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  • 月影の下で | In the Shadow of the Moon (2019)

    2.9/5.0 9年ごとに起きる不可解な殺人事件の犯人を捉えようとする警官を主人公にした追跡劇にSF的設定を組み込んだ脚本で、最初の事件が発生する冒頭パートの掴みの演出がとても上質で惹きつけられた。 が、全篇に渡りいろいろ微妙に惜しいと感じるところがあり、もう少しスッキリ驚かされたかったなーという観賞の読後感だった。 SFは文字通りサイエンス “フィクション” なので、リアリティ至上主義で細かい突っ込みどころを探すよりは、製作者達がどんな話を展開しどんな画を見て欲しいと思っているのかを積極的に楽しむ方がより健全な観賞姿勢だと考えるタイプの自分だが、それにしてもこの映画は少し設定の粗の方が目立っているように感じてしまった。 伏線的な仕掛けもいくつかありなるほどと感じる部分もあるのだが、熱心な映画ファンではなくとも予想がつく内容のようにも思える。 「月影の下で (In the Shadow of the Moon)」というタイトルも詩的で掴みがよく、本篇でもそれに関連するSF的設定についての言及があるにはあるのだが、物語を大きく動かすドライバーにはなっておらず、ならないんかいという気持ちになってしまった。 くわえて、終盤で明らかになる脚本的な真実に、それほど大きな驚きを感じられなかったところがやや残念だった。 演出スタイルには驚くような斬新さはないが全篇を通して手堅い安定感があり、俳優達の演技も総じて上質で、そういった意味ではきちんとした作品に仕上がっている。 特に、主演のボイド・ホルブルックはこの映画に限らずここ数年の様々な映画で目にするが、主人公役も脇役も、また悪役から善人役まで、しっかりそれぞれのキャラクターをものにして演じられるいい俳優だなと思う。 素晴らしい映画だよと万人におすすめすることは難しいけれど、設定の緩さや細けえことは気にせず楽しんでくれや的な大味な展開が、自分にとっては懐かしい80年代のハリウッドSF映画 (B級) に似ているように感じられ、こういう映画を観賞して何だかもやもやするのもまた楽しい映画体験のひとつだなと感じた。 https://filmarks.com/movies/86049/reviews/172457962

  • FALL / フォール | Fall (2022)

    3.2/5.0 打ち捨てられた超高層TV塔に登った女性達がその頂上で取り残され、どうやって地上へ生還する手段を見いだすか、という極めてシンプルな設定の映画で、終劇まで退屈することなく鑑賞できた。 TV塔への登頂に挑戦する主な登場人物は2人のクライマーで、1人はある理由から高所への挑戦ができなくなっていたがそのトラウマの払拭に、もう1人はいわゆるインフルエンサー活動のネタにというモチベーションで、前者はともかく後者のそれは昨今たびたび話題になる典型的な迷惑系インフルエンサーという印象があり、共感することが難しい。 ただ、シチュエーションや設定は極めてシンプルながら、脚本にいくつかツイストがあり、終盤ではいろいろな印象が変わって見えてくるところが面白い。 思慮の足りない2人が勝手にやらかして騒ぐだけのアホなパニック映画といってしまえばそれまでだが、それだけでは終わらない中盤以降の物語の展開に、製作者達の矜持のようなものを感じた。 今や名優の地位を確立したジェフリー・ディーン・モーガンも出演しているがその出番はごく僅かで、とても贅沢な使い方だなと驚いてしまったが、本作でもその存在感と演技で物語の説得力を強くしており、さすがと感じた。それにしたってもったいないけれど。 https://filmarks.com/movies/103861/reviews/172303474

  • ザ・スーサイド・スクワッド "極" 悪党、集結 | The Suicide Squad (2021)

