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  • アッシュ 〜孤独の惑星〜 | Ash (2025)

    3.1/5.0 音楽プロデューサーやDJとして知られるフライング・ロータスが監督したSF作品で、「ベイビー・ドライバー」や「ゴジラVSコング」に出演していたエイザ・ゴンザレスと、「ブレイキング・バッド」での壮絶な演技で一躍有名になったアーロン・ポールが主演を務めている。 「第9地区」や「チャッピー」のニール・ブロムカンプ監督が製作に携わっていると知り、ブロムカンプ監督作品の大ファンなこともあって楽しみに鑑賞した。 異星の居住区で目覚めた主人公は記憶を失っており、周辺を探ると何者かに惨殺された死体が多数転がっていて… というミステリー演出の導入は、古典SF風ではあるけれど惹き込まれる。 ネオンカラーを巧みに用いたライティングによる光と影のメリハリある描写はなかなかアーティスティックで、時折入る少々ジャンプスケア的なショック演出も効いている。 フライング・ロータス監督自身が全曲を書き下ろしたという独特で神秘的な劇伴も、存在感があって面白い。 脚本にはそれほど意外性のある展開や結末はなかったものの、殺人犯の正体を追求するフーダニット (whodunit) 形式と、失われた記憶やアイデンティティを再構築するというフィリップ・K・ディックの小説のようなテーマが、舞台を限定することによって生まれる閉塞感のあるSFホラージャンルの脚本としてまとまっていると感じた。 ただ、俳優も演出も劇伴にも大きな不満はないのだけれど、映画全体としてはそれほど面白いとは思えず、そつなく整えられたSF小品という感じにとどまってしまっているという、不思議な読後感が残る作品だった。 https://filmarks.com/movies/120538/reviews/195931780

  • アニアーラ | Aniara (2018)

    3.5/5.0 ノーベル文学賞作家ハリー・マーティンソンによる叙事詩「アニアーラ」を原作とするスウェーデン製作のSF映画。 回復不可能なほど環境が破壊された地球から火星への移住を目指し飛び立った巨大な宇宙船、アニアーラ号とその乗組員および乗客達の物語。 作品のジャンルで区分すればSF映画だが、この作品はそのSFの中でも極北といっていいほどテーマと物語が重く、暗い。 映画が始まって早々に主人公たちが乗る宇宙船が事故で燃料を失い、目的地への軌道からも大きく外れ、二度と安住の地へ辿り着くことはないという絶望的な状況が明らかになるからだ。 むしろこの映画は、絶望しか残存していない世界にあって、人間は何にどういった希望を見いだせるのか、あるいは見いだせず破滅していくのか、という究極的な問がテーマになっている。 この映画が製作されたのは2018年ながら、人間達が残酷過ぎる現実と向き合うことを放棄しAIによる癒やしに依存するというシーンがあり、AIが加速度的に進化・台頭してきたここ数年が鋭く予見されていたようにも感じる。 物語の起伏はほとんどなく、ひたすらに絶望だけが描かれ続けるという特殊な作品なので、明快な起承転結やハッピーエンドを望む人には絶対におすすめできないが、人間や文明社会の限界についての思考実験のような映画体験に興味がある人にとっては、一見の価値がある作品かもしれない。 ただ、ただ、よくもここまで… と驚くほどに暗く、一切の救いがないので、元気がない時は鑑賞しない方がいい。 https://filmarks.com/movies/84267/reviews/153411384

  • 動物界 | Le règne animal / The Animal Kingdom (2023)

