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- ザ・スーサイド・スクワッド "極" 悪党、集結 | The Suicide Squad (2021)
4.4/5.0 世間的にあまり評価が芳しくなかった同タイトルの最初の実写映画作品の、ある意味リブートでもありつつ続篇として解釈することもできる形で物語が成立しており、かつDCが展開している (正確にはしていた) シネマティックユニバースの一篇でもあるという、かなり独特な立ち位置にある映画。 個人的にそのキャリア初期からファンのジェームズ・ガンが監督するということで期待していたが、その期待を裏切らない展開が冒頭からあり、相変わらずめちゃくちゃ過ぎて流石だなと一気にのめり込んで鑑賞できた。 ほぼ全篇を通して乱発されるジョークのほとんどがブラックかつ下品なので、クリーンで上品な作品だけを好む人には全く合わないだろうけれど、そこは監督の持ち味だし相性の問題なので仕方ないかなと思う。 マーゴット・ロビーやイドリス・エルバを中心とする、主要登場人物を演じる俳優達の複雑性を含んだ役作りが素晴らしく、脚本にもそれぞれの人物のキャラクターアークがきちんと組み込まれていて、他のスーパーヒーロー / スーパーヴィラン映画とは一線を画すレベルになっていると感じた。 特にジョン・シナが演じるサイコパス的なキャラクターには強く惹きつけられた。同キャラクターを主人公にしたスピンオフドラマが作られ、それがこの映画作品にも負けないほど高い評価を得ていることにも納得できる。 ジェームズ・ガン監督作品のほとんどに通底するものとして、社会生活不適合なはみ出しもの達がどのように社会や他者との折り合いをつけていくのかというテーマ性があるが、この作品においてもやはりその部分が物語を進める脚本の軸になっていた。 そういう不器用な人々への監督の愛が感じられて、その人情味溢れる物語性とド派手で狂った演出を両立させる絶妙なバランス感覚が、ジェームズ・ガンという創作者の強烈で唯一無二の才能なのだろうと思う。 https://filmarks.com/movies/74474/reviews/152628763
- マスターズ・オブ・ホラー | Nightmare Cinema (2018)
2.1/5.0 短篇×5話と、メタ的にそれらを鑑賞することになる人々を描くオムニバス形式のホラー映画で、同様形式の名作「トワイライトゾーン」やキャッチーなキャラクターで有名な「グレムリン」を手掛けたジョー・ダンテ監督が参加していると知って鑑賞した。 第1話 「The Thing in the Woods (森の中の物体X)」2.3 / 5.0 素顔が見えない凶悪な人間から逃走あるいは抵抗する若者という設定。 「13日の金曜日」や「悪魔のいけにえ」シリーズが確立した型に全乗っかりしつつ、ノリが軽いので笑っていいのか怖がっていいのか分からずやや困惑する。 タイトルからも明らかなように、「The Thing (遊星からの物体X)」へのオマージュであることが終盤で見えてくる。 オマージュというよりは、パロディに近いなと感じる軽さではあるけれど。 物語のツイストと終劇の結末感は、あるにはある。 第2話「Mirari (ミラリ)」1.8 / 5.0 結婚を間近に控えた女性が、あるきっかけから美容整形を受けることになるが… という設定。 こうなるのかなと想像した通りのことが起き、それ以外のことは起きず、間延びして退屈な演出もあってやや残念。 アナログな特殊メイクの造形に注力したことが分かるけれど、30年ぐらい前のある映画で出てきたネタと完全に重複していて (これもオマージュなのかも知れないが…) 懐かしくはあったが驚くことはできなかった。 社会や流行の風刺としても、中途半端で浅い印象。 第3話「Mashit (マシット)」1.0 / 5.0 神学校の神父・シスター・生徒たちが悪魔憑きに立ち向かうが… という設定。 それほどよくできているとは思えない他4話と比較してもダントツで完成度が低く、章立てで横並びにすると、監督の才能の差がこんなに残酷に顕在してしまうものなのかと、その点がむしろホラーに感じられてしまった。 