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- スター・ウォーズ: アコライト | The Acolyte (2024)
2.5/5.0 「スター・ウォーズ」シリーズのファンとしては、観ないという選択肢はなく全話観賞した。 エピソード4・5・6のオリジナル三部作、1・2・3のプリクエル三部作、7・8・9のシークエル三部作からなるスカイウォーカー・サーガをシリーズの中核とするなら、こちらはその世界観と描かれる時代を拡張したスピンオフ作品のひとつ。 シリーズを通して初めて、スカイウォーカー・サーガよりも約100年を遡った時代が描かれるということで、どんな世界と物語が広がるのだろうと期待して観賞したが、全8話を観終わった読後感としては、何だか期待外れだったところが多く、ガッカリしてしまった。 これまでのシリーズのお約束的な設定だった「ジェダイ = 善」「シス + 帝国 = 悪」という勧善懲悪的な二元論ではない、その中間に存在する揺らぎや反転・逆転が描かれていた点は新鮮で、今後も拡張し続けるであろうシリーズの可能性を大きく広げるという意味では価値があったように感じる。 ただ、肝心の脚本について、全8話を通した展開の作り方の部分でも、各話で描かれる登場人物達の動機の部分でも、うーんと感じてしまうほどに粗過ぎ、もう少しすんなりとワクワクさせて欲しかったなと残念な気持ちになってしまった。 シリーズお馴染みのライトセーバーによる殺陣、多様なメカや人種のキャラクター、異世界の文明や風景と構図の捉え方といった個別のディティル要素はどれも魅力的で、他のSF映画やドラマではなし得ない世界を見られて楽しかっただけに、肝心の脚本の残念さが余計に際立っている。 イ・ジョンジェ、アマンドラ・ステンバーグ、ダフネ・キーン、キャリー=アン・モスといった様々な国籍と人種の俳優達が出演しており、それぞれの役柄をしっかり演じていただけに、なおさら惜しい。 映画やドラマ版と並行して出版されていた小説等で登場していた細かい設定の数々が逆輸入的に取り入れられていた点は、子どもの頃からの「スター・ウォーズ」の熱烈なファンのひとりだと自負する自分にとってはもちろん楽しかったが、そうではない多数の人々にとっては重要な要素ではないと思うので、深くはコメントしない。 何よりも残念だったのは、(シーズン2の構想が仮に当初からあったにせよ) 全8話で何らかの物語的決着がつくことを当然期待して観賞していたのだが、全然そうではなかったこと。 クリフハンガー的に次シーズンへの布石を残すぐらいであればワクワクしつつ待てそうだったが、1シーズンで起承転結をまとめるつもりはそもそもなかったのかと分かって、そりゃちょっと上品じゃないやり方じゃないの〜と感じてしまった。 過去はともかく現在はディズニーの巨大資本で製作されているシリーズなので、シーズン1で打ち切りになることはないのだろうけれど… シーズン2には期待よりも不安の方が大きい。 https://filmarks.com/dramas/10089/14140/reviews/14820820
- バーバラと心の巨人 | I Kill Giants (2017)
3.9/5.0 グラフィックノベルを原作とするファンタジー映画で、イラストレーターとしてのキャリアを持つアンダース・ウォルターが監督を担っていることもあり、全篇を通して色彩や構図の設計にセンスを感じる作品。 独自に構築した空想世界の設定に入り込み、現実世界との折り合いをつけられない主人公が、どのようにその状況と向き合って成長していくのかが描かれる。 主人公の境遇を慮って手を差し伸べる者もいれば、異物として排除しようとする者もいて、ファンタジーとリアルな世界が目まぐるしく入れ替わる。 子どもの頃に現実逃避の手段として小説や映画の世界へ没頭していた自分は、主人公の境遇や葛藤に強く共感できながら、懐かしくも辛い記憶が思い出されてしまった。 主人公が粛々と準備しながらいつか対峙しなければいけないと語り続ける巨人とは一体何なのか? 主人公が目を向け続ける空想の世界の物語が進展する一方で、目を逸らし続ける現実の世界では何が起きているのか? 終盤でそれらが全て提示され、ファンタジーとリアルの2つの世界を俯瞰した物語が分かる。 子どもにとってはこれ以上辛いことはないといえるほど過酷な現実との向き合いと、空想世界との訣別の演出が、悲壮ながら美しい。 派手な画づくりやダイナミックなスペクタクルがある作品ではなく、小さな街に暮らす少女の成長物語といったスケールではあるが、明確なテーマがあり結末までしっかり描き切る脚本と空想世界の美しさもあり、とても上質な作品にまとまっていると感じた。 https://filmarks.com/movies/72653/reviews/189695020
