アクアマン / 失われた王国 | Aquaman and the Lost Kingdom (2023)
3.8/5.0
シリーズ1作目で爆発的なまでに発揮されていたジェームズ・ワン監督の外連味あるカメラワークの演出センスはやや抑えめに感じられたものの、この2作目も単品映画として観ればとても完成度の高い映画だった。
大スケールな世界観の広がりとその大胆な描き方は健在で、楽曲や劇伴の使い方もオーソドックスながら気が利いていて楽しい。
前作で主人公と敵対したキャラクターが仲間に、しかも主人公の相棒的な存在にまでなって、ギクシャクしながらも共闘するという少年漫画的な展開も、俳優たちの好演もあってとっても楽しく感じられるものだった。
コミックを原作とするDCやMARVEL映画+ドラマのシリーズは、今や映画業界のメインストリームとして確固たる地位を確立しながらも、他作品との関連性の強さに良い点とそうでない点があり、肯定派と否定派の議論の熱が高まるばかりだけれど、自分はどちらの派閥にも属していないし、またどちらの派閥の話にも共感できる部分がある。
シリーズの関連性が高ければ高いほど、その世界への興味が持続しさえすればどんどんと関連作品を楽しむことができるけれど、その分ディープなファンではない鑑賞者にとっては理解が難しいモチーフやエピソードも増えてきて、単品としての没入感が弱くなってしまう。
ファンがどんどん増えてより多くの人々の間で映画の話ができることが当然の理想なのに、新規ファンにとってのハードルが高くなることは良いことではないし、ましてやコミック原作の映画シリーズが (また) 一部のディープなファン以外に楽しめないものになってしまうことは、誰も望んでいないはず。
個人的な考えとしては、シリーズの関連性が高くともついていける (いちおうDCシリーズを全部鑑賞しているので) けれど、何でもかんでも関連してくれなくとも構わないという思いがある。
この作品のように、他のDCシリーズと世界観を共有しながら物語としてはほとんど関連していないほぼ独立的な作品でも、充分に楽しい映画体験ができるので。
また、映画やドラマを観ている時はそのフィクショナルな世界に没入したいので、そういったリアルな世界の議論や出演者の私生活に関するいざこざの情報もなるべく欲しくないと思っている。
その意味で、この作品においてけっこう重要なポジションの配役を担っていたアンバー・ハードが私生活で大揉めだったために出演シーンが削られたとか、DCの映画シリーズがこの作品をもっていったんリセットされるとか、そういうノイジーな情報が事前にないコンディションでこの作品を鑑賞したかったなと残念な気持ちになった。
アンバー・ハードは個人的にファンだったこともあり、アンバーの出演シーンになるたびその醜聞が頭をよぎって現実に引き戻されてしまったところが残念だった。
素晴らしい俳優のひとりだと思っているので、またスクリーンで輝いて欲しい。