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- フロッグ | I See You (2019)
3.9/5.0 俳優でもあるデヴォン・グレイが脚本を執筆したクライムサスペンス。 NETFLIX映画「iBOY」や「ナイトティース」を手掛けたアダム・ランドールによる監督作品。 15年前に連続少年誘拐殺人事件が発生した小さな町で、再び同様の事件が相次いで発生する。 過去の事件の犯人は逮捕されていることから、混乱する警察。 事件を捜査することになった刑事の家庭は、パートナーの不倫をきっかけに家族関係が崩壊している。 そして刑事の家では超常現象のような不可解な出来事が起こり始める… 舞台を限定した小規模のサスペンスを思わせる序盤から、中盤にある視点の大転換、そして終盤で真相が明らかになる展開と、何度もツイストする脚本の構成が巧み。 ネタバレを避けるため細かい部分への言及は避けるが、前半での様々な違和感や恐怖が後半で納得や別の恐怖に変化する演出が見事だと感じた。 出演している俳優達は誰もが知る著名な人物達ではないけれど、それぞれがそれぞれの役回りを理解しながら高い演技力を発揮することで、真相が明らかになった際の強い衝撃に結実している。 映画の面白さは予算の多寡や画の派手さ等には関係せず、良い脚本・良い演出・良い演技によって決まるものだと思わせてくれる秀作だった。 https://filmarks.com/movies/87485/reviews/210079199
- ザ・メッセージ | I Still See You (2018)
3.5/5.0 モデル・歌手・俳優として様々活躍するベラ・ソーンが主演するSFサスペンス。 ダニエル・ウォーターズによる10代向けのYA (Young Adult) 小説「Break My Heart 1000 Times」を原作としているらしい。 ある研究をしていた施設が大爆発を起こし、数百万人が志望するという大惨事から10年後。 その後の世界では、犠牲者達の残像 (Remmnants = 残存者) が誰にでも見える形で出現し始める。 主人公は面識のない残存者が残した「逃げろ (RUN)」というメッセージに恐怖するが、その意味と真相を追求していく。 幽霊のような存在と生者が共存するようになった社会という設定が、SFとしてすごく面白い。 主要登場人物を絞って、小さな街を舞台に展開するサスペンスとしての面白さはある。 真相が見えてきたと思いきや何度かツイストする脚本の展開も、設定が活かされていて捻りがきいている。 現題の「I still see you」の意味が初めて分かるシーンではなるほどそういうことかと感じ、ラストシーンでそこに別の意味が生まれてくる脚本にも感心した。 ただ、細かい設定の部分で矛盾を感じるところもいくつかあり、その詰めの甘さが少し惜しい感じもしてしまった。 派手な画づくりや驚愕のどんでん返しがある大作ではないけれど、設定の斬新さを楽しめるSF小品という印象。 https://filmarks.com/movies/82767/reviews/209791256
- 裸の銃を持つ男 | The Naked Gun (2025)
3.2/5.0 レスリー・ニールセンの主演で80〜90年代に3シリーズが製作されたコメディのリブートで、ニールセンが演じた警部補の息子という設定の主人公を演じるのはリーアム・ニーソン。 「チップとデールの大作戦 レスキュー・レンジャーズ」を手掛けたコメディアンのアキヴァ・シェイファーが脚本と監督を担っている。 銀行強盗が発生し、特捜隊警部補の主人公がひとりで制圧するも、貸金庫からあるデバイスが盗まれる。 デバイスには世界を揺るがす危険なプログラムが入っていた、という導入。 クリストファー・ノーラン作品かと錯覚するほどの (もちろん意図的にそうしているであろう) やたらに重厚なオープニングのつかみが面白く、予告篇にも使われている主人公の初登場シーンでは展開を知っていても笑ってしまった。 他にも、ミッション・インポッシブルシリーズの有名なシーンのパロディもあってニヤニヤと笑える。 もちろん、他映画作品のパロディ以外にも笑ってしまうシーンはいくつもある。 個人的には、雪だるまが登場するシーンの意味不明さと狂気的なまでの長さを感じる一連が最も面白かった。 主人公は終始シリアスなつもりでいながら、それ以外の全ての状況がコメディというのがこのシリーズの特徴ということで、リブートするにあたっての主人公役にリーアム・ニーソンという文句のつけようがない名俳優を起用するというキャスティングは、とても面白い。 歴史に残るような映画ではないかも知れないけれど、こういった良い意味でのくだらない作品が本気で製作される豊かさが映画業界にずっとあって欲しいと願う。 https://filmarks.com/movies/121373/reviews/209791325
