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  • ドント・ムーブ | Don't Move (2024)

    3.9/5.0 サム・ライミが製作に関わっているサスペンス映画で、脚本・監督・出演者ともに経験豊富で有名というわけではないけれど、とてもシンプルかつ完成度が高い作品で、その演出に惹き込まれる。 幼い息子を亡くした母が主人公で、その悲劇が起きた森へ彼女が訪れるが、そこで遭遇した謎の人物に筋弛緩剤を投与され、少しずつ体の自由が奪われていく中で生き延びようとする。 物語を動かしていく役割を担うべき主人公が徐々に動けなくなっていくという、今までありそうでなかった設定が面白く、鑑賞前にはどんな形で物語が動くのか (そもそも動かしようがあるのか) と思っていたけれど、予測不能ながらその都度なるほどと納得させられる展開の連続に驚かされた。 凶悪な人物からの逃亡という簡潔で明快な目的が設定されつつ、主人公が抱えていた精神的な苦痛からの脱却も物語の展開に組み込まれていて、劇中でのキャラクターアークの変遷とその終着点までの描き方がとても鮮やか。 派手なVFXはほとんどなく、一流俳優達が出演しているわけでもなく、大きな予算で作られた映画ではなさそうだけれど、演出レベルの高さや作品の面白さと予算の多寡はやはり関係ないのだと感じた。 https://filmarks.com/movies/118776/reviews/185078817

  • プリデスティネーション | Predestination (2014)

    4.3/5.0 「夏への扉」や「宇宙の戦士 (映画「スターシップ・トゥルーパーズ」の原作)」で有名なSF作家ロバート・A・ハインラインが1950年代に書いた小説を原作とする映画で、オーストラリア出身のマイケル&ピーター・スピエリッグ兄弟が脚本と監督を手掛けている。 予測不能な物語の展開がとても面白く、私のようなSF映画好きにはたまらない。 イーサン・ホークが主演する主人公のバーテンダー、彼が働くバーを訪れた男ジョン、サラ・スヌークが演じるジェーン、ジェーンが生んだが生後すぐに誘拐された赤子、正体不明の連続爆弾魔フィズル・ボマーといった人物達が登場し、それぞれがどのような人生を送り、それぞれが本当は誰なのかという謎が終盤において怒涛の勢いで解けていく。 原作の邦題は「輪廻の蛇」で、小説内で主人公が着けている指輪にも、自身の尾を噛んで環をなすことで始点も終点もない循環を象徴するウロボロスが刻まれているが、物語の構造もまさにその形となっている。 予算やスケールが大きかったり派手な見せ場がある作品では決してないけれど、鑑賞後にじっくりと思い出したり再鑑賞したくなる、隠れた秀作SF映画といえるだろう。 https://filmarks.com/movies/60420/reviews/152617943

  • 機動戦士ガンダム 復讐のレクイエム | Gundam: Requiem for Vengeance (2024)

    3.5/5.0 ロボットアニメの金字塔ともいえる「機動戦士ガンダム」シリーズの第一作めで描かれた、地球連邦とジオン公国による一年戦争のヨーロッパ戦線を舞台として、第一作めの主人公側が属していた地球連邦ではなくそれに敵対したジオン公国側の人物達の視点で語られる物語。 第一作めの地球連邦側の主人公が搭乗していたガンダムは、最早カルチャーアイコンと形容しても大げさではないほど有名なロボット (作品内ではモビルスーツ) で、敵対するモビルスーツ達を圧倒していたが、今作のように主人公の立場が反転すると、その存在や性能がどれほどの脅威だったのかが実感できる。 製作者達が公式に語っている通り、今作のガンダムは英雄的存在としてではなく、主人公達の前に突如現れ破壊的な死をもたらす恐怖そのものとして描かれており、その演出がとても新鮮で面白かった。 作画はCGベースで行われていて、モビルスーツのサイズ感や重量感が従来のガンダムシリーズよりも高いリアリティで表現されており、モビルスーツ同士の戦闘シーンの迫力もなかなかすごい。 ただ、主人公をはじめとする搭乗人物達の演技づけについては、実際の人物のモーションキャプチャをベースにしていながらも、表情全般がテンプレートな印象だったり、いかにもプレイステーション等のゲームに出てくるキャラクターのようなぎこちない動き (ゆらゆらとリピートしたり) をしているカットがけっこうな頻度であったりで、その度に現実に引き戻されてうーんと感じてしまった。 映像の見栄え部分の品質はさておき、全6話の脚本で構成された物語は、緩急がありつつ無駄が少ない脚本で退屈しなかった。 1979年の第一作めのアニメ版を鑑賞済であれば、今作で描かれる戦争の背景やモビルスーツについての理解がある分だけ楽しみ方が増えるが、物語やキャラクター達がこれまでのシリーズからほぼ独立しているので、シリーズのファンではなくとも楽しめそう。 ガンダムシリーズでこれまで一貫して描かれてきた戦争行為の愚かさや、世界を正義と悪のように単純な二元論で理解することの否定が物語の核に組み込まれていて、脚本や監督が日本人ではない今作でもそういった伝統が受け継がれている点が面白かった。 正義や善と敵対するものは必ずしも悪ばかりではなく、違う立場の正義や善なのだという視点もあるのではないかというメッセージは、我々が生きる世界への警鐘として受け取られるべきものなのだろう。 https://filmarks.com/animes/4346/5854/reviews/6572420

