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  • モンスターズ | Monsters (2015)

    3.1/5.0 ワンアイデアで勝負といった感じの、15分ほどの短篇。 生まれた時からずっと地下で生活してきた10歳の主人公と、怪物達に支配された地上に出ていいのは大人だけなのだと諭すその家族。 自立心と好奇心から家族の目を盗んで地上に出ようとする主人公が目にしたのは… という物語。 序盤で示された設定やタイトルに関しては、終盤に提示されるSF的な真実によって回収され、納得感がある。 何十年も昔からSF系の短編小説や漫画で何度も使われているアイデアの変奏曲的な短篇ではあるが、そつなくまとまった佳作といった印象だった。 https://filmarks.com/movies/102372?mark_id=165856128

  • ハッピー・デス・デイ 2U | Happy Death Day 2U (2019)

    3.4/5.0 ブラムハウス・プロダクションズのジェイソン・ブラム製作によるホラーコメディの続篇で、主な舞台や登場人物達は変わらずだが、ジャンルはホラーというよりもSFコメディに変化している。 1作目で監督を担ったクリストファー・B・ランドンが、2作目の今作では脚本と監督を兼任。 前作はタイムループという設定を用いたシンプルかつ工夫が効いた脚本だったが、今作はそれにパラレルワールド (並行世界) の設定も加わり、物語の運びがやや複雑になっている。 1作目では省略されていた、タイムループが起きた原因は何かといった部分を、主人公を取り巻く環境や周辺人物の設定を用いながら描いており、後付感が少ない脚本構成の巧みさに驚く。 前作の製作時から今作の物語までを含めた全体の構想が製作者達の中にあったのだとしたら、それも驚き。 ループする最悪の日の繰り返しという点は前作のスタイルを踏襲しつつ、ループに入る前の世界とは似ているようで違う世界が舞台になっているところが今作のポイントで、元の世界に戻りたいという願望だけではない主人公の葛藤の描き方が面白い。 脚本がやや複雑化したことの影響か、1作目より設定の粗が気になるところもあるにはあったが、それでも比較的低予算なSFコメディの娯楽作品として十分に楽しめる映画だった。 https://filmarks.com/movies/81434/reviews/181142019

  • ハッピー・デス・デイ | Happy Death Day (2017)

    3.6/5.0 話題作を次々と世に送り出す製作会社の常連となったブラムハウス・プロダクションズによるホラーコメディで、「パラノーマル・アクティビティ」シリーズの脚本や製作を担ってきたクリストファー・B・ランドンが、今作の監督を手掛けている。 性悪な主人公が仮面をつけた謎の人物に殺されると、なぜか時間が巻き戻されてその日の朝に戻ってしまい、主人公は何度もその最悪の日を繰り返し過ごしながら自身を手に掛けた犯人の正体に迫るという、シンプルながら工夫が効いた設定。 同じ風景や状況が繰り返し使われることになるので、必然的に撮影の効率が上がって予算を抑えられるという製作観点でのアイデアの巧みさも、予算は少ないが製作者には最大限の創作的裁量を与えるというポリシーのブラムハウスならではと感心する。 自身が死ぬ日を繰り返す中で、序盤では最悪の人格にしか思えなかった主人公の内面が少しずつ見えてきて、事件の真相に迫る筋書きと主人公のキャラクターアークの変遷が同時進行していく脚本は、とても完成度が高い。 主人公の性悪な振る舞いが酷いこともあって、主人公に恨みを持つであろう人の思い当たりがあり過ぎ、登場人物の誰もが犯人に思えてしまうところは笑えるが、終盤ではけっこうひねりの効いたツイストがあり、序盤から丁寧に仕組まれていた伏線が鮮やかに回収されていく面白さがある。 大予算をかけて名俳優を起用したりド派手で豪華なVFXが山盛りな映画を観る楽しさはもちろんあるが、この作品のように、予算が限られていても設定や脚本次第で面白いものを製作することはできるのだと証明するような映画は、個人的にとても好みだ。 https://filmarks.com/movies/74951/reviews/152628584

  • アップグレード | Upgrade (2018)