    4.0/5.0 フランス発のSFスリラー映画で、カンヌ国際映画祭「ある視点」部門のオープニング作品に選出されたり、フランス国内では観客動員が100万人を超える大ヒットを記録した作品。 ほぼ現代と変わらないぐらいの近未来、人間が様々な動物へと突然変異するという原因特定不明の奇病が蔓延した世界を舞台にしながら、国家や全世界規模での混乱や恐怖をパニックムービーとして描くのではなく、フランスの田舎に慎ましく暮らすひとつの家族とその周辺の人々の物語を描くことにフォーカスがあてられている。 そして、そのミニマルなスタイルとマクロな世界観設定のかけ合わせがこの作品の個性になっている。 全世界規模の戦争が発生しながら主人公とその家族周辺だけで全篇が作劇されていたスピルバーグ版の「宇宙戦争」に近いスタイル。 奇病の発端やその原因等については本篇内でほとんど語られず、究明されることもない。 病気が蔓延した状況が元通りに戻ることがこの作品の脚本のゴールではないからだ。 奇病とは何か (何を寓意しているのか) とあえて言語化するならば、それは移民問題や人種差別問題、そしてそれらによって分断され続けている現代社会のメタファーなのだろう。 息子・父・母の3者がそれぞれに向けて一生懸命に示す愛の形が、儚く痛ましくそしてとても美しく、胸に突き刺さる。 特に主人公の父役を演じたフランス人俳優のロマン・デュリスの名演には心を打たれた。 https://filmarks.com/movies/110024/reviews/195663226

  • じゃりン子チエ | Chie the Brat (1981)

    4.1/5.0 はるき悦巳による同タイトルの漫画作品を原作とするアニメーション映画で、スタジオジブリへの参加以前の高畑勲が監督を担っている。 原作者のはるきが生まれ育った大阪・西成の街を舞台に繰り広げられる、ドタバタな人情物語。 今作の脚本は原作漫画の複数のエピソードをもとにしてあり、同じ舞台で起きるいくつかの短い物語が緩やかにつながったアンソロジーのような構成になっている。 主人公のチエは小学5年生で、同学年の友人やクラスメイトも登場するが、描かれる物語の中心はその周辺の大人達の悲喜こもごもであるところが特徴的。 父親のテツ・母親のヨシ江・祖母の菊・本名不明な祖父といった家族から、テツの悪友や裏社会で生きるチンピラ、そして人間並の知性を持つ猫達まで、全てのキャラクターが立っていて面白い。 また、自然な大阪弁を話せる声優を起用したいという高畑監督の意向のもと、今や伝説級ともいえる関西芸人・落語家・俳優達が多数起用されている。 中山千夏、西川のりお、上方よしお、芦屋雁之助、三林京子、京唄子、鳳啓介、桂三枝、笑福亭仁鶴、島田紳助、松本竜介、オール阪神・巨人、ザ・ぼんち、横山やすし、西川きよし… すごすぎる。 そして、画に台詞をあてるアフレコ方式ではなく、台詞を先に収録しその呼吸に合わせて画をあてるプレスコ方式が採用されていることもあり、どぎつくもイキイキしてテンポが良い大阪弁の会話劇を存分に楽しめる。 原作漫画のファンだった自分は、漫画を読む時に頭の中でイメージしていたそれぞれのキャラクターの声やリズムとの違和感が全くなく、本当に驚いた。 原作漫画もこのアニメーション映画も、主人公の明るいキャラクターや軽快なリズムの話運びがありながら、教科書的な生き方ができない不器用な人間達の哀しさ、愛おしさ、そしてしょうもなさ、が描かれている。 傷や欠点のない人間なんていないのだ、だから私達はぎこちなくも寄り添ったり離れたりしながら支え合い、日々のパトスをドタバタで覆い隠すように生きるのだ。 チエが疲れて眠っている間に交わされるその父のテツと母のヨシ江の短くも切ない会話のシーンに、今作に通底するテーマが象徴されている。 https://filmarks.com/movies/10134/reviews/152664841

  • ジャックは一体何をした? | What Did Jack Do? (2017)

