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空の検索で269件の結果が見つかりました。

  • リベンジ | Revenge (2018)

    3.9/5.0 「サブスタンス」でカンヌ国際映画祭の脚本賞を受賞し、アカデミー賞5部門にもノミネートされたフランス出身の新進気鋭の女性映画監督 兼 脚本家コラリー・ファルジャによる長篇デビュー作品。 妻子を持つ男性と不倫関係にあった女性の主人公が、あるきっかけから男性達に凌辱されるだけでなく瀕死の重症まで負わされるが、しぶとく生き残り男性達に復讐を仕掛けるというシンプルな物語。 登場人物はほぼ4人と極めて少ないが、大胆ながら安定してハイレベルな演出センスによる物語の運びには退屈する間がなく、冒頭から終劇まで目が離せない。 ただ、全般的にバイオレンス描写の過激度がかなり高く、痛いシーンも連発するので、苦手な人は鑑賞を避けた方がいい。 この作品が他のサバイバル映画やアクション映画と一線を画している点としては、女性のコラリー・ファルジャだからこそともいえるメイルゲイズ (Male Gaze / 男性のまなざし = 女性は常に男性の欲望の対象として見做される) を受ける側の不快と恐怖が強烈に描かれているところがある。 かといって、女性が常に正義で男性はすべからく悪だといった過激なフェミニズムに偏重することもなく、主人公の女性も悲劇に遭うまでは男性達と同じく愚かで浅はかな人物として描かれており、性別関係なく登場人物達全員と突き放したような距離感を保つドライな演出スタイルが秀逸。 映画の冒頭と結末では主人公の女性がまるで別人格のように感じられる (男性優位社会への挑戦と勝利が象徴されているのだろう) 点も、分かりやす過ぎるかなとも感じたが、シンプルで面白い。 コラリー・ファルジャの作品には、これからも注目していきたい。 https://filmarks.com/movies/79352/reviews/196223012

  • 火の鳥 羽衣編 | Phoenix: The Feathered Robe (2004)

    1.2/5.0 手塚治虫による原作漫画をもとに、手塚プロダクションが製作した短篇アニメーション映画で、一般劇場公開はされていない希少な作品。 原作となる短篇漫画の、舞台で演じられる芝居を客席から見るような特殊なコマ割り (アングルが終始固定されている) と、日本で古くから伝わる「羽衣伝説」をモチーフにしながらSF的な解釈とストーリーテリングが行われる物語に衝撃を受けた自分としては、その原作がどのようにアニメーションとして再構成されるのかすごく期待したのだが、アングルも脚本も大幅に改変されていて、原作のオリジナリティを活かしているようには思えず、残念だった。 加えて、全般的な演出もどこかおざなりかつ淡白で余韻がなく、その世界観に没入できない。 手塚治虫本人は逝去されているとはいえ、その遺志を最も正しく継いでいるはずの手塚プロダクションが手掛けていてなぜこんな仕上がりに? というガッカリな読後感。 手塚氏とその原作漫画が偉大過ぎることに理由があるのかもしれないが、今作に限らず「火の鳥」のアニメーション作品は多かれ少なかれ同様に、原作がもつ神々しいまでの素晴らしさを正しく昇華できていないように感じる。 人知を超越した「火の鳥」を巡って無益な争いを繰り返したり、「火の鳥」と対峙しながらもその超然とした振る舞いに翻弄されて破滅する原作の登場キャラクター達と同じように、手塚治虫氏以外の人物には決して物にすることができない孤高の作品なのかも知れない。 https://filmarks.com/movies/112163/reviews/196145212

  • ミュンヘン | Munich (2005)