- クラウド | Cloud (2024)
3.4/5.0 「回路」「CURE」等のホラーやサスペンスジャンルで著名な黒沢清が脚本・監督を手掛けたサスペンススリラーで、菅田将暉が主演し、共演として古川琴音・荒川良々・窪田正孝等が出演している。 町工場で働きながらインターネットでの転売ビジネスで糊口を凌いでいた主人公の周囲で、不可解な出来事が相次いで起こり始める。 主人公が無自覚にバラ撒いてきた憎悪の種が、顔の見えないネット上での情報のやりとりで肥大化し、やがてそれらが主人公のもとへ一気に極限状況となって戻ってくる。 黒沢清監督らしさともいえる重くも美しいトーンと、日常的な風景へシームレスに異常なモチーフが入り込んでくる恐怖の描き方は健在で、さすがと感じる。 最低限の人間性はありそうながらまともな会話が通じなそうでもある危うい主人公を演じる菅田将暉の俳優としての力量も感じられる。 菅田将暉以外の俳優達も、監督の演出力もあってか、それぞれ何かが不安定な人間に見える役柄を好演していて、息苦しさや居心地の悪さが持続する。 けっこうなウェイトがとられていた後半の壮絶な展開は自分には意外だったが、ハリウッド映画によく見られるド派手な修羅場とはまた違う、淡々としながらも壮絶なシーンの演出が面白かった。 リアリティという視点で見ると少しどうかなと感じる設定もあったけれど、現代社会を寓話化した物語だと解釈すれば、納得できないこともない。 極めて映画的な画づくりと台詞があるラストシーンが強く印象に残った。 https://filmarks.com/movies/114844/reviews/209791206
- デスプルーフ in グラインドハウス | Quentin Tarantino's Death Proof (2007)
3.9/5.0 攻めた作風でありながら巨匠の地位にまで登りつめたといってもいいであろうクエンティン・タランティーノが脚本・撮影・監督を担ったバイオレンスアクション映画。 アクション俳優としての地位を確立しつつも様々なジャンルの映画に出演する演技派俳優のカート・ラッセルが印象的な悪役を演じており、スタントウーマンのゾーイ・ベルは本人役として出演。ロザリオ・ドーソンやメアリー・エリザベス・ウィンステッドもゾーイの友人役で出演していて、さすがタランティーノ映画という豪華さ。 「耐死仕様 (デス・プルーフ)」に整備した自動車を持つスタントマン・マイクが、若い美女達を襲う。 しかし美女達もただ無力に逃げ回るばかりではなく、反撃に転じ復讐を果たそうとする。 物語をまとめるとたったそれだけ? と思ってしまうほどシンプルだけれど、タランティーノ映画とあって、やはり会話劇をはじめとする様々な演出が面白く、退屈する瞬間がない。 この映画で描かれている時代は現代 (映画が製作された2007年) でありながら、70年代に米国のドライブイン等でよくかかっていた当時の低予算なB級映画の画質や編集の粗さを徹底的なレベルで再現しており、それでいてアクションやスタントのレベルは超A級という捻じれが発生していて、とても面白い。 ほぼVFX使用ゼロで撮られたという今作のカーアクションやゾーイ・ベルによるスタントの迫力は必見レベル。 映画作品内における女性の立ち位置が弱かった (凶悪な殺人鬼の男性に追い回されてただ殺されるような役が多かった) 時代の映画的質感を完璧に再現しながら、女性達が殺人鬼に逆襲し制圧するという物語を形にすることで、女性像の反転 (あるいは映画史としての集合記憶の更新) を図るということがタランティーノ監督の意図したところなのだろう。 バイオレンスでありながら鑑賞後の読後感が爽快なこの作品の中でも特筆すべきは、スタッフロールに突入するタイミング。 え、ここで? という思いと、いや終わるならここしかない! という思いを同時にする、決定的な瞬間がある。 https://filmarks.com/movies/21337/reviews/152649848
- 大洪水 | The Great Flood (2025)
