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  • テレビの中に入りたい | I Saw the TV Glow (2024)

    3.8/5.0 その個性的かつ内省的な作風で近年注目を集めているジェーン・シェーンブルンが脚本と監督を務めたA24製作のサイコホラーで、「ブゴニア」や「哀れなるものたち」主演の俳優エマ・ストーンが製作に携わっている作品。 物語の始まりは90年代で、現実世界に居場所がないと感じている主人公の少年は、深夜に放送されていた「ピンク・オペーク」という番組に強く惹かれ、あるきっかけから出会った少し年上の少女の家でそれを一緒に観ることになる。 少女から「好きなのは女子? それとも男子?」と聞かれた少年は、「テレビ番組が好き」と答える。 トランスジェンダー女性でノンバイナリという自身のセクシャリティを公表するジェーン監督だからこそこれほど高い解像度で描けるのだろうと感じる、周囲と自身の間にある溝や息苦しさが、少年と少女の視点を通して可視化されている。 現実逃避の一環として深夜にTVを観るという誰にでも一度は経験がありそうな行為から、自己認識の揺らぎとの向き合いといった哲学的なテーマへ大きく飛躍する物語の展開が面白い。 物語の本筋とは強く関連しないけれど、大胆な彩度および明度設計がなされたレイアウトやアングルにも惹き込まれる。 加えて劇伴も使われ方も印象的で、ジェーン監督が持つ非凡な演出センスを感じる。 ただ、これは意図してそうされているということは分かりつつ、全篇を通してメタファーが多用されており、何が真実で何がそうではないのかの境界線を明確に提示しないスタイルの演出なので、結局のところどういうことだったんだろう? と鑑賞後に感じる人が少なくないかもしれない。 主人公の少年が選択した生き方と、ラストシーンのいかんともしがたい物悲しさには、胸がとても苦しくなった。 ジェーン監督の作品には、今後も注目していきたい。 https://filmarks.com/movies/114067/reviews/217277017

  • トランスミッション 観てはならない結末 | Transmission (2023)

    3.3/5.0 英国出身のマイケル・ハーストが脚本・監督した実験的な作風のモキュメンタリホラー中篇。 様々なトーンの映像が交錯しながら物語が展開する、多重構造形式の作品。 ある老人が深夜にTVの電源を入れると、失われていたはずのSF映画が放送され始める。 「トランスミッション」というタイトルのその映画に登場する宇宙飛行士達は「虚空 (ヴォイド)」と呼ばれる現象の調査中に、長く行方不明となっていた宇宙船を発見する。 その船内に残されていた記録映像には、虚空からの謎の信号を受信してから乗組員達の様子がおかしくなっていったことが判明する… という導入。 70年代の懐かしいトーンを思い起こさせるSF劇中劇 (映画) を軸としながら、冒頭で登場した老人がTVのチャンネルをザッピングするように、その劇中劇製作にまつわるドキュメンタリや立てこもり事件現場からの生中継等の番組が映し出されるという、なかなか独特な構成となっている。 ネタバレは避けるが、断片的に感じられたそれらの映像群がやがてひとつの結末に収斂していく脚本は挑戦的で面白い。 粗が気になる部分があったりカタルシスがやや弱いところもありながら、もし今作のプロットと演出スタイルをベースにより緻密な脚本と上質な演出でリメイクされたら、とても個性的なSFホラーに化ける可能性があるのではないかと感じた。 どこからどう見たってジョン・ランディス監督の「遊星からの物体X (1982)」のドリュー・ストルーザンが手掛けた有名過ぎるメインビジュアルをオマージュしたとしか思えないメインビジュアルについ惹かれて鑑賞したが、SFファンとしては思わぬ拾い物だった。 https://filmarks.com/movies/125331/reviews/217074121

  • ビーキーパー | The Beekeeper (2024)

    3.4/5.0 「サボタージュ」や「フューリー」などを手掛け、重量感や緊張感のあるアクション演出に定評のあるデヴィッド・エアーが監督を担い、ハリウッドにおけるアクション映画ジャンルのスーパースターとして名高いジェイソン・ステイサムが主演する作品。 かつて機密の暗殺部隊で工作員として働きながら、その職を引退し養蜂家として暮らしていた主人公が、ある悲劇をきっかけに特殊詐欺集団への復讐を開始するという筋書き。 ジェイソン・ステイサムのハイレベルな身体演技とデヴィッド・エアーの重厚で安定した演出の相性が良く、次々と繰り広げられるアクションや物語の展開に気が散ることなく没入できる。 作品タイトルでもある「ビーキーパー (養蜂家)」について、序盤では主人公が現役引退後に選んだ実直な職業ということ以上の意味がないように見えて、中盤にその言葉の定義が変わる展開があり、やや強引でこじつけ感はあったものの、なるほどと楽しむことができた。 とはいえ脚本に捻りがあると感じたのはそこぐらいで、他は徹頭徹尾、勧善懲悪型のシンプルなアクション映画の佳作といった印象。 あれこれ深く考えずに安心して楽しめる、こういった作品の鑑賞もまた良いものだと感じた。 https://filmarks.com/movies/113065/reviews/195663162

  • ワーキングマン | A Working Man (2025)

    3.2/5.0 「フューリー」や「エンド・オブ・ウォッチ」等で知られるデヴィッド・エアーが脚本・監督し、シルヴェスター・スタローンが共同脚本と製作を担ったアクション映画。 「エクスペンダブルズ」シリーズでスタローンと長く共演してきたジェイソン・ステイサムが主演している。 建設現場で働く退役軍人の主人公は、同僚や娘の安全を何よりも大切にしながら生活している。 現場上司の一人娘が失踪し、主人公はその捜索をする中で、人身売買組織の存在に気づいていく。 エアー監督 x ステイサム主演の「ビーキーパー」を鑑賞したことがあるアクション映画ファンにはほとんど同じ映画に見えるのではと思うほど、直球で混じり気なしのステイサム映画。 ステイサムはもはやどの作品でもステイサム以外の人物には見えず、そういう言外の約束があるかのよう。 脚本からはスタローン独特の美学が感じられるがそれも僅かで、深く考えずに鑑賞できるB級映画といえる。 主人公が救いに向かう女性役が、ただ泣いたり叫んだりするステレオタイプな弱者としての描かれ方ではなく、脅威に対して勇敢に立ち向かう形で描かれているところは、現代的といえば現代的。 デヴィッド・ハーパーやマイケル・ペーニャといった有名俳優の脇役での起用とその扱いの小ささが謎に豪華で少し面白い。 鑑賞後に何か心に残るものもは特にないが気軽に鑑賞できる、今作のようなB級アクション映画にも存在意義はあるけれど、デヴィッド・エアー監督にはもう一段階上の硬派で重量級の映画を形にしてもらえたらな… と思ってしまう。 「スーサイド・スクワッド (2016)」を監督した際の (監督本人の発言によると) 辛い経験から、大規模な予算や体制による映画づくりと距離を置いているのかも知れないけれど… https://filmarks.com/movies/120627/reviews/216993265

  • ザ・モンキー | The Monkey (2025)

    2.9/5.0 「ロングレッグス」を手掛けたオズグッド・パーキンスが脚本・監督し、「ソウ」シリーズや「M3GAN/ミーガン」等で知られるジェームズ・ワンが製作に携わった、スティーヴン・キングの短編「猿とシンバル」を原作とするホラー映画。 ある男が手に入れたゼンマイ式の猿の人形は、太鼓を叩き始めると「誰かが理不尽な死を迎える」という呪物だった。 その人形を遺品として受け継いだ主人公とその双子の兄弟の周囲で、不審死が連続発生していく。 主人公は人形を捨てたり破壊しようと試みるが、それは逃れられない呪いであることが分かってくる。 ジェームズ・ワンらしいショッキングかつポップな画づくりと、ホラージャンルの監督で注目されるオズグッド・パーキンスの個性が掛け合わさった演出は斬新で、恐怖するというより笑ってしまいそうになる様々な死に方が描かれる。 ほんの数分だけ出演しているイライジャ・ウッドの演技づけが奇妙で、他の俳優も程度の差はありながらどこか居心地の悪い読後感が残る存在として演出されている。 パーキンス監督にはやや独特でブラックなコメディのセンスがあるのかも知れない。 ただ、短編の原作内容に準拠しているとはいえ、物語にあまり起伏がなく、ひたすら困り顔の主人公の近辺で誰かが死ぬことが繰り返される展開に終始していて、脚本としての広げ方が少し弱いようにも感じた。 面白くなかったかといえばそんなことはないけれど、スティーヴン・キング原作の他のホラー映画と比較すると、やや見劣りする作品。 https://filmarks.com/movies/119972/reviews/216983104