  • ループ | Loop (2020)

    3.8/5.0 ピクサー製作による「SPARKSHORTS」シリーズの1篇。 少女レネーと、一緒にカヌーに乗り込むことになった少年マーカスの物語。 レネーは自分の感情をなかなか上手に言語や仕草で説明できない、いわゆる自閉症を持つ子で、マーカスはそんなレネーとコミュニケーションを取ることに苦労するが、すぐに諦めたり投げやりになったりせず、分からないなりに根気強く向き合おうとする。 自閉症についての理解が十分でない人はもちろん、理解がある人であっても、レネーの快/不快や感情の機微を読み取ることは難しいだろう。 この短篇には典型的な起承転結や明確なハッピーエンドはなく、ただレネーとマーカスが、お互いに不器用ながらも少しだけ心を通わせられたのだという読後感だけが残る。 実際の社会においても、自閉症という個性を持つ人々とのコミュニケーションに単一の正解はなく、1人ともう1人がじっくりと向き合い、それぞれの正解を作り上げていくことが大切ということなのだろう。 https://filmarks.com/movies/91611/reviews/184351951

  • 告白 コンフェッション | Confession (2024)

    1.5/5.0 「カイジ」や「アカギ」といった心理的駆け引きの演出が特徴の漫画作品で有名な福本伸行が原作を、「沈黙の艦隊」や「太陽の黙示録」といったポリティカルドラマを得意とするかわぐちかいじが作画を手掛けた漫画作品を原作とする、74分の中篇映画。 主要な登場人物は2人の男性のみで、登山中に吹雪に見舞われた2人のうち片方が死を覚悟して告白した内容をめぐり、外界から閉ざされた極限状況の中で2人の駆け引きが繰り広げられる。 大筋の物語展開は漫画版と同様で、原作で印象的だったスリリングなシーンもある程度再現されていた。 が、漫画版で物語を牽引する重要な要素となっていた主人公の心の声の描写が、この映画版では演出との相性が良くないと判断されたのか全く取り入れられておらず、原作の強烈な個性や演出の面白さがしっかり再現されているようには思えなくて残念だった。 そのうえ、観客を驚かせたいという意図であろうことは分かりつつも、人物の居場所が瞬間移動的に変わっていたり、カットのつなぎ方が素人レベルに粗かったりと、良くない意味での漫画的省略だけを取り入れているように見えるところもあまり感心できない。 また、吹雪に追い詰められ死が迫る状況でありながら防寒具で顔を覆う素振りが全くないところや、2人が逃げ込んだ山小屋の窓が強風を受けても震えすらしないところに、リアリティの突き詰めについての甘さを感じ、コントのように見えてしまって没入できなかったことがとても残念。 生田斗真とヤン・イクチュンが主演しているが、俳優の事務所側から「顔を隠すのは極力ナシの方向で」と注文でも入ったのだろうかと、導入部分の演出から興ざめしてしまった。 予算が潤沢ではなくとも製作できそうな内容として、ほぼワンシチュエーションで完結する原作の実写化に挑戦したのであろうとは想像できるが、そういったリアリティの追求の部分は予算とあまり関係なく、製作者達がどれだけ丁寧に作り込む覚悟があるかの問題だと思う。 TVドラマとして製作されたものとして見れば少しハードルを下げて鑑賞できたかも知れないが、映画館にかける作品として見た場合、決して褒められた作品ではないのではという感想をもった。 原作漫画を読んだ際にとても面白い読後感があり記憶に残っていた作品だったので、映画版も期待して鑑賞したのだけれど、うーん何これという読後感に上書きされてしまった。 2人の天才漫画家が共作した漫画版は抜群に面白いので、多くの人に読まれて欲しいと思う。 https://filmarks.com/movies/114214/reviews/184367746

  • ハイタッチ | Smash and Grab (2019)

