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- バック・イン・アクション | Back in Action (2025)
3.5/5.0 「チャーリーズ・エンジェル」ほか数々の映画で強烈な存在感を放っていたスーパースターのキャメロン・ディアスが10年ぶりに俳優として復帰するということで話題になったアクション・コメディで、そのパートナー役を演じるのも一流俳優のジェイミー・フォックスと豪華。 タイトルの「バック・イン・アクション (再び現役)」はいちおう劇中の設定にも関連しているが、キャメロン・ディアスの俳優復帰というイベントにもかかっていることが明らかで、メタ的なタイトリングになっている。 15年前に自分達の死を偽装することでCIAから足を洗った元凄腕スパイの夫婦が、一般的な夫婦として子育てといった平凡な悩みと向き合いながら暮らしていたが、スパイ時代に断ち切ったはずの因縁があるきっかけから浮上してきて… という導入で、そこからはド派手ながらライトテイストなアクションがたっぷり続く。 コメディとアクションがバランスよく連続するので退屈することはないが、特別に新しいと感じる演出や驚くような展開があるかといえばそれもなく、及第点ながら期待値を越えない展開。 ただ、あのキャメロン・ディアスが映画の世界に戻ってきて、文字通りバック・イン・アクションなシーンが次から次へと繰り出されるという祝祭感はある。 逆にいえば、キャメロン・ディアスに対して特別な思い入れがない鑑賞者にとっては、つまらなくはないけれど特に新鮮味もないB級アクションという印象になりそうだ。 ジェイミー・フォックスは今作における自分の立ち位置 (キャメロン・ディアスの引き立て役) をしっかりわきまえつつも安定した存在感があり、子役も含めたそれ以外の脇役達も好演していて楽しい映画だったが、何かこう… 面白いんですけど… スーパースターの復活祭としてもう少しだけ何かスペシャルなアイデアは思いつかなかったですかね…? という、もどかしい読後感も残る作品だった。 https://filmarks.com/movies/114743/reviews/190975579
- エミリー・ザ・クリミナル | Emily the Criminal (2022)
3.7/5.0 「アガサ・オール・アロング」の魔女役で鮮烈な印象を残したオーブリー・プラザが主演し、今作が長編デビューとなるジョン・パットン・フォードが脚本・監督を担う犯罪スリラー映画。 過去の犯罪歴があることから自身が望む職につけず非正規社員として働きながら借金をほそぼそ返済する生活を送る主人公が、いわゆる闇バイト (カード詐欺) を紹介され、少しずつ犯罪に手を染めていくという物語。 最初は軽い気持ちで… という、この手の話でよく聞かれる犯罪者側の心理が主人公を通して克明に描かれており、感情移入は難しいながらも、主人公が置かれている辛い境遇のリアリティもあって惹き込まれる。 劇中で描かれる犯罪のスケールは少しずつ大きくなっていくものの、絵空事のような規模までエスカレートすることはなく、フィクションながらも生々しく非情な展開が続く。 オーブリー・プラザならではともいえる意思を宿した眼の主人公の強さと、自身の行動と状況に恐怖し動揺する弱さの揺らぎの演技がとてもハイレベルで、一流俳優の力とはすごいものだなとあらためて驚いた。 終劇は意外な展開だったが、この主人公ならばそういう結末もふさわしいかも知れないと感じるものだった。 予算たっぷりでド派手なアクションやカメラワークがあるような作品ではないが、今作のように地に足のついた (我々の実生活の延長線上にあるような)世界観のスリラー映画も面白い。 https://filmarks.com/movies/101776/reviews/190973123
- スター・ウォーズ: スケルトン・クルー | Skeleton Crew (2024)
