも事実に基づいた脚本構成のため、前半部分の物語展開が少しゆっくりめに感じるが、映画全体で俯瞰すると、その前半も必要不可欠だったと感じる。

実際の山火事の当事国である米国以外においてはどれほどの興味喚起力がある作品かは分からないが、映画作品としての完成度はとても高い秀作。

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Shoji Taniguchi | 谷口 昇司

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美術大学にて映像を中心に学び

現在はマーケティング業界で働き中

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