    3.2/5.0 ピクサー製作による「SPARKSHORTS」シリーズの1篇。 超発達した文明世界に生きる、肉体労働者的な2体のロボット達が主人公。 世界観の説明も台詞も一切ないが、主人公達が置かれている単調で過酷な境遇やそこからの脱却への行動に至る思いがしっかりと画で分かり、そのあたりの演出レベルの高さはさすがピクサーだなと感じる。 凸凹コンビ的な2体の外見や動きの個性も愛らしく、大胆な行動に出た2体に訪れる危機にハラハラしてしまう。 想像していた内容を大きく裏切る結末ではなかったが、10分にも満たない短篇で得られる満足度としては十分。 https://filmarks.com/movies/95401/reviews/184351898

  • デューン 砂の惑星 PART2 | Dune: Part Two (2024)

    4.4/5.0 フランク・ハーバートによる壮大なSF小説シリーズの映画化作品で、「メッセージ」や「ブレードランナー2049」等のSF映画で重厚な画づくりを形にしたドゥニ・ヴィルヌーヴが脚本・監督を手掛けている。 原作が出版された1960年代から何度も実写作品化が構想されつつ、その世界観があまりにも壮大過ぎることで挫折する製作者が相次ぎ、1984年に初めて実写化を成し遂げた巨匠デヴィッド・リンチですら満足のいく内容には仕上がらなかったと振り返るほどの物語だが、ドゥニ監督による今回の挑戦は、少なくともこの第二部までは成功していると感じる。 登場人物等の設定を中心に様々脚色されていながら、原作が持つ神話のような荘厳さがあり、鑑賞中に思わずSFジャンルの映画であることを忘れてしまうほどの迫力がある。 作品の主な舞台は我々の世界と全く違って見える文明や惑星だが、設定としては我々の文明と地続きでありながらその遥か未来の物語であるというところに、とてもワクワクする。 アーサー・C・クラークが提唱した三法則のひとつ「十分に発達した科学技術は、魔法と見分けがつかない」を思い出し、この作品で描かれている世界がまさにそれなのだろうと思う。 舞台となる砂漠の惑星アラキスの描写は、全てのカットが一枚の絵画として成立するような美しさで、それだけでもこの作品を観る価値があると感じるほど。 それに加えて、主演のティモシー・シャラメをはじめ、ゼンデイヤ、レベッカ・ファーガソン、クリストファー・ウォーケン、レア・セドゥ、ジョシュ・ブローリン、ステラン・スカルスガルド、フローレンス・ピュー、ハビエル・バルデムといった超一流の俳優達の演技に圧倒される。 ただ、映画としてのとっつきやすさという点においては、作品についての事前知識なしでも多くの人が気軽に楽しめる種類の作品ではないことも間違いない。 SF映画が好きで原作小説も (相当昔に) 読んだことがある私のような人間であっても、細かな世界観設定や作品内独自の様々な名称についての説明が本篇中にほぼ全くないので、いま何がどうなってこういう展開になっているんだったっけと見失ってしまうところが何箇所かあった。 とはいえ、本篇中にあれこれと丁寧な解説が入ると壮大な世界への没入感が削がれてしまうだろうし、映画の作りとしてはこれが正解なのだろう。 ジャンルとしては間違いなくSF映画だが、物語の展開は惑星規模の政治劇が軸になっており、その意味においては大河ドラマに近しい。 「スター・ウォーズ」をはじめとするSFオペラ映画やドラマの製作時に多く参照されたといわれる偉大な原作の世界や物語を、かつてないレベルの凄まじい技術と品質で実写化された作品として鑑賞できることを、映画好きのひとりとしてとても嬉しく思う。 原作小説の全てを映画化しようとすればあと数十年はかかってしまいそうだけれど、ドゥニ監督は続篇の「Part 3」までは手掛けたいと表明しており、製作も決定しているとのことなので、完成を楽しみに待ちたい。 https://filmarks.com/movies/99843/reviews/184347750

  • 風に乗る | Wind (2019)

    3.9/5.0 ピクサー製作による「SPARKSHORTS」シリーズの1篇。 謎の重力が作用する谷底で暮らしている祖母と孫が、そこから脱出するためにある計画を実行するという物語。 短篇の良い点には、鑑賞の負荷が低いという点もあるが、余分な情報が含まれていない分だけテーマの描かれ方が純化されるところがあると思う。 この作品の設定はすごくSF的で不思議だが、その背景の説明は一切なく、その場所で祖母と孫がどのように支え合って生きてきたのかが端的かつ魅力的に描かれていて、その洗練された演出のセンスが素晴らしい。 台詞がなくとも、祖母と孫の表情や間の微細な演出で、感情の変化と起伏がしっかり伝わってくる。 結末はある意味ハッピーエンドでありながら、とてもビターな読後感も残る。 未来を切り拓くべきは若者であって、その機会と世界を提供するのが老いた者の務めであり、そうして辿り着いた世界はどこまでも限りなく広大で美しいのだというメッセージなのだろう。 https://filmarks.com/movies/91612/reviews/183140812

  • デッドプール & ウルヴァリン | Deadpool & Wolverine (2024)

    4.3/5.0 製作が発表されて以来、公開日を楽しみに待ちわびていたので、公開初日に観賞した。 端的にこの作品を総括するならば、これまで20世紀FOXが製作・配給してきたMARVELヒーロー映画作品群への、ブラックジョークと血反吐と敬意にあふれた鎮魂歌あるいは救済であり、過ぎ去った時代を永く記憶にとどめるための、記念碑のような作品だ。 デッドプールを主人公とする映画作品は、1・2作目までは20世紀FOXが製作・配給してきたが、同社がその後ディズニーに買収され、3作目の今作はディズニー傘下のマーベル・スタジオの製作、ディズニーの配給となっている。 デッドプールという作品ならではの暴力描写と下品な言葉遣いにまみれた世界観が、ディズニーという超優等生的な企業の配給に変わることでトーンダウンするのではという声が多くあったが、そんな心配は全く不要だったというか、むしろ3作目の今作がシリーズ中最も過激かも知れない。 表現の過激さという観点に限っては、この作品はディズニー史上最高レベルだろう。 デッドプールが他のMARVELヒーローと比較して最も独特な点は、舞台用語でいうところの「第四の壁 (4th Wall) = 劇中世界と客席の間にある不可視の壁」を認識し、それを越える能力を持つところ。 つまり劇中のデッドプールは、観賞者である我々が生活する「こちらの世界」を把握していることはもちろん、我々に話しかけることもできるし、自身が主人公を担う映画を製作していたFOXがディズニーに買収されて… といったメタな事情まで認知しているという、極めてユニークなキャラクターとなっている。 そのユニークネスは、主演だけでなく製作や脚本にもクレジットされているライアン・レイノルズのそれとほぼ同じであるともいえる。 劇中でデッドプールが発している言葉がほぼそのまま、ハリウッドという巨大な映画産業の事情に翻弄されながら奮闘してきたライアン・レイノルズの本音のようにも聞こえ、文字通りの意味で映画やドラマの世界を飛び越える力を帯びた、辛辣かつ下品なジョークにまみれながらも純粋なメッセージになっている。 2008年の「アイアンマン」から始まったマーベル・スタジオの画期的な挑戦でもある、それぞれの作品が独立的に製作されながらも横断的にひとつの世界観を共有するという「マーベル・シネマティック・ユニバース (MCU)」シリーズのひとつに、この「デッドプール & ウルヴァリン」も属している。 物語を単独作品として成立させることは当然でありながら、十数年に及ぶ映画やドラマで展開されてきたMCUの歴史や設定と、非MCU扱いとなっていた20世紀FOX時代のMARVELヒーロー映画作品群の歴史や遺産の両方を、ひとつの脚本に組み込み融合させるという離れ業に挑戦しており、少なからず粗はありながらもそれに成功していたところには感嘆した。 近年のMCUで展開中の「マルチバース = 近似した並行宇宙が多数存在する」という設定は、その複雑さと何でもあり過ぎる部分で賛否両論が起きているが、今作においてはその設定を巧みに利用しながら、可能な限りこれまでの作品群との矛盾を少なくする形でまとめられていたように思う。 とはいえ、時系列を中心とする細かい部分の矛盾や疑問が皆無とはいえず、FOX時代とMCUの両方のMARVEL作品を観賞してきた自分としては、どうしても辻褄が合わず破綻しているのでは感じてしまう部分もいくつかあった。 …などと思いながら観賞していたら、劇中にてデッドプールが「マルチバースは複雑過ぎて限界だ、最近のMARVELはめちゃ失敗してる」といった内容をわめき散らしていて、そんなところまであけすけに言っちゃうのかよと感じながら共感してしまい、笑いを我慢できなかった。 物語の核とまではなっていなかったものの、カメオ出演といった言葉を遥かに越えるレベルで、MARVELコミックを原作としてこれまで製作されてきた、あるいは事情により製作されなかった数々のヒーロー映画からのゲストキャラクター達が次々と登場し、活躍したり全然活躍しなかったりするので、MARVELの古参ファンにとっては近年なかなかなかった興奮と感動が味わえることだろう。 特に、ある超有名俳優とその俳優が演じていたキャラクターへの愛が強過ぎるゆえのはちゃめちゃに雑な扱い方が最高に痛烈で、鑑賞中に何度も声を出して笑ってしまった。 2024年現在のコミック原作ヒーロー映画 / ドラマは、深く考えずに単品を楽しむことも可能ではあるが、細かい部分も含めた全部のニュアンスを理解することは相当に難しくなってしまっている。 MCUとFOXのMARVEL映画+ドラマの両方と、映画やドラマ世界の外で起きていた企業間の買収騒動等も含め、長く追いかけてきたディープなファンでなければついていけないような前段知識が必要な点が、観賞の敷居を高くしてしまっていることは間違いない。 並行世界の接続を実現するという今作の離れ業な脚本によって、FOX時代の遺産をMCUの世界へ組み込みつつもある程度の歴史的決着をみることに成功していたようには感じるが、それは同時にますます今後の作品の複雑化を招くことにもなるだろう。 それが今後のMCUにとって本当にいいことなのかどうかは、今の自分には分からない。 ただ、MCUの未来のことはさておき、デッドプールが劇中で大切にしていた写真の中の9人の家族と同じように、ライアン・レイノルズにとってのFOX時代のMARVELヒーロー映画は「世間がどう思うかはさておき、自分にとっては永遠にかけがえのない宝物なんだ」というメッセージは、自分を含む多くの人の心を打つことだろう。 https://filmarks.com/movies/105671/reviews/179289853

  • ザ・ウォッチャーズ | The Watchers (2024)

    3.8/5.0 M・ナイト・シャマランを父にもつ映像作家、イシャナ・ナイト・シャマランの長編映画初監督作品。 とあるきっかけで森に迷い込んでしまった主人公が、ガラス張りの謎の小屋に導かれ、そこに滞在する人物たちと出会うのだが、生きのびるための奇妙なルールを知らされ… という導入から始まる物語で、ホラー小説を原作としている。 子役の頃から数多くの映画に出演してきたダコタ・ファニングが主演を務めており、その独特な透明感と熟練した演技力が作品の質を高めることに貢献している。 主要な登場人物は4名とかなり少ないが、助演のジョージナ・キャンベル、オルウェン・フエレ、オリバー・フィネガンの3名それぞれにも確かな存在感がある。 監督の父であるM・ナイト・シャマランが、娘イシャナの長編映画デビュー作ということもあって製作を全面的にサポートしていたとのことだが、良くも悪くも父の作風とそっくりで、ほぼ完全コピーといってもいいぐらい。 不気味ながらどこか美しくもある森の風景の切り取り方や、夜に鏡写しとなる室内シーンのアングルの狙い方には非凡なセンスを感じたが、一方で、何が起きているのか良く分からないカットや凡庸・退屈なアングルもあり、初監督作品だからなのかも知れないが、けっこうムラがあるなと感じてしまった。 ホラー映画風の導入から始まり、続いてSFのようでファンタジーのようでもある謎が提示されるが、中盤以降で物語が大きく展開し、終盤ではジャンルを理解や分類することの意義が分からなくなるところなどは、まさに父親譲りの強烈な個性といっていいだろう。 特に、映画脚本の三幕構成でいう第三幕の展開には、予想できなかった意外性があり面白いと感じた。 脚本の細かい部分については、何を書いても作品の核心部分への言及につながって未鑑賞の方の興を削いでしまうので、控えておこうという気持ちになるところも、M・ナイト・シャマランの作品と共通している。 物語の設定は原作小説に準拠している部分が大きいのだろうとは思いつつ、その細かい部分をツッコミ目線で観ると粗が色々目立ってくる部分まで父の作品と類似しているところは、ある意味とても面白い。 ただこの作品においては、序盤から提示されるモチーフの数々や人物達の言動にそれぞれ物語上の明確な意味があり、それが主人公のキャラクターアークの変遷や完成にしっかり関係してくるので、色々思わせぶりだったけれど空振りな結末だったという残念な読後感ではなかった。 次作品以降で、父親の手厚いサポートを離れ独り立ちしてからが、イシャナ・ナイト・シャマラン監督の真価を試される本当の機会になるだろう。 ちなみに、監督や脚本だけでなく出演もしたがる監督の父は、今作においては出演せず裏方に徹していたようだ。 娘のデビュー作ということもあって今回は遠慮したのかもと思いつつ、親子同士でのやりとりを想像してニヤニヤしてしまった。 https://filmarks.com/movies/114557/reviews/183391193

© 1998-2025 Shoji Taniguchi

Kazari
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