top of page
Shoji Taniguchi.com logotype

Search Result

271 results found with an empty search

  • 首 | Kubi (2023)

    3.5/5.0 羽柴秀吉・織田信長・徳川家康といった日本の歴史に大きく名を残す人物達を中心とした時代劇映画で、監督の北野武がかつて手掛けた「座頭市」がとても面白かったので、期待して観賞した。 「本能寺の変」という大きな事変をモチーフに、大名・武将・茶人・忍者から農民までが群雄割拠し、戦乱の世における様々な地位と立場の人間達の思惑と画策が入り乱れる。 史実とはいえ数百年もの過去ということもあり、美化や省略して語られることも少なくない戦国時代について、よくよく考えてみれば血で血を洗うような醜い争いがそこに間違いなくあったのだとあらためて突きつけられるような脚本だった。 人間の業・愚かさ・小ささ・そして哀しさといったものが、どの登場人物にも感情移入できない絶妙な距離感から描かれている。 残酷描写とコメディを同一線上に並べるまたは完全に同居させることで観賞者側に生まれる居心地の悪さも、おそらく監督の狙いなのだろう。 出演俳優は、日本を代表するレベルといって間違いないほど豪華な顔ぶれだが、脚本上でかなり重要な役回りを担う明智光秀を演じた西島秀俊については、外見から感じられる知的なオーラはともかく、演技が終始単調で機微に乏しく、映画全体の完成度を下げてしまっているように感じた。 反対に、学も分別も持ち合わせていないが野心だけは凄まじい農民を演じた中村獅童については、物語全体を通じて、人間が持ちうる狂気と悲哀を壮絶な演技で体現しており、その劇中での生き様を通して作品のテーマが見事に活写されていた。 単品の映画としては充分に楽しめたし、北野監督がこの作品を形にしたかった理由も分かり、他監督にはなかなかできないであろうダイナミックな演出や切れ味の鋭い演出もある。 が、それでも北野監督の他作品、とくに「ソナチネ」「HANA-BI」「BROTHER」等にあった神がかり的に美しい構図の画づくりはほとんど見られず、その点をとても寂しく感じた。 https://filmarks.com/movies/109365/reviews/177615797

  • まったく同じ3人の他人 | Three Identical Strangers (2018)

    4.4/5.0 アメリカで実際に起きた前代未聞の事件について、当事者や関係者達の証言と実際に記録として残る写真やビデオを組み合わせる形で語られていくドキュメンタリー作品。 ある男性がとあるきっかけで出会うことになる人物が自分にそっくりで、その仕草や癖はおろか生年月日までも一致していたというだけでも相当な驚きだが、なんとそのニュースを見て連絡してきたもう1人の男性もまた2人にそっくりで、実は3人とも生後すぐにそれぞれ違う家庭へ引き取られた養子だった… という、にわかには信じられないような導入。 3人の男性はその愛嬌あるキャラクターもあってテレビ番組等で脚光を浴び、映画にも出演し、共同経営をはじめたお店も人気を博すが、やがてその奇跡的な出会いと彼らの数奇な運命の裏には、おぞましい真実が潜んでいたことが分かってくる。 フィクションであっても恐怖を感じるような筋書きが、現実に実行されていたという事実の恐ろしさに圧倒されてしまった。 何といっても、このドキュメンタリーで語られることは全て当事者達の証言に基づく事実なのだという大前提がありながらも、それを提示する順序や構成・編集の巧みさや、当事者達の表情の変化や呼吸の捉え方に関する演出の見事さに驚かされる。 過剰に感情的なデコレートをするでもなく、淡々と突き放すでもなく、被写体や事実との絶妙な距離感が抑制的に保たれた演出が素晴らしい。 それでいて、製作者達が秘めた静かな怒りと巻き込まれた人々への寄り添いの姿勢が、事実という重量を背負った映像を通して強く伝わってくる。 人間の人生とは、遺伝子に基づいて先天的に運命づけられた行動と結果から逃れられないものなのか? それとも、後天的に与えられた環境や他者からの影響を受けながら、自分や自分達で作りあげていけるものなのか? 人生を侮辱され、翻弄された3人の男性の生き様を通して、人の命がいかに重いものであるか、それを軽率に扱うことがどれほど許しがたい悪行であるかが確かに描かれていた、秀逸なドキュメンタリー映画だった。 https://filmarks.com/movies/80311/reviews/176771843

