ARGYLLE / アーガイル | Argylle (2024)
2.4/5.0
「キングスマン」シリーズにてスパイ映画という伝統的なジャンルに新しい風を吹かせたマシュー・ヴォーン監督による、色々な意味で斬新なスパイ映画。
マシュー・ヴォーン監督の作品はどれも見どころがあって好きだけれど、この作品は脚本がちょっと微妙かもという話を事前に知人から聞いていて、でも自分で確かめてみなきゃ分からないしという気持ちで観賞した。
監督の持ち味であるケレン味あふれるアクションや選曲センスとタイミングが素晴らしい劇伴のあて方は流石と感じたけれど、事前の情報通りというかそれ以上というか、この作品は脚本にまで過剰なケレン味があり過ぎて、途中からは何を観せられているのか全然分からーんという気持ちになってしまい、自分はそのノリについていけなかった。
ブライス・ダラス・ハワードが演じる主人公のエリーはスパイ小説「アーガイル」シリーズを執筆する作家なのだけれど、創作上の世界や存在だと考えていたスパイの世界が実在して、その抗争に巻き込まれ… という導入は面白い。
自身の小説にしか存在しないはずのキャラクターと (主人公にとっての) 現実世界の人物がダブって見えたりする演出も、序盤ではワクワクしながら楽しめる。
のだけれど、中盤からは「◯◯と思っていた△△は本当は✕✕でした」という物語上の大きなツイストに驚かされたと思いきや、「ところが✕✕は本当は□□でした」「といいつつ□□は本当は◎◎でした」「でもって◎◎は本当は…」という、ツイストのためのツイストにしか思えないような強引なツイストが続き、終盤では脚本の整合性がほとんど破綻してしまっているような印象だった。
劇中に何度か「一流スパイは世界を騙す」という台詞があり、監督の狙いは「あなたもこの物語に騙されたでしょ」ということなのだろうけれど、ここまでしつこく二転三転四転五転… が続くと、よほど熱狂的な監督のファン以外は素直に楽しみきれないのではないかと感じる。
マシュー・ヴォーン監督の (やや複雑に拗れて捻れた) スパイ映画への愛憎が、今作においては制御が効かず無軌道に炸裂してしまったような…
最も呆れてしまったのは、終劇直前のツイストと、さらにダメ押し的に存在するミッドクレジットのツイスト。
MARVELやDCや最近のハズブロのように、実はこれまで監督が手掛けてきた複数の作品が共通の世界で展開する物語だったのだ! という大仕掛けなのだろうけれど、だとすると、この「アーガイル」に出演していて、監督の過去作品にも別のキャラクターで出演していたあの俳優やあの俳優の存在は一体何だったのか…? と解釈不能になってしまって、作品そのものの面白さよりも大きな困惑の読後感が残ってしまった。
「アーガイル」シリーズは三部作構想とのことだが、次回作は一体どうなるのか…