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Cinema Review

メビウス | Moebius (2013)

  • 執筆者の写真: Shoji Taniguchi
    Shoji Taniguchi
  • 7月17日
  • 読了時間: 2分

3.2/5.0

韓国出身の映画の巨匠、あるいは鬼才、あるいは最も嫌われた監督とも呼ばれたキム・ギドクが手掛けた、一切の台詞を排したサイレント演出のヒューマンドラマ。


不倫した夫に激昂したその妻が、夫の性器を切り落とそうとするが失敗し、その矛先を自身の息子に向けて息子の性器を切断するという衝撃的な導入。

常軌を逸した妻は失踪し、残された夫 (父) と息子それぞれの絶望と葛藤、そして歪んだ希望を見出そうとするさまが、生々しい質感のトーンで描かれる。

自身の不貞行為の巻き添えになる形で性行為の悦楽を得る手段を喪失した息子に対して、父はどんな希望を見せることができるのか。

親子が発見し実践した、「痛み」がやがて「快感」に変わり得るという性行為の代替手段そのものが、我々人間が犯してしまう背徳的行為のメタファーのように感じられる。


タイトルの「メビウス」が終わりのない輪廻を象徴する「メビウスの輪」から取られていることは明らかで、負の連鎖にとらわれてしまった3人家族の業と因果を現しているのだろう。

不快なほどグロテスク、下品なほどエロティックでありながら同時に、現代社会を舞台とする寓話として物語が結実している。


好きな映画かと自分に問えば絶対に違うと断言するし、素晴らしい映画かと問われても同様だが、作品全体から猛烈に漂う不穏で禍々しい空気や、キム・ギドク以外の監督ではそう簡単にこれを形にできないだろうという孤高のオリジナリティに、終始圧倒されてしまった。

誰かへ気軽におすすめできるような作品では決してないけれど…

キム・ギドク監督が遺した他の作品達も観ていこうという気持ちになった。

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Shoji Taniguchi | 谷口 昇司

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美術大学にて映像を中心に学び

現在はマーケティング業界で働き中

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