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- カッコウ | Cuckoo (2024)
3.9/5.0 アルプス山奥のリゾート地を舞台とするドイツ・アメリカ合作の映画で、ハンター・シェイファー主演。 脚本・監督はドイツ出身のティルマン・シンガー。 あるきっかけで米国からドイツへ引っ越すことになった主人公とその家族が、一癖ある現地の人物達と親交していく中で、怪異と遭遇する。 アルバイトをすることになったリゾートホテルで宿泊者が異常な行動をとったり、主人公の妹が超音波のような高音を発したり… 外界と隔絶された世界に何が潜み、何が起きているのかを、主人公は目にしていくことになる。 ネタバレを避けるため詳しい内容を書くことは控えるが、スリラーやホラーといったひとつのジャンルに当てはめにくく、SF的な解釈も含め鑑賞者に想像の余地が大きく託される脚本で、その読後感がとてもユニーク。 ハンター・シェイファーの存在感や演技力の高さはもちろん、ティルマン・シンガーの独特な演出センスも全篇に渡り光っている。 白黒明快でいわゆるお手本的な物語の展開とは全然違う形の脚本で、鑑賞していてやや混乱する部分もあるけれど、その混乱の後味も含めての映画体験が設計されているように感じた。 スリラー映画としてその恐怖演出を味わうことも、配役や脚本に隠喩的に秘められているであろう社会批評テーマについて鑑賞済の人々で語り合うこともできる、良い作品。 https://filmarks.com/movies/115218/reviews/220060156
- 私がビーバーになる時 | Hoppers (2026)
3.7/5.0 ピクサー製作のアニメーションで、自然と文明社会の共存をテーマに、動物達の視点と人間達の視点の両方で描かれるアドベンチャー映画。 同社にてストーリーボードアーティストを務めてきたダニエル・チョンが脚本・監督を担っている。 オレゴン州のビーバートンに住む主人公のメイベルは、祖母との大切な思い出がある湿地が市の道路建設計画で埋め立てられようとしていることを知り、それを推進する市長のジェリーと衝突する。 計画を止めるためにはビーバー達を呼び戻すことが鍵だと考えた主人公は、湿地からいなくなってしまった彼らを探し始める。 ドタバタながら無駄がないピクサーらしいコメディ演出が健在で、物語の運びに安定感がある。 主人公があるきっかけでビーバー (型のロボット) に自身の意識を転送し、動物達と会話ができるようになって知る、人間界とは違う動物界の掟が新鮮かつ残酷で驚きがある。 物語の展開としては混乱なく整理されていながら、動物と人間あるいは善と悪といった単純な二項対立ではなく、それぞれの側のキャラクターに複層的な行動原理や葛藤が設定されているところに、脚本構成の高度なスキルを感じる。 もちろん、大人から子どもまで誰もがワクワクするようなアクションやスペクタクルも盛りだくさんで、作劇と演出の巧みさに驚かされる。 総じて、さすがはピクサーと感じることができる良質な作品だった。 https://filmarks.com/movies/118139/reviews/220060139
- ゼイ・ウィル・キル・ユー | They Will Kill You (2026)