    4.7/5.0 パレスチナの過激派組織「黒い9月」によってイスラエルのオリンピアン達が殺害されたミュンヘンオリンピック事件 (1972年) と、それに対する報復に関わったイスラエルの諜報組織モサドの人物達を描く、実際の悲劇に基づいたサスペンス映画。 イスラエルと関連が深いユダヤにルーツをもつ巨匠スティーヴン・スピルバーグが監督を担い、エリック・バナやダニエル・クレイグが出演している。 ヤヌス・カミンスキー撮影による1970年代の空気感の再現や、ジョン・ウィリアムズによるテーマ曲の重く哀しい旋律が素晴らしい。 映画やドラマに登場するスパイといえば、ワクワクする展開や痛快なアクション、ハイテクガジェットとクールなファッションといったイメージがされがちだが、この映画におけるモサドのスパイ達の描かれ方は全く違う。 お金の無駄遣いはするなと本部に叱られたり、中途半端な知識で製造した爆弾が想定外の規模で大爆発してしまったり、ターゲット以外の人物を巻き込みそうになり慌てて走り回ったり、弱気になったり、でも自分達の判断では報復を中止できなかったり… その不格好さに圧倒的なリアリティを感じる。 しかしながらその報復行為の結果は思わず息が詰まるほど容赦なく、こんな普通の人々にこれほど残虐なことができるのかと恐怖を感じるほどの凄まじさがある。 主人公達が属するモサドの暗殺チームも、モサドの報復のターゲットであるパレスチナ側の人間達も、強烈な動機と使命感によって殺人を行うことを除けば、社会に溶け込み平穏に過ごす一般人と何も変わらない。 その演出があるからこそ、なぜこんな悲劇が実際に起きてしまったのか、なぜ殺し合わずにいられなかったのかという悲しみの読後感が残る。 スピルバーグと主人公の視点は当然ながらイスラエル側に拠っているが、パレスチナの行為をただ批判しイスラエルの正当性を訴えるといったプロパガンダ的な偏りはなく、モサドの報復は本当に正義だったといえるのか、どちらが正義でどちらが悪だといった二元論で断定的に世界を見ることは危険ではないかと感じる脚本になっている。 あまりにも過酷で残酷なミッションを通して、主人公が次第に正気を失っていき、目の前に実在する生と同時に幻視する死のイメージが交錯する終盤のシーンが象徴的。 何よりも胸が苦しくなったシーンは、主人公がある人物を自宅に招き、夕食をとろうと誘う終劇直前のシーンだ。 考え方に相違があり、分かり合えないと感じる相手であっても、平和に食事をとりながら対話をすることはできるはず。 怒りと憎しみによる報復を繰り返すだけでなく、対話を続けることで見いだせる新たな道があるはず… その主人公の申し出に対する相手の表情と返答、そしてラストショットで遠くに映し出される、ニューヨークを象徴する2棟のビル。 人類は未だ、人種や思想の違いに起因する憎悪の連鎖を断ち切れるほどには成熟していない。 誰もが認めるであろう映画の天才スピルバーグによる今作の重厚な演出に、ケチをつけるようなところは存在しない。 個人的には、スピルバーグがこれまで形にしてきた戦争映画「シンドラーのリスト」や「プライベート・ライアン」に比肩する傑作だと感じる。 https://filmarks.com/movies/434/reviews/152653194

  • セプテンバー5 | September 5 (2025)

    4.4/5.0 スティーブン・スピルバーグ監督の「ミュンヘン (2005)」で描かれた、実際に発生したミュンヘンオリンピック事件 (1972年) について、事件をリアルタイムで中継報道していたテレビクルーの人々の視点から描く、ドイツとアメリカの合作によるサスペンス映画。 スイス出身のティム・フェールバウムが脚本・監督を担っており、アカデミー賞の脚本賞にもノミネートされた作品。 パレスチナの過激派組織「黒い9月」が起こしたテロによって、世界平和の祭典であるオリンピックが中断される。人質達はイスラエル人、事件が発生した場所は西ドイツという状況に、第二次世界大戦において人類が犯した取り返しのつかない罪が思い起こされる。 主要登場人物の中にもそれぞれの出身国から連なるコンテクストがあり、胸が引き裂かれるような緊迫感がある。 主な舞台はテレビ放送の中継ルームに限定されており、極限状況下ということもあって息が詰まるような閉塞感が続く。 信じがたい悲劇に終わった実話をもとに脚本が構成されている以上、作劇上のハッピーエンドは存在しないし、映画的なカタルシスもない。 ただ、堅実で巧みな演出と俳優たち全員の高い演技力があって、約90分の極めて重厚な物語を退屈することなく鑑賞できる。 50年以上前の事件をモチーフにしながらも、現代にも連なる普遍的な問が描かれていると感じたのは、「報道の倫理」がテーマになっているからだ。 史上初となったテロ行為の世界的生中継の裏側ではどんな葛藤があったのか、事件の最前線でそれを報道した人々は何に成功し、そして何を失敗したか。 目の前の状況をありのまま、速報性を何よりも重視して報道する行為に、社会の公器としての正義は貫かれていたのか。 誰もがスマートフォンひとつで即座に世界へ目の前の状況を中継できるようになった現代にあって、再度強く問われるべき倫理観なのだと感じる。 製作者達もきっと、そんな現代だからこそ、この物語が描かれるべきだと考えたのだろう。 今作と「ミュンヘン (2005)」をあわせて鑑賞することで、両作の映画鑑賞体験をより豊かにできるように思う。 ミュンヘンオリンピック事件と、それに対するイスラエル側の報復行為、そして今に至るまで続く憎悪の輪廻は、いつか断ち切られる日が来るのだろうか。 https://filmarks.com/movies/119717/reviews/196143750

  • サンダーボルツ* | Thunderbolts* (2025)

    4.2/5.0 マーベル・スタジオが製作・展開するマーベル・シネマティック・ユニバース (MCU) に属する36作品目の映画で、これまでのMCU作品でヴィランや無法者として登場したキャラクター達がチームとなり、世界的な脅威に立ち向かう。 「BEEF」や「スター・ウォーズ: スケルトン・クルー」等のドラマでエピソード監督を務めたジェイク・シュライアーが監督を、「ミッドサマー」「オッペンハイマー」「デューン 砂の惑星 Part2」等の話題作に出演し若きスーパースターとして活躍するフローレンス・ピューが主演を担っている。 これまでのMCUで既に登場したキャラクター達と、同じくこれまでのMCUで語られたストーリーを前提にした脚本なので、古参のファンでなければ作品の楽しみ方が浅くなってしまいそうという点は変わらずある。 ただ、フローレンス・ピューをはじめ主要キャラクターを演じる俳優達の演技が素晴らしく、それぞれの人物の背景や人生についての説得力があり、今作から遡る形で主要キャラクターの過去登場作品を鑑賞したいと感じる人もいるかも知れない。 今作の脚本はこれまでのMCU作品ではあまり語られてこなかった、ヒーローやヴィランと呼ばれる人間達のメンタルヘルスの問題という、とてもセンシティブで重要なテーマについての挑戦があり、その点が作品のオリジナリティとなっている。 作品全体の色彩設計も、登場キャラクター達のメンタルコンディションが反映されているかのように鈍く沈みながらも上質で、賑やかで華々しいトーンの他MCU作品とは一線を画している。 間違いなくMCU史上最強といえる、神にも匹敵する能力を得た新ヒーローおよびヴィランが登場し、寄せ集めメンバーのサンダーボルツが対峙するが全く刃が立たないという情けないシーンの描かれ方がとても新鮮で面白い。 これほど絶望的な闘いにどう勝利するのか? という展開からの決着の付け方も、作品のテーマが昇華されていてとても感動的だった。 また、MCUの持ち味ともいえるユーモア演出にもこれまでとは違った自然体なしょうもなさがあり、ツボに入って笑ってしまうシーンが何度もあった。 MCU全体を通しても、今作は高い完成度があり重要度も高い作品になりそうだが、あるキャラクターの扱われ方の雑さだけがすごく気になり、今作や脚本の外の製作側で事情があったのだろうか… と感じてしまって気が削がれたところだけが残念。 https://filmarks.com/movies/104529/reviews/196141731

  • キャプテン・アメリカ: ブレイブ・ニュー・ワールド | Captain America: Brave New World (2024)