- スランバー・パーティー大虐殺 | The Slumber Party Massacre (1982)
1.3/5.0 2023年に日本初公開という情報と80年代感が強いビジュアルで、近年よく製作されている80'sリスペクトな最新の映画なのだろうと鑑賞したが、それは大きな勘違いで、実際には1982年にアメリカで公開されながら日本ではずっと未公開だっただけということに、鑑賞後やっと気づいた。 道理で80年代の再現レベルが異常に高いなと感じたわけだ、そもそも再現ではなく実際に80年代に撮られたのだから当たり前だ。 製作された時代はさておき中身が面白ければ問題なかったのだけれど、B級映画の帝王 (King of the Bs) と呼ばれるロジャー・コーマンが製作に関わっていることもあり、実に空虚で浅くチープなスラッシャーといった趣で、当時流行した「悪魔のいけにえ」「ハロウィン」「13日の金曜日」といった著名な映画に似せようとしつつも、良いところを見つけることが難しいほど全ての演出のレベルが低く、80分弱という比較的短い時間でもかなりしんどいと感じてしまうほどだった。 電気ドリルを武器に持つ殺人鬼が、パジャマパーティで盛り上がる女子達を襲う。それ以外に語るべきところはない。 殺人鬼の正体はかなりの序盤から明らかになるし、映画的な仕掛けも登場人物達の駆け引きもない。 くわえて、物語における主人公の立ち位置がよく分からないし、物語の展開に全然関連しないし、物語を牽引するような活躍もほぼない。 80年代の映画にはこれぐらいの緩さへの許容もあって牧歌的だったな〜と思い出せるという点では、僅かながら価値があるかも。 https://filmarks.com/movies/65227/reviews/189415190
- マイ・オールド・アス 〜2人のワタシ~ | My Old Ass (2024)
3.6/5.0 カナダ出身の俳優でもあり映画監督でもあるミーガン・パークによるドラマ映画で、「アガサ・オール・アロング」で鮮烈な印象を残したオーブリー・プラザが出演していると知り鑑賞した。 主演のメイジー・ステラもカナダ出身で、これからスターとして輝いていきそうなオーラがある。 18歳の主人公が友人達とマジックマッシュルームでトリップすると、未来に生きる39歳の自分自身が目の前に現れ、幻覚だろうと思ったがそうではなく、今後の人生についての忠告を受ける… という導入が面白い。 未来の自分から過去の自分への警告というフォーマットはSF物語の基本型のひとつでもあるが、今作はタイムスリップ等のSF要素はほとんどなく、現代で暮らす18歳の主人公がこの先どういった決断をしていくかに物語の焦点があたる。 自分が正しいと信じる道を選択することで、未来における悲劇の発生が確定すると知った時、その選択を本当にすべきなのか? といった問が物語の大きなテーマで、オーブリーが演じる未来側の主人公の、明るく振る舞いながらも影が落ちるシーンがとても印象的。 その問に対して現代における18歳の主人公が自身の進む道を逡巡しながら決断する流れがとても青春で、その主人公の良き理解者である友人達や家族の存在もあたたかい。 未来の39歳の主人公がどんな世界に生きているのかについて、僅かなヒントはありつつほぼ描かれなかった点がやや消化不良に感じたが、現代の主人公及びその周辺人物の物語に焦点を絞って描き切るという意味では、90分弱という比較的短い時間でコンパクトな物語にまとまっていて良かった。 https://filmarks.com/movies/114172/reviews/189416812
- ホワット・イフ…? Season 3 | What If...? Season 3 (2024)
2.2/5.0 マーベル・シネマティック・ユニバース (MCU) に属するアニメーションシリーズの第3シーズンにして完結篇。 MCUの映画やドラマ作品で登場したキャラクター達や設定を軸に、いわゆるパラレルワールドのような並行宇宙ではこんなことが… という展開の数々を描く。 まずもって、映画やドラマ版のMCU作品の数々を観てきていない人にとっては何をどう楽しめばいいのかほとんど全く分からない内容になっている。 自分は長年のMCUファンなので、タイトルでもある「What if...? (もしも)」の世界がどう「もしも」なのかについて理解ができたが、それを踏まえても、シーズン3まで続くとやや食傷気味で、何でもあり過ぎる世界観に惹き込まれる瞬間がほとんどなかった。 映画やドラマは当然として、原作のコミックも全部読破しているレベルのMCUマニアでもない限り、没入するほど楽しい鑑賞体験にはならないのではと感じる。 とはいえディズニー資本のマーベル・スタジオ製作とあって予算は潤沢なようで、アニメーションの品質の高さや安定した演出レベルがあり、ほとんどのキャラクターの声優も映画やドラマ版における同役の俳優を起用していたりで豪華だけれど、その豪華さが逆に虚しく感じるというか… 色々ともったいないなという印象しか残らなかった。 2008年の映画「アイアンマン」からスタートして以来、それこそ宇宙的規模で広がる (広げられる) 世界観がMCUの特色ともいえるが、中心となる最近の映画やドラマシリーズで目立つ明らかな綻びや品質の低下については、ファンとして贔屓目に鑑賞しているであろう自分でも気になってしまう。 このアニメーションシリーズで活躍したキャラクター達が映画やドラマに逆輸入のような形で登場するといった構想も製作者達の中にあるのかも知れないが、まずはMCUの本筋 (やはり映画シリーズになるだろう) の品質回復が実現するといいなぁ… と、今作と全然関係ない感想を持ちながら鑑賞してしまった。 https://filmarks.com/animes/3037/6239/reviews/7012799
- ピエロがお前を嘲笑う | Who Am I (2014)
1.9/5.0 ミステリーSFの「1899」を手掛けたスイス出身の脚本家・映画監督バラン・ボー・オダーによるドイツ製作のスリラー映画。 ハッキングの才能がありながら冴えない生活を送ってきた青年を主人公に、ウェブ社会におけるサイバー犯罪やその捜査にあたる人々も含めた攻防戦が描かれる。 具体的に書くと大きなネタバレになってしまうので避けるが、劇中の背景に登場する映画のポスター等から、この映画の脚本にどのようなツイストが仕掛けられているかを、鑑賞中から想像できる。 ほとんどのシーンが主人公と捜査官の取調室での会話と主人公の回想で構成されているが、いわゆる「信頼できない語り手 (Unreliable Narrator)」の叙述スタイルが取られており、何が真実で何がミスリードなのかを推測しながら鑑賞する楽しさがある。 どんでん返しに驚かされる映画として今作をあげる映画ファンが多いことにも納得できる。 ただ、あまりにもそのどんでん返しありきというか、脚本のツイストを越えてそれ自体が目的化しているのではと感じるほど、主人公やその周辺人物の動機や行動内容に説得力がなく、超人的な才能や思わせぶりな背景を持ちながら起こす犯罪の内容はチンピラの迷惑行為レベルというあたりも絶妙にダサく、登場する人物のほぼ誰にも感情移入できなかったのが残念。 ハッカー達やサイバー犯罪界の大物とのネット空間における邂逅のシーンの可視化に薄汚れた電車車両や仮面が用いられているが、一見スタイリッシュに見えて実にチープなその演出にも興ざめしてしまう。 細かいことはさておきどんでん返しだけを味わいたいという人には良いのかも知れないが、そこだけに振り切っているともいえる今作では、それ以外の部分の脚本や演出の稚拙さが気になってしまう。 終盤で何重にも仕掛けられたどんでん返しがあったとしても、で主人公達は結局最初から最後まで何がしたかったんだっけ? という置いてけぼりの読後感だけが残ってしまうように思う。 この映画の製作者達がリスペクトしながらもそれを越えようと参照したであろう映画達の完成度の高さを思い出してしまった。 https://filmarks.com/movies/60478/reviews/188895639
- 最後まで行く | A Hard Day (2014)