3.8/5.0 「IT」二部作や「ザ・フラッシュ」の監督を担ったアンディ・ムスキエティが製作し、ロシア出身のキリル・ソコロフが監督を務めた密閉空間からの脱出型ホラーアクション。 「デッドプール2」や「ジョーカー」に出演し鮮烈な印象を残したザジー・ビーツが、高度なアクションを主演で担っている。 主人公のメイドは、マンハッタンの超高級マンションに住み込みで働かせてもらうことになる。しかしそのマンションの実態は、ほぼ全ての住人が悪魔崇拝者で、悪魔に捧げる生贄を求めているという恐るべきものだった… という導入。 住人達は、悪魔との契約で不老不死の存在となっており、主人公が何度とどめを刺しても復活する。 そうではない生身の主人公はどんどん追い詰められながらも、マンションに潜入した本当の目的である妹の救出を果たしたうえでの脱出を試みる。 この映画のみどころは、やはりそのアクション演出の面白さだと言い切ってしまって差し支えないだろう。 血みどろでグロテスクな表現は多いものの、キレとケレン味に溢れるアングル・カッティング・ライティング・サウンドディレクション等の様々な演出のレベルの高さは、アクション映画好きであれば一見の価値がある。 脚本は粗っぽいように見えて丁寧に構成されており、その結末まで違和感なく理解することができる。 隠されたテーマを考察するようなタイプの作品ではないかなと思いながら、劇中に登場する老夫婦が2人の過去の体験を語るシーンにて、作品の舞台となる悪魔崇拝マンションに老夫婦が匿われた理由だけでなく、かつて米国が抱えていた後ろめたい暗部にまで切り込んでいて、そこに鈍く光る鋭さがあった。 映画賞を獲得したり、歴史に燦然と輝くような作品ではないかも知れないけれど、ザジー・ビーツの熱演も含め、とても価値のある娯楽作品だと感じた。 https://filmarks.com/movies/126090/reviews/220060115
- パニック・フライト | Red Eye (2005)
3.5/5.0 ホラー映画シリーズの金字塔ともいえる「エルム街の悪夢」の創造者でもあり、「スクリーム」シリーズを手掛けたことでも有名なウェス・クレイヴンが監督を手掛けたスリラー映画。 「HELP / 復讐島」や「アバウト・タイム」のレイチェル・マクアダムスが主演し、「オッペンハイマー」で主演を務めたキリアン・マーフィが共演している。 高級ホテルのフロントマネージャーを仕事とする主人公の女性は、その滞在地から自宅へ戻るために向かった空港で、ある男性と出会い親近感を持つ。 飛行機に搭乗すると、偶然にも臨席がその男性だった… という、まるでラブコメディのような導入。 しかし、ホラーの巨匠ウェス・クレイヴンの作品なので、物語がそのままのトーンで続くはずはなく、そこからショッキングな展開が続く。 様々な表情や役柄を演じ分けられるキリアン・マーフィの演技力の高さがよく分かる。 誰もが認めるであろうレイチェル・マクアダムスの美しさはさておき、その様々な表情の変化が面白い。ただか弱い女性を可哀想に演じるのではなく、飛行機内という限定空間で葛藤・勇気・使命感といった心理の切り替わりが丁寧に描かれていて、スリラー映画ならではのドキドキがある。 フライト中の機内だけで完結する脚本と思いきや、その着陸後も物語が続き、むしろその後のウェイトがかなり大きかったことと、作品のトーンが後半でスリラーからアクションにややスライドしたことが意外だったけれど、主人公と隣席の男性だけでない様々な登場人物も物語の主軸に絡まりながら結末へ向かう展開は、緊張感も持続して面白い。 序盤で提示されていた小さな伏線達が終盤できちんと回収されたり、主人公が抱えていたトラウマから脱却するといった部分も丁寧に描かれており、90分程度のコンパクトな時間で鑑賞できる娯楽映画として良質な作品。 https://filmarks.com/movies/45248/reviews/220060077
- かくかくしかじか | Blank Canvas: My So-Called Artist’s Journey (2025)
3.2/5.0 漫画家の東村アキコによる同題の自伝的漫画作品を原作とする青春ドラマ映画で、永野芽郁が若き日の東村アキコを、大泉洋がその恩師の絵画教室の先生を演じている。 主人公の明子は、漫画家になるという夢を持ちながら特別な努力をせずダラダラ過ごしている高校生。 "美大出身の漫画家" という箔がほしい主人公は、あるきっかけから美大受験のために絵画教室へ通うことになるが、そこで出会った先生の指導はとにかく厳しいスパルタ式で、困惑したりぶつかりながら絵と向き合っていくことになる。 自身が東村アキコ先生と同じ金沢美術工芸大学の卒業生で在学期間も重複していたことや、作品内に大学のキャンパスや金沢の街の描写がたくさんあると聞いたこともあって原作を読み、その物語に心を打たれたので、映画版はどんな作品になっているだろうと気になり鑑賞した。 映画の中で描かれる、絵画教室で石膏像と向き合う息が詰まる時間や、入試実技試験 (デッサン) の焦燥感、制作課題からの逃避を繰り返す日々が当時の自分にもたくさんあったこと等を思い出し、ほろ苦い気持ちになった。 スパルタながら真っ直ぐで誰よりも主人公の将来のことを思う恩師の先生を演じた大泉洋の存在感は素晴らしく、クセが強い俳優ではあるけれど、今作はぴったりの配役だと感じる。 永野芽郁が演じた若き頃の東村アキコは、主人公としての華があり演技も決して悪いものではないのだけれど、演出づけの弱さもあってか、原作漫画に描かれていた若者ならではの底なしの軽薄さや卑怯さ、後ろめたい気持ちを抱えながら前に進む人間の業の深さといった要素を見つけることが難しく、その上澄みの部分だけが浅く表現されているように見えた。 そのこともあってか、絵画教室から美術大学へ進学し漫画家としてデビューして名を成していく主人公の物語が、実際には大変な苦労や挫折がたくさんあったはずなのに、まるでトントン拍子だったような印象になっているところが残念。 結末についても、映画版では原作漫画の内容から大きく改変されて主人公の心の救済が明確に描かれているが、良くも悪くも物語として分かりやす過ぎると感じる。 きっと一生解決しない痛みを心に持ち続けながら、それでも漫画家として描き続けていくと覚悟を決めた東村アキコという作家の哀しい美しさを、映画版でも観たかった。 それらはさておき… 金沢美術工芸大学の卒業生のひとりとして。 大学生活パートのロケーションに金沢美大の実際のキャンパス (東村さんや私が通っていた頃の旧キャンパス) が使われていて、飽きるほどその足元を通ったエントランスホールのニケ像や大階段の空間が、当時と全く同じ空気で再現されていたことがとても嬉しかった。 ボロボロのロッカーがひしめいて日中でも真っ暗な、絵の具や埃で薄汚れた狭いあの廊下は、間違いなく自分の青春の一部だったと思う。 https://filmarks.com/movies/120216/reviews/219759259
- 人間農場 | Human Farm (2024)
3.0/5.0 山田玄徳による8分程度の短篇で、48時間で映画を制作するThe 48 Hour Film Projectというイベントで制作・上映されたものとのこと。 社会人養殖場で出荷される時を待つ人々と、その管理人についての物語。 テーマはいわゆる「指示待ち人間」が増えているという社会批評とその風刺だということは、分かりやすいほどに分かる。 その描かれ方も、48時間という限られた時間 (と当然ながらロケーションや予算も) の中で具現化するという意味では、成功しているように見える。 制約が多い条件下だと中途半端なVFXや小手先の編集テクニックに走って画が安っぽくなりがちだけれど、今作はそうはせずに可能な限り撮ったままの画づくりをベースに成立させようという作り手達のスタンスを感じられた。 これは自分の好みの問題なのかも知れないと思うけれど、邦画ならではの俳優達の演技のわざとらしさや稚拙さが、どうしても時々垣間見えてしまうところが物語への没入の妨げになり、そこを残念に感じてしまう。 今作の出演者達は舞台演劇の俳優中心だろうか、ややオーバーアクトで戯画的に偏重している印象があった。 脚本や世界観のリアリティラインがシビアに問われる映画という表現手法だとそういった綻びを隠しにくいが、抽象と具体をまたぎながら物語を描ける (セットや小道具を最小限に絞った) 舞台劇として再構成すると、よりテーマをソリッドに描けるようになって、面白い作品になるのかも? https://filmarks.com/movies/122723/reviews/219269156
