スター・トレック BEYOND | Star Trek Beyond (2016)
- Shoji Taniguchi
- 2月16日
- 読了時間: 2分
3.7/5.0
J・J・エイブラムス監督による新生「スター・トレック」映画シリーズの3作目だが、J・Jは当時製作していた「スター・ウォーズ フォースの覚醒」で多忙だったため製作にまわり、「ワイルド・スピード」シリーズのド派手なアクションで名を挙げたジャスティン・リンが監督を担っている。
1作目と2作目の脚本を担ったロベルト・オーチーはプリプロダクションの段階で離脱し、俳優としてシリーズに出演もしているサイモン・ペッグとダグ・ユングが今作の脚本を執筆している。
1作目の「スター・トレック (2009)」と2作目の「スター・トレック イントゥ・ダークネス (2013)」の物語は旧シリーズの歴史や設定の換骨奪胎が巧みで、旧シリーズと新規のファンの両方の心を掴むことに成功していたが、3作目となる今作ではその歴史や設定に縛られ過ぎない脚本になっている。
ポジティブにいえばフロンティア精神に溢れた、ネガティブにいえばスター・トレックらしさが薄いSF映画として仕上がっている印象。
悪役の正体やその行動理由が少し納得感に欠けるものだったところが、物語の深みの足りなさに影響しているように感じる。
アクションが得意なジャスティン・リン監督を起用したことにも、ギネス記録級に長く続くシリーズに新しい風を入れるという狙いがあったのかもと想像するけれど、超未来の舞台に「クラシックな乗り物」として登場するバイクアクションが大きな見せどころになっていたり、宇宙船の操縦による戦闘もほとんどカースタントのような演出になっていたりと、SF版のワイルド・スピードを観ている (観させられている) ような気分になってしまった。
演出にはセンスがありもちろん面白いのだけれど、これは果たしてスター・トレックなのか? という困惑も…
ただ、終盤において窮地に陥った主人公側が敵対する悪役側に起死回生の一手として仕掛ける「デカく鳴らせ (Let's make some noise)」作戦のシーンは劇伴も含めて驚くほどロックで、いかにもサイモン・ペッグらしい脚本だなと感じ、科学的考証や理屈はさておきその痛快さにニコニコしてしまった。
どう観たってワイルド・スピードにしか見えない演出も含めて、そのシーンで見られたワイルドさはこれまでのスター・トレックにはなかった (Beyond = これまでを越える) エッセンスかも知れない。