マスターズ・オブ・ホラー | Nightmare Cinema (2018)
2.1/5.0
短篇×5話と、メタ的にそれらを鑑賞することになる人々を描くオムニバス形式のホラー映画で、同様形式の名作「トワイライトゾーン」やキャッチーなキャラクターで有名な「グレムリン」を手掛けたジョー・ダンテ監督が参加していると知って鑑賞した。
第1話 「The Thing in the Woods (森の中の物体X)」2.3 / 5.0
素顔が見えない凶悪な人間から逃走あるいは抵抗する若者という設定。
「13日の金曜日」や「悪魔のいけにえ」シリーズが確立した型に全乗っかりしつつ、ノリが軽いので笑っていいのか怖がっていいのか分からずやや困惑する。
タイトルからも明らかなように、「The Thing (遊星からの物体X)」へのオマージュであることが終盤で見えてくる。
オマージュというよりは、パロディに近いなと感じる軽さではあるけれど。
物語のツイストと終劇の結末感は、あるにはある。
第2話「Mirari (ミラリ)」1.8 / 5.0
結婚を間近に控えた女性が、あるきっかけから美容整形を受けることになるが… という設定。
こうなるのかなと想像した通りのことが起き、それ以外のことは起きず、間延びして退屈な演出もあってやや残念。
アナログな特殊メイクの造形に注力したことが分かるけれど、30年ぐらい前のある映画で出てきたネタと完全に重複していて (これもオマージュなのかも知れないが…) 懐かしくはあったが驚くことはできなかった。
社会や流行の風刺としても、中途半端で浅い印象。
第3話「Mashit (マシット)」1.0 / 5.0
神学校の神父・シスター・生徒たちが悪魔憑きに立ち向かうが… という設定。
それほどよくできているとは思えない他4話と比較してもダントツで完成度が低く、章立てで横並びにすると、監督の才能の差がこんなに残酷に顕在してしまうものなのかと、その点がむしろホラーに感じられてしまった。
狙いが見えない安直なアングル、やっつけで編集したとしか思えないグリーンバック合成、目的が不明瞭でただ冗長なカット、どう聴いてもギャグにしか聴こえないチープでロックな劇伴…
そもそもの話として、誰が悪魔に取り憑かれていて誰を救うべきなのかの画的な描き方がテキトー過ぎて、過激なだけのスプラッタ描写や思いつきで入れたようなエロシーンよりもそこをまずきちんと見せて欲しいと感じた。
脈絡なく出てきて本筋に全然関係しない「エクソシスト」や「オーメン」のパロディも、製作者達の「俺達分かってるだろ」感だけが上滑りしているように感じて、興ざめ…
第4話「This Way to Egress (出口はこちら)」3.5 / 5.0
病院の待合室で自身の診察を待つ女性だが、受付スタッフや世界そのものが怪異的に変貌しはじめ… という設定。
この4話めだけかなり固いトーンのモノクロになっており、色情報がない分だけ恐怖的想像の余地が感じられて面白かった。
超現実的で不条理な世界や、不気味な肉体的変貌の描写といったところに、デヴィッド・リンチ監督の長篇デビュー作「イレイザーヘッド」へのオマージュが大きくあるのかなと思う。
物語の明確な結末感を期待すると肩透かしになってしまうかも知れないが、強く印象に残る画づくりは鑑賞する価値があったと感じた。
第5話「Dead (死)」1.9 / 5.0
少年とその両親が、帰宅途中に暴漢に襲われ、少年だけがかろうじて生き延びるが、おかしなものが見えはじめ… という設定。
M・ナイト・シャマラン監督の「シックス・センス」にインスパイアされつつ、その設定でバイオレンスホラーをやってみようということなのかなと想像したが、主要人物達のキャラクター設定やバックグラウンドの描写が雑で、何故こういう話になるんだったっけと気になるタイミングが多くて物語に没入できず、うーん何だかなぁという読後感だけが残った。
オムニバス形式の映画やドラマはとても好きなので、鑑賞前の期待値が高かったこともあり、鑑賞後のガッカリ感が強かった。
無駄を省いたテンポよい演出が必要とされる短篇でありながら、劇中で何度も退屈に感じるという体験は、ある意味貴重ではあった。