風に乗る | Wind (2019)
3.9/5.0
ピクサー製作による「SPARKSHORTS」シリーズの1篇。
謎の重力が作用する谷底で暮らしている祖母と孫が、そこから脱出するためにある計画を実行するという物語。
短篇の良い点には、鑑賞の負荷が低いという点もあるが、余分な情報が含まれていない分だけテーマの描かれ方が純化されるところがあると思う。
この作品の設定はすごくSF的で不思議だが、その背景の説明は一切なく、その場所で祖母と孫がどのように支え合って生きてきたのかが端的かつ魅力的に描かれていて、その洗練された演出のセンスが素晴らしい。
台詞がなくとも、祖母と孫の表情や間の微細な演出で、感情の変化と起伏がしっかり伝わってくる。
結末はある意味ハッピーエンドでありながら、とてもビターな読後感も残る。
未来を切り拓くべきは若者であって、その機会と世界を提供するのが老いた者の務めであり、そうして辿り着いた世界はどこまでも限りなく広大で美しいのだというメッセージなのだろう。