狙いが見えない安直なアングル、やっつけで編集したとしか思えないグリーンバック合成、目的が不明瞭でただ冗長なカット、どう聴いてもギャグにしか聴こえないチープでロックな劇伴… そもそもの話として、誰が悪魔に取り憑かれていて誰を救うべきなのかの画的な描き方がテキトー過ぎて、過激なだけのスプラッタ描写や思いつきで入れたようなエロシーンよりもそこをまずきちんと見せて欲しいと感じた。 脈絡なく出てきて本筋に全然関係しない「エクソシスト」や「オーメン」のパロディも、製作者達の「俺達分かってるだろ」感だけが上滑りしているように感じて、興ざめ… 第4話「This Way to Egress (出口はこちら)」3.5 / 5.0 病院の待合室で自身の診察を待つ女性だが、受付スタッフや世界そのものが怪異的に変貌しはじめ… という設定。 この4話めだけかなり固いトーンのモノクロになっており、色情報がない分だけ恐怖的想像の余地が感じられて面白かった。 超現実的で不条理な世界や、不気味な肉体的変貌の描写といったところに、デヴィッド・リンチ監督の長篇デビュー作「イレイザーヘッド」へのオマージュが大きくあるのかなと思う。 物語の明確な結末感を期待すると肩透かしになってしまうかも知れないが、強く印象に残る画づくりは鑑賞する価値があったと感じた。 第5話「Dead (死)」1.9 / 5.0 少年とその両親が、帰宅途中に暴漢に襲われ、少年だけがかろうじて生き延びるが、おかしなものが見えはじめ… という設定。 M・ナイト・シャマラン監督の「シックス・センス」にインスパイアされつつ、その設定でバイオレンスホラーをやってみようということなのかなと想像したが、主要人物達のキャラクター設定やバックグラウンドの描写が雑で、何故こういう話になるんだったっけと気になるタイミングが多くて物語に没入できず、うーん何だかなぁという読後感だけが残った。 オムニバス形式の映画やドラマはとても好きなので、鑑賞前の期待値が高かったこともあり、鑑賞後のガッカリ感が強かった。 無駄を省いたテンポよい演出が必要とされる短篇でありながら、劇中で何度も退屈に感じるという体験は、ある意味貴重ではあった。 https://filmarks.com/movies/81095/reviews/176525664
- エクスティンクション 地球奪還 | Extinction (2018)
3.3/5.0 NETFLIX配給のSF映画で、主演を務めるマイケル・ペーニャのファンなので鑑賞した。 地球外から謎の異星人達が襲来し大惨事が起きる悪夢を何度も観ることに悩まされていた主人公だったが、それが現実に起きて… という導入の侵略SF。 コメディカルな演技や役柄が印象的なマイケル・ペーニャだが、この作品では極めてシリアスで家族思いな男性を演じている。 その妻役を演じるリジー・キャプランも、主張し過ぎず地味にもなり過ぎずのバランスいい好演。 物語の規模は壮大ながら主要な舞台の規模は街ひとつ分にとどまっていて、ケレン味や派手さのあるVFXよりも主要キャラクター達の身体演技とその捉え方に演出の重きが置かれており、チープさなく展開していて、演出が堅実で上手だなと感じた。 脚本に関しては、序盤からさりげない伏線が丁寧に組み込まれていきつつ終盤でかなり大仕掛けなツイストがあり、なるほど! 上手い! 面白い! とワクワクした。 結末については、観る人によってはやや物足りない気持ちになるかも知れないが、個人的にはこの作品のような終劇の仕方もほどよい余韻と読後感が残って良いものだと感じた。 NETFLIXオリジナル映画やドラマには、一部の超大規模作品やアート特化系の作品を除いてB級〜C級の狭間を漂うような作品が多いが、この映画については事前の期待値がそれほど高くなかったこともあってか、なかなか面白い映画体験ができたと嬉しい気持ちになった。 https://filmarks.com/movies/77209/reviews/152619997
- VESPER / ヴェスパー | Vesper (2022)