3.7/5.0 韓国製作のNETFLIX映画で、「The Witch 魔女」や「梨泰院クラス」にて一躍注目を浴びたキム・ダミが主演している。 あえてジャンルを定義すればディザスターということになると思うけれど、様々なジャンルがミックスされているところが作品の個性になっている。 南極に小惑星が衝突した影響で海面が急激に上昇し、地球規模の超巨大津波が発生する。 AI研究者でシングルマザーの主人公は、ひとり息子を連れて自宅マンションの屋上を目指すが… という導入。 災害パニックものとしてのスリルの上手な描き方や演出の安定感はさすが韓国映画といった印象で、本物らしく描写することが難しいとされている水のVFXの品質も非常に高く、絶望的な状況に没入してしまう。 何よりも、キム・ダミの表情や身体演技のレベルの高さに惹きつけられ、思わず主人公に感情移入してしまう。 全ての韓国映画にあてはまることではないと思うけれど、家族の間に生まれる「情」の演出にかけては、やはり韓国の凄みを感じる。 脚本の核心部分について書こうとするとどうしてもネタバレになりそうで難しいが、単純なディザスターものではなく、SF的な大仕掛けが脚本の軸になっていて、物語の真相が少しずつ明らかになっていくところが面白い。 ただ、真相を意図的に曖昧にすることで観客側に想像 (解釈) の余地が残されているところもあり、その点は観る人によって賛否が分かれそう。 主要登場人物を絞って話が散らないようにしつつ、極めてSFかつ哲学的なテーマに真正面から取り組んでいるこの作品は、個人的にはとても興味深く鑑賞できた。 https://filmarks.com/movies/114746/reviews/209284445
- Ostinato (2023)
https://www.netflix.com/title/81923258 3.1/5.0 曲作りに苦心する音楽家を描くカナダ製作のNETFLIX短篇アニメーション。 音楽用語における「Ostinato (頑固な)」は、一定の短い音型を何度も繰り返すという意味。 楽曲における不協和音 (不安定で緊張感がある音の組み合わせ) を頑なに避けながら作曲をする音楽家が、次第にそれを取り入れることで、予想外にドラマチックな楽曲を形にしていく過程が描かれていく。 特筆すべき演出や展開はなかったけれど、上質で美しい小品だった。 https://filmarks.com/movies/120330/reviews/209284382
- ヴァスト・オブ・ナイト | The Vast of Night (2019)
3.5/5.0 映写技師として働いていたアンドリュー・パターソンが、自身で資金調達のうえ初監督作品として製作した長篇映画。 スラムダンス映画祭にて最優秀ナラティブ長編観客賞を受賞し注目されたSFミステリー。 1950年代、米国の小さな田舎町で発生する怪事件。 若きラジオDJの男と電話交換手の少女の視点から、隠されていた真相が明らかになる夜が描かれる。 SFジャンルではありながら (低予算のため) 派手なVFXによる見せ場はほとんどなく、もっぱら会話劇と「音」の演出に重心が置かれている。 また、俳優達の演技レベルがとても高いことと、会話シーンを中心に何度か使われている固定アングルの長回しが効果的で、物語の世界へ没入できる。 まるで「音」だけで物語を想像して楽しむラジオドラマを聴いているような、新鮮な感覚。 ただ、結末にはある程度のカタルシスはあるものの、全ての謎が解き明かされる脚本ではなく、良くも悪くも鑑賞者に解釈の余地を大きく残す形になっているため、物語の細部まで明快に理解したい派と想像の余韻を味わいたい派で好みが分かれそう。 個人的には、低予算でありながら工夫して丁寧に撮られている様々なシーンのアートディレクションの美しさと、主役の俳優2名の高い演技力に惹き込まれる、質の高い映画だと感じた。 https://filmarks.com/movies/89184/reviews/209437238
- トロン: アレス | Tron: Ares (2025)