    3.5/5.0 「ソウ」シリーズの脚本からキャリアをはじめ、自身で脚本と監督の両方を担うようになったリー・ワネルが手掛けたSFアクション映画。 ホラー映画の実績が多い監督ということもあり、脚本の面白さに加えて恐怖の描き方も安定感がある。 交通事故とその直後の悪党の襲撃によって妻を失い、自身も四肢麻痺という重大な後遺症を負った主人公が、超高性能のAIチップを体内に埋め込むことで身体能力を取り戻し、妻を手に掛けた犯人を追うという筋書き。 SF映画らしい発想の飛躍があるが、もしかしたら近い将来にこのような科学技術が実用化されるかも… と想像が広がる面白さがある。 リー・ワネルと、「ソウ」シリーズや他作品でもタッグを組んでいるジェームズ・ワンに共通する才能として、大胆でオリジナリティが高いアングルとカメラワークがある。 どちらもホラー映画出身でありながら、出身ジャンルに全くとどまらない演出スタイルを目にすることができる。 この作品では、アクションの主体は人間でありながら、その動作を制御しているのはAIであるという設定を、人間的にあり得ない (仮に思いついても誰もやらない) ような奇抜なカメラワークで表現しており、その不気味さが抜群に面白い。 人間が演じているアクション自体も、AI制御によって生まれる効率的過ぎてやや滑稽ともいえる身体動作は一見の価値がある。 犯人探しと復讐という定番的な物語を踏襲しつつ堅実に展開する脚本でありながら、終盤においてはなかなか面白いツイストがあり、鑑賞者によって好みが分かれそうな結末でもあるが、個人的には意外性があり面白い脚本だと感じた。 80〜90年代の古き良きB級SFアクション映画を最新の演出や設定で "アップグレード" したような、どこか懐かしくも斬新な読後感のある良作だった。 https://filmarks.com/movies/79356/reviews/152618724

  • ミッション: 8ミニッツ | Source Code (2011)

    4.1/5.0 伝説的ロックスターのデヴィッド・ボウイを父に持つダンカン・ジョーンズが監督を担ったSF映画。 陸軍で働いていた主人公が目覚めるとそこは見覚えのない通勤電車の中で、混乱しながら鏡を見ると自分自身とは違う人間の顔が映る。 主人公が状況を把握できずにいると電車に仕掛けられた爆弾が起動し、主人公も含む乗客全員が死亡するという、衝撃的な導入で一気に引き込まれる。 主人公が何度も目覚める通勤電車は、既に起きてしまった列車爆破事件で死亡した乗客達の「最期の8分間」の記憶を繋ぎ合わせて再構成された並行世界で、主人公は現実世界からその8分間の並行世界に送り込まれた存在であることが序盤で明らかになる。 主人公は、爆弾を仕掛けた犯人を特定することで次の悲劇を防ぐという任務を果たさなければいけない。 ほとんどのシーンが8分間の通勤電車と主人公に指令を出す人々が存在する基地で構成されていて、とても限定的でありながら、無駄のない脚本と見せ方に工夫のある演出で約90分にしっかりまとまっており、中弛みや退屈するところがない。 繰り返される8分間の世界も、主人公がその仕組みを理解し行動を変えることで周囲の人々の行動も少しずつ変化していく演出が面白く、巧みな設定だと感じる。 主演のジェイク・ギレンホールの演技はやはりこの作品でも素晴らしくハイレベルで、突飛な設定や状況の描かれ方に説得力を持たせている。 その恋人役を助演するミシェル・モナハンも、慎ましくありながら確かな存在感があり、名優であることをあらためて感じた。 劇中のある人物の説明で、この8分間の並行世界はあくまでも記憶へのアクセスであり過去へのタイムトラベルではないと明示されるが、この並行世界は本当に架空のものなのか? という大きな問いがあり、終盤には (賛否ありそうな) センス・オブ・ワンダーな飛躍がある。 現実世界で主人公が置かれている境遇の残酷さは、軍人として生きるということの批評として成立していると思うが、主人公が並行世界へ潜り込む際に意識をジャックした人間の人権はどうなるのか? といった倫理の部分は、設定の面白さとは別のところで少し気になってしまった。 作品のリアリティを高めるためには科学考証と論理の厳密な正確性も重要だが、もしもこんな技術が未来で開発されたら… といったif発想の飛躍こそがSFの魅力でもあり、その意味でとてもオリジナリティの高い作品であることは間違いがない。 https://filmarks.com/movies/8346?mark_id=152619018