3.2/5.0 リトアニア・フランス・ベルギーの3カ国で製作されたというSF映画で、映画好きな人達からの前評判がとても高く、予告篇も興味をひきつける内容だったので、期待しつつ鑑賞した。 生態系が破壊されてしまった地球において、富裕層は地上を離れ「シタデル」という都市に暮らし、そうではない人々は遺伝子変化を経た危険な植物達が自生する地上で限りある資源を奪い合うような暮らしをしているという物語の舞台設定が、とても魅力的。 脚本と監督を担ったクリスティーナ・ブオジーテとブルーノ・サンペルは、宮崎駿の「風の谷のナウシカ」やルネ・ラルー (カルトSFアニメーションといわれる「ファンタスティック・プラネット」を手掛けた) から大きく影響を受けたと公式に発言しているが、安易で表層的な剽窃ではなくマッシュアップとリスペクトがあり、監督独自の退廃的な世界観の構築に成功している。 脚本については、序盤〜中盤〜終盤とそれなりに展開はあるものの、ハリウッド系のSF映画と同じような期待値で鑑賞するとやや起伏に欠ける部分は否めない。 人造生命や未来的なテクノロジー等も出てくるが、詳しい部分には言及されないので、良くも悪くも想像の余地が残る。 何より、中心的に描きたい部分がそこではないという意図は理解できつつも、主人公達とは違う世界で暮らしているという富裕層および彼らが暮らすといわれている「シタデル」についてほとんど全くといっていいほど画で描かれない (映画冒頭の導入文章で語られるのみ) というところは、もうほんの少しだけでも見せてくれたら嬉しかったのになと感じてしまった。 結末についても、ポジティブにいえば大きな余韻が残るといえるが、今から面白くなりそうなのに、ここで終わっちゃうのか… という読後感でもある。 おそらくかなり予算が限られていたことがあって、注力するシーンやモチーフを絞りに絞り込んだのだろうとは想像しながら、実撮映像のトーンや奥行き感を重視し、VFXの使いどころを最小限かつ効果的なところに限定する演出がとても丁寧かつ上手で、SFでありながらもアート系映画が持つような美しい佇まいのある作品だった。 https://filmarks.com/movies/104106/reviews/176468145
- バトルシップ | Battleship (2012)
3.0/5.0 ユニバーサル映画の100周年を記念して製作された、様々な文脈で映画の歴史に残るであろうSF大作。 G.I.ジョーやトランスフォーマー等の超有名ブランドを持つ玩具メーカー、ハズブロ社のボードゲームが原作。 ボードゲームが? 原作? というところから突っ込みたくなるけれど… 大きな物語としては、強大な科学力と兵器を備えた異星人の襲来に立ち向かう地球人達というところだが、異星人の謎のテクノロジーによって出現した強力なバリアにより、その戦闘の舞台がハワイ周辺の海上に限定される。 なぜそうなるのかと突っ込むのは野暮だ、ボードゲームのボードの広さには限りがあるからだ。 なので、地球人側も全世界から駆けつけての総力戦というわけにはいかず、たまたまその時ハワイ周辺で共同演習をしていた米国の海軍と日本の海上自衛隊が、孤立無援な状況で異星人に立ち向かうことになる。 なぜそうなるのかと突っ込むのは野暮だ、ボードゲームで使う駒の数には限りがあるからだ。 映画全篇を通して、画づくりの規模や品質は最大・最高レベルでありながらも、重くなり過ぎず、むしろ軽いタッチだなと感じる演出が多いのは、やはりボードゲームが原作なこともあって、主に子どもが夢中になる海戦ごっこの実写化だからということなのだろう。 ただ、映画中盤において、浅野忠信が演じる海上自衛隊一等海佐がリードする夜の攻防戦があるのだが、海佐が示す戦法とその実際的な描かれ方がとても面白く、確かにこれは自分も子どもの時に友人と夢中になった海戦ゲームそのものだ! と思い出し、ニコニコしてしまった。 終盤においては、伝説的といってもいいであろう米国の実在の超弩級戦艦ミズーリが登場し、とんでもない展開がある。 きっと米国人にとってのミズーリは、日本人にとっての戦艦大和のような存在なのだろうと想像すると同時に、この映画はSFを遥かに通り越して最早ファンタジーの域に到達しているものなのだから、リアリティがどうこうと突っ込むのは野暮なことだなと感じた。 眉をひそめて批判的な態度で観るよりも、アホ過ぎるけれどめちゃくちゃ決まっている主人公の名台詞や、そんなわけあるかと感じつつも少年漫画さながらに激熱な戦艦の活躍を、頭からっぽで楽しめるといいのだろう。 映画史の一角に確実な存在感と偉大な名を残すユニバーサルの100周年記念作品が、本当にこの映画で良かったのか、途中で誰も止めなかったのかというところが最大の突っ込みどころだけれど、その限りないアホさと派手さが醸し出す唯一無二の祝祭感という意味では、間違いなく記念碑的作品になっているといえるだろう。 https://filmarks.com/movies/19863/reviews/152618861