    4.4/5.0 世間的にあまり評価が芳しくなかった同タイトルの最初の実写映画作品の、ある意味リブートでもありつつ続篇として解釈することもできる形で物語が成立しており、かつDCが展開している (正確にはしていた) シネマティックユニバースの一篇でもあるという、かなり独特な立ち位置にある映画。 個人的にそのキャリア初期からファンのジェームズ・ガンが監督するということで期待していたが、その期待を裏切らない展開が冒頭からあり、相変わらずめちゃくちゃ過ぎて流石だなと一気にのめり込んで鑑賞できた。 ほぼ全篇を通して乱発されるジョークのほとんどがブラックかつ下品なので、クリーンで上品な作品だけを好む人には全く合わないだろうけれど、そこは監督の持ち味だし相性の問題なので仕方ないかなと思う。 マーゴット・ロビーやイドリス・エルバを中心とする、主要登場人物を演じる俳優達の複雑性を含んだ役作りが素晴らしく、脚本にもそれぞれの人物のキャラクターアークがきちんと組み込まれていて、他のスーパーヒーロー / スーパーヴィラン映画とは一線を画すレベルになっていると感じた。 特にジョン・シナが演じるサイコパス的なキャラクターには強く惹きつけられた。同キャラクターを主人公にしたスピンオフドラマが作られ、それがこの映画作品にも負けないほど高い評価を得ていることにも納得できる。 ジェームズ・ガン監督作品のほとんどに通底するものとして、社会生活不適合なはみ出しもの達がどのように社会や他者との折り合いをつけていくのかというテーマ性があるが、この作品においてもやはりその部分が物語を進める脚本の軸になっていた。 そういう不器用な人々への監督の愛が感じられて、その人情味溢れる物語性とド派手で狂った演出を両立させる絶妙なバランス感覚が、ジェームズ・ガンという創作者の強烈で唯一無二の才能なのだろうと思う。 https://filmarks.com/movies/74474/reviews/152628763

  • 三体 | 3 Body Problem (2023)

    4.7/5.0 SF界のノーベル賞とも呼ばれるヒューゴー賞を獲得している原作小説の三部作を読み終えた時、これほど巨大で圧倒的なスケールのSFはほとんど読んだことがないと度肝を抜かれたが、その物語が遂に実写ドラマ化されるということで、期待と不安が半分ずつで鑑賞した。 人類と他文明のファーストコンタクトについて描く映画やドラマはこれまでにも多く作られてきているが、この作品のそれでは、かつて描かれたことがなかったレベルの、背筋が凍るような未知の存在への恐怖が描かれている。 現実世界でいつかファーストコンタクトが起きるとしたら、もしかしたらこの作品と同じようなことになるのではないか… と信じてしまいそうになるほどの、これまでの典型的な地球外文明の描かれ方を遥かに超越した、圧倒的な説得力と恐怖がある。 原作に登場する主要人物が担っていた役割が複数の登場人物に分割されていたり、数百年を越える長大な期間に渡る三部作の全体を通して構成が大胆に組み変わったりしているが、結果的にそれが成功しているように思う。 原作未読の大多数の鑑賞者にとって、前提的な科学知識がなくとも物語に入り込みやすい再構成になっているので、ハードSF小説等に普段から慣れ親しんでいるタイプのSFファンはもちろん、そうでなくとも楽しめそう。 大長編の三部作を1シーズンで描き切ることは難しいだろうなと予想していたが、シーズン1の最後はものすごく微妙なところで区切られていて、特にクリフハンガー的な演出もないので、ここで終わり? という消化不良感が残る人もいるかもしれない。 原作において物語の規模が加速的に拡大展開していくこの続きを、ぜひシーズン2以降で描ききって欲しいと強く願う。 https://filmarks.com/dramas/12738/17551/reviews/13817225

  • オリー | Lost Ollie (2022)

    4.6/5.0 持ち主だった少年と離れ、孤独な迷子になってしまった人形のオリーと、同じく孤独に過ごしてきた人形たちが、それぞれの帰る場所へと果敢に向かう旅の物語。 概要だけだとワクワクするアドベンチャーのように思えるが、その主役達の過去と現在の辛い体験の描かれ方はとてもビターで、ダークファンタジーと形容する方がより正確かもしれない。 ピクサーのトイ・ストーリーシリーズと比較する人も少なからずいそうだけれど、個人的には、全年齢向けの作品づくりを前提とするピクサーがなかなか踏み込めない領域にまで踏み込んでいる作品だと感じた。 主役の人形たち側の物語の展開がとてもダイナミックかつドラマティックで惹きつけられるが、もう一方の、オリーの持ち主だった少年とその家族の物語にもしっかりとした展開があり、思わず涙がにじんでしまうシーンが何度もあった。 脚本上の緻密な仕掛けも丁寧に仕込まれていて、物語の全体像や人物とモチーフの関係性が明らかになってくる終盤には、その構成の巧みさにとても驚かされた。 自分がいるべき場所、帰るべき場所はどこなのか、人間は何を心の拠りどころにして生きていくのか、といった強いテーマ性があり、世代を越えて受け継がれていく想いの尊さも描かれていて、心を強く打たれてしまった。 もっと注目されてもいい、これは隠れた傑作だと思う。 https://filmarks.com/dramas/12523/17268/reviews/13817142

  • Search / #サーチ2 | Missing (2023)