  • ザ・フラッシュ | The Flash (2023)

    4.0/5.0 DC映画シリーズのひとつで、同シリーズのヒーローのひとり、超高速で移動できるフラッシュを主人公とする作品。 不幸な事件に巻き込まれた両親を救い出すため、超高速の先にある光速を越えることで時間を自由に行き来する能力を得たフラッシュが、過去へ戻って奮闘する。 劇中でも登場人物達の台詞で出てくる通り、名作タイムトラベルSFの「バック・トゥ・ザ・フューチャー」に近しい設定ながら、DCの過去作品で描かれた事件や重要な登場人物が登場し、物語にも大きく関わってくるため、DC映画作品を全て鑑賞してきた自分にとってはとても面白く感じられた。 (DCファンであればあるほど驚くであろうキャラクター達が登場するが、ここには書かない) 主演のエズラ・ミラーは、過去の自分と未来からきた自分を演じ分けており、同一人物ながら辿ってきた道が違うゆえに性格に差が出るといった部分の演じ分けがすごく上手で、稀有な才能を持つ素晴らしい俳優のひとりだと再確認した。 DCヒーローの中ではかなり軽薄でふざけたキャラの役割を担ってきたフラッシュにも、他のヒーロー達に混じったアンサンブルの中ではなかなか見えない様々な感情と表情があることを見ることができて、スーパーヒーローと悪役が派手に闘うだけではない演出の繊細さが確かにある。 終盤において主人公がある辛い決断をする時の表情や、そのシーンの優しく哀しい描かれ方の演出には感動した。 エズラ・ミラーは私生活が乱れまくっていてキャリアにも少なからず影響が出てしまっているようで、すごくもったいない。 完璧で品行方正な人間である必要はないと思うけれど、そのキャリアに自ら傷をつけるようなことはせず、これからもますます活躍してほしい。 映画作品の根幹部分の評価とは分けて見るべきとは思うけれど、実写と区別がつかないほどのあらゆるリアルな映像がVFXで作れるようになったともいえる昨今にしては、えっと思うほどVFXの精度が低いシーンが全篇を通して多くあり、どうしてこうなったんだろうと単純に疑問に思ってしまった。 時間が十分になかったのか、予算が尽きてしまったのか、その両方か… 観客の目が肥えてしまった時代における製作者達側の苦労を想像してしまった。 https://filmarks.com/movies/92454/reviews/158325759

  • ブルービートル | Blue Beetle (2023)

    3.9/5.0 DC映画シリーズの一篇ではあるが、シリーズとしての連続性や他作品との関連性はほとんどなく、事前の基礎知識習得も必要なく楽しめる。 少し独特な単発のヒーローアクション映画として観れば、しっかり面白い。 演出部分では、日本の戦隊ヒーロー的なアクションやポージングを参照したのかなと思わせる主人公のキメのダサカッコ良さがあったり、決してスマートではないが仲良しな家族達がわちゃわちゃしていてコミカルなところがあったりで、色々な表情と愛嬌がある。 DCの映画シリーズはジェームズ・ガンの指揮のもとリセット・再構築されることになったが、このブルービートルは再構築後にも続投する予定とのことで、物語がどう連続するのか、もしくは連続しないのか、主役以外の愛らしい脇役達の扱いはどうなるのか等も含めて気になる。 https://filmarks.com/movies/101381/reviews/165180597

  • アクアマン / 失われた王国 | Aquaman and the Lost Kingdom (2023)

    3.8/5.0 シリーズ1作目で爆発的なまでに発揮されていたジェームズ・ワン監督の外連味あるカメラワークの演出センスはやや抑えめに感じられたものの、この2作目も単品映画として観ればとても完成度の高い映画だった。 大スケールな世界観の広がりとその大胆な描き方は健在で、楽曲や劇伴の使い方もオーソドックスながら気が利いていて楽しい。 前作で主人公と敵対したキャラクターが仲間に、しかも主人公の相棒的な存在にまでなって、ギクシャクしながらも共闘するという少年漫画的な展開も、俳優たちの好演もあってとっても楽しく感じられるものだった。 コミックを原作とするDCやMARVEL映画+ドラマのシリーズは、今や映画業界のメインストリームとして確固たる地位を確立しながらも、他作品との関連性の強さに良い点とそうでない点があり、肯定派と否定派の議論の熱が高まるばかりだけれど、自分はどちらの派閥にも属していないし、またどちらの派閥の話にも共感できる部分がある。 シリーズの関連性が高ければ高いほど、その世界への興味が持続しさえすればどんどんと関連作品を楽しむことができるけれど、その分ディープなファンではない鑑賞者にとっては理解が難しいモチーフやエピソードも増えてきて、単品としての没入感が弱くなってしまう。 ファンがどんどん増えてより多くの人々の間で映画の話ができることが当然の理想なのに、新規ファンにとってのハードルが高くなることは良いことではないし、ましてやコミック原作の映画シリーズが (また) 一部のディープなファン以外に楽しめないものになってしまうことは、誰も望んでいないはず。 個人的な考えとしては、シリーズの関連性が高くともついていける (いちおうDCシリーズを全部鑑賞しているので) けれど、何でもかんでも関連してくれなくとも構わないという思いがある。 この作品のように、他のDCシリーズと世界観を共有しながら物語としてはほとんど関連していないほぼ独立的な作品でも、充分に楽しい映画体験ができるので。 また、映画やドラマを観ている時はそのフィクショナルな世界に没入したいので、そういったリアルな世界の議論や出演者の私生活に関するいざこざの情報もなるべく欲しくないと思っている。 その意味で、この作品においてけっこう重要なポジションの配役を担っていたアンバー・ハードが私生活で大揉めだったために出演シーンが削られたとか、DCの映画シリーズがこの作品をもっていったんリセットされるとか、そういうノイジーな情報が事前にないコンディションでこの作品を鑑賞したかったなと残念な気持ちになった。 アンバー・ハードは個人的にファンだったこともあり、アンバーの出演シーンになるたびその醜聞が頭をよぎって現実に引き戻されてしまったところが残念だった。 素晴らしい俳優のひとりだと思っているので、またスクリーンで輝いて欲しい。 https://filmarks.com/movies/94989/reviews/170062399

  • ザ・スーサイド・スクワッド "極" 悪党、集結 | The Suicide Squad (2021)

    4.4/5.0 世間的にあまり評価が芳しくなかった同タイトルの最初の実写映画作品の、ある意味リブートでもありつつ続篇として解釈することもできる形で物語が成立しており、かつDCが展開している (正確にはしていた) シネマティックユニバースの一篇でもあるという、かなり独特な立ち位置にある映画。 個人的にそのキャリア初期からファンのジェームズ・ガンが監督するということで期待していたが、その期待を裏切らない展開が冒頭からあり、相変わらずめちゃくちゃ過ぎて流石だなと一気にのめり込んで鑑賞できた。 ほぼ全篇を通して乱発されるジョークのほとんどがブラックかつ下品なので、クリーンで上品な作品だけを好む人には全く合わないだろうけれど、そこは監督の持ち味だし相性の問題なので仕方ないかなと思う。 マーゴット・ロビーやイドリス・エルバを中心とする、主要登場人物を演じる俳優達の複雑性を含んだ役作りが素晴らしく、脚本にもそれぞれの人物のキャラクターアークがきちんと組み込まれていて、他のスーパーヒーロー / スーパーヴィラン映画とは一線を画すレベルになっていると感じた。 特にジョン・シナが演じるサイコパス的なキャラクターには強く惹きつけられた。同キャラクターを主人公にしたスピンオフドラマが作られ、それがこの映画作品にも負けないほど高い評価を得ていることにも納得できる。 ジェームズ・ガン監督作品のほとんどに通底するものとして、社会生活不適合なはみ出しもの達がどのように社会や他者との折り合いをつけていくのかというテーマ性があるが、この作品においてもやはりその部分が物語を進める脚本の軸になっていた。 そういう不器用な人々への監督の愛が感じられて、その人情味溢れる物語性とド派手で狂った演出を両立させる絶妙なバランス感覚が、ジェームズ・ガンという創作者の強烈で唯一無二の才能なのだろうと思う。 https://filmarks.com/movies/74474/reviews/152628763