- シグナル | The Signal (2014)
2.9/5.0 SF的な展開を想像させるサムネイル (扉絵) が気になり鑑賞した。 映画序盤は若者3人 (うち2人は恋人の関係) のロードムービーといったトーンで、派手だったりケレン味を感じる画はないが、丁寧で上質な広い風景の力も借りて物語世界に引き込む演出がされている。 ある人物がいると思われる場所へ3人が訪れるタイミングから物語が大きく動き、そこからがこの映画の本題的な話になってくるが、映画のジャンルごと急旋回するような演出は面白い。 ローレンス・フィッシュバーン以外の俳優達は (この映画の公開当時は) それほど著名ではなく、製作予算も多くなさそうだが、VFXの使いどころを絞ったり、実写風景の構図や照明の作り方が丁寧なので、低予算感はそれほど感じない。 謎がどんどん増えていくサスペンスSF的な話の運び方は面白く、終盤ではある程度それらの謎についての真実もしくはその示唆が提示される。 ただ、全部を事細かに説明して回収するというよりは、あれはもしかしたらこういうことだったのかもと想像の余地が広がる程度にとどまっているので、それを楽しいと感じるか消化不良に感じるかは観る人によって分かれそう。 結末ではいかにもSF的なある画が広がり、驚きもあるにはあるのだけれど、過去の古典SF小説や映画作品でさんざん使われてきたネタとほぼ重複しているので、個人的にはうーんちょっとなあと思ってしまった。 色々惜しいなと感じるところがありつつ、丁寧な作りで少し不思議な世界を見せてくれるSF小品といった印象の映画だった。 https://filmarks.com/movies/61556/reviews/176127871
- スター・トレック: ディスカバリー シーズン5 | Star Trek: Discovery Season 5 (2024)
3.6/5.0 シーズン1から継続して観賞してきたが、最終シーズンとなるシーズン5は、宇宙最大の謎のひとつともいえる「あらゆる生命体を創り出した存在」の痕跡を辿るという壮大な設定。 平たくいえばそれは「神」もしくはそれに類する存在であるといえるが、科学技術や論理とは違ったレイヤーで語られることが多いそれを、SF作品の筆頭ともいえるこのシリーズがどう描くのか、そもそもその存在がしっかりと科学的リアリティをもって描かれるのかというところにワクワクしながら観賞した。 厳密にいえば同様のテーマで製作されたスター・トレックシリーズの初期映画版 「スタートレックV 新たなる未知へ」があり、同作は世間的にも自分としても評価が低いが、それとは全然違った物語になっていて楽しめた。 宇宙艦ディスカバリーの船長である主人公および同艦のクルー達と、それに敵対する種族との宇宙探索 (文字通りの "STAR TREK" ) 競争が物語の主軸となるが、複数種族とキャラクターの思惑が入り乱れ、派手な戦闘やアクションだけではなく政治的にスリリングな対話や駆け引きもあるところは、このシリーズの特徴であり面白い。 物語のテーマは壮大ながら、キャラクター達の個別のドラマの筋書きはやや退屈だったところが残念ではあった。 ただ、膨大なボリュームとエピソードに渡るスター・トレックシリーズを長く観賞し続けてきたディープなファンにとっては、思わずえーっと声が出そうなある真実が終盤で明らかになり、自分は驚きながら少し感動してしまった。 自分自身には宗教信仰はなく、様々な種類の神話や伝説を単純な興味で知りたいと考える人間だが、強い信仰心を持ち特定の神を崇める人々にとっては、もしかしたらこのシーズン5のテーマは立ち入ってはならない領域にまで踏み込んでいる (神的な存在を冒涜している) と感じられるのかも知れないと思った。 自分にとっては、SF的視点や科学的視点をもったアプローチでそういった神話的世界に迫る物語には、その物語構成や納得感のある結末を見出す難易度が必然的に高くなる部分も含め、抗いがたい面白さがある。 https://filmarks.com/dramas/527/19940/reviews/14399983
- スター・トレック: ディスカバリー シーズン4 | Star Trek: Discovery Season 4 (2021)
3.5/5.0 「スター・ウォーズ」と並ぶ超有名SF作品ということもあり、映画版は第1作から最新作まで全て観賞していつつ、ドラマ版の全てまではフォローしきれていないが、こちらのドラマシリーズはシーズン1から視聴している。 長寿シリーズの宿命ともいえる時系列やイベントの混雑と整合性の問題を、シーズン2と3でのタイムトラベル (タイムジャンプの方が正確か) によってシリーズで最も遠い未来へ舞台を移すことで上手く回避したことがあり、予備知識が充分になくとも未知の時代の物語へすんなり入れるようになっている。 とはいえ、これまでのシリーズで語られてきたモチーフ・歴史・技術・生物種などの設定は共通なので、シリーズのファンであればなお楽しめる、巧みな設計だなと感じた。 初代のドラマシリーズや映画版はタイトル通りの「宇宙の探索 (STAR TREK)」に重きが置かれており、異人種との戦争よりは対話の重要さを、破壊よりも発見の素晴らしさが描かれていたが、久しぶりにその原点への回帰的な脚本になっていたように思う。 ド派手でダイナミックな画や激しいアクション演出に慣れてしまったSFファンには、少し地味で見せ場が乏しいと感じるエピソードもあるかも知れないが、個人的には「スター・トレック」ってもともとこういうシリーズだったなと思い出しながら、ポジティブに楽しむことができた。 特に、終盤で描かれる未知の生物種との対話方法の模索とその解決法については、とても純度が高いSF的な興奮を覚えた。 「スター・トレック」の創作者であるジーン・ロッデンベリーが提示した、人類がいつか到達しなければならない高い規範と倫理が成熟した文明、それでも避けがたい哲学的衝突、そして対話と相互理解による解決の探求といったこのシリーズの特徴は、「スター・ウォーズ」シリーズとはまた違う貴重な価値があると思う。 最終シーズンとなるシーズン5も楽しみながら視聴していきたい。 https://filmarks.com/dramas/527/15740/reviews/14096104
- 探偵はBARにいる3 (2017)
2.1/5.0 自分が北海道出身で札幌にも住んでいたことがあり、1作目・2作目ともになかなか面白かったので3作目のこちらも観賞した。 探偵ものというジャンルは変わらずだけれど、1・2作目を手掛けた橋本一監督から吉田照幸監督に代わったことが大きく影響しているのか、これまでにあったハードボイルドなトーンがほとんどなくなり、フィルムのルックも安易でチープな見え方になってしまって、映画シリーズとしての個性が失われたように感じられてもったいない。 脚本や展開の規模感は前作までとそれほど大きな違いはなく、探偵を主演する大泉洋、その相棒役を助演する松田龍平、そして脇をかためる俳優達にもそれぞれのキャラクターがそれぞれの身体に宿った存在感がある。 主人公のキャラクターが2枚目と3枚目の狭間を常に右往左往しながら展開する、ドタバタな物語の面白さも顕在。 要所で入るアクション (泥くさい肉弾戦) シーンの演出は、海外映画の洗練されたそれと比較するとやはり見劣りしてしまうけれど、そこがこの映画シリーズの最も重要な要素だということでもないと思うので、ケチをつけることは控えたい。 1・2作目には確かにあった札幌・小樽・室蘭といった街の存在感とその叙情的な描かれ方は、この3作目では製作者達に重要ではないと判断されてしまったのかほとんど感じられるところがなく、監督の交代が良い方向に作用していないのではと感じた。 今作のヒロイン役を担う北川景子の表層的な演技とその稚拙さは、物語への没入感をバッサリ断絶させてしまうレベルで、何度も興ざめさせられてしまった。 体当たりの演技とか、等身大の自分を… とかいう都合のいい言葉が日本の映画やドラマのプロモーションでよく使われるが、裏を返せばそれは役柄とその人生が身体にインストールされていない状態と少ない引き出しでその場しのぎ的にぶっつけをしましたという実情の言い訳でしかないようにも受け取れ、今作の北川景子もまさにそういった表層的な所作を演技と勘違いしているような印象だった。 