3.8/5.0 世界で初めてCGを表現に取り入れた (公開当時は) 革新的な映像で、今でもカルト的な人気を誇るSF映画「トロン (1982)」シリーズの第3作で、「デアデビル: ビーン・アゲイン」や「エラゴン 遺志を継ぐ者」等に関わったジェシー・ウィグトウが脚本を、「マレフィセント2」等を手掛けたヨアヒム・ローニングが監督を担っている。 サイバー空間上で活動する人工知能プログラムを現実世界に実体化する技術が発明された未来。 ディリンジャー社は無限のリソースから何度でも複製できる実体のAI兵士を世間に発表し軍需産業で覇権を握ろうとするが、その技術は未完成で、現実世界では29分で実体が活動限界を迎え崩壊してしまうという不都合な事実が隠されていた。 一方、ディリンジャー社の競合であるエンコム社を率いる研究者は、その29分の壁を打破する「永続コード」を発見する。 AI兵士のアレスはディリンジャー社の指令に従い、その「永続コード」をエンコム社から奪おうとする。 主人公のAI兵士を演じるジャレッド・レトは、紛れもない名俳優でありながら割と役を選ばない印象もあるが、今作でもその高い演技力を存分に発揮している。 受け取った指令を淡々と実行するだけだったAIに自主性や感情が芽生え、物語が展開するにつれてどんどんと人間的な表情や声の演技に変化していく演出は、ベタといえばそうだけれど明快で面白い。 もうひとりの主人公であるエンコム社のCEO役を演じたグレタ・リーと、ディリンジャー社のCEO役で出演しているエヴァン・ピーターズも、それぞれのキャラクターが俳優の高い演技力でしっかりと造形されている。 ただ、脚本と物語にはあまり意外性がなく、ほぼ想定内の展開に収まってしまっているように感じた。 「トロン」シリーズといえば革新的な映像表現が期待されることはやはり宿命で、1作目・2作目ともに楽しく鑑賞した自分もワクワクしながら今作を鑑賞したが、ある意味では期待通りではあったものの、革新的というまでには至らないかなぁ… という印象。 伝説的ともいえる1作目は別格として、「オブリビオン」や「トップガン マーヴェリック」を手掛けたジョセフ・コシンスキーによる2作目「トロン: レガシー (2010)」の画期的な映像と、ダフト・パンクによる同作の劇伴のかけ合わせが生み出した衝撃にはいま一歩届かないという感じ… ダフト・パンクの後を継ぐ形で劇伴を担当したナイン・インチ・ネイルズのスコアはどれもすごく良かったのだけれど… アングルやカッティングの演出に思い切りやケレン味が感じられず、どのシーンもそつなく無難な画づくりに収まっていたからだろうか。 1作目への敬意溢れるオマージュや、80年代カルチャーへのリスペクト (日本映画の「AKIRA (1988)」で観られる画期的な決めの構図や映像演出の数々も含まれていそう) が分かるシーンの数々はとても楽しかっただけに、少しだけ残念。 https://filmarks.com/movies/115270/reviews/208955071
- 罪人たち | Sinners (2025)
4.2/5.0 「クリード チャンプを継ぐ男」や「ブラックパンサー」シリーズの脚本・監督を手掛けたライアン・クーグラーによるホラー映画で、同監督作の多数で主演もしくは重要な役柄で出演してきたマイケル・B・ジョーダンが今作でも1人2役で主演している。 1930年代のアメリカを舞台に、単なるホラーとしてではなく、人種差別や黒人文化についてのテーマが組み込まれた物語になっていて、さすがはライアン・クーグラーと感じる。 マイケル・B・ジョーダンが演じる双子の兄弟はギャングとして生きてきたが、故郷のミシシッピに戻り、黒人たちが自由に集えるダンスホールを立ち上げる。 当時の米国は禁酒法と白人至上主義によって黒人の娯楽が著しく制限されており、黒人達は宗教と音楽、特にブルースとゴスペルによって自己を支えてきたという実際の歴史的背景が重い。 黒人のために作られたそのダンスホールに白人の音楽家の一団が現れるが… というところから、映画のジャンルが複雑に転回していく。 表層的にこの作品を見れば吸血鬼が登場するホラー映画ということになるが、今作の設定やモチーフはあくまでも物語のテーマを描く上で用いられているに過ぎない。 「吸血」は白人の支配階級によって行われた非白人に対しての搾取のメタファーであり、「富・文化・命の収奪の過去」が語り直されているのだと解釈するべきだろう。 ライアン・クーグラーが手掛ける作品は常に重厚なテーマが描かれており、鑑賞後にずっしりと重い読後感が残るものが多いが、決してそれだけではなく、俳優や監督をはじめとする製作スタッフ達による卓越した撮影・演出・編集技術によって非常に質の高いエンタテインメントに仕上がっている点には、いつも感心してしまう。 その中でも今作は特に、楽器演奏や歌唱シーンを中心とする音響演出のダイナミズムが、比類なきレベルの素晴らしさだった。 https://filmarks.com/movies/119046/reviews/206364074









