

タイムマシン | Time Machine (2019)
3.2/5.0 映像作家の袴田くるみによる、SFアニメーション短篇。 過去の出来事と自身の振る舞いを悔いて生きる男と、彼が大切に思っていた者たちを巡る物語。 性暴力を受けた主人公の友人がとった悲劇的な行動を止めるために、タイムマシンを開発して時を遡りたいと願う男。 苦く忘れがたい過去の記憶と、友人が受けた屈辱が描かれる。 監督の作劇の軸として、人間の加虐 / 被虐の残酷さとの向き合いがあるのだろうと感じられる。 物語自体には大きなツイストは見つけられないものの、今作の画づくりには独特なアートディレクションのセンスで惹きつける力を感じる。 スタッフロール後の幻想的なラストシーンも美しい。 ただ、近未来SFな世界観からは物語との実質的な関連や必然性を見つけられず、その描かれ方もやや凡庸で、ちぐはぐな印象を覚えた。 https://filmarks.com/movies/86342/reviews/208222344
11月30日


マニブスの種 | manibus seeds (2021)
2.1/5.0 俳優 兼 映画監督の芦原健介による短篇で、新型コロナ禍にあった2021年に製作された作品。 工場で働き質素に暮らす主人公のもとに届いた差出人不明の封筒には、謎の植物の種が入っていて… という導入。 あえてジャンルを区別すればSFホラーということになるのかなと思うが、結末には少し意外性があり、面白かった。 コロナ禍という、人類史上体験したことのない規模の環境激変によって起きたコミュニケーションのあり方の変化が、脚本に反映されているように感じる。 ただ、おそらく限定された予算でたくさん工夫して製作されたものであろうと想像はしつつも、種が成長して出現する生物のチープさにはうーんと感じてしまった。VFXがどうこうではなくて、単純に演技づけに問題があるような… 主人公を演じる菅野貴夫は寡黙な主人公を好演していると感じたし、職場の同僚の女性を演じる小島彩乃の存在感も良かった。 が、俳優達の表情の変化や身体の演技で十分に表現できるだろうと思える些細な内容まで、全てを台詞にして喋らせてしまう演出は、とても気になってしまった。 芦原監督の演出力の不
11月30日


ジョディ | Jodie (2021)
2.4/5.0 映像作家の袴田くるみによる、SFアニメーション短篇。 所持者から虐待を受け続け、その度に修理されて所持者のもとへ戻される女性型ロボットと、その修理を行う女性の会話劇を中心に構成されている。 今ではSF映画の金字塔ともいわれる「ブレードランナー (1982)」で描かれていた、生命や個人のアイデンティティの構築または揺らぎといったテーマに、現代的なフェミニズムが重ねられたように見える脚本からは、作家としての軸があると感じる。 ただ、アニメーション作品としての演出全般は退屈で、アングルと構図の作り方、台詞と演技の間、人物達の細かい表情の変化といった部分でハッと驚かされるところが見つけられなかった。 人物達の奥に見えるレトロフューチャーな世界観はとても魅力的だったが、それが単なる書き割りになってしまっていて変化がなく、そこに奥行きが感じられなかったところも残念。 https://filmarks.com/movies/110272/reviews/208217710
11月30日


Crevice (2024)
3.0/5.0 2001年生まれの新世代映像作家、福嶋颯太による短篇アニメーション。 原住民の少女と文明社会から来た男の交流と、予期しない展開が描かれる。 未開文明と現代文明の接触、摩擦、そして迎える悲劇の結末というストーリー構成は、手塚治虫氏の短篇漫画作品にも同様構成のものが複数あり、普遍的なテーマ性を感じる。 今作のストーリーからはそれほど驚きがあるといえるところは見つけられないが、ただ美しいアニメーションを観て終わるだけではない展開は面白い。 人物や意匠の造形にも取り立てて個性的と感じるところはなかったけれど、彩色のセンスは独特で、高彩度・多色相の複数色がぶつかるカラーリングのコンビネーションは、なかなか他の作品で観られる種類のものではなく、作家の強い個性が確かに感じられた。 https://filmarks.com/movies/118000/reviews/207551182
11月16日


