28年後... | 28 Years Later (2025)
- Shoji Taniguchi
- 6 日前
- 読了時間: 3分
3.8/5.0
ダニー・ボイル監督 x アレックス・ガーランド脚本による英国発のSFホラー「28日後…」シリーズの3作目で、ジャンルとしてはいわゆるゾンビものといえる映画作品。
タイトル通り、1作目の物語から28年後の物語が描かれる。
主人公の少年をアルフィー・ウィリアムズが、その父と母を英国出身のアーロン・テイラー=ジョンソンとジョディ・カマーが演じている。
生物を凶暴化するウイルスがチンパンジーから人類へ感染拡大し、文明が崩壊した未来。
ヨーロッパ大陸は感染者達を撃退し、英国本土に封じ込めることに成功したが、その結果英国は世界から孤立した。
感染から逃れた少数の英国の生存者達は孤島に身を潜め、その本土からも物理的に隔絶された小さな島の共同体で生き延びている。
あるきっかけから、主人公の少年とその母は、島を脱出し本土へ向かう旅に出ることになる。
シリーズ1作目の「28日後…」や2作目の「28週後…」はまだ文明が残る世界での物語だったが、今作は28年後という設定ゆえに、感染拡大前の文明は僅かに残るのみとなっており、その退廃的な描かれ方が新鮮。
社会基盤やインフラが崩壊した世界で人類はどうやって生きていくのか? という、SF視点でのセンス・オブ・ワンダーを感じられる。
主人公やその父が扱う武器が、銃などの近代的なものではなく弓矢であるという設定も面白い。
優れたゾンビ映画は単純なホラー映画のジャンルを越えて社会風刺/批評のテーマを含むといわれるが、今作もその系譜に属する脚本になっており、アレックス・ガーランドのストーリーテラーとしての才能を感じられた。
人間の心の拠り所となる信仰のあり方、終わりと始まりをそれぞれ迎える生命の価値、人間が人間らしく生きるとはどういうことか、といった重いテーマが、思考と解釈の余地を残す絶妙なバランスで提示されている。
ダニー・ボイルによる高い演出センスは全篇に冴え渡っているが、ゾンビが弓矢で射られる際に一瞬時間が止まりアングルが急転回する演出が何度か繰り返されるところは、他のシーケンスやアクションの描き方からやや浮いており、それほど画期的に新鮮な演出ともいえず、ん? と感じてしまった。
1作目と2作目は単作品として公開されたが、この3作目は3部作として企画されているとのことで、第1部となる今作だけでは物語が完結せず、今回提示された物語要素の多くの部分が次回作以降に持ち越されている。
2作目が公開された2007年から今回の3作目まで18年もの間が空いているので、次回作がいつ公開されるのか正直不安…
今作は待望の続篇として期待していた通りの面白さがあったが、終盤でのクリフハンガーやもやもやしたままの要素がたくさんあるので、早く次の物語が観られるといいなぁ…