    3.7/5.0 惜しまれながらも2025年1月に逝去した「カルトの帝王」ことデヴィッド・リンチによるモノクロ短篇。 ほとんどのシーンがリンチ自身が演じる刑事とその刑事に尋問されるジャックという猿の会話で構成されており、17分程度の短篇ながら、奇妙で不条理なリンチワールドを体感することができる。 殺害容疑をかけられた猿のジャックは (口元だけ人間の口が合成されていて) 喋ることができ、刑事との対話がいちおう成立しているのだが、その内容のほとんどが哲学的な言葉だったり解釈不能な単語で構成されていて噛み合わず、会話劇としての展開を理解することが極めて難しい。 誰もが理解できるような物語を作ることなどはなから興味がないと突き放されているように感じられながら、鑑賞者はその意味を深く考えてみたくなったり、ついていけないという絶望的な感覚そのものを楽しんだりできる、これぞリンチ作品ともいえる魅力が存分に詰まっている。 映画/ドラマのクリエイターとしてはもちろん、俳優としても素晴らしく魅力的だったリンチがもうこの世界にいない事実がとても悲しいが、リンチが遺した奇妙な作品達のそれぞれ唯一ともいえる価値は、これからもずっと孤高のものであり続けるだろう。 https://filmarks.com/movies/88735/reviews/194882276

  • エレクトリック・ステイト | The Electric State (2025)

    3.9/5.0 スウェーデンのイラストレーター、シモン・ストーレンハーグによるビジュアルブックを原作に、マーベル映画「キャプテン・アメリカ」シリーズの脚本を手掛けたスティーヴン・マクフィーリー、クリストファー・マルクスと、同じくマーベルの「アベンジャーズ / エンドゲーム」等の監督を手掛けたことで有名なルッソ兄弟によって製作されたSFアドベンチャー。 原作のディストピア感に満ちた不気味な世界観が大好きだったことと、コミック映画の頂点といってもいいだろう「エンドゲーム」のルッソ兄弟が監督すると知って以来楽しみにしていたのだけれど、待ちに待った予告篇を観た時になんだか少し原作よりもキャッチー過ぎる空気感が気になり、本篇公開までもやもやしてしまっていた。 そのもやもやは本篇を鑑賞してもほぼ変わらずで、原作が持っていた奇妙な世界観への想像が無限に拡がるような感覚は得ることが難しかったけれど、単品の映画としての完成度は高いとも感じた。 今作の舞台は1990年代のアメリカでありながら、1950年代に自律型ロボットが開発されたところが歴史の分岐点となり、我々が知るそれとは違う世界の物語になっている。 自律型ロボット達の反乱と、その拡大によって起きたロボット対人間の戦争で荒廃してしまった別世界の描かれ方が面白い。 ロボットたちの造形は、どのキャラクターにも別世界の歴史の変遷を想像させる個性があってとても魅力的だけれど、その中でもキーパーソン (キーロボット) になるキャラクターは私達の世界にも実際に存在する超有名な意匠がもとになっており、SFならではの「if (もしも)」を感じ、ゾクゾクするような興奮を覚えた。 脚本は良くも悪くも複雑さを極力排除した内容にハリウッドナイズされており、起承転結がしっかりあって、主要な登場人物とロボット達それぞれのドラマもありながらそのキャラクターアークが収まるべきところに収まる形になっている。 「エンドゲーム」級の超大規模なアクションやバトルを期待すると寂しい気持ちになるかも知れないけれど、終盤における決戦シーンには何度か見直したくなるほどかっこいいと感じるアングルや演出がいくつかあった。 出演俳優は、主人公を演じるミリー・ボビー・ブラウン、なりゆきでその主人公を助けることになる密輸業者を演じるクリス・プラットの2人を中心に、キー・ホイ・クァン、スタンリー・トゥッチ、ジャンカルロ・エスポジートといったスター俳優達が脇を固め、それぞれ素晴らしい演技をしている。 その中でも、ロボットの声優として出演するウディ・ハレルソンとアンソニー・マッキーの演技が特に印象に残った。 特にウディ・ハレルソンが演じるキャラクターの表情や台詞、そして勇姿には何度もグッときてしまった。 製作費がとんでもない額になっているといった話や、映画評論家からの評価が低いといった話もあるようだけれど、単品のSF映画としては十分に面白い。 原作の不気味で寒々しい世界観にもう少しだけ寄せて欲しかった気持ちはあるけれど… そうするとメジャー感が薄まってマニアックになってしまいそうだし、より多くの人に観てもらうための娯楽映画としては、キャッチーなトーンでまとめることが正解なのだろう。 https://filmarks.com/movies/119012/reviews/193767527