3.7/5.0 MARVELの「スパイダーマン」ホームシリーズ3部作を大成功に導いた監督・脚本家のジョン・ワッツがショーランナーを担うスター・ウォーズのドラマシリーズ。 これまでの映画やドラマシリーズでは主要なキャラクターのほとんどが大人だったが、このドラマシリーズは4人の少年少女が中心人物で、いわゆるジュヴナイル (少年少女の冒険もの) なSFアドベンチャーになっている。 映画シリーズを中心に描かれた帝国と共和国 (反乱同盟) の戦争が終結した時代の物語で、スター・ウォーズといえばでお馴染みのジェダイやシスといったヒーロー / ダークヒーローはほぼ登場しないが、スター・ウォーズの世界観設定に準拠しつつ過去シリーズの焼き直しではない新鮮な物語が展開されていて、シリーズのファンとしてはこんな作り方もあったのかと驚かされ、嬉しく感じた。 製作者達が公言している通り、誰がどう観ても「E.T. (1982)」や「グーニーズ (1985)」といった80年代のアドベンチャー映画が参照されていることが明快ながら、その表層部分の剽窃ではなく、冒険のスリルや興奮といったエッセンシャルな部分が正しく受け継がれ、それらがスター・ウォーズの世界観の中で輝いている。 4人の少年少女のキャラクターはいずれも魅力的だが、特に印象的だったのは子役のキリアナ・クラッターが演じた「KB」で、今作の続篇があればもちろんのこと、スター・ウォーズの他シリーズでも登場が期待される人気のキャラクターになりそうと感じた。 善人か悪人かを判断することが難しい、絶妙に信用ならない人物を演じたジュード・ロウの複雑な演技も素晴らしく、粗暴だが頼りになるアンドロイドの声優として出演しているニック・フロストの演技もすごく楽しい。 ニック・フロストが演じたアンドロイドは全篇を通してキャラクターが立っていて面白かったが、特に声の演技でめちゃくちゃ笑えるシーンが数か所あり、さすがはニック・フロスト、声だけでもすごい存在感だと感じた。 スター・ウォーズシリーズもまたMARVEL (MCU) と同じくファンの期待に応えながら作品世界が拡張し続ける一方で、品質低下や粗製乱造といったことも言われており、ファンのひとりとしては複雑な心境。 ただ、今作のように作品のコンセプトがしっかりあり、独自の世界観の構築もあり、完結感・納得感のある脚本が練られた作品であれば、製作される価値も鑑賞する価値も大いにあると感じる。 シーズン2が製作されるかどうかはさておき、このシーズン1の全8話は、起承転結がきちんと描かれた単独の物語として上質にまとまっている。 https://filmarks.com/dramas/12276/16939/reviews/16770131
- スター・ウォーズ: アコライト | The Acolyte (2024)
2.5/5.0 「スター・ウォーズ」シリーズのファンとしては、観ないという選択肢はなく全話観賞した。 エピソード4・5・6のオリジナル三部作、1・2・3のプリクエル三部作、7・8・9のシークエル三部作からなるスカイウォーカー・サーガをシリーズの中核とするなら、こちらはその世界観と描かれる時代を拡張したスピンオフ作品のひとつ。 シリーズを通して初めて、スカイウォーカー・サーガよりも約100年を遡った時代が描かれるということで、どんな世界と物語が広がるのだろうと期待して観賞したが、全8話を観終わった読後感としては、何だか期待外れだったところが多く、ガッカリしてしまった。 これまでのシリーズのお約束的な設定だった「ジェダイ = 善」「シス + 帝国 = 悪」という勧善懲悪的な二元論ではない、その中間に存在する揺らぎや反転・逆転が描かれていた点は新鮮で、今後も拡張し続けるであろうシリーズの可能性を大きく広げるという意味では価値があったように感じる。 ただ、肝心の脚本について、全8話を通した展開の作り方の部分でも、各話で描かれる登場人物達の動機の部分でも、うーんと感じてしまうほどに粗過ぎ、もう少しすんなりとワクワクさせて欲しかったなと残念な気持ちになってしまった。 シリーズお馴染みのライトセーバーによる殺陣、多様なメカや人種のキャラクター、異世界の文明や風景と構図の捉え方といった個別のディティル要素はどれも魅力的で、他のSF映画やドラマではなし得ない世界を見られて楽しかっただけに、肝心の脚本の残念さが余計に際立っている。 イ・ジョンジェ、アマンドラ・ステンバーグ、ダフネ・キーン、キャリー=アン・モスといった様々な国籍と人種の俳優達が出演しており、それぞれの役柄をしっかり演じていただけに、なおさら惜しい。 映画やドラマ版と並行して出版されていた小説等で登場していた細かい設定の数々が逆輸入的に取り入れられていