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  • ハーレイ・クインの華麗なる覚醒 BIRDS OF PREY | Birds of Prey: And the Fantabulous Emancipation of One Harley Quinn (2020)

    3.1/5.0 主演とプロデューサーを兼任するマーゴット・ロビーをはじめ、主要キャラクター・監督・脚本家といった作品の中心的な部分が女性達で構成されている、DC映画シリーズに属する映画の中でもやや異色の作品。 同映画シリーズはリブートされることが決定済で、リブート前に公開されたこの作品に登場するキャラクター達が新シリーズで続投する可能性は高くなさそうだが、この作品単独で成立する物語になっているので、深く考えずシンプルに楽しむことができる。 ジョーカーというカリスマ的な存在のパートナーの庇護下で好き放題していた今作の主人公のハーレイ・クインが、その環境から脱し自分自身のアイデンティティを確立するというキャラクターアークの描き方は分かりやすい。 マーゴット・ロビーという才能豊かな俳優の演技力あってこそだが、カラフルで豪快な演出や表層的な悪党の描き方だけではなく、善悪の境目や揺らぎであったり、主人公の内面で寄せては返すような狂気と脆さの両面が描かれている。 女性中心の映画ということもあり、女性の自立した生き方というフェミニズムなテーマ性もやや含まれているように感じるが、その視点や主張がアンバランスだったり過剰ということでもない。 メイン悪役のローマン・シオニス / ブラックマスクを演じたユアン・マクレガーもまた主人公の裏返しというか、ジョーカーのような悪のカリスマになることへの渇望がありながら自身はその器ではないという自覚と葛藤があって、精神的に不安定な人間くさいキャラクターを絶妙なテンションで演じており、あらためて器用な俳優だなと感じた。 作品のテーマとは違ったところで、演出のセンスを感じるところもあるにはあるが、多数の人物が入り乱れるアクションシーンの描き方はやや段取り的で、もったりした鈍重さが気になった。 単純に、監督を担ったキャシー・ヤンにアクション演出の経験が少ないか、撮影スタイルがやや保守的だからなのかも知れない。 安易にCG置き換えに頼らず、俳優達本人やスタントのフィジカルアクションの実撮影をベースに使っているからこそのリアルな重量感を感じられるともいえるが、もう少しカメラワークの俊敏さやカッティングの切れ味もあるとなお楽しかったように感じる。 観賞後に何か強い読後感が残るタイプの映画ではなかったし、特筆すべきハイレベルな演出が全篇に渡って観られたわけでもなかったけれど、主人公とメイン悪役の決着のつき方には意外さと痛快さがあって、ニヤッと笑ってしてしまった。 https://filmarks.com/movies/81049/reviews/152633975

  • セーヌ川の水面の下に | Sous la Seine / Under Paris (2024)

    3.4/5.0 2024年夏季にパリで開催されるオリンピックのタイミングを完全に狙いすまして作られたであろう、フランス製作のパニックスリラー。 パリのセーヌ川に巨大なサメが侵入し、事態の解決をはかる主人公達と、それを妨害しようとする環境保護団体と、セーヌ川の水泳を含むトライアスロン大会の開催を強行しようとする人々の思惑が錯綜する。 サメが出てくるパニック/ホラー映画は、そのスタイルをどんどんと進化させながらも20世紀中にやり尽くされて飽きられたかと思いきや、段々とそのジャンルそのものがミーム化して、真面目なのかふざけているのかよく分からない作品が量産されるようになり、ニッチながらも確固たる独自のテリトリーを確立している。 が、この映画に関しては、少なくとも製作者達はそういった「皆さんも分かってますよね」的な昨今のサメ映画とはスタンスが違って見え、けっこう真面目な顔つきのトーンと丁寧な脚本の導入で物語へ引き込ませてくれる。 また、現実世界でも問題になっているセーヌ川の汚染とオリンピック競技強行実施の問題や、環境保護団体の理想主義過ぎる言い分を皮肉たっぷりで風刺していて、社会派映画といえばそうかも知れないが、もっと単純に、よくこんな意地悪な脚本を思いついたものだなと面白く感じた。 俳優達の好演や堅実で安定した撮影スタイルもあって、終始シリアスなトーンで物語が展開するが、いよいよサメが派手に人々を襲う! というタイミングで唐突にそれまでと全く違ったギャグなアングルになるところが数回あり、これは狙ってやっているのか? 真剣に恐怖すべきなのか? の判断がつかず、驚きながら半笑いになってしまった。 典型的なハリウッド映画であれば紆余曲折や大ピンチがありながら最後はハッピーエンドで締まりそうなところも、この作品はフランス製作ということもあってかそうはならず、悪い事態がさらに悪い事態を呼び、終盤はそこまで酷いことになっちゃうのと感じるところまでエスカレートしていく。 序盤からあからさまに張られていたある伏線が終盤の最高潮のシーンでしっかり回収されるのだけれど、その回収のテンションが全力過ぎて、悲劇的な画なのにかなり笑ってしまった。 フランス映画といえばその多くは不条理だったり難解だったり… という一般的なイメージがあると思うが、この映画の脚本や演出は、いわゆるフランス映画の典型には全く当てはまっておらず、かなり特異な作品といえるだろう。 最近のサメ映画は真面目なのかふざけているのかよく分からない作品が多いけれどこの作品はそうではなさそうだ、と中盤頃までは感じていたが、観賞し終えてみると、やはりこの作品もある意味で、脈々と続き進化し続けるサメ映画のDNAを (亜種的にではあるが) しっかり引き継いでいるのかも知れないと思い直した。 恐怖するべきか笑うべきなのか悩まされる作品だったが、楽しい映画体験だった。 https://filmarks.com/movies/116048/reviews/180251460

  • REBEL MOON - パート2: ディレクターズカット | Rebel Moon - Part Two: Director's Cut (2024)

    2.7/5.0 ザック・スナイダーの脚本・監督による壮大なスペースオペラ二部作の完全版で、その後篇。 オリジナル版は約2時間 (123分) だが、このディレクターズカットは約3時間 (173分) 。 作品そのものの評価はさておき、監督が語りたい物語が隅々まで具現化された映画であることは間違いない。 前篇・後篇ともに、もともとは「スター・ウォーズ」の完全新作として構想されながら、結果的に監督オリジナル作品として脚本を構成し製作された作品という経緯があり、この物語が「スター・ウォーズ」の世界観で作られたらどんな感じになったのだろうと想像しながら観賞する楽しさはある。 オリジナル版とディレクターズカットの大きな違いは、前篇においてはキャラクターのバックストーリーを掘り下げて理解できる新規シーンの追加が主だったが、後篇ではオリジナル版にあったシーンをベースにしながら、じっくり時間をかけて分厚く見せる編集が多くなっている。 自身がザック・スナイダー監督作品のファンであるからなのかも知れないが、オリジナル版を観賞した際に、この作品には少なくとも4つ明らかに失敗しているところがあると感じ、ディレクターズカットの観賞後にその思いを強くした。 1. 前篇で済ませたはずのキャラクターのバックストーリー紹介 (回想シーン) が何故か繰り返される かなりのボリュームを費やして、前篇で語られたこととほぼ同じ内容が冗長に語られる。 しかも主要キャラクター全員分の回想が続くので、それが終わるまで物語が全く前に進まない。 2. 悪役が前篇と全く同一人物なのでスケールの変化も打倒のカタルシスも感じられない 前篇の悪役は、序章で倒されるべきキャラクターとしてはちょうどいい設定のように感じたが、前篇で死亡したと思われていたそのキャラクターが早々に (正確には前篇の終劇直前で) 復活し、後篇でも全く同じ役回りで登場する。 同じ悪役を二度打ち倒しても、主人公たちの物語が前進したり、闘いが終結したのだという感動がない… 3. 監督の専売特許ともいえるハイスピード撮影 (スローモーション演出) の使いどころが何だかおかしい これまでのザック・スナイダー監督の作品では、ここぞ! というところで、やっぱりこれだよね! というハイスピード+コマ落としのケレン味溢れる演出が観られて毎回驚きと感動があったのだが、この作品では、そんなフツーの風景を超ハイスピードで見せられましても… と困惑・退屈してしまうようなシーンが少なからずあり、監督の意図が理解できなかった。 4. そもそも二部作で完結する物語ではないことが終盤で唐突に明らかになる オリジナル版でも前・後篇あわせて約4時間半、ディレクターズカットにおいては約6時間半と、ひとつの物語を語るには充分過ぎる超特大ボリュームでありながら、打ち切り漫画の最終回さながらに「俺達の本当の闘いはこれからだ」形式のクリフハンガーがあって終劇する。 騙されたとまでは言わないまでも、ここまで饒舌に語った挙げ句どこまで引っ張るつもりですかという気分になってしまう人が、少なくないのではないか。 優れた漫画作品には漫画家だけでなく編集者の存在もまた重要だと言われたり、音楽アーティストとプロデューサーの関係の重要性等もよく言われるが、映画作品においても同様のことが言えるのかも知れない。 映画作品そのものの強さよりもリスクヘッジを優先し、関係者各位の利害や配慮も入るから作品が駄目になる原因なのだといわれる「製作委員会」方式については、自分もいち映画ファンとして全く快く思っていないが、この映画はもしかしたら、NETFLIXがザック・スナイダー監督を信用して予算を出したものの、監督個人の趣味や嗜好が暴走してしまい、それを冷静にハンドリングできる存在が監督の隣にいない現場になっていたのではないか… と、映画世界の外の事情を想像してしまって、少し悲しい気持ちになった。 今作の製作にクレジットされていて、ザック・スナイダー監督のパートナーでもあるデボラ・スナイダーには、次回作から監督の手綱を強めに握ってくれることを期待したい。 https://filmarks.com/movies/117826/reviews/180238258

  • REBEL MOON - パート1: ディレクターズカット | Rebel Moon - Part One: Director's Cut (2024)

    3.3/5.0 ザック・スナイダーの脚本・監督による壮大なスペースオペラ二部作の完全版で、その前篇。 オリジナル版でも約2時間半 (148分) という大ボリュームだったが、このディレクターズカットはなんと約3時間半 (204分) もある。 作品そのものの評価はさておき、監督が語りたい物語が隅々まで具現化された映画であることは間違いない。 もともとは「スター・ウォーズ」の完全新作として構想されながら、結果的に監督オリジナル作品として脚本を構成し製作された作品という経緯があり、この物語が「スター・ウォーズ」の世界観で作られたらどんな感じになったのだろうと想像しながら観賞する楽しさはある。 「スター・ウォーズ」の創造主であるジョージ・ルーカスが「隠し砦の三悪人」等の黒澤明の映画や日本の伝統文化に大きな影響を受けて世界観を作り上げたことを倣ったのか、この作品も明らかに黒澤明の「七人の侍」を参照していることが分かる。 戦乱の時代、悪政により窮地に追い込まれた平民達を救うために、腕に覚えのある戦士達が反乱を起こすというプロットは、古典的ではあるが単純明快なので、世界中の人々に広く理解できるものとなっている。 オリジナル版から約1時間もボリュームアップした主要な部分は、オリジナル版ではほとんど語られていなかったキャラクター数人のバックストーリー。 R指定のディレクターズカット版は、残虐描写や性的描写に全く遠慮がなく、もともとオリジナル版にもあった数々の戦闘シーンも細かいVFXや編集効果が変わっていて、この作品の悪役である帝国の残虐性がオリジナル版よりもダイレクトに伝わってくる。 ただ、そういった数々の「監督が本当に具現化したかったこと」を過剰なまでに完全にやりきったディレクターズカットであっても、オリジナル版を観賞した時に感じてしまった別の部分での物足りなさは、変わらず残っているように感じた。 描写が過激でも、充分な時間を費やしても、語られる物語や世界観自体に既視感があり、教科書通り過ぎて斬新さに欠けるというか… 主人公が共に闘う仲間を集める形で物語が進む中で、主要なキャラクターのバックストーリーも丁寧に語られていくが、まぁそういうことでしょうねといった感じで予想の範囲を超えないものが多く、過剰なほどにドラマティックな映像や楽曲の演出をもってしても、いまいち引き込まれない。 帝国の宇宙戦艦の心臓部に拘束され動力として酷使されている? 巨大な人型生物の描写は個人的にとても新鮮に感じ、他の映画監督や脚本家にはなかなか生み出せないセンス・オブ・ワンダーな部分だなと感じたが、画的に飛び抜けた面白さを感じたところはそれぐらいで、他はこれまでのザック・スナイダー監督作品で見てきたアングルやモチーフにどこかしら近似している部分がほとんどで、新鮮さがなかったことが残念だった。 ディレクターズカットとオリジナル版で物語が大きく違うわけでもないので、監督のよほどのファンでない限りは、オリジナル版を観賞することで充分かも。 https://filmarks.com/movies/117821/reviews/180238024

  • ARGYLLE / アーガイル | Argylle (2024)

    2.4/5.0 「キングスマン」シリーズにてスパイ映画という伝統的なジャンルに新しい風を吹かせたマシュー・ヴォーン監督による、色々な意味で斬新なスパイ映画。 マシュー・ヴォーン監督の作品はどれも見どころがあって好きだけれど、この作品は脚本がちょっと微妙かもという話を事前に知人から聞いていて、でも自分で確かめてみなきゃ分からないしという気持ちで観賞した。 監督の持ち味であるケレン味あふれるアクションや選曲センスとタイミングが素晴らしい劇伴のあて方は流石と感じたけれど、事前の情報通りというかそれ以上というか、この作品は脚本にまで過剰なケレン味があり過ぎて、途中からは何を観せられているのか全然分からーんという気持ちになってしまい、自分はそのノリについていけなかった。 ブライス・ダラス・ハワードが演じる主人公のエリーはスパイ小説「アーガイル」シリーズを執筆する作家なのだけれど、創作上の世界や存在だと考えていたスパイの世界が実在して、その抗争に巻き込まれ… という導入は面白い。 自身の小説にしか存在しないはずのキャラクターと (主人公にとっての) 現実世界の人物がダブって見えたりする演出も、序盤ではワクワクしながら楽しめる。 のだけれど、中盤からは「◯◯と思っていた△△は本当は✕✕でした」という物語上の大きなツイストに驚かされたと思いきや、「ところが✕✕は本当は□□でした」「といいつつ□□は本当は◎◎でした」「でもって◎◎は本当は…」という、ツイストのためのツイストにしか思えないような強引なツイストが続き、終盤では脚本の整合性がほとんど破綻してしまっているような印象だった。 劇中に何度か「一流スパイは世界を騙す」という台詞があり、監督の狙いは「あなたもこの物語に騙されたでしょ」ということなのだろうけれど、ここまでしつこく二転三転四転五転… が続くと、よほど熱狂的な監督のファン以外は素直に楽しみきれないのではないかと感じる。 マシュー・ヴォーン監督の (やや複雑に拗れて捻れた) スパイ映画への愛憎が、今作においては制御が効かず無軌道に炸裂してしまったような… 最も呆れてしまったのは、終劇直前のツイストと、さらにダメ押し的に存在するミッドクレジットのツイスト。 MARVELやDCや最近のハズブロのように、実はこれまで監督が手掛けてきた複数の作品が共通の世界で展開する物語だったのだ! という大仕掛けなのだろうけれど、だとすると、この「アーガイル」に出演していて、監督の過去作品にも別のキャラクターで出演していたあの俳優やあの俳優の存在は一体何だったのか…? と解釈不能になってしまって、作品そのものの面白さよりも大きな困惑の読後感が残ってしまった。 「アーガイル」シリーズは三部作構想とのことだが、次回作は一体どうなるのか… https://filmarks.com/movies/97957/reviews/179133669

  • ザ・ボーイズ シーズン4 | The Boys Season 4 (2024)

    4.1/5.0 MARVELやDCといったコミック原作のスーパーヒーロー映画のキャラクター達を下敷きにしながら、もしそれらの思想が邪悪に染まっていたら… という物語を、極限レベルの暴力と下品で彩りながら描くドラマシリーズ。 観賞者の年齢や嗜好によっては不快な体験になってしまうリスクがかなり高いので、事前に注意が必要。 この作品もコミックの原作があるが、シーズンを重ねるごとにドラマ独自の展開になっていき、どんな結末になるのかの想像が全くつかない。 近似した設定の映画およびコミックに「ウォッチメン」があるが、「ウォッチメン」は終始重厚かつ真面目な語り口で、「ザ・ボーイズ」は笑いと激痛が交互に起きるような展開となっており、題材や着想がほとんど同じでも作り手によってこんなにも違ったトーンの作品になるものなのかと、あらためて驚く。 典型的なアメリカンヒーロー像のパロディとして浅く楽しむこともできるが、企画と製作総指揮を担うエリック・クリプキやセス・ローゲンが本当に描き出したいものは、アメリカという国家が持つ病や歪みそのもので、これは過激な風刺を通した現代社会のミラーリングなのではないかと感じる。 (ダーク) ヒーローやアメリカンカルチャーの描き方を意図的に重くなり過ぎないよう絶妙にバランスすることで乾いた笑いを誘いつつも、観賞後に振り返ると背筋が凍るようなおぞましさを感じるという、その読後感が製作者達の狙いなのだろう。 特に今シーズンの公開は2024年で、アメリカ大統領選挙のタイミングと完全に合致していたが、脚本の大きな軸に大統領選が組み込んであり、「アメリカという国家の現在地を極限までイジり倒す」といわんばかりの製作者達の覚悟に凄みを感じた。 シーズン4まで続いてきたシリーズだが、予想を上回る展開があり、今シーズンの最終話には次シーズンに向けての大きなクリフハンガーもあって、他のドラマではなかなか得られないレベルの興奮があった。 シーズン5で完結とのことなので、あまりにもヤバ過ぎて後追いする製作者が出てこないぐらいの物語を期待して待ちたい。 https://filmarks.com/dramas/5020/17906/reviews/14826665

  • マッドマックス: フュリオサ | Furiosa: A Mad Max Saga (2024)

    4.3/5.0 オーストラリア出身のジョージ・ミラー監督が手掛ける伝説的映画シリーズの1篇で、アカデミー賞にて大旋風を巻き起こし多数受賞した「マッドマックス 怒りのデス・ロード (2016)」の前日譚に位置する作品。 前作「怒りのデス・ロード」で目の当たりにした圧倒的過ぎる世界と物語の観賞記憶が強く残っていることもあり、前作を比較しながらの観賞がどうしても避けられなかったが、前作に匹敵するほどの衝撃は感じられなかったものの、続篇としても、前日譚としても、単独の映画としても、高い完成度を誇る作品だと感じた。 主人公のフュリオサを演じる俳優は、前作のシャーリーズ・セロンからアニャ・テイラー=ジョイに代わっているが、外見が似ている / 似ていないといった表層的な部分ではなく、キャラクターの実在感や凄みといった本質の部分が継承されており、主演俳優としてしっかり映画の軸になっていた。 今作で主人公の宿敵として新登場するディメンタスを演じたクリス・ヘムズワースは、新世界における超常的な存在 (カリスマ) になることへの渇望がありながらもそうなり切れない惨めさがあり、崩壊前の世界への未練も捨てきれないという、複雑かつ不安定なキャラクターを演じており、退廃した世界で人間がまともに生き続けることがいかに難しいかが素晴らしい演技で体現されていた。 前作から再登場となる悪役キャラクター達も、演じていた俳優達の逝去等もあって何人か交代されているが、リスペクトのある継承だった。 物語の展開としては、前作での中心人物のひとりだったフュリオサの幼少期から成人になるまでがじっくりと描かれており、「怒りのデス・ロード」におけるフュリオサの行動心理がより深く理解できる内容になっている。 ただ、前作と比較すればだけれど、本格的なアクションシーンが始まる中盤までは、やや退屈に感じてしまう人もいるかもしれない。 中盤以降は、この映画シリーズの持ち味である凶悪な車やバイクを中心としたとんでもない規模の死闘のシーンがたくさんあり、他の映画やドラマシリーズには滅多にないレベルの視覚的な興奮を味わうことができる。 物語のジャンルをあえて定義すればアクション満載のポストアポカリプスものといえるのだろうけれど、この映画シリーズにはそういった既成の枠組みをやすやすと破壊する超弩級のスケールがある。 黙示録後の世界で (再) 構築され、後の世に語り継がれていく神話とはどういったものか、という創作のテーマが作品に内包されているのだろう。 アポカリプス前の文明の遺産 (車やバイクとガソリン) が確かに存在しながら、荒廃した世界で展開する激動の物語が神話性を帯びていくという強烈なオリジナリティが、多くの映画ファンからこのシリーズが愛される理由のひとつであるように思う。 https://filmarks.com/movies/93424/reviews/178598996

  • シャッター アイランド | Shutter Island (2010)

    4.4/5.0 巨匠マーティン・スコセッシが手掛けた、同タイトルの小説を原作とするミステリー映画。 主演のレオナルド・ディカプリオをはじめ、その相棒役のマーク・ラファロ、医師役のベン・キングズレーほか、名俳優達が多数出演している。 シャッターアイランドという孤島と島内の精神病院を舞台に、そこを訪れた主人公とその相棒がある事件の捜査を進める形で物語が展開しながら、巧妙かつ丁寧に組み込まれた脚本と演出の仕掛けがいくつもあり、不気味な違和感のピースが積み上がっていく。 終盤でそれらのピースの全てがひとつの画としてピタッと合わさり、物語の全貌と真実が明らかになる演出がとても秀逸で、さすが名作といわれるだけある作品だなと驚いた。 小説や映画の叙述手法でいうところの「信頼できない語り手」スタイルに該当する物語でありそうなことは序盤から分かるが、後半ではその予想の範疇にとどまらない重層的な展開があり、かつ人が生きるということをどう捉えるかについての哲学的で正解のない問いが読後感として重く残る。 演出全般については、さすが巨匠スコセッシと感嘆するほどの重量感ある超本格派で、(映画製作当時の) 最新のVFXや編集技術を取り入れながらも、ミステリー映画のど真ん中の演出を堂々といくスタイルがすごくかっこいい。 鈍色中心で構成された精神病院内のシーンと、鮮色中心で構成された回想シーンの対比構造的な色彩設計もまた美しく、小説文章ではなかなか描ききれない部分を補完する映画演出の強さがある。 原作小説の完成度に拠るところが大きいとは思うが、映画脚本としてのレベルが非常に高く、名優達の演技レベルの高さもあって、何度も再観賞してその巧妙な仕掛けの数々を確かめてみたくなる。 ミステリー映画の名作として、この先も永く語られるであろう作品。 https://filmarks.com/movies/17452/reviews/178550383

  • 猿の惑星 / キングダム | Kingdom of the Planet of the Apes (2024)

    3.6/5.0 ルパート・ワイアットやマット・リーヴスが監督を担ったリブートシリーズの3部作がとても面白かったので、その続篇かつ新シリーズの1作目となる今作を期待半分、不安半分で観賞した。 鑑賞前に気になっていた点は監督の交代で、前シリーズにあった重量感と外連味が両立するハイレベルな画づくりを、今作を監督したウェス・ボールが引き継げているだろうか? という心配があったが、シリーズの持ち味は引き継ぎつつ、過去作の繰り返しにとどまらない斬新さや驚きのある画づくりもあって、新シリーズ開幕にあたっての世界観の提示に成功していたように感じた。 特に、リブートシリーズよりもさらに遡ったオリジナルシリーズの、1作目 (1968年) や2作目 (1970年) における新世界の描き方へのリスペクトが分かるダイナミックな画づくりには感心した。 高い知能と言語能力を得た猿達が地上を支配し、文明や言語を失った人類が下等生物として虐げられているという設定に、昨今のVFXの映画的表現技術が追いついてきたこともあって、あらためてそれを目の当たりにするとなかなか衝撃的で驚きがある。 人類文明の終焉から数百年が経過し、荒廃が進んで自然とほぼ同質化したその廃墟の描かれ方も、それらを捉えるそれぞれのショットのアングルやサイズも含めてアーティスティックで新鮮。 単に画として面白いだけではなく、その前文明の構造物と遺産が、猿達の住居をはじめとする新文明の拠りどころになっているという点にも、このシリーズ独特のセンス・オブ・ワンダーを感じてグッときた。 脚本の展開は期待していた内容にほぼ収まっていたが、主人公を中心に様々なキャラクターが登場しながらも、物語を大きく動かす人物 (ほとんどは猿だけど) の数が必要最小限に絞られていて、視点と舞台がコンパクトかつシンプルにまとまっており、分かりやすい。 単作品としてきちんと起承転結がありながら、次回作はどんな物語が展開するのだろうと期待が大きくなるフックも終盤にあり、新シリーズの1作目として誠実かつ丁寧に作られている作品だなと好感がもてた。 ウェス・ボール監督は「ゼルダの伝説」の実写化作品も手掛けると発表があったが、この作品をそういう周辺情報も込みで観賞すると、確かに監督が得意なジャンルなのかもしれないなと感じた。 良くも悪くも手堅くまとめるのが上手で、脱線したり冒険し過ぎず安定的な作風なので、重要なタイトルの映画化を託す任天堂としても不安が少なそう。 https://filmarks.com/movies/105841/reviews/178498138

  • ゴーストバスターズ / フローズン・サマー | Ghostbusters: Frozen Empire (2024)

    2.5/5.0 アイヴァン・ライトマンが手掛けた80年代の有名映画シリーズを、その息子であるジェイソン・ライトマンが直接的続篇として復活させた新シリーズの2作目で、前作にて脚本・監督を担ったジェイソンは、今作では脚本でのみクレジットされている。 前作「アフターライフ」の舞台はオクラホマ州の田舎町で、登場人物の数を必要最小限に抑え、ユーモアも控えめながらコンパクトで丁寧な人間ドラマが描かれていてとても楽しい作品だった。 今作「フローズン・サマー」の舞台は旧シリーズと同じニューヨークになり、登場人物がかなり増え、脚本も複雑になっているが、それがほとんど良い転換になっていないように感じて残念だった。 初代ゴーストバスターズのメンバーがゲスト扱いではなく物語の主軸にも関わってくるところは面白いのだけれど、新シリーズの主人公とその家族だけでなく、その周辺のキャラクター達も微妙な関与度ながら続投し、さらに新キャラクター達も登場して、結果的にそれぞれの役割が曖昧になってしまっている。 登場人物の多さも関係していると思うが、脚本の運びもあまりスマートではなく、メインの悪役が本格的に登場する終盤まで、場面は忙しく切り替わりながらも同じようなアングルやサイズの似たような場面の会話劇が続き、起伏と盛り上がりに欠けて退屈してしまった。 何もかも凍らせてしまうという今回のメイン悪役に対抗する人間側のキーパーソンに、炎を操るファイアマスターという存在があり、それは誰でどこにいるのかを探す展開があるのだけれど、ミスリードのようで別にそうでもない展開があったり、ファイアマスター以外に火を操る別の存在があったり、結果的にファイアマスターの能力は物語の重要な部分にそれほど関係しなかったりで… もう少し物語の展開と人物の役割をスマートに整理する方法があったのではと突っ込みたくなってしまった。 主演のマッケナ・グレイスやその兄役のフィン・ウルフハードを中心に、俳優達は皆それぞれの役割を好演しているだけに、何故こんなに散らかってまとまりがない作品になってしまったのだろうという気持ちになった。 前作の「アフターライフ」がとてもエモーショナルで清々しい読後感のある映画だったこともあって期待していたが、今作にはあまり満足できず残念だった。 アイヴァン・ライトマンから偉大な遺産を継承しているジェイソン・ライトマンには、絶対に作品をヒットさせなければいけないというプレッシャーもあったのか色々盛り込んだ結果として今作のような散漫な内容になってしまったのかもと想像するけれど… ゴーストバスターズって、あまり捻らず、もっと気楽で、とてもストレートで、とにかく景気がよくて痛快な映画シリーズだったし、シリーズのファンの多くが求めていた続篇もきっとそういうものだったはずなので、次回は原点回帰的にそんな続篇を観られるといいなと思う。 https://filmarks.com/movies/113337/reviews/178346540

© 1998-2026 Shoji Taniguchi

Kazari
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