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Cinema Review

じゃりン子チエ | Chie the Brat (1981)

  • 執筆者の写真: Shoji Taniguchi
    Shoji Taniguchi
  • 4月12日
  • 読了時間: 2分


4.1/5.0

はるき悦巳による同タイトルの漫画作品を原作とするアニメーション映画で、スタジオジブリへの参加以前の高畑勲が監督を担っている。

原作者のはるきが生まれ育った大阪・西成の街を舞台に繰り広げられる、ドタバタな人情物語。

今作の脚本は原作漫画の複数のエピソードをもとにしてあり、同じ舞台で起きるいくつかの短い物語が緩やかにつながったアンソロジーのような構成になっている。


主人公のチエは小学5年生で、同学年の友人やクラスメイトも登場するが、描かれる物語の中心はその周辺の大人達の悲喜こもごもであるところが特徴的。

父親のテツ・母親のヨシ江・祖母の菊・本名不明な祖父といった家族から、テツの悪友や裏社会で生きるチンピラ、そして人間並の知性を持つ猫達まで、全てのキャラクターが立っていて面白い。


また、自然な大阪弁を話せる声優を起用したいという高畑監督の意向のもと、今や伝説級ともいえる関西芸人・落語家・俳優達が多数起用されている。

中山千夏、西川のりお、上方よしお、芦屋雁之助、三林京子、京唄子、鳳啓介、桂三枝、笑福亭仁鶴、島田紳助、松本竜介、オール阪神・巨人、ザ・ぼんち、横山やすし、西川きよし… すごすぎる。

そして、画に台詞をあてるアフレコ方式ではなく、台詞を先に収録しその呼吸に合わせて画をあてるプレスコ方式が採用されていることもあり、どぎつくもイキイキしてテンポが良い大阪弁の会話劇を存分に楽しめる。

原作漫画のファンだった自分は、漫画を読む時に頭の中でイメージしていたそれぞれのキャラクターの声やリズムとの違和感が全くなく、本当に驚いた。


原作漫画もこのアニメーション映画も、主人公の明るいキャラクターや軽快なリズムの話運びがありながら、教科書的な生き方ができない不器用な人間達の哀しさ、愛おしさ、そしてしょうもなさ、が描かれている。

傷や欠点のない人間なんていないのだ、だから私達はぎこちなくも寄り添ったり離れたりしながら支え合い、日々のパトスをドタバタで覆い隠すように生きるのだ。

チエが疲れて眠っている間に交わされるその父のテツと母のヨシ江の短くも切ない会話のシーンに、今作に通底するテーマが象徴されている。

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Shoji Taniguchi | 谷口 昇司

Creative Director

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美術大学にて映像を中心に学び

現在はマーケティング業界で働き中

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