  • ハーレイ・クインの華麗なる覚醒 BIRDS OF PREY | Birds of Prey: And the Fantabulous Emancipation of One Harley Quinn (2020)

    3.1/5.0 主演とプロデューサーを兼任するマーゴット・ロビーをはじめ、主要キャラクター・監督・脚本家といった作品の中心的な部分が女性達で構成されている、DC映画シリーズに属する映画の中でもやや異色の作品。 同映画シリーズはリブートされることが決定済で、リブート前に公開されたこの作品に登場するキャラクター達が新シリーズで続投する可能性は高くなさそうだが、この作品単独で成立する物語になっているので、深く考えずシンプルに楽しむことができる。 ジョーカーというカリスマ的な存在のパートナーの庇護下で好き放題していた今作の主人公のハーレイ・クインが、その環境から脱し自分自身のアイデンティティを確立するというキャラクターアークの描き方は分かりやすい。 マーゴット・ロビーという才能豊かな俳優の演技力あってこそだが、カラフルで豪快な演出や表層的な悪党の描き方だけではなく、善悪の境目や揺らぎであったり、主人公の内面で寄せては返すような狂気と脆さの両面が描かれている。 女性中心の映画ということもあり、女性の自立した生き方というフェミニズムなテーマ性もやや含まれているように感じるが、その視点や主張がアンバランスだったり過剰ということでもない。 メイン悪役のローマン・シオニス / ブラックマスクを演じたユアン・マクレガーもまた主人公の裏返しというか、ジョーカーのような悪のカリスマになることへの渇望がありながら自身はその器ではないという自覚と葛藤があって、精神的に不安定な人間くさいキャラクターを絶妙なテンションで演じており、あらためて器用な俳優だなと感じた。 作品のテーマとは違ったところで、演出のセンスを感じるところもあるにはあるが、多数の人物が入り乱れるアクションシーンの描き方はやや段取り的で、もったりした鈍重さが気になった。 単純に、監督を担ったキャシー・ヤンにアクション演出の経験が少ないか、撮影スタイルがやや保守的だからなのかも知れない。 安易にCG置き換えに頼らず、俳優達本人やスタントのフィジカルアクションの実撮影をベースに使っているからこそのリアルな重量感を感じられるともいえるが、もう少しカメラワークの俊敏さやカッティングの切れ味もあるとなお楽しかったように感じる。 観賞後に何か強い読後感が残るタイプの映画ではなかったし、特筆すべきハイレベルな演出が全篇に渡って観られたわけでもなかったけれど、主人公とメイン悪役の決着のつき方には意外さと痛快さがあって、ニヤッと笑ってしてしまった。 https://filmarks.com/movies/81049/reviews/152633975

  • セーヌ川の水面の下に | Sous la Seine / Under Paris (2024)

