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Cinema Review

映画コラム: One is glad to be of service


Bicentennial Man

「アンドリューNDR114」というSF映画が大好きだ。

原題は「Bicentennial Man (二百歳の男)」で、

原作小説はSFの巨人、アイザック・アシモフ。


(これ以降に映画と小説のネタバレがあるのでご注意ください)


人間に奉仕するために生まれた (製造された) アンドロイドが、

少しずつ個性とものづくりの才能を発揮しはじめて、人間として生きることに憧れ、

努力し続ける話だ。


主人公の「アンドリュー」ことNDR114を演じるのは、ロビン・ウィリアムズ。

すっとぼけた顔でドジも踏みまくるこのアンドロイドの、仕事の後の決まり文句は、

「お役に立てれば幸いです (One is glad to be of service)」


いつもの過剰に陽気なコメディアンの演技はずいぶん抑えられていて、

(ステレオタイプなアンドロイドなので激しく動くのも無理だし) でもやっぱり

ロビン・ウィリアムズにしか表現できないお茶目さが演技のそこかしこに溢れている。


彼が主演した数々の映画の中では、この作品はとてもマイナーな方だけれど、

私にとっての最高のロビン・ウィリアムズは、この映画の彼だ。


人間として認められることを目標に、

見た目も心も少しずつ人間に (生身のロビン・ウィリアムズに)

近づいていくアンドリューのひたむきな姿に、しんみりとした感動を覚える。


人間として生きることとは、仕えた家族の皆がそうだったように

歳を重ね老いて死ぬことでもあると考えたアンドリューは、

アップデートさせ続けた自分の身体に「老衰」の機能まで取り入れて、

自身を人間と認めてくれるよう、人類に訴える。


そうやって努力し続けた彼が、最期に自分の「人生」を振り返り、

精一杯生きた日々に満足して死 (機能停止) を受け入れようとする時、

人類は彼を人間として認めることが世界に発表される、という物語だ。


ロビン・ウィリアムズはそのコメディアンとしての卓越した才能で、

世界中の人々に笑顔をもたらしてくれた。

ただその一方で、アルコール依存症を患って心を病んだり、

すごく真面目に慈善団体の支援に力を注いでいたりもした。


悲しいこと辛いことをたくさん経験しているからこそ、

笑うこと、笑えることの大切さも身に染みて分かっていたのではないか。

そして幸せな日々への憧れも強かったのではないだろうか。


彼のむちゃくちゃに笑える演技をもう観られないのは寂しい。

そして彼がアンドリューと同じように安らかな最期を迎えられなかったことが、

とても悲しい。


でもきっと彼はアンドリューと同じく、

人間として立派に生きることを必死に考え続けながら、

精一杯、全力で彼の生涯を生き抜いたのだろう。

それは間違いなく素晴らしい人生だったのだろう。

本当に人間らしい、光と影のある人生を送ったのだろう。


不完全ではあってもよく生きようと努力し続けること、

むしろその不完全なところにこそ人間の価値があるのだと

この映画から教わったように思う。


彼が遺してくれた映画の中で彼はずっと生き続け、

これからもずっと、これから生まれる人たちも含めて、

たくさんの人々の心の支えとなっていくだろう。


「お役に立てれば幸いです」


幸せにしていただいたのは私の方です。



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Shoji Taniguchi | 谷口 昇司

Creative Director

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美術大学にて映像を中心に学び

現在はマーケティング業界で働き中

映画やドラマを観ている時間が幸せ

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