  • マスターズ・オブ・ホラー | Nightmare Cinema (2018)

    2.1/5.0 短篇×5話と、メタ的にそれらを鑑賞することになる人々を描くオムニバス形式のホラー映画で、同様形式の名作「トワイライトゾーン」やキャッチーなキャラクターで有名な「グレムリン」を手掛けたジョー・ダンテ監督が参加していると知って鑑賞した。 第1話 「The Thing in the Woods (森の中の物体X)」2.3 / 5.0 素顔が見えない凶悪な人間から逃走あるいは抵抗する若者という設定。 「13日の金曜日」や「悪魔のいけにえ」シリーズが確立した型に全乗っかりしつつ、ノリが軽いので笑っていいのか怖がっていいのか分からずやや困惑する。 タイトルからも明らかなように、「The Thing (遊星からの物体X)」へのオマージュであることが終盤で見えてくる。 オマージュというよりは、パロディに近いなと感じる軽さではあるけれど。 物語のツイストと終劇の結末感は、あるにはある。 第2話「Mirari (ミラリ)」1.8 / 5.0 結婚を間近に控えた女性が、あるきっかけから美容整形を受けることになるが… という設定。 こうなるのかなと想像した通りのことが起き、それ以外のことは起きず、間延びして退屈な演出もあってやや残念。 アナログな特殊メイクの造形に注力したことが分かるけれど、30年ぐらい前のある映画で出てきたネタと完全に重複していて (これもオマージュなのかも知れないが…) 懐かしくはあったが驚くことはできなかった。 社会や流行の風刺としても、中途半端で浅い印象。 第3話「Mashit (マシット)」1.0 / 5.0 神学校の神父・シスター・生徒たちが悪魔憑きに立ち向かうが… という設定。 それほどよくできているとは思えない他4話と比較してもダントツで完成度が低く、章立てで横並びにすると、監督の才能の差がこんなに残酷に顕在してしまうものなのかと、その点がむしろホラーに感じられてしまった。 狙いが見えない安直なアングル、やっつけで編集したとしか思えないグリーンバック合成、目的が不明瞭でただ冗長なカット、どう聴いてもギャグにしか聴こえないチープでロックな劇伴… そもそもの話として、誰が悪魔に取り憑かれていて誰を救うべきなのかの画的な描き方がテキトー過ぎて、過激なだけのスプラッタ描写や思いつきで入れたようなエロシーンよりもそこをまずきちんと見せて欲しいと感じた。 脈絡なく出てきて本筋に全然関係しない「エクソシスト」や「オーメン」のパロディも、製作者達の「俺達分かってるだろ」感だけが上滑りしているように感じて、興ざめ… 第4話「This Way to Egress (出口はこちら)」3.5 / 5.0 病院の待合室で自身の診察を待つ女性だが、受付スタッフや世界そのものが怪異的に変貌しはじめ… という設定。 この4話めだけかなり固いトーンのモノクロになっており、色情報がない分だけ恐怖的想像の余地が感じられて面白かった。 超現実的で不条理な世界や、不気味な肉体的変貌の描写といったところに、デヴィッド・リンチ監督の長篇デビュー作「イレイザーヘッド」へのオマージュが大きくあるのかなと思う。 物語の明確な結末感を期待すると肩透かしになってしまうかも知れないが、強く印象に残る画づくりは鑑賞する価値があったと感じた。 第5話「Dead (死)」1.9 / 5.0 少年とその両親が、帰宅途中に暴漢に襲われ、少年だけがかろうじて生き延びるが、おかしなものが見えはじめ… という設定。 M・ナイト・シャマラン監督の「シックス・センス」にインスパイアされつつ、その設定でバイオレンスホラーをやってみようということなのかなと想像したが、主要人物達のキャラクター設定やバックグラウンドの描写が雑で、何故こういう話になるんだったっけと気になるタイミングが多くて物語に没入できず、うーん何だかなぁという読後感だけが残った。 オムニバス形式の映画やドラマはとても好きなので、鑑賞前の期待値が高かったこともあり、鑑賞後のガッカリ感が強かった。 無駄を省いたテンポよい演出が必要とされる短篇でありながら、劇中で何度も退屈に感じるという体験は、ある意味貴重ではあった。 https://filmarks.com/movies/81095/reviews/176525664