- ハン・ソロ / スター・ウォーズ・ストーリー | Solo: A Star Wars Story (2018)
3.9/5.0 「スター・ウォーズ」シリーズの重要な登場人物である密輸業者のハン・ソロが、いかにして相棒のチューバッカや愛機ミレニアム・ファルコンと出会い、アウトローとして生きていくことになったかが描かれるスピンオフ作品。 「スパイダーマン: スパイダーバース」シリーズを手掛けたフィル・ロード & クリス・ミラーが監督していたが途中降板となり、名匠ロン・ハワードがその座を引き継いでいる。 脚本は「スター・ウォーズ」映画版の脚本を手掛けてきたローレンス・カスダンと、その息子のジョナサン・カスダン。 孤児として苦しい生活を送るハンとキーラは、宇宙へと逃亡することで転機を狙うが、ハンだけが脱出に成功し、離ればなれになってしまう。 パイロットとなりキーラを迎えに行くことを誓うハンは入軍し、送り込まれた戦地であるギャング達と出会い、運命が急展開していく。 超有名SFシリーズの象徴のひとつともいえるハン・ソロと、ハリソン・フォードが演じたそのキャラクターを、違う俳優が引き継ぎ演じることには相当のプレッシャーがあっただろうと想像できる。 オールデン・エアエンライクが演じた若き日のハン・ソロについて、公開当時は批判的な評価が多かったが、少なくとも自分は素晴らしい実在感がある (そしてそのためにエアエンライクが相当な努力を重ねたであろうこと) と感じた。 表層的なモノマネではなく、チャーミングでユーモアがあって、でも孤独の哀しさを知っていて、生来の優しさを隠せないという、複雑な人物像が立体的に描かれている。 ハンの師匠的な存在となったギャングを演じるウディ・ハレルソンや、ハンに愛されながらもハンとは別のアウトローとして生きざるを得なかったキーラを演じたエミリア・クラークの繊細な演技も素晴らしく、映画の品質を下支えしている。 ロード&ミラーがもし監督を降板せずにこの作品を完成させたら、どんな破天荒な物語が観られただろうとはどうしても思ってしまうけれど、ロン・ハワード監督による伝統重視の安定感と現代的な大胆さが共存する構図づくりやアートディレクションの美しさは、時を経て再評価されても良いように感じる。 https://filmarks.com/movies/68386/reviews/152617925
- スター・ウォーズ / マンダロリアン・アンド・グローグー | Star Wars: The Mandalorian and Grogu (2026)
3.7/5.0 ジョージ・ルーカスが創造した超有名スペースオペラ映画シリーズのスピンオフとしてDisney+で配信された実写ドラマ「マンダロリアン」の劇場版。 ルーカスの最後の愛弟子でありその意思とビジョンを継ぐ者といわれるデイヴ・フィローニが脚本と製作を、フィローニと共にスター・ウォーズの数々のドラマシリーズの製作総指揮を務めてきたジョン・ファヴローが監督を担っている。 銀河帝国が反乱軍に打ち破られて崩壊し、まだ政情が安定しない時代。 厳しい掟に従って生きるマンダロリアンのディン・ジャリンと、まだ子どもながら50歳という長命種族のグローグーは、賞金稼ぎとして新共和国軍の依頼に応えることで生計を立てていた。 帝国の復権を狙う存在を察知した新共和国軍は、それを防ぐために2人へ新たな依頼をする。 スター・ウォーズといえばライトセーバー、ジェダイナイト、シスの暗黒卿、そしてフォースといった数々の神話的要素と、埃や汚れにまみれて生活感が感じられる宇宙船や戦艦というSF要素が掛け合わさった唯一無二の世界観が特徴だが、今作にはフォースを除いた前者の要素がほとんど出てこず、ほぼ純粋なSF活劇として描かれている。 