  • 哀れなるものたち | Poor Things (2023)

    3.7/5.0 「女王陛下のお気に入り」や「聖なる鹿殺し」等を手掛けたギリシャ出身の鬼才監督、ヨルゴス・ランティモスによる超現実的なドラマ映画で、英国の作家アラスター・グレイによる小説の一部を原作としている。 ウィレム・デフォーが演じる異形の外科医の保護下にあって、出生に大きな秘密を持つ知能未発達の成人女性をエマ・ストーンが演じており、無垢の象徴ともいえる主人公の彼女が世界を知りながら人間として成長 (あるいは変化) していく過程がじっくり描かれる。 作品のテーマを現代社会の空気に照らし合わせて解釈するならば、女性の自立や男性依存からの脱却という、いわゆるフェミニズムについての映画といえるだろう。 ただ、説教くさい台詞やあからさまな演出があるわけではなく、あくまでも寓話的な脚本にテーマが織り込まれながら物語が展開していくので、その主張の強さに引いてしまうような歪さはない。 脚本やテーマはいったん横に置くとして、この映画では俳優達の凄まじい力量を全篇に渡って鑑賞できる。 主人公を演じるエマ・ストーンによる文字通り全てをさらけ出した演技はもちろん、その主人公に夢中になる弁護士を演じたマーク・ラファロによる人間の自堕落の表現に、俳優としての凄みを感じた。 また、主人公を含む登場人物達が纏う衣装のデザインや舞台美術には大胆さとクラシカルな美しさが共存していて、シーンが変わる度にハッとさせられる視覚の力がある。 加えて、安易にはそのスタイルを盗めないレベルの高度なアングル設計や魚眼レンズを用いた独創的な撮影技術も素晴らしい。 特に、舞台が切り替わる際に数秒間だけ入る扉画には、アートディレクションの伝統と革新が共存する美しさがあり、一見の価値がある。 他にも素晴らしいと感じたところをあげようと思えばキリがないけれど… 総じて、ジャン=ピエール・ジュネの「ロスト・チルドレン」を初めて観た時のような、視覚的な衝撃を受けた。 金獅子賞・ゴールデングローブ賞・アカデミー賞等の主要な国際賞にて様々な部門にノミネートされ受賞したことにも納得できる。 ウェス・アンダーソン、ジョナサン・グレイザー、アレックス・ガーランドといった映画監督達と並び、強烈な作家性と確固たるアートディレクションの能力を兼ね備えた最重要監督のひとりとして、ヨルゴス・ランティモスがこれからも注目され続けることは間違いないだろう。 ただ、映画が持つ芸術的観点での評価と、作品として単純に面白いかつまらないかという観点での評価は、必ずしも常に比例するものではなく、少なくともこの作品においては別のものとして考えた方がいいのかも… という読後感でもあった。 https://filmarks.com/movies/109937/reviews/185944690

  • エイペックス・プレデター | Apex (2026)