  • エクスティンクション 地球奪還 | Extinction (2018)

    3.3/5.0 NETFLIX配給のSF映画で、主演を務めるマイケル・ペーニャのファンなので鑑賞した。 地球外から謎の異星人達が襲来し大惨事が起きる悪夢を何度も観ることに悩まされていた主人公だったが、それが現実に起きて… という導入の侵略SF。 コメディカルな演技や役柄が印象的なマイケル・ペーニャだが、この作品では極めてシリアスで家族思いな男性を演じている。 その妻役を演じるリジー・キャプランも、主張し過ぎず地味にもなり過ぎずのバランスいい好演。 物語の規模は壮大ながら主要な舞台の規模は街ひとつ分にとどまっていて、ケレン味や派手さのあるVFXよりも主要キャラクター達の身体演技とその捉え方に演出の重きが置かれており、チープさなく展開していて、演出が堅実で上手だなと感じた。 脚本に関しては、序盤からさりげない伏線が丁寧に組み込まれていきつつ終盤でかなり大仕掛けなツイストがあり、なるほど! 上手い! 面白い! とワクワクした。 結末については、観る人によってはやや物足りない気持ちになるかも知れないが、個人的にはこの作品のような終劇の仕方もほどよい余韻と読後感が残って良いものだと感じた。 NETFLIXオリジナル映画やドラマには、一部の超大規模作品やアート特化系の作品を除いてB級〜C級の狭間を漂うような作品が多いが、この映画については事前の期待値がそれほど高くなかったこともあってか、なかなか面白い映画体験ができたと嬉しい気持ちになった。 https://filmarks.com/movies/77209/reviews/152619997

  • VESPER / ヴェスパー | Vesper (2022)

    3.2/5.0 リトアニア・フランス・ベルギーの3カ国で製作されたというSF映画で、映画好きな人達からの前評判がとても高く、予告篇も興味をひきつける内容だったので、期待しつつ鑑賞した。 生態系が破壊されてしまった地球において、富裕層は地上を離れ「シタデル」という都市に暮らし、そうではない人々は遺伝子変化を経た危険な植物達が自生する地上で限りある資源を奪い合うような暮らしをしているという物語の舞台設定が、とても魅力的。 脚本と監督を担ったクリスティーナ・ブオジーテとブルーノ・サンペルは、宮崎駿の「風の谷のナウシカ」やルネ・ラルー (カルトSFアニメーションといわれる「ファンタスティック・プラネット」を手掛けた) から大きく影響を受けたと公式に発言しているが、安易で表層的な剽窃ではなくマッシュアップとリスペクトがあり、監督独自の退廃的な世界観の構築に成功している。 脚本については、序盤〜中盤〜終盤とそれなりに展開はあるものの、ハリウッド系のSF映画と同じような期待値で鑑賞するとやや起伏に欠ける部分は否めない。 人造生命や未来的なテクノロジー等も出てくるが、詳しい部分には言及されないので、良くも悪くも想像の余地が残る。 何より、中心的に描きたい部分がそこではないという意図は理解できつつも、主人公達とは違う世界で暮らしているという富裕層および彼らが暮らすといわれている「シタデル」についてほとんど全くといっていいほど画で描かれない (映画冒頭の導入文章で語られるのみ) というところは、もうほんの少しだけでも見せてくれたら嬉しかったのになと感じてしまった。 結末についても、ポジティブにいえば大きな余韻が残るといえるが、今から面白くなりそうなのに、ここで終わっちゃうのか… という読後感でもある。 おそらくかなり予算が限られていたことがあって、注力するシーンやモチーフを絞りに絞り込んだのだろうとは想像しながら、実撮映像のトーンや奥行き感を重視し、VFXの使いどころを最小限かつ効果的なところに限定する演出がとても丁寧かつ上手で、SFでありながらもアート系映画が持つような美しい佇まいのある作品だった。 https://filmarks.com/movies/104106/reviews/176468145