    3.4/5.0 2024年夏季にパリで開催されるオリンピックのタイミングを完全に狙いすまして作られたであろう、フランス製作のパニックスリラー。 パリのセーヌ川に巨大なサメが侵入し、事態の解決をはかる主人公達と、それを妨害しようとする環境保護団体と、セーヌ川の水泳を含むトライアスロン大会の開催を強行しようとする人々の思惑が錯綜する。 サメが出てくるパニック/ホラー映画は、そのスタイルをどんどんと進化させながらも20世紀中にやり尽くされて飽きられたかと思いきや、段々とそのジャンルそのものがミーム化して、真面目なのかふざけているのかよく分からない作品が量産されるようになり、ニッチながらも確固たる独自のテリトリーを確立している。 が、この映画に関しては、少なくとも製作者達はそういった「皆さんも分かってますよね」的な昨今のサメ映画とはスタンスが違って見え、けっこう真面目な顔つきのトーンと丁寧な脚本の導入で物語へ引き込ませてくれる。 また、現実世界でも問題になっているセーヌ川の汚染とオリンピック競技強行実施の問題や、環境保護団体の理想主義過ぎる言い分を皮肉たっぷりで風刺していて、社会派映画といえばそうかも知れないが、もっと単純に、よくこんな意地悪な脚本を思いついたものだなと面白く感じた。 俳優達の好演や堅実で安定した撮影スタイルもあって、終始シリアスなトーンで物語が展開するが、いよいよサメが派手に人々を襲う! というタイミングで唐突にそれまでと全く違ったギャグなアングルになるところが数回あり、これは狙ってやっているのか? 真剣に恐怖すべきなのか? の判断がつかず、驚きながら半笑いになってしまった。 典型的なハリウッド映画であれば紆余曲折や大ピンチがありながら最後はハッピーエンドで締まりそうなところも、この作品はフランス製作ということもあってかそうはならず、悪い事態がさらに悪い事態を呼び、終盤はそこまで酷いことになっちゃうのと感じるところまでエスカレートしていく。 序盤からあからさまに張られていたある伏線が終盤の最高潮のシーンでしっかり回収されるのだけれど、その回収のテンションが全力過ぎて、悲劇的な画なのにかなり笑ってしまった。 フランス映画といえばその多くは不条理だったり難解だったり… という一般的なイメージがあると思うが、この映画の脚本や演出は、いわゆるフランス映画の典型には全く当てはまっておらず、かなり特異な作品といえるだろう。 最近のサメ映画は真面目なのかふざけているのかよく分からない作品が多いけれどこの作品はそうではなさそうだ、と中盤頃までは感じていたが、観賞し終えてみると、やはりこの作品もある意味で、脈々と続き進化し続けるサメ映画のDNAを (亜種的にではあるが) しっかり引き継いでいるのかも知れないと思い直した。 恐怖するべきか笑うべきなのか悩まされる作品だったが、楽しい映画体験だった。 https://filmarks.com/movies/116048/reviews/180251460

  • REBEL MOON - パート2: ディレクターズカット | Rebel Moon - Part Two: Director's Cut (2024)

