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Cinema Review

ハーレイ・クインの華麗なる覚醒 BIRDS OF PREY | Birds of Prey: And the Fantabulous Emancipation of One Harley Quinn (2020)



3.1/5.0

主演とプロデューサーを兼任するマーゴット・ロビーをはじめ、主要キャラクター・監督・脚本家といった作品の中心的な部分が女性達で構成されている、DC映画シリーズに属する映画の中でもやや異色の作品。

同映画シリーズはリブートされることが決定済で、リブート前に公開されたこの作品に登場するキャラクター達が新シリーズで続投する可能性は高くなさそうだが、この作品単独で成立する物語になっているので、深く考えずシンプルに楽しむことができる。


ジョーカーというカリスマ的な存在のパートナーの庇護下で好き放題していた今作の主人公のハーレイ・クインが、その環境から脱し自分自身のアイデンティティを確立するというキャラクターアークの描き方は分かりやすい。


マーゴット・ロビーという才能豊かな俳優の演技力あってこそだが、カラフルで豪快な演出や表層的な悪党の描き方だけではなく、善悪の境目や揺らぎであったり、主人公の内面で寄せては返すような狂気と脆さの両面が描かれている。

女性中心の映画ということもあり、女性の自立した生き方というフェミニズムなテーマ性もやや含まれているように感じるが、その視点や主張がアンバランスだったり過剰ということでもない。


メイン悪役のローマン・シオニス / ブラックマスクを演じたユアン・マクレガーもまた主人公の裏返しというか、ジョーカーのような悪のカリスマになることへの渇望がありながら自身はその器ではないという自覚と葛藤があって、精神的に不安定な人間くさいキャラクターを絶妙なテンションで演じており、あらためて器用な俳優だなと感じた。


作品のテーマとは違ったところで、演出のセンスを感じるところもあるにはあるが、多数の人物が入り乱れるアクションシーンの描き方はやや段取り的で、もったりした鈍重さが気になった。

単純に、監督を担ったキャシー・ヤンにアクション演出の経験が少ないか、撮影スタイルがやや保守的だからなのかも知れない。

安易にCG置き換えに頼らず、俳優達本人やスタントのフィジカルアクションの実撮影をベースに使っているからこそのリアルな重量感を感じられるともいえるが、もう少しカメラワークの俊敏さやカッティングの切れ味もあるとなお楽しかったように感じる。


観賞後に何か強い読後感が残るタイプの映画ではなかったし、特筆すべきハイレベルな演出が全篇に渡って観られたわけでもなかったけれど、主人公とメイン悪役の決着のつき方には意外さと痛快さがあって、ニヤッと笑ってしてしまった。

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Auther:

Shoji Taniguchi | 谷口 昇司

Creative Director

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美術大学にて映像を中心に学び

現在はマーケティング業界で働き中

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