告白 コンフェッション | Confession (2024)
- Shoji Taniguchi
- 2024年10月15日
- 読了時間: 2分
1.5/5.0
「カイジ」や「アカギ」といった心理的駆け引きの演出が特徴の漫画作品で有名な福本伸行が原作を、「沈黙の艦隊」や「太陽の黙示録」といったポリティカルドラマを得意とするかわぐちかいじが作画を手掛けた漫画作品を原作とする、74分の中篇映画。
主要な登場人物は2人の男性のみで、登山中に吹雪に見舞われた2人のうち片方が死を覚悟して告白した内容をめぐり、外界から閉ざされた極限状況の中で2人の駆け引きが繰り広げられる。
大筋の物語展開は漫画版と同様で、原作で印象的だったスリリングなシーンもある程度再現されていた。
が、漫画版で物語を牽引する重要な要素となっていた主人公の心の声の描写が、この映画版では演出との相性が良くないと判断されたのか全く取り入れられておらず、原作の強烈な個性や演出の面白さがしっかり再現されているようには思えなくて残念だった。
そのうえ、観客を驚かせたいという意図であろうことは分かりつつも、人物の居場所が瞬間移動的に変わっていたり、カットのつなぎ方が素人レベルに粗かったりと、良くない意味での漫画的省略だけを取り入れているように見えるところもあまり感心できない。
また、吹雪に追い詰められ死が迫る状況でありながら防寒具で顔を覆う素振りが全くないところや、2人が逃げ込んだ山小屋の窓が強風を受けても震えすらしないところに、リアリティの突き詰めについての甘さを感じ、コントのように見えてしまって没入できなかったことがとても残念。
生田斗真とヤン・イクチュンが主演しているが、俳優の事務所側から「顔を隠すのは極力ナシの方向で」と注文でも入ったのだろうかと、導入部分の演出から興ざめしてしまった。
予算が潤沢ではなくとも製作できそうな内容として、ほぼワンシチュエーションで完結する原作の実写化に挑戦したのであろうとは想像できるが、そういったリアリティの追求の部分は予算とあまり関係なく、製作者達がどれだけ丁寧に作り込む覚悟があるかの問題だと思う。
TVドラマとして製作されたものとして見れば少しハードルを下げて鑑賞できたかも知れないが、映画館にかける作品として見た場合、決して褒められた作品ではないのではという感想をもった。
原作漫画を読んだ際にとても面白い読後感があり記憶に残っていた作品だったので、映画版も期待して鑑賞したのだけれど、うーん何これという読後感に上書きされてしまった。
2人の天才漫画家が共作した漫画版は抜群に面白いので、多くの人に読まれて欲しいと思う。