    2.7/5.0 ザック・スナイダーの脚本・監督による壮大なスペースオペラ二部作の完全版で、その後篇。 オリジナル版は約2時間 (123分) だが、このディレクターズカットは約3時間 (173分) 。 作品そのものの評価はさておき、監督が語りたい物語が隅々まで具現化された映画であることは間違いない。 前篇・後篇ともに、もともとは「スター・ウォーズ」の完全新作として構想されながら、結果的に監督オリジナル作品として脚本を構成し製作された作品という経緯があり、この物語が「スター・ウォーズ」の世界観で作られたらどんな感じになったのだろうと想像しながら観賞する楽しさはある。 オリジナル版とディレクターズカットの大きな違いは、前篇においてはキャラクターのバックストーリーを掘り下げて理解できる新規シーンの追加が主だったが、後篇ではオリジナル版にあったシーンをベースにしながら、じっくり時間をかけて分厚く見せる編集が多くなっている。 自身がザック・スナイダー監督作品のファンであるからなのかも知れないが、オリジナル版を観賞した際に、この作品には少なくとも4つ明らかに失敗しているところがあると感じ、ディレクターズカットの観賞後にその思いを強くした。 1. 前篇で済ませたはずのキャラクターのバックストーリー紹介 (回想シーン) が何故か繰り返される かなりのボリュームを費やして、前篇で語られたこととほぼ同じ内容が冗長に語られる。 しかも主要キャラクター全員分の回想が続くので、それが終わるまで物語が全く前に進まない。 2. 悪役が前篇と全く同一人物なのでスケールの変化も打倒のカタルシスも感じられない 前篇の悪役は、序章で倒されるべきキャラクターとしてはちょうどいい設定のように感じたが、前篇で死亡したと思われていたそのキャラクターが早々に (正確には前篇の終劇直前で) 復活し、後篇でも全く同じ役回りで登場する。 同じ悪役を二度打ち倒しても、主人公たちの物語が前進したり、闘いが終結したのだという感動がない… 3. 監督の専売特許ともいえるハイスピード撮影 (スローモーション演出) の使いどころが何だかおかしい これまでのザック・スナイダー監督の作品では、ここぞ! というところで、やっぱりこれだよね! というハイスピード+コマ落としのケレン味溢れる演出が観られて毎回驚きと感動があったのだが、この作品では、そんなフツーの風景を超ハイスピードで見せられましても… と困惑・退屈してしまうようなシーンが少なからずあり、監督の意図が理解できなかった。 4. そもそも二部作で完結する物語ではないことが終盤で唐突に明らかになる オリジナル版でも前・後篇あわせて約4時間半、ディレクターズカットにおいては約6時間半と、ひとつの物語を語るには充分過ぎる超特大ボリュームでありながら、打ち切り漫画の最終回さながらに「俺達の本当の闘いはこれからだ」形式のクリフハンガーがあって終劇する。 騙されたとまでは言わないまでも、ここまで饒舌に語った挙げ句どこまで引っ張るつもりですかという気分になってしまう人が、少なくないのではないか。 優れた漫画作品には漫画家だけでなく編集者の存在もまた重要だと言われたり、音楽アーティストとプロデューサーの関係の重要性等もよく言われるが、映画作品においても同様のことが言えるのかも知れない。 映画作品そのものの強さよりもリスクヘッジを優先し、関係者各位の利害や配慮も入るから作品が駄目になる原因なのだといわれる「製作委員会」方式については、自分もいち映画ファンとして全く快く思っていないが、この映画はもしかしたら、NETFLIXがザック・スナイダー監督を信用して予算を出したものの、監督個人の趣味や嗜好が暴走してしまい、それを冷静にハンドリングできる存在が監督の隣にいない現場になっていたのではないか… と、映画世界の外の事情を想像してしまって、少し悲しい気持ちになった。 今作の製作にクレジットされていて、ザック・スナイダー監督のパートナーでもあるデボラ・スナイダーには、次回作から監督の手綱を強めに握ってくれることを期待したい。 https://filmarks.com/movies/117826/reviews/180238258

  • REBEL MOON - パート1: ディレクターズカット | Rebel Moon - Part One: Director's Cut (2024)

    3.3/5.0 ザック・スナイダーの脚本・監督による壮大なスペースオペラ二部作の完全版で、その前篇。 オリジナル版でも約2時間半 (148分) という大ボリュームだったが、このディレクターズカットはなんと約3時間半 (204分) もある。 作品そのものの評価はさておき、監督が語りたい物語が隅々まで具現化された映画であることは間違いない。 もともとは「スター・ウォーズ」の完全新作として構想されながら、結果的に監督オリジナル作品として脚本を構成し製作された作品という経緯があり、この物語が「スター・ウォーズ」の世界観で作られたらどんな感じになったのだろうと想像しながら観賞する楽しさはある。 「スター・ウォーズ」の創造主であるジョージ・ルーカスが「隠し砦の三悪人」等の黒澤明の映画や日本の伝統文化に大きな影響を受けて世界観を作り上げたことを倣ったのか、この作品も明らかに黒澤明の「七人の侍」を参照していることが分かる。 戦乱の時代、悪政により窮地に追い込まれた平民達を救うために、腕に覚えのある戦士達が反乱を起こすというプロットは、古典的ではあるが単純明快なので、世界中の人々に広く理解できるものとなっている。 オリジナル版から約1時間もボリュームアップした主要な部分は、オリジナル版ではほとんど語られていなかったキャラクター数人のバックストーリー。 R指定のディレクターズカット版は、残虐描写や性的描写に全く遠慮がなく、もともとオリジナル版にもあった数々の戦闘シーンも細かいVFXや編集効果が変わっていて、この作品の悪役である帝国の残虐性がオリジナル版よりもダイレクトに伝わってくる。 ただ、そういった数々の「監督が本当に具現化したかったこと」を過剰なまでに完全にやりきったディレクターズカットであっても、オリジナル版を観賞した時に感じてしまった別の部分での物足りなさは、変わらず残っているように感じた。 描写が過激でも、充分な時間を費やしても、語られる物語や世界観自体に既視感があり、教科書通り過ぎて斬新さに欠けるというか… 主人公が共に闘う仲間を集める形で物語が進む中で、主要なキャラクターのバックストーリーも丁寧に語られていくが、まぁそういうことでしょうねといった感じで予想の範囲を超えないものが多く、過剰なほどにドラマティックな映像や楽曲の演出をもってしても、いまいち引き込まれない。 帝国の宇宙戦艦の心臓部に拘束され動力として酷使されている? 巨大な人型生物の描写は個人的にとても新鮮に感じ、他の映画監督や脚本家にはなかなか生み出せないセンス・オブ・ワンダーな部分だなと感じたが、画的に飛び抜けた面白さを感じたところはそれぐらいで、他はこれまでのザック・スナイダー監督作品で見てきたアングルやモチーフにどこかしら近似している部分がほとんどで、新鮮さがなかったことが残念だった。 ディレクターズカットとオリジナル版で物語が大きく違うわけでもないので、監督のよほどのファンでない限りは、オリジナル版を観賞することで充分かも。 https://filmarks.com/movies/117821/reviews/180238024

