悪い子バビー | Bad Boy Bubby (1994)
- Shoji Taniguchi

- 7月17日
- 読了時間: 2分
3.7/5.0
オランダ生まれ、オーストラリア育ちのロルフ・デ・ヒーアが脚本・監督を手掛けた、何とも形容しがたいドラマ映画。
ヴェネチア国際映画祭等で受賞し世界20カ国以上で上映されたが、日本では劇場でかからず、VHSが発売されたのみだったとのこと。
カルト映画として以前からその存在を知っていながら鑑賞する機会がなかったのだけれど、ようやく鑑賞できた。
主人公は35年もの間、母親に「家の外の世界は毒が溢れている」と教え込まれ、監禁されて育った男性・バビー。
ある衝撃的な事件をきっかけに、バビーは外の世界へと足を踏み出すことになる。
似たような設定の映画や小説等の作品はある (例えば、奇妙でシュールながら愛らしくもある「ブリグズビー・ベア」等) が、今作は冒頭から不快感を覚えるグロテスクな描写が容赦なく続き、鑑賞していて具合が悪くなってしまうほどの強烈なインパクトがある。
世界に数多存在するタブーのひとつひとつにしっかり丁寧に触れていくような、几帳面なほどの暴力性とでもいうべきか… とにかく容赦がない。
バビーはほとんど明らかに知的障害を持つ人物として描かれていて、善悪の区別がつかないし、他者との境界線といった感覚も持ち合わせていない。
ただ、この映画はそんなバビーを愚者として扱うでもなく、「純粋で崇高な存在」として過度に神格化するでもなく、ただただひとりの未熟な人間が周囲に翻弄されながらあてどなく彷徨い、変化していく物語を、半ば突き放したような距離から淡々と描いていく。
その立ち位置はドキュメンタリー映画のようでもあるし、到着地が予測できないロードムービーのようでもあって、他の映画からはなかなか醸し出されない空気が存在している。
バビーがどんな人々と出会い、どんな結末を迎えるのかについては詳述を避けるが、なるほどそこに到着するのか… という思いがした。
それは冒頭から中盤頃までのグロテスクさからは想像もできないものであったし、劇的に変化していく人間の人生の表現として納得がいくものでもあった。
が、何しろ衝撃的な描写の読後感が後を引き過ぎていて… 良くも悪くもやはりカルト映画の金字塔と呼ばれるだけある作品だ。



