  • ミスミソウ | Liverleaf (2017)

    3.3/5.0 押切蓮介による漫画を原作とするバイオレンス・ホラー映画で、「ライチ☆光クラブ」や「ホムンクルス」等のダークな作風で知られる内藤瑛亮が監督を担っている。 映画鑑賞前に原作漫画を読み終わっていたので、こんなにダークで容赦のない暴力描写ばかりの物語をどうやって実写化するのだろうと思いながら鑑賞したが、ハリウッドや韓国等の映画と比較すればやはり薄っぺらく感じてしまう部分があるものの、概ね原作の見せ場を忠実に実写でやり切っているのではと感じた。 VFXのチープさや俳優達の演技の浅さが気になって物語に没入することが難しかったが、少なくとも監督がどんな画を形にしたいかについてはしっかり伝わってきた。 主人公を演じる山田杏奈やその主人公に想いを寄せる同級生を演じる清水尋也には存在感があったが、安っぽいVFXや血糊メイクで俳優に損をさせてしまっているような… また、主人公が窮地に陥ると「こんなところに◯◯が落ちていた」といった形であり得ないレベルの幸運を発揮し逆転アイテムを拾うシーンが頻発するが、これらは原作でもほぼ同様なので、ある意味仕方ないともいえる。 原作漫画でも映画でも共通する要素、というよりは根底に描かれているものとして、閉鎖的なコミュニティに生きる者達が感じる息苦しさがある。 客観的に考えればどうしたってまともではないと思える事態も、その閉じた世界に生きている者達にはその異常さを自覚することができないという社会の闇を、この作品はバイオレンスという手段を通して描出している。 小さな田舎街で生まれ育ち、いつも息苦しく生き辛い思いをしてきた自分は、劇中の暴力描写によって、少年時代に受けた傷を再び抉られるような幻視的な痛みを感じた。 https://filmarks.com/movies/75318/reviews/193770153

  • スマイル2 | Smile 2 (2024)

    3.8/5.0 不気味な笑顔を浮かべた人間が次々と自殺するというショッキングなホラー映画「スマイル (2022)」の続篇で、前作の監督だったパーカー・フィンが今作でも原作・脚本・監督を担っている。 前作の直後から物語が始まる形でその設定が直結しているが、今作の主人公は世界的に有名なアーティストで、比較的質素な舞台が多かった前作と比較すると画が都会的でとっても派手。 低予算で製作された前作が世界中で数百億円の興行収入を記録したことで、予算が大幅に増えたからだろう。 主人公が超常現象的な怪異に巻き込まれ、自身のトラウマ体験とも向き合うことを余儀なくされながらその事態の打開を計るというシンプルな脚本の中に、前作に引き続きゾワッとするほど強烈に怖い画がたくさん組み込まれている。 脚本の粗をあげようと思えば色々気になるけれど、この映画はそういった整合性よりはジャンプスケアも含めた恐怖演出に重点を置いていることが明らかなので、あまり深く考えずそれを楽しむことが正解のように思う。 画の表現が強烈なのでそこに注目が集まりそうだけれど、落ち着かない気持ちにさせる不気味なサウンドデザインもレベルが高い。 主人公を演じるナオミ・スコットの存在感は抜群で、その美しさで画をもたせる力があることはもちろんなのだけれど、誰もが憧れるであろう才能を持つスーパースターでありながら同時に精神性が未成熟かつクズでもあるという強烈な個性を持つ人物を演じきっており、素晴らしい俳優だと感じた。 ゴアなシーンや怪異の正体が現れるシーンの強い実存感が印象に残ったのでメイキング映像を探してみたら、CGで何でもできるであろうこの時代に、1980年代のSFやホラー映画の舞台裏を思わせるほどのアナログ手法で実物ベースの撮影をしていたことを知った。 監督のマニアックなこだわりやプライドをそこに感じ、楽しい気持ちになった。 https://filmarks.com/movies/117291/reviews/193222195

  • トラップ | Trap (2024)

