ロボット・ドリームズ | Robot Dreams (2023)
- Shoji Taniguchi
- 8月1日
- 読了時間: 2分
4.2/5.0
米国の作家サラ・バロンによる同題のグラフィックノベルを原作とする、スペイン・フランス合作のアニメーション映画。
監督を務めたスペイン出身のパブロ・ベルヘルにとっては、今作が初の長編アニメーション作品とのこと。
舞台は1980年代のニューヨーク、孤独を感じながら都会に暮らす主人公は犬で、名前もドッグ。
もうひとりの主人公ともいえるロボットとドッグの出会い、友情、もしくは愛情が、セリフやナレーションを一切排した演出で丁寧に描かれる。
あるきっかけからドッグとロボットが離ればなれになってからが物語の核心ともいえるが、その描かれ方がとても秀逸。
表情や楽曲で悲壮感を前面に出すような貧相な演出では全くなく、むしろ状況や心境の変化が淡々と描かれるからこそ、切なさの輪郭がより明確に見えてくる。
ドッグとロボットが2人で過ごしていた頃の、慎ましくささやかな幸せの描写との演出の落差が巧み。
作品タイトルの意味が少しずつ理解できてくる展開に、心が苦しくなる。
どんな理由がそこにあったにせよ、大切に想っていた誰かと離れて暮らすうちに、それぞれの事情や感情は変化していく。
愛は憎しみに変わるといった単純な話ではなく、想いは残りながらそれ以外の感情に形を変えることも、他の誰かに対してより大きな想いを寄せることになる場合もあるのだ。
そんな感情の機微のリアリティがドッグとロボットを通して繊細に描かれていて、どちらのキャラクターに対しても共感する部分があり、心を打たれた。
何よりも、劇中で印象的に用いられるアース・ウィンド&ファイアーの名曲「セプテンバー」は、この作品を鑑賞した多くの人の心に残るだろう。
曲調の素晴らしさと切なさはもとより、その歌詞は、ドッグとロボットが過ごしたかけがえのない日々そのものを描いているように感じる。