    3.7/5.0 マーベル・スタジオが製作・展開するマーベル・シネマティック・ユニバース (MCU) に属する35作品目の映画で、「キャプテン・アメリカ」シリーズとしては4作目。 主人公のキャプテン・アメリカは2代目という設定で、アンソニー・マッキーが主演している。 映画・ドラマ・アニメシリーズと際限なく拡大していくMCUの世界にあって、今回はどのような物語が展開するのか期待していたがMCU映画2作目の「インクレディブル・ハルク」の主要キャラクター達が同作品の実質的続篇のような形で再登場する。 また、MCU映画26作目の「エターナルズ」終盤で発生しながらその後の作品では言及されることがなかった天変地異級の事象について、作品内の歴史が伏線のように脚本へ組み込まれており、古参ファンの自分としてはそのアクロバティックな構成力に驚かされた。 それでいて、ドラマシリーズ「ファルコン&ウィンター・ソルジャー」の物語や登場人物達の設定も今作と地続きになっており、複雑になり過ぎて誰にも手が付けられないのではと思われたパズルのピース達が、まさかこれから全て奇跡的に接合して完成するのか? と、久々にワクワクしながら楽しむことができた。 「キャプテン・アメリカ」シリーズの2作目や3作目においてアクション演出における抜群のセンスを発揮し、MCUシリーズの集大成ともいえる「アベンジャーズ」シリーズの3作目や4作目も監督したルッソ兄弟は今作に関わっておらず、「クローバーフィールド・パラドックス」や「ルース・エドガー」等を手掛けたジュリアス・オナー監督に交代している。 それが作品のフィールに (主に良くない方の観点で) 影響していると感じたのは、やはりアクションシーンを中心とする撮り方。 初代キャプテン・アメリカは超人的な身体能力を持っていたが今作の2代目はあくまで一般人という設定の違いがあり、その基本能力の差が映像として反映されていると捉えることもできるが、ルッソ兄弟の天才的な演出手腕と比較すると、やはり今作のそれは少し鈍重で頼りない。 俳優達の演技はみな素晴らしく不満を感じるようなところはなかったのだけれど、それらの演技も撮り方や編集でまた大きく印象が変わるのだろうなぁ… と、製作や編集の舞台裏を想像してしまった。 大統領役を演じたハリソン・フォードの存在感は言わずもがな、その側近役のシーラ・ハースや主人公の相棒役を演じたダニー・ラミレスのチャーミングな魅力が光っておりとても良かった。 誰もが絶賛するような素晴らしい完成度とはいえないかも知れないが、個人的にはとても楽しく鑑賞できたMCU映画だった。 ただ、古くからのMCUファンではない新規の観客層にとっては、この作品の脚本や物語はどのように受け取られるのだろうということも同時に考えてしまう。 もしかしたら、自分が分からない単語やキャラクターがどんどん出てきて、その意味を理解できないので物語にも没入できないという、疎外感というか仲間はずれにされたような気持ちを感じる人もいるのではないか… ハリウッドの歴史を通して見ても前人未到といえるレベルの超大河シリーズとなったMCUが抱えるジレンマは、その物語世界と同様に、ますます巨大化しているように感じる。 https://filmarks.com/movies/98659/reviews/195663285

  • アッシュ 〜孤独の惑星〜 | Ash (2025)

    3.1/5.0 音楽プロデューサーやDJとして知られるフライング・ロータスが監督したSF作品で、「ベイビー・ドライバー」や「ゴジラVSコング」に出演していたエイザ・ゴンザレスと、「ブレイキング・バッド」での壮絶な演技で一躍有名になったアーロン・ポールが主演を務めている。 「第9地区」や「チャッピー」のニール・ブロムカンプ監督が製作に携わっていると知り、ブロムカンプ監督作品の大ファンなこともあって楽しみに鑑賞した。 異星の居住区で目覚めた主人公は記憶を失っており、周辺を探ると何者かに惨殺された死体が多数転がっていて… というミステリー演出の導入は、古典SF風ではあるけれど惹き込まれる。 ネオンカラーを巧みに用いたライティングによる光と影のメリハリある描写はなかなかアーティスティックで、時折入る少々ジャンプスケア的なショック演出も効いている。 フライング・ロータス監督自身が全曲を書き下ろしたという独特で神秘的な劇伴も、存在感があって面白い。 脚本にはそれほど意外性のある展開や結末はなかったものの、殺人犯の正体を追求するフーダニット (whodunit) 形式と、失われた記憶やアイデンティティを再構築するというフィリップ・K・ディックの小説のようなテーマが、舞台を限定することによって生まれる閉塞感のあるSFホラージャンルの脚本としてまとまっていると感じた。 ただ、俳優も演出も劇伴にも大きな不満はないのだけれど、映画全体としてはそれほど面白いとは思えず、そつなく整えられたSF小品という感じにとどまってしまっているという、不思議な読後感が残る作品だった。 https://filmarks.com/movies/120538/reviews/195931780

  • アニアーラ | Aniara (2018)