3.8/5.0 イ・ソンギュン主演のクライムサスペンス映画で、韓国で製作された今作の評価の高さから、中国・フランス・日本でもリメイクされている。 殺人課の刑事として働く主人公が自動車で人を轢いてしまい、その証拠を咄嗟に隠してしまったことから事態がどんどん悪化していくという導入がとても面白く、無駄がなくテンポがいい脚本と演出もあって惹き込まれる。 常に極限状況にある主人公が、じたばたと機転を利かせながらも切り抜けていくが、次々繰り出される悪知恵が面白い。 その悪知恵がめちゃくちゃに罰当たり過ぎてスリルと笑いが紙一重になるようなカオスなシーンも何度かあり、その高度な演出にも感心する。 主人公の職業を公僕としながら、その人物像を尊敬できるような存在と程遠い設定にすることでこんな展開が作れるという発想に、韓国映画らしいツイストのアイデアが見られる。 序盤では主人公による証拠隠滅が中心になるが、中盤では事件を知る謎の人物からの脅迫があって物語が大きく展開し、終盤ではさらに予測不能な展開があって、割と分かりやすく提示されてきた伏線のスマートな回収もあり、鑑賞していて飽きるタイミングがない。 脚本の面白さだけでなく、俳優達の迫真の演技はもちろん、照明・撮影・編集等の技術もとても高く、韓国映画業界の水準の高さに驚かされる。 これも韓国映画ならではの文化なのかも知れないが、政治や警察組織の腐敗と裏社会との癒着というモチーフが描かれることが多いなという印象がある。 実際の韓国の社会でも (映画ほどではないにせよ) そういった事実があって、国民のフラストレーションもあり、映画を通してそれが描かれることで溜飲を下げているといった側面があるのかも知れない。 現実社会においてそういった腐敗や癒着は当然許されるものではないが、一筋縄ではいかない物語を作り上げるためのモチーフとしてこれほど魅力的なものはなかなかない。 そこには、正義もしくは悪といった二元論では割り切れない、人間の内面の複雑性を描く材料がたくさんあるからだろう。 https://filmarks.com/movies/60169/reviews/188805617
- セキュリティ・チェック | Carry-On (2024)
3.7/5.0 「エスター」や「ブラックアダム」を手掛けたジャウム・コレット=セラ監督によるNETFLIX映画で、「キングスマン」や「ロケットマン」で主人公を演じスター俳優となったタロン・エジャトンが主演するスリラー/アクション。 空港で運輸保安局員として働く冴えない主人公がテロリストの計画に巻き込まれ、恋人や同僚の命を脅かされながら、どのようにその危機を乗り越えるかという筋書き。 事件発生日がクリスマスイブという設定から、アクション映画の名作「ダイ・ハード」シリーズへのリスペクトが明らかに感じられつつ、その模倣にとどまらず大胆にアップデートされているという印象。 主人公が孤立無援の状況でいかにテロリスト達を出し抜くかといった頭脳戦中心の前半も、事態がどんどん拡大し様々な人々が同時に動く後半も、センスが良く無駄のない演出もあってスリルが途切れずとても面白い。 連続ドラマの作り方に革命を起こしたとも評価される「24」のような絶え間のない緊張を久しぶりに味わった。 ただ、描かれる事件がシリアスなので、劇中で何人か命を落とす役もあったが、その死の扱われ方がやや軽かったところだけは少し気になってしまった。 過酷な状況におかれながら何とかそれを切り抜けようと試みるも精神的に追い詰められていくタロン・エジャトンの演技は素晴らしく、それ以外の俳優達もみな好演していたが、「ブレイキング・バッド」で主人公の義弟で切れ者の麻薬取締局エージェントを演じていたディーン・ノリスが今作では主人公の上司役として出演しており、相変わらずの存在感だったことが嬉しかった。 NETFLIX映画の大半は良くも悪くもほとんどがB級だと思っているけれど、俳優やVFX頼りにならず脚本や演出がしっかり練られた今作のような良い意味でのB級映画は大好きだし、多くの人が楽しめる娯楽としてとても価値があるものだと感じる。 既に世界中で大人気だそうで、続篇の製作もありそう。 https://filmarks.com/movies/114742/reviews/188626375
- 機動警察パトレイバー the Movie | Patlabor The Movie (1989)