所属事務所や俳優本人の意向も多分にあったのだろうけれど、牢に身柄を拘置されておそらく数日経過しているという設定のシーンなのに、リップもアイメイクもブリブリ全力だったり… 例えフィクショナルな映画作品とはいえ、リアリティ度外視にも限度があるのではと呆れてしまった。 ハリウッド映画などでも、女性キャラクターがベッドで目覚めるシーンなのに何故かフルメイクとかはよくあるので、この作品に限っての話ではないのだけれど… 少なくとも外見的な美しさは多くの人が認めるところだろうけれど、ヒロイン役からは他にほとんど何も感じ取れなかったことがとても残念。 大泉洋と松田龍平というコンビのライフワーク的な作品になるポテンシャルも秘めたシリーズだっただろうけれど、これまでの作品でじっくり醸成されてきたシリーズの魅力とバランスが今作で色々崩れてしまったように感じられ、4作目がいまだ製作されていない (シリーズ終了になった?) ことにも少なからず影響しているのではないかと思ってしまった。 https://filmarks.com/movies/71804/reviews/152652962
- 探偵はBARにいる2 ススキノ大交差点 (2013)
3.9/5.0 自分が北海道出身で札幌にも住んでいたことがあり、1作目がなかなか心に残ったのでこちらの2作目も観賞した。 ジャンルは前作に続いての探偵もので、主人公のモノローグが要所で挟まれる形のハードボイルドなトーンで演出されている。 シリアスとコメディが目まぐるしく切り替わるスタイルも前作から踏襲されているが、こちらの2作目の方が、前作から引き続き登場する主要キャラクター達の演技がより板についており、作劇として安定しているように感じる。 割と大掛かりなアクションを含むドタバタなシーンにもちょっと間の抜けた面白さがあるけれど、やはりハリウッド映画や韓国映画のように研ぎ澄まされた構図設計やリアリティがあるものではなく、そこを真面目に比較するとコント的に見えてしまうところはある。 脚本は1作目と打って変わってということではなく、規模感や展開も前作同様といったところだけれど、無闇にスケールアップして変な方向に行くよりは、順当な続篇として成功しているように感じる。 もしかしたら原作小説の内容に準拠しているのかも知れないが、中盤〜終盤にかけて賛否が分かれそうな政治的イデオロギーについての文脈が入ってきたところは、脚本の根底に大きく関係する部分ではないこともあり、この映画に取り入れる必然性は強くなかったのではないかと感じてしまった。 探偵が真相解明のために奔走する今作の事件の首謀者が明らかになるシーンでは、その意外性についての驚きもありながら、何よりも人間の器の小ささや他者と理解し合えないことの惨めさについて考えさせられる部分があった。 主演の大泉洋はキャラクターをしっかり自分のものにしていて、現実に即して見ればリアリティレベルが高くないこの映画の中においても、こういう人間がもしかしたらススキノでひとりぐらいは (まだ) 生きているかも知れないと思わせるような説得力がある。 その相棒役の松田龍平のふわふわ、ヘラヘラなキャラクターは前作と変わらずで、その唯一無二ともいえる存在感が面白い。 ヒロイン的な役を演じる尾野真千子の演技からは、前作の同ポジションを演じていた小雪とは格が違うと感じるほどの、俳優としての凄みを感じた。 多くの人間の内面には複層的な心情の折り重なりがあるものだが、表情や声、オーバーアクトではない微細な振る舞いでその複雑さを表現しており、劇中では語られない物語の奥行きについての想像が広がる。 日本においては最高レベルといっても間違いではないほどの素晴らしい俳優であることを再確認した。 ススキノが中心的な舞台でありながら、2作目の今作では室蘭市の風景も叙情的に描かれており、自分がかつて過ごした街と思い出が呼び起こされ、ノスタルジックに語られる映画終盤の物語と重ね合わせてしまい、涙ぐんでしまうシーンが何度もあった。 楽しいことよりもむごいことの方が多い時と場所に生まれたとしても、人は支え合うことで小さな幸せを積み重ねていくことができるのだというメッセージを受け取った。 https://filmarks.com/movies/53085/reviews/152652953









