トラップ | Trap (2024)
- Shoji Taniguchi
- 3月16日
- 読了時間: 2分
更新日:3月24日
3.7/5.0
「シックスセンス (1999)」の終盤のどんでん返しが発明レベルかつ衝撃だったことから、それ以降に製作する作品のハードルが上がり過ぎているM・ナイト・シャマランによるサスペンス映画。
今作の設定で面白い点は、一見子煩悩な主人公が実は善人じゃないどころか連続殺人犯であるところに尽きる。
大切に思う娘のためにチケットを手に入れたアーティストのコンサートに入場した主人公が、FBIと警察による厳重な警備で会場ごと封鎖されていることに気づき、それが自分を逮捕するための罠だと気づいて何とか脱出するために策を練るという脚本が、ツイストが効いていて面白い。
また、そのために主人公がとる行動が人でなしだったり、あり得ないと感じるほど突拍子がなかったりするところも、ポジティブにいうと劇的で退屈しない。
会場から脱出するもしくは失敗するところで物語が決着するのかなと思いきや、そこからさらに物語が展開し第二幕が始まるところにも意外性がある。
主人公を演じるジョシュ・ハートネットは屈強でヒーロー感のある善人役のイメージが強かったが、今作では良き父親でありながら殺人犯という複雑な精神性を持つ役柄を見事に演じており、ハイレベルな演技を鑑賞することができる。
多数のファンがコンサートに集まるアーティスト役を演じるのは監督の娘かつシンガーソングライターとして活動しているサレカ・シャマランで、劇中でも歌唱を披露している。
作品鑑賞前は、アーティストの存在は舞台設定におけるマクガフィンのひとつで、親バカとして有名なM・ナイト・シャマランのささやかなお遊びなのだろうと思っていたが、それどころじゃないというか脚本上のキーパーソンともいえるほど重要な役どころになっており、さすがに親バカが過ぎるのではと笑ってしまった。
物語の終盤でどんでん返しがあるのかないのかについては、シャマラン監督の作品が公開される度に会話されるぐらいの鉄板ネタになっているようにも思うが、今作がどうなのかについての言及は避けたい。
個人的には、脚本全体を通して良くも悪くも映画的な飛躍が大き過ぎて破綻しているように感じるところもいくつかあるけれど、演出の巧みさや俳優の演技の説得力もあって鑑賞中は何となく納得させられてしまう魅力があり、サスペンス映画としての興奮を楽しむことができた。