    3.1/5.0 自然 x サバイバルな映画を手掛けてきたアイスランド出身のバルタザール・コルマウクルによる、NETFLIX配信のサバイバルアクション。 「マッド・マックス 怒りのデスロード」や「アトミック・ブロンド」へ出演してきたシャーリーズ・セロンと、「キングスマン」シリーズの主演で知られるタロン・エガートンという、2大アクション俳優が出演。 主人公の女性は、クライミング中の事故でパートナーを失い、そのトラウマを抱えたまま日常生活へ戻れずに過ごしている。 辛い過去から逃れたい思いから訪れた荒野にて、一見親切だが不審に感じる男と遭遇する。 物語はとてもシンプルで、厳しい大自然を舞台にした人間 vs 人間のサバイバルが描かれる。 主人公を演じるシャーリーズ・セロンの衰えを知らないフィジカルアクションは見どころがあり、それを殺人鬼としてハントする役のタロン・エガートンは、そのアクションだけではなく、これまで多く演じてきたヒーロー役とは真逆の狂気に染まった悪役を演じており、俳優としての新境地を感じた。 ただ、物語の結末まで退屈したり粗が気になったりはしなかったものの、特筆すべき展開があるわけでもなく、冒頭で提示されたトラウマを終盤のクライマックスで払拭するという、良くも悪くも型通りの筋書きで、うーんという読後感ではあった。 2大俳優のアクションを存分に楽しめばいいじゃないという風にも思うけれど、それにしてはアングルやカメラワークがやや凡庸で、せっかくならもっとダイナミックな画が観たかったなぁという気持ちになる。 とはいえ、相当な製作予算が割かれたであろうことが分かる全体的な画づくりの品質や、主演2名の身体演技レベルの高さは、観て損はしないといえる。 https://filmarks.com/movies/126670/reviews/216835387

  • ブゴニア | Bugonia (2025)

    4.0/5.0 「ミッドサマー」や「ヘレディタリー」を監督したアリ・アスターが製作し、「哀れなるものたち」を手掛けたヨルゴス・ランティモスが監督した、ジャンルの分類が難しいサスペンスでありブラックコメディ。 2003年に韓国で製作された「地球を守れ!」のリメイク作品。 エマ・ストーンが演じる主人公は巨大製薬企業のCEOで、社会的な成功者ではありながら、その非情さから悪の象徴と見做されている。 そのCEOを誘拐・監禁するのが、ジェシー・プレモンスが演じる養蜂家で、密かに地球を支配しているアンドロメダ星人が存在するという陰謀論に取り憑かれている。 養蜂家とその従兄弟はCEOを追い詰め、4日後の月食の夜に地球を訪れるアンドロメダ皇帝に自分達を会わせろと要求するが、知恵が回るCEOとの対話を重ねるうちに、言いくるめられそうになる。 「女王陛下のお気に入り」や「哀れなるものたち」でヨルゴス・ランティモス作品に出演してきたエマ・ストーンと、「ブレイキング・バッド」や「シビル・ウォー アメリカ最後の日」で一度観たら忘れられないほどの静かな狂気を秘めた演技で注目されたジェシー・プレモンスの演技レベルの高さが、映画の品質を下支えしている。 特にジェシー・プレモンスの、抑制的かつ繊細な表情と身体の演技は素晴らしく、役を演じているのではなく実際にこういう哀しさと滑稽さを纏った人物が実在していると錯覚してしまうほど。 全く予期せぬ方向に展開し、何が真実でどれが妄想なのか分からなくなる脚本には驚かされる。 虚構のような物語にすがらざるを得ない人間の悲哀や、それを他者にも押し付けようとする残虐さが、皮肉たっぷりに描かれていて、笑うべきなのか真面目に受け止めるべきなのかの判断が簡単ではない、複雑な読後感が残る。 一筋縄ではいかない作品を観たい映画ファンにはぴったりな、強烈なオリジナリティを感じる作品だった。 https://filmarks.com/movies/123808/reviews/216911973

  • 28年後... 白骨の神殿 | 28 Years Later: The Bone Temple (2026)

    3.7/5.0 ダニー・ボイル監督 x アレックス・ガーランド脚本による英国発のSFホラー「28日後…」シリーズの4作目となる作品で、今作の監督は「キャンディマン」や「マーベルズ」のニア・ダコスタが担っている。 人間に感染すると凶暴化するウイルスが蔓延し人類文明が崩壊してから28年後の世界を舞台に描かれる、全3部作の2作目。 前作「28年後…」で生まれ育った孤島から英国本土へ行くと決意した主人公の少年は、カラフルなトラックスーツを着た謎の集団に命を救われるが、その集団は悪魔を崇拝するカルト教団だった。 主人公は、ウイルスによって凶暴化した感染者達だけでなく、狂信的な信仰と暴力によって他者を支配する人間達との向き合いも余儀なくされる。 主人公の少年の視点を中心に物語が展開していた前作と打って変わって、今作ではその役回りがかなり後退している。 その分、前作から引き続き登場する、崩壊した世界においても理性を保っている医師の行動が、物語を牽引する構造になっている。 その医師を演じるレイフ・ファインズの存在感はやはり素晴らしく、一流俳優ならではの演技の幅に圧倒される。 感染者をただのゾンビのような存在と見做すことをせず、限られた物資でその治療を試みようとする医師の姿には心を打たれる。 ただ、今作は描かれる舞台がこれまでのシリーズと比較してかなり狭く、丁寧で安定した演出で描かれているものの、ややこじんまりしたスケールの物語であるとも感じる。 脚本の展開や映画的な結末はもちろんしっかりあり、それぞれの登場人物のキャラクターアークの変遷も丁寧に描かれてはいるのだけれど、主人公の少年の存在感や役回りが弱いこともあり、やや不完全燃焼な印象があった。 次回、3部作の完結篇はシリーズ全体のキーパーソンであるダニー・ボイルが監督に復帰する方針ということで、どのような形で物語が締めくくられるのかを楽しみに待ちたい。 https://filmarks.com/movies/124737/reviews/216835356

  • アバウト・タイム 愛おしい時間について | About time (2013)

    4.2/5.0 「ブリジット・ジョーンズの日記」や「イエスタデイ」の脚本で知られるリチャード・カーティスが脚本・監督を手掛けた作品で、「エクス・マキナ」や「スター・ウォーズ/フォースの覚醒」に出演しているドーナル・グリーソンと、「ドクター・ストレンジ」や「HELP -復讐島-」に出演しているレイチェル・マクアダムスを中心に描かれるロマンティックSF。 主人公の男性が21歳の誕生日に父から告げられた秘密は、強く願えば自分自身の過去のある瞬間に戻ることができるという、タイムトラベルの能力を持つ家系だということだった。 その能力を恋人づくりに使おうと決めた主人公は、何度か失敗を繰り返しながら最愛の女性と両想いになるのだけれど、過去に戻ってそれを改変することには代償があり… という物語。 タイムトラベル系SFでよく語られるバタフライ効果 (些細な出来事の差異が未来に破局的な影響を及ぼすリスク) が今作でも取り扱われており、主人公はどのように能力と向き合い、どのように生きていくべきかを問われる。 何よりも、主演2人を初めとする俳優達の演技が素晴らしい。 主人公を演じたドーナル・グリーソン出演の映画では、確かに存在感が光ってはいたもののあくまでも脇役としてのそれだと感じていたが、今作における決して大げさではない抑制された演技で、複雑な感情の機微まで繊細に表現できる俳優だと知り、驚かされた。 その相手役を演じるレイチェル・マクアダムスの存在感はやはりさすがで、華美に飾らなくともしっかり見えてくる芯の美しさや、屈託のないチャーミングな笑顔に惹き込まれる。 今作では脇役として出演しているマーゴット・ロビーやヴァネッサ・カービーといった一流俳優の使い方もすごく贅沢。 終盤では主人公とその父の物語に焦点が当てられるが、父役を演じたビル・ナイの品がある演技には強く心を打たれた。 本格SF好きにとっては設定のアラが気になる部分もありそうだけれど、そういうシビアな見方をするよりは、タイムトラベルという物語装置を軸にした人生についての寓話だと捉えて鑑賞することがより良いように思う。 https://filmarks.com/movies/56354/reviews/216754988

© 1998-2026 Shoji Taniguchi

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