ドラマシリーズで参照されていた「子連れ狼」等の時代劇や西部劇の要素は今作でも引き続き感じられつつ、良くも悪くもドラマ版の超拡大スペシャルといった趣。 脚本の展開に退屈するところはなく、次から次へと舞台が切り替わり、映画版ならではのダイナミックな演出もたくさんで、自分のようなスター・ウォーズファンには嬉しいメカやキャラクター達も多数登場してワクワクする。 ただ、映画単品としての完成度は十分に高く楽しめるものの、それと同時にスピンオフの限界も感じてしまったというのが正直な気持ち。 ディンとグローグーの物語にはまだまだ拡張の可能性がありそうだけれど、どこまで突き詰めても、よくできたSF冒険活劇の域を出ないのではないか。 主人公がそもそもジェダイではなく、いわゆる映画正伝 (エピソード4から始まった9部作) とは違う扱いなので仕方ない部分もあると分かりながら、それによって避けがたく発生する神話性の欠落は、スター・ウォーズという物語を構成する決定的な要素の不在に感じてしまった。 シークエル (J.J.エイブラムスが始めたエピソード7から8, 9までの3部作) が中盤ぐらいからぐらつき始めて有終の美を飾れなかったことから、ルーカスフィルムは「マンダロリアン」をはじめとするスピンオフに活路を見出して様々なシリーズを展開しているけれど、そろそろまた正伝に向き合ってくれないかなと感じているスター・ウォーズのファンは、自分だけではないように思う。 超巨大フランチャイズで失敗が許されないプレッシャーから足踏みが続いているのだろうけれど、良質ながら無難で再生産的な作品がずっと続くよりは、例えまた評価が割れようとも、挑戦的で革新的で、何よりも神話性をまとった正伝が観たいなぁ… スター・ウォーズは自分にとって本当に特別で、いちばん思い入れがある映画シリーズだから。 https://filmarks.com/movies/114240/reviews/218005748
- ザ・ボーイズ ファイナル・シーズン | The Boys Season 5 (2026)
3.2/5.0 エリック・クリプキが企画・製作総指揮を担うSFドラマ「ザ・ボーイズ」の最終シーズン。 DCやMARVEL等のスーパーヒーローものと現代社会を痛烈に風刺した同題のコミックを原作としつつ、ドラマ独自で展開してきた物語の完結篇。 巨大企業の管理下にあるスーパーヒーロー達が実は腐敗していて社会を揺るがす脅威となり、特殊能力を持たない一般人達がその打倒のために無謀な闘いを挑むという物語が遂に最終局面を迎える。 最強のヒーローでありながらその幼稚過ぎる頭脳で傍若無人に振る舞うホームランダーは、文字通りの神として米国に君臨しようとする。 ホームランダーへの復讐に命をかける「ザ・ボーイズ」のリーダー、ブッチャーは、スーパーヒーロー全員に死をもたらすウイルス兵器を完成させる。 シーズン1 第1話の衝撃的な開幕から強烈に心を掴まれ、毎シーズンが配信される度に鑑賞してきたドラマシリーズだったけれど、シーズン4あたりから少しずつその脚本や展開に綻びが目立つと感じてきた。 それでも今回のティザービジュアル達にはとてもワクワクして、最終シーズンにふさわしい怒涛の展開や圧倒的な結末が観られることを期待したものの、本当に必要だろうかと感じてしまう緊張感のないエピソードがあったり、スピンオフシリーズの「ジェン・ブイ」で登場し今回本篇に合流した魅力的なキャラクター達の役割がどうにも中途半端だったりで、少しガッカリしてしまったというのが正直なところ。 何より、ティザービジュアルで描かれていた風景が本篇には一切登場しないという、ティザー詐欺のようなプロモーションは良くない。 ヒーロー達の象徴ともいえるタワーが崩落するシーンはないし、壊滅する街をホームランダーが宇宙から見下ろすシーンもない。 ホームランダーとブッチャーの因縁にはしっかり決着がつき、カタルシスもあるけれど、そのスケールはとても控えめで、ダイナミズムにも欠けていた。 主人公のヒューイが愛してやまないビリー・ジョエルの名曲 (特にその歌詞) がフィーチャーされるシーンでは不意打ち的にすごく感動してしまったけれど、それは奇遇にも自分がヒューイと全く同じく、子どもの頃から今に至るまでジョエルの歌を聴き続けてきたからで、それほど思い入れがない鑑賞者にはあまりピンとこないかもしれない。 エリック・クリプキはインタビューで「ゲーム・オブ・スローンズのように、最終シーズンの数話の出来が悪いだけで駄作だと言われることに恐怖している」「すごく慎重に、あらゆることを疑ってかかりながら、なんとかやり遂げた… んじゃないかな」といったことを語っているけれど、もしかしたら製作中から既に、この最終シーズンが鑑賞者の多くを満足させる内容に仕上がっていないことに製作者達自身が気づいていたのかもしれない。 本篇としての「ザ・ボーイズ」はひとまず完結しつつ、その前日譚である「ヴォート・ライジング」や、舞台となる国を変えての「ザ・ボーイズ: メキシコ」の製作が進行中とのことだけれど、本篇がやや尻すぼみ的に完結してからの盛り返しは、果たして成功するだろうか。 https://filmarks.com/dramas/5020/23171/reviews/21945006
- プロジェクト・ヘイル・メアリー | Project Hail Mary (2026)
4.3/5.0 「火星の人 (The Martian)」で一躍注目を浴びた米国の小説家、アンディ・ウィアーによる小説を原作とするSF映画で、「スパイダーマン: スパイダーバース」の製作・脚本を手掛けたフィル・ロード & クリス・ミラーが監督を、「ブレードランナー 2049」や「ファースト・マン」で主演したライアン・ゴズリングが主人公を演じている。 主人公が目覚めると、自分が記憶を失っていることに気づく。 そこは地球から約12光年も離れた場所にある宇宙船の中で、同乗したとみられるクルーは既に死んでいた。 主人公は自分が何者だったのか、なぜ宇宙船に乗り込むことになったのかを思い出そうとする。 そして、太陽の温度が謎の現象によって低下し、人類が数十年内に滅亡する危機にあるという記憶がよみがえってくる。 その回避方法発見のため孤独な探索を続ける主人公は、人類文明によるものではない宇宙船を発見する… 回想シーンで描かれる地球での日々以外の宇宙パートのほぼ全部がライアン・ゴズリング (と、その相棒となる異星人) の芝居で構成されていながら、楽観主義と物悲しさの両方が感じられるゴズリングの演技と巧みな脚本構成に惹き込まれる。 現代のVFX技術がふんだんに使われながらもそれに頼りきらず、実物人形のアナログ操演で表現された異星人の演技が素晴らしく個性的。 異文明とのファーストコンタクトものとしてはやや緊張感に欠けるかもと感じられるものの、奇妙なコンビの奮闘を観ていてとても楽しい気持ちになる。 「ヘイル・メアリー (最後の神頼み)」として故郷から遥か遠くの宇宙へ送り出された2人のミッションがどのように決着するのか、原作小説を読了済ながら、映画を鑑賞していて久しぶりにドキドキしてしまった。 小説版と映画版で主人公とその相棒それぞれの感情の描かれ方にやや差異があるものの、映画という表現媒体への翻案としてはとても成功している作品だと感じた。 ロード & ミラーコンビの、ポジティブで笑えるけれど感情に強く訴えかけてくる演出の持ち味が最大限に発揮されている。 SFファンのみならず誰もがワクワクできる、とても高品質な大作SF映画といって間違いないだろう。 https://filmarks.com/movies/123582/reviews/217632832