    3.7/5.0 「シックスセンス (1999)」の終盤のどんでん返しが発明レベルかつ衝撃だったことから、それ以降に製作する作品のハードルが上がり過ぎているM・ナイト・シャマランによるサスペンス映画。 今作の設定で面白い点は、一見子煩悩な主人公が実は善人じゃないどころか連続殺人犯であるところに尽きる。 大切に思う娘のためにチケットを手に入れたアーティストのコンサートに入場した主人公が、FBIと警察による厳重な警備で会場ごと封鎖されていることに気づき、それが自分を逮捕するための罠だと気づいて何とか脱出するために策を練るという脚本が、ツイストが効いていて面白い。 また、そのために主人公がとる行動が人でなしだったり、あり得ないと感じるほど突拍子がなかったりするところも、ポジティブにいうと劇的で退屈しない。 会場から脱出するもしくは失敗するところで物語が決着するのかなと思いきや、そこからさらに物語が展開し第二幕が始まるところにも意外性がある。 主人公を演じるジョシュ・ハートネットは屈強でヒーロー感のある善人役のイメージが強かったが、今作では良き父親でありながら殺人犯という複雑な精神性を持つ役柄を見事に演じており、ハイレベルな演技を鑑賞することができる。 多数のファンがコンサートに集まるアーティスト役を演じるのは監督の娘かつシンガーソングライターとして活動しているサレカ・シャマランで、劇中でも歌唱を披露している。 作品鑑賞前は、アーティストの存在は舞台設定におけるマクガフィンのひとつで、親バカとして有名なM・ナイト・シャマランのささやかなお遊びなのだろうと思っていたが、それどころじゃないというか脚本上のキーパーソンともいえるほど重要な役どころになっており、さすがに親バカが過ぎるのではと笑ってしまった。 物語の終盤でどんでん返しがあるのかないのかについては、シャマラン監督の作品が公開される度に会話されるぐらいの鉄板ネタになっているようにも思うが、今作がどうなのかについての言及は避けたい。 個人的には、脚本全体を通して良くも悪くも映画的な飛躍が大き過ぎて破綻しているように感じるところもいくつかあるけれど、演出の巧みさや俳優の演技の説得力もあって鑑賞中は何となく納得させられてしまう魅力があり、サスペンス映画としての興奮を楽しむことができた。 https://filmarks.com/movies/114684/reviews/193222309

  • タイタン | The Titan (2018)

    2.9/5.0 「アバター」シリーズや「ターミネーター4」に出演していたサム・ワーシントンが主演しているSF映画で、NETFLIX資本で製作・配信されている、いわゆるNETFLIXオリジナル (B級) 映画の1篇といえそうな作品。 未来において人口爆発と環境破壊による絶滅の危機に直面した人類が、土星の衛星タイタンへの移住を計画し、その過酷な環境へ適応するための「強制進化」ともいえる人体改造実験が行われる、という物語。 軍隊で働いていた主人公は従軍時のサバイバル経験を評価されてその実験対象に選ばれるが、前人未到で成功が保証されていない改造のため、同僚達は次々と命を落としていく。 製作者達はおそらく、予測不能な人体変容とそれによる人間性の喪失といった部分の描き方において、巨匠デヴィッド・クローネンバーグによるホラー映画「ザ・フライ (1986)」あたりに敬意を払いながら参照したのだろうと感じた。 人類のためとはいえその行為に倫理的に問題はないのかといった科学者のジレンマについても描かれてはいたが、どうもそのあたりが曖昧なまま決着せずに物語が進んでいくので、テーマについての踏み込みが浅い印象が残ってしまう。 脚本としていちばん気になったのは、仮に人類の誰かが過酷な強制進化に成功しタイタンへの移住が実現したとしても、そんなに改造の成功率が低いのなら、移住できるのは結局ほんの一握りに限られて、大半の人類は改造に耐えきれず絶滅してしまうのでは… という点。 派手な画づくりはほとんどないながらもテーマには興味があったので最後まで鑑賞できたが、やや微妙な消化不良感が残るB級映画だった。 https://filmarks.com/movies/79092/reviews/193222370

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Kazari
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