ミッション: 8ミニッツ | Source Code (2011)
4.1/5.0
伝説的ロックスターのデヴィッド・ボウイを父に持つダンカン・ジョーンズが監督を担ったSF映画。
陸軍で働いていた主人公が目覚めるとそこは見覚えのない通勤電車の中で、混乱しながら鏡を見ると自分自身とは違う人間の顔が映る。
主人公が状況を把握できずにいると電車に仕掛けられた爆弾が起動し、主人公も含む乗客全員が死亡するという、衝撃的な導入で一気に引き込まれる。
主人公が何度も目覚める通勤電車は、既に起きてしまった列車爆破事件で死亡した乗客達の「最期の8分間」の記憶を繋ぎ合わせて再構成された並行世界で、主人公は現実世界からその8分間の並行世界に送り込まれた存在であることが序盤で明らかになる。
主人公は、爆弾を仕掛けた犯人を特定することで次の悲劇を防ぐという任務を果たさなければいけない。
ほとんどのシーンが8分間の通勤電車と主人公に指令を出す人々が存在する基地で構成されていて、とても限定的でありながら、無駄のない脚本と見せ方に工夫のある演出で約90分にしっかりまとまっており、中弛みや退屈するところがない。
繰り返される8分間の世界も、主人公がその仕組みを理解し行動を変えることで周囲の人々の行動も少しずつ変化していく演出が面白く、巧みな設定だと感じる。
主演のジェイク・ギレンホールの演技はやはりこの作品でも素晴らしくハイレベルで、突飛な設定や状況の描かれ方に説得力を持たせている。
その恋人役を助演するミシェル・モナハンも、慎ましくありながら確かな存在感があり、名優であることをあらためて感じた。
劇中のある人物の説明で、この8分間の並行世界はあくまでも記憶へのアクセスであり過去へのタイムトラベルではないと明示されるが、この並行世界は本当に架空のものなのか? という大きな問いがあり、終盤には (賛否ありそうな) センス・オブ・ワンダーな飛躍がある。
現実世界で主人公が置かれている境遇の残酷さは、軍人として生きるということの批評として成立していると思うが、主人公が並行世界へ潜り込む際に意識をジャックした人間の人権はどうなるのか? といった倫理の部分は、設定の面白さとは別のところで少し気になってしまった。
作品のリアリティを高めるためには科学考証と論理の厳密な正確性も重要だが、もしもこんな技術が未来で開発されたら… といったif発想の飛躍こそがSFの魅力でもあり、その意味でとてもオリジナリティの高い作品であることは間違いがない。
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