    3.3/5.0 映画全篇がラップトップ・スマホ・スマートウォッチ・監視カメラ等のウィンドウの中で描かれるという、仮にひらめいても誰もやらないような演出を本気でやってみた的なシリーズの2作目。 よくそんな描き方が思いつくなぁと驚くような演出手法は1作目と同じく健在で、それはいくらなんでもやや強引かもと感じてしまう部分もあったが、総じて面白く鑑賞することができた。 連絡がつかなくなった母を、様々な機器を駆使しながら、基本的に自宅から離れずに捜索する主人公を軸としつつ、その周辺の登場人物も関連しながら、なかなか予想できない展開が連続する脚本になっており、これもまたよく思いつくなぁという感想を抱いた。 鑑賞した後に特に強い読後感や学びが残るタイプの作品ではないけれど、娯楽作品としてしっかり面白く作られている映画だと思う。 https://filmarks.com/movies/107716/reviews/172129768

  • 10 クローバーフィールド・レーン | 10 Cloverfield Lane (2016)

    3.7/5.0 クリフハンガー的に物語の風呂敷を広げる手法が天才的に上手い (ただし畳むのはそれほど上手くない) J・J・エイブラムスが仕掛け人のクローバーフィールドシリーズには、他篇との世界観的な繋がりが示唆されながらも、それぞれ独立して楽しめるSF映画の楽しさがある。 2作目となるこちらも、POV視点のモキュメンタリー演出だった1作目と大きくスタイルを変えながら、(ほぼ) 密室スリラーとして楽しむことができた。 主演のメアリー・エリザベス・ウィンステッドはキャリア初期からホラー映画への出演が多く、スクリームクイーンとして有名になっていった俳優だが、絶叫する演技ばかりでははなく、重い緊迫感の中での精神的な揺れのような微細な部分も演じる力量がある。 本篇の大半は地下室、登場人物はほぼ3人という相当に限定された舞台設定で、その空間のキーパーソンを演じるジョン・グッドマンの不気味な役づくりには圧倒される。人間の内面に潜む暗黒面や不安定な精神性を、漫画的ではない実存感のある演技で体現しており、まさに変幻自在の名優といった感じ。 もう1人の人物も含めて3人の間で行われる心理的な駆け引きには、画的にはとても地味ながら、終始ドキドキさせられる。 終盤でのあまりにも劇的な超展開には驚かされるが、そうだったこれはクローバーフィールドだった! と思い出す興奮がある。 終劇直前の画づくりの構図は、映画本篇の後の物語がどう展開するのかの想像が広がる演出があり、とても決まっている。 映画全篇を通して、監督を担ったダン・トラクテンバーグの演出のセンスの鋭さを感じ取ることができる。 シリーズで物語がつながっているようで微妙につながっていない、だから前作や次回作を気にせず単品で楽しめる、でも映画の精神性としてはやはりクローバーフィールド、という特殊なシリーズではあるが、個人的には1・2・3作目のどれも違った魅力のあるSFスリラーだと感じている。 この先に4作目が製作・公開されるとして、ほとんど予備知識なく映画館で1作目を鑑賞した時の衝撃的な体験を更新することは難しそうだけれど… https://filmarks.com/movies/66341/reviews/152619341

  • ゴーストバスターズ / アフターライフ | Ghostbusters: Afterlife (2021)

    4.0/5.0 80年代に大ヒットした2作の直接的な続篇ということで、旧シリーズの登場人物達からの世代交代と継承を脚本の軸にしつつ、初期2作の綺羅びやかなニューヨークからオクラホマ州の片田舎へ舞台を移してのコンパクトな物語になっている。 シリーズの特徴だったコメディタッチはかなり抑えめになっていて、良くも悪くも映画全体のトーンが旧シリーズから大きく変化している。 個人的には、脚本の現代的なアップデートは歓迎しつつも、このシリーズ特有の気楽なノリはしっかり残っていて欲しかったので、それを少しだけ寂しく感じた。 劇中に登場するゴースト達のVFXに関して、80年代の技術発展途上だった時代の質感をあえて再現しているところは、懐かしさもあいまってとても微笑ましかった。 旧シリーズを観たことがない若い世代には、そのオマージュの意味が伝わらず安っぽく見えてしまうかも? とも思ったけれど… キャリー・クーンやポール・ラッドといった大人役の俳優たちの役作りはもちろん良かったが、子役俳優たちの表情や佇まいがとても瑞々しく、ジュヴナイル映画的な輝きがあり、清々しい読後感が残る。 主演のマッケナ・グレイスは既に次代のスーパースターになりそうな存在感があり、そのお兄さん役のフィン・ウルフハードの憎めないナヨナヨ感も微笑ましく、どちらも間違いなく素晴らしい俳優だと感じた。 このシリーズのファン (自分もそのひとり) であればあるほど、旧シリーズの主役達やキャラクター達はいつ出てくるのだろうと期待しながら鑑賞することになると思うが、それにしっかり応えてくれる展開が終盤にあり、ファンにとってはメタ的な驚きもそこに加味されて、とても熱い演出だった。 何よりも、旧シリーズの監督を担ったアイヴァン・ライトマンが製作に関わった最後の作品 (遺作) であること、そしてその息子のジェイソン・ライトマンが先代の想いを受け継ぎ、かつ先代とは違うオリジナルな作風も組み込みながら、この続篇の監督を継承してくれたことが、ファンの自分にとってはしみじみと嬉しい。 世代を越えた継承が物語のテーマともリンクしているからこそ、その演出にも体重が乗り、良作になり得たのだろうと思う。 2024年に公開予定のシリーズ最新作では、今作のようなしんみりの繰り返しではなく良い意味での気楽で痛快な物語が戻ってくることを、楽しみに待ちたい。 https://filmarks.com/movies/82682/reviews/171344198

  • ファンボーイズ | Fanboys (2008)

    4.7/5.0 スター・ウォーズシリーズと、ジョージ・ルーカス監督がこれまで世に送り出してきた映画のファンであればあるほど、この映画が愛しく感じられ、高く評価するはず。 加えてスター・トレックシリーズも好きな人であれば、なおさらだろう。 逆に、どちらのシリーズについても特にファンではないという人にとっては、観てもほとんど劇中のネタの意味が分からず、置いてけぼりに感じてしまうだろうから、おすすめできない。 そんな自分は、スター・ウォーズもスター・トレックも大好きで、映画の原体験がスター・ウォーズ エピソードIVという人間なので、すごく楽しく鑑賞することができた。 演出やアングルは総じてチープだし、派手なVFXもほとんどないし、ギークな主人公たちの極めてダサいロードムービーでありながら、逆にその味わいが居心地良く思えてくるという不思議な感覚をおぼえた。 主人公たちの、情熱はあるものの不器用かつコミュ障なやりとりを通して、人が何かに夢中でいることの尊さと、それが過剰なあまり他の全てが疎かになって人生や性格が少し歪になってしまうことの悲哀が、絶妙なバランスで描かれている。 スター・ウォーズに関連する小ネタが絶え間なしに続くので見逃しそうになるが、とても心に沁みる台詞が要所にあり、そして全篇を通した脚本の骨格はとてもしっかりしているところがまた面白い。 スタッフロールに入る直前の台詞と俳優たちの表情には、彼らが劇中でついに辿り着いたある劇的瞬間を同じ時期に実際に経験していた自分の感情が瞬時に思い出されて、大笑いしてしまった。 そして、劇中で主人公たちが突きつけられていたスター・ウォーズマニア向けのクイズの数々については、自分は即答かつ全問正解だった。 だから自分も、間違いなく主人公と同じ側の人間のひとりなのだ。 https://filmarks.com/movies/4926/reviews/171250430

  • 隔たる世界の2人 | Two Distant Strangers (2020)

    4.3/5.0 人類がいつか乗り越えなければいけない人種差別問題について、理想とはほど遠い現状を鑑賞者に叩きつけ、これが私達がいま生きている世界なんだと訴えかけてくる映画だった。 主人公に痛ましい結末が訪れる度に時間が巻き戻されるという設定を用いながら、その設定自体が、毎日のようにどこかでこのような悲劇が繰り返されているのだという事実の隠喩と解釈することもできる。 目には目をで武力を用いて闘争するのではなく、自身に憎しみを向けてくる相手とも対話をすることで悲劇からの脱却をはかろうとする主人公の気高い精神に、心を打たれる。 そして、その精神すら踏みにじられるほどの圧倒的な暴力もまた世の中に数多く存在しているという事実の恐ろしさにも、気付かされる。 主人公と相対する警官の内面と良心が、主人公の懸命な努力によって現出してきたのではと期待した先にあった終盤の衝撃的な展開には、時にその理由の解釈すら難しいほどの邪悪が我々の “隣人” として存在している可能性もあるのだと思わされた。 それでも私達は諦めずに対話をし続け、互いのコンテクストを想像し続け、相互理解する努力を続けなければいけない。 あの時代の自分達は愚かだったと誰もが (あらゆる人種と国籍の人間が) 言えるようになる時まで、その努力を放棄していはいけないのだと、心にしっかり受け止めた。 https://filmarks.com/movies/96288/reviews/171248218

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