  • ARGYLLE / アーガイル | Argylle (2024)

    2.4/5.0 「キングスマン」シリーズにてスパイ映画という伝統的なジャンルに新しい風を吹かせたマシュー・ヴォーン監督による、色々な意味で斬新なスパイ映画。 マシュー・ヴォーン監督の作品はどれも見どころがあって好きだけれど、この作品は脚本がちょっと微妙かもという話を事前に知人から聞いていて、でも自分で確かめてみなきゃ分からないしという気持ちで観賞した。 監督の持ち味であるケレン味あふれるアクションや選曲センスとタイミングが素晴らしい劇伴のあて方は流石と感じたけれど、事前の情報通りというかそれ以上というか、この作品は脚本にまで過剰なケレン味があり過ぎて、途中からは何を観せられているのか全然分からーんという気持ちになってしまい、自分はそのノリについていけなかった。 ブライス・ダラス・ハワードが演じる主人公のエリーはスパイ小説「アーガイル」シリーズを執筆する作家なのだけれど、創作上の世界や存在だと考えていたスパイの世界が実在して、その抗争に巻き込まれ… という導入は面白い。 自身の小説にしか存在しないはずのキャラクターと (主人公にとっての) 現実世界の人物がダブって見えたりする演出も、序盤ではワクワクしながら楽しめる。 のだけれど、中盤からは「◯◯と思っていた△△は本当は✕✕でした」という物語上の大きなツイストに驚かされたと思いきや、「ところが✕✕は本当は□□でした」「といいつつ□□は本当は◎◎でした」「でもって◎◎は本当は…」という、ツイストのためのツイストにしか思えないような強引なツイストが続き、終盤では脚本の整合性がほとんど破綻してしまっているような印象だった。 劇中に何度か「一流スパイは世界を騙す」という台詞があり、監督の狙いは「あなたもこの物語に騙されたでしょ」ということなのだろうけれど、ここまでしつこく二転三転四転五転… が続くと、よほど熱狂的な監督のファン以外は素直に楽しみきれないのではないかと感じる。 マシュー・ヴォーン監督の (やや複雑に拗れて捻れた) スパイ映画への愛憎が、今作においては制御が効かず無軌道に炸裂してしまったような… 最も呆れてしまったのは、終劇直前のツイストと、さらにダメ押し的に存在するミッドクレジットのツイスト。 MARVELやDCや最近のハズブロのように、実はこれまで監督が手掛けてきた複数の作品が共通の世界で展開する物語だったのだ! という大仕掛けなのだろうけれど、だとすると、この「アーガイル」に出演していて、監督の過去作品にも別のキャラクターで出演していたあの俳優やあの俳優の存在は一体何だったのか…? と解釈不能になってしまって、作品そのものの面白さよりも大きな困惑の読後感が残ってしまった。 「アーガイル」シリーズは三部作構想とのことだが、次回作は一体どうなるのか… https://filmarks.com/movies/97957/reviews/179133669

© 1998-2025 Shoji Taniguchi

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