ANIMA (2019)
4.2/5.0 若くして「ブギーナイツ」や「マグノリア」等を手掛け、その後も芸術性の高い作品で高評価を獲得し続けているポール・トーマス・アンダーソン監督と、ロックバンドのレディオヘッドを率いるトム・ヨークが主演と音楽を担う形でコラボレーションして製作された、極めて詩的で実験的なミュージカル短篇。 地下鉄や都市を舞台に、夢と現実の狭間を彷徨う主人公が、電車内で偶然見かけた謎の女性に心を惹かれる。 女性が忘れていった鞄を追う主人公は、やがて超現実的な世界に迷いこんでいく。 明確なストーリーテリングがある映画というよりも、倦怠感に塗れ不安定な世界の描写と、そこに確からしきものを見出そうとするもどかしさのを追体験する映像作品と理解することが正しいように感じる。 完全に統率された集団演技と浮遊感あふれる音楽がシンクロしながら描かれるシーンの数々は、不気味ながらも美しく、素晴らしい完成度の芸術作品として仕上げられている。 観る人を確実に選ぶ種類の極めて先鋭的な作品ではあるものの、実験映像作品としては傑作と評価できるものだと感じる。 自分にとっては美術大学に在
11月16日


終末のイヴ | Eve at World’s End (2019)
1.0/5.0 特撮系のテレビ番組や映画で脚本・監督を担う中川和博によるショートフィルム。 中川氏はNETFLIX映画「新幹線大爆破 (2025)」の脚本も担当しているらしい。 人類史上初のタイムトラベルに成功した主人公がたどり着いた未来は荒廃していて…...
6月21日


ラブ、デス&ロボット シーズン4 | Love, Death & Robots Season 4 (2025)
3.8/5.0 エッジィな作風で知られる映画監督のティム・ミラーとデヴィッド・フィンチャーが製作総指揮として携わり、ミラーが設立したブラー・スタジオが製作する、NETFLIX配信のショートアニメーションシリーズ。 どの作品も数分から数十分程度の短篇ながら、それぞれに強烈な世...
5月24日


スター・ウォーズ: テイルズ・オブ・アンダーワールド | Star Wars: Tales of the Underworld (2025)
3.6/5.0 超有名SF「スター・ウォーズ」の短篇アニメーションシリーズ第3弾で、ジョージ・ルーカスの意思を最も忠実に受け継いだシリーズの後継者ともいわれるデイヴ・フィローニが企画・製作を担っている。 主人公はアサージ・ヴェントレスとキャド・ベインの2人で、いずれもデイヴ...
5月17日


火の鳥 羽衣編 | Phoenix: The Feathered Robe (2004)
1.2/5.0 手塚治虫による原作漫画をもとに、手塚プロダクションが製作した短篇アニメーション映画で、一般劇場公開はされていない希少な作品。 原作となる短篇漫画の、舞台で演じられる芝居を客席から見るような特殊なコマ割り (アングルが終始固定されている)...
5月4日


ジャックは一体何をした? | What Did Jack Do? (2017)
3.7/5.0 惜しまれながらも2025年1月に逝去した「カルトの帝王」ことデヴィッド・リンチによるモノクロ短篇。 ほとんどのシーンがリンチ自身が演じる刑事とその刑事に尋問されるジャックという猿の会話で構成されており、17分程度の短篇ながら、奇妙で不条理なリンチワールドを体...
4月12日


ブルードラム | The Blue Drum (2022)
1.2/5.0 約16分の短篇ホラーで、NETFLIXが実施している有色人種女性のクリエイター向けの短篇映画製作支援プログラムの一環として製作されたものらしく、今作はメキシコ系アメリカ人のアンジェリータ・メンドーサという若い監督が手掛けている。...
3月2日


Broken Rage (2025)
2.7/5.0 北野武が監督・脚本を務め、ビートたけしが主演する60分強の中篇ギャング (ヤクザ) 映画で、前半はシリアスなバイオレンスドラマとして、後半は前半と同じストーリーをシュールなコメディとして撮るという実験的な構造の作品。...
2月16日


朱の路 | Aka no Michi (2003)
4.4/5.0 アーティストの村田朋泰による13分の立体アニメーション。 ピアニストの男が見る幻想的な夢の世界の風景が圧倒的で、クレイアニメーション特有の独特な空気感もあいまって惹き込まれる。 ひとつひとつのアングル・カラーリング・ライティングのレベルが高く、まるで動く絵画...
2024年12月15日


殻を破る | Out (2020)
3.8/5.0 ピクサー製作による「SPARKSHORTS」シリーズの1篇。 恋人を両親に紹介したい主人公には、まだ親に打ち明けていないことがあり… という導入から、ディズニー / ピクサーらしい魔法のような出来事が起きる短篇アニメーション。...
2024年11月9日


ループ | Loop (2020)
3.8/5.0 ピクサー製作による「SPARKSHORTS」シリーズの1篇。 少女レネーと、一緒にカヌーに乗り込むことになった少年マーカスの物語。 レネーは自分の感情をなかなか上手に言語や仕草で説明できない、いわゆる自閉症を持つ子で、マーカスはそんなレネーとコミュニケーショ...
2024年10月14日



