    3.5/5.0 ノーベル文学賞作家ハリー・マーティンソンによる叙事詩「アニアーラ」を原作とするスウェーデン製作のSF映画。 回復不可能なほど環境が破壊された地球から火星への移住を目指し飛び立った巨大な宇宙船、アニアーラ号とその乗組員および乗客達の物語。 作品のジャンルで区分すればSF映画だが、この作品はそのSFの中でも極北といっていいほどテーマと物語が重く、暗い。 映画が始まって早々に主人公たちが乗る宇宙船が事故で燃料を失い、目的地への軌道からも大きく外れ、二度と安住の地へ辿り着くことはないという絶望的な状況が明らかになるからだ。 むしろこの映画は、絶望しか残存していない世界にあって、人間は何にどういった希望を見いだせるのか、あるいは見いだせず破滅していくのか、という究極的な問がテーマになっている。 この映画が製作されたのは2018年ながら、人間達が残酷過ぎる現実と向き合うことを放棄しAIによる癒やしに依存するというシーンがあり、AIが加速度的に進化・台頭してきたここ数年が鋭く予見されていたようにも感じる。 物語の起伏はほとんどなく、ひたすらに絶望だけが描かれ続けるという特殊な作品なので、明快な起承転結やハッピーエンドを望む人には絶対におすすめできないが、人間や文明社会の限界についての思考実験のような映画体験に興味がある人にとっては、一見の価値がある作品かもしれない。 ただ、ただ、よくもここまで… と驚くほどに暗く、一切の救いがないので、元気がない時は鑑賞しない方がいい。 https://filmarks.com/movies/84267/reviews/153411384

  • ビーキーパー | The Beekeeper (2024)

    3.4/5.0 「サボタージュ」や「フューリー」などを手掛け、重量感や緊張感のあるアクション演出に定評のあるデヴィッド・エアーが監督を担い、ハリウッドにおけるアクション映画ジャンルのスーパースターとして名高いジェイソン・ステイサムが主演する作品。 かつて機密の暗殺部隊で工作員として働きながら、その職を引退し養蜂家として暮らしていた主人公が、ある悲劇をきっかけに特殊詐欺集団への復讐を開始するという筋書き。 ジェイソン・ステイサムのハイレベルな身体演技とデヴィッド・エアーの重厚で安定した演出の相性が良く、次々と繰り広げられるアクションや物語の展開に気が散ることなく没入できる。 作品タイトルでもある「ビーキーパー (養蜂家)」について、序盤では主人公が現役引退後に選んだ実直な職業ということ以上の意味がないように見えて、中盤にその言葉の定義が変わる展開があり、やや強引でこじつけ感はあったものの、なるほどと楽しむことができた。 とはいえ脚本に捻りがあると感じたのはそこぐらいで、他は徹頭徹尾、勧善懲悪型のシンプルなアクション映画の佳作といった印象。 あれこれ深く考えずに安心して楽しめる、こういった作品の鑑賞もまた良いものだと感じた。 https://filmarks.com/movies/113065/reviews/195663162

  • 動物界 | Le règne animal / The Animal Kingdom (2023)

    4.0/5.0 フランス発のSFスリラー映画で、カンヌ国際映画祭「ある視点」部門のオープニング作品に選出されたり、フランス国内では観客動員が100万人を超える大ヒットを記録した作品。 ほぼ現代と変わらないぐらいの近未来、人間が様々な動物へと突然変異するという原因特定不明の奇病が蔓延した世界を舞台にしながら、国家や全世界規模での混乱や恐怖をパニックムービーとして描くのではなく、フランスの田舎に慎ましく暮らすひとつの家族とその周辺の人々の物語を描くことにフォーカスがあてられている。 そして、そのミニマルなスタイルとマクロな世界観設定のかけ合わせがこの作品の個性になっている。 全世界規模の戦争が発生しながら主人公とその家族周辺だけで全篇が作劇されていたスピルバーグ版の「宇宙戦争」に近いスタイル。 奇病の発端やその原因等については本篇内でほとんど語られず、究明されることもない。 病気が蔓延した状況が元通りに戻ることがこの作品の脚本のゴールではないからだ。 奇病とは何か (何を寓意しているのか) とあえて言語化するならば、それは移民問題や人種差別問題、そしてそれらによって分断され続けている現代社会のメタファーなのだろう。 息子・父・母の3者がそれぞれに向けて一生懸命に示す愛の形が、儚く痛ましくそしてとても美しく、胸に突き刺さる。 特に主人公の父役を演じたフランス人俳優のロマン・デュリスの名演には心を打たれた。 https://filmarks.com/movies/110024/reviews/195663226

© 1998-2025 Shoji Taniguchi

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