ブラック・ミラー シーズン7: 普通の人々 | Black Mirror Season 7: Common People (2025)
- Shoji Taniguchi
- 5 日前
- 読了時間: 2分
更新日:18 分前
4.2/5.0
脚本家・プロデューサー・社会評論家としてマルチな才能を発揮する英国出身のクリエイター、チャーリー・ブルッカーが原案と製作総指揮を手掛けるSFアンソロジーで、もともとは英国TV局のChannel 4で放送されていたが、シーズン3からはNETFLIXによって製作・配信されているドラマシリーズ。
イギリス発の作品ということで、いかにもなブリティッシュ・ジョークが効いた巧みな脚本構成が特徴的。
「普通の人々」は、慎ましく暮らす夫妻を主人公に描かれる、現代社会に定着したサブスクリプションサービスと広告カルチャーへの皮肉とその在り方への問い。
脳腫瘍で寿命が残り僅かと分かった妻を救える唯一の希望は、ハイテク企業が提供する革命的 (だが実験段階) な治療法だった… という導入。
「クローバーフィールド・パラドックス」等に出演してきたクリス・オダウドが夫役を、「ソーシャル・ネットワーク」や「インサイド・ヘッド (声優)」に出演したラシダ・ジョーンズが妻役を演じている。
手術自体は無料だけれど、健康な状態を保つには毎月の利用料が必要で… という説明を夫妻が受けているシーンで、そこに込められている皮肉に思わず苦笑いしてしまう。
何せこのドラマを配信しているNETFLIX自身が、そのサブスクリプションサービスによって成り立っている企業の代表格なのだから。
しかも皮肉はそれだけではなく、最も安いプランを選択した患者は、本人が制御不能なタイミングで場違いなCMのセリフを口にするようになるのだ。
多くの人が体験してきているであろう「いいところで邪魔な広告が… でもプレミアムプランに切り替えるとお金が…」を、人間の生死の問題にオーバーラップするというブラックユーモアに圧倒されてしまった。
中盤以降の展開について詳述するとネタバレになってしまうので避けるが、予想外な結末があり複雑で重い読後感が残る、極めてハイレベルな脚本だと感じた。
SFは現代を写す鏡であるという話があるが、このエピソードはまさしくその通りで、サブスクリプション文化にまみれた現代社会の延長線上に出現しそうな未来への痛烈な風刺となっている。