3.9/5.0 伊藤和典が脚本を、押井守が監督を担った1989年公開のアニメ映画で、ゆうきまさみによる原作漫画やアニメーションシリーズがあるが、世界観や登場人物をそれらと共有している。 レイバーと呼ばれる巨大人型ロボットが開発され普及している (原作当時から見た) 近未来の東京を舞台に、警察車輌として存在するパトレイバーの操縦者を主人公として描かれるSF作品。 自衛隊の試作レイバーの暴走事件をきっかけに、都内で稼働中のレイバー達の暴走が多発する。レイバーの挙動を制御する最新OSに原因があるのではと推測した主人公の同僚が調査を進めていくと、ある天才プログラマーが仕掛けた恐ろしい罠の存在が明らかになってくる。 クライムサスペンスものとしての導入や展開が面白く、架空の巨大マシンであるレイバーの暴走を物語の軸としつつ、スマートフォンはおろか個人用パソコンすらまだ普及していなかった映画公開時において、コンピュータウィルスによる犯罪という先見性のあるテーマが設定されていることにも驚かされる。 パトレイバーシリーズの映画作品は、今作の後に製作された「機動警察パトレイバー2 the Movie」が傑作過ぎることもあり、今この1作目を観直すとやや粗が見えたりトーンが軽いところが気になりはするが、SFクライムサスペンスとしての総合的な完成度はすごく高い。 押井守監督作品の特徴ともいえる古典・名言・格言等からの引用は今作でも健在で、旧約聖書や新約聖書の要素が多数用いられているが、それらの全ての知識がないと物語が理解できなくなるほど難解な脚本にはなっておらず、知的興味が高まる絶妙なバランスになっていると感じる。 パトレイバーシリーズで描かれている、1980年代から分岐し独自に発展したもうひとつの近未来の東京には、他のSF作品にはなかなか見られない不思議な魅力と、普遍性がある。 https://filmarks.com/movies/32075/reviews/152619555
- WXIII 機動警察パトレイバー | WXIII: PATLABOR THE MOVIE 3 (2001)
3.9/5.0 機動警察パトレイバーのアニメ映画版3作目で、押井守監督が手掛けた1・2作目と比較すると注目が集まりにくいが、脚本と演出がとても繊細かつ丁寧で、ひとつの物語として完成度が高い作品になっていると感じた。 パトレイバーの作品群に共通する設定として、私達が知っている昭和〜平成の時代とほとんど同じながら、工学的技術の進歩の方向や巨大災害および復興工事の有無の違いがあり、パラレルな世界観がある。 この作品での昭和は1989年 (昭和64年) で終わらず昭和75年まで続いており、登場人物達の生活や東京の風景描写にも昭和末期の空気が残っていて、知っているようで見たことがないという異質な世界を体験することができ、とても面白い。 押井守監督によるこのシリーズの映画版は、タイトルにも含まれているレイバー (平たくいうと巨大ロボット) の活躍場面が少ないことが不満という評価をする人もいるが、とり・みきが脚本を手掛けたこちらの作品は、押井守版よりもさらにレイバーの登場時間が短く、古典的な刑事ものを下敷きにした人間ドラマになっている。 そこに謎の怪物という要素も組み込まれ、物語がSF的に飛躍するところが面白い。 ただ、これまでのシリーズの主役やその周辺人物達は完全に脇役として配置されているので、その点を不満に感じるシリーズのファンは少なくないのだろう。 そのうえ、主役達はスーパーヒーローでもエースパイロットでもなく一介の刑事で、巨大な怪物に対して武器を手に立ち向かうような役割は全然担わないので、主役が悪役をやっつけるといった勧善懲悪な展開を期待する人には物足りないと感じられるかも知れない。 全体的な演出に関して、地味な部分なのでなかなか評価されにくいのかなとも思いつつ、人物達の性格・思考・過去・関係性の表現が本当に丁寧で上手だなと感じた。 長台詞やナレーションで何でもかんでも説明してしまうのではなく、ちょっとした目線や手の動き、極めて短い台詞、カメラのアングルの変化、またカットを切り替えるタイミングや秒数といった部分で人間の感情の機微を表現する演出のレベルがとても高く、人物達の存在のリアリティを感じることができる。 監督の演出力に拠るところもあるとは思うが、脚本の段階でそのあたりの描写のディティルがしっかりと考えられていたのではないかと感じた。 ラストシーンでの人物の表情と小道具の描かれ方に、その後も続く世界への想像を促す確かな力があって、特に心に沁みた。 ポン・ジュノ監督の「グエムル -漢江の怪物-」はこの映画を模倣したのではないかという話をよく聞き、確かに怪物の造形に関しては似ている部分が多く参考にしたのかも知れないとも思うが、物語の展開や登場人物達の関係性といったところは全然違うし、どちらの作品にもオリジナリティがあり良い作品だと思う。 https://filmarks.com/movies/18764/reviews/152620702