  • バトルシップ | Battleship (2012)

    3.0/5.0 ユニバーサル映画の100周年を記念して製作された、様々な文脈で映画の歴史に残るであろうSF大作。 G.I.ジョーやトランスフォーマー等の超有名ブランドを持つ玩具メーカー、ハズブロ社のボードゲームが原作。 ボードゲームが? 原作? というところから突っ込みたくなるけれど… 大きな物語としては、強大な科学力と兵器を備えた異星人の襲来に立ち向かう地球人達というところだが、異星人の謎のテクノロジーによって出現した強力なバリアにより、その戦闘の舞台がハワイ周辺の海上に限定される。 なぜそうなるのかと突っ込むのは野暮だ、ボードゲームのボードの広さには限りがあるからだ。 なので、地球人側も全世界から駆けつけての総力戦というわけにはいかず、たまたまその時ハワイ周辺で共同演習をしていた米国の海軍と日本の海上自衛隊が、孤立無援な状況で異星人に立ち向かうことになる。 なぜそうなるのかと突っ込むのは野暮だ、ボードゲームで使う駒の数には限りがあるからだ。 映画全篇を通して、画づくりの規模や品質は最大・最高レベルでありながらも、重くなり過ぎず、むしろ軽いタッチだなと感じる演出が多いのは、やはりボードゲームが原作なこともあって、主に子どもが夢中になる海戦ごっこの実写化だからということなのだろう。 ただ、映画中盤において、浅野忠信が演じる海上自衛隊一等海佐がリードする夜の攻防戦があるのだが、海佐が示す戦法とその実際的な描かれ方がとても面白く、確かにこれは自分も子どもの時に友人と夢中になった海戦ゲームそのものだ! と思い出し、ニコニコしてしまった。 終盤においては、伝説的といってもいいであろう米国の実在の超弩級戦艦ミズーリが登場し、とんでもない展開がある。 きっと米国人にとってのミズーリは、日本人にとっての戦艦大和のような存在なのだろうと想像すると同時に、この映画はSFを遥かに通り越して最早ファンタジーの域に到達しているものなのだから、リアリティがどうこうと突っ込むのは野暮なことだなと感じた。 眉をひそめて批判的な態度で観るよりも、アホ過ぎるけれどめちゃくちゃ決まっている主人公の名台詞や、そんなわけあるかと感じつつも少年漫画さながらに激熱な戦艦の活躍を、頭からっぽで楽しめるといいのだろう。 映画史の一角に確実な存在感と偉大な名を残すユニバーサルの100周年記念作品が、本当にこの映画で良かったのか、途中で誰も止めなかったのかというところが最大の突っ込みどころだけれど、その限りないアホさと派手さが醸し出す唯一無二の祝祭感という意味では、間違いなく記念碑的作品になっているといえるだろう。 https://filmarks.com/movies/19863/reviews/152618861

© 1998-2025 Shoji Taniguchi

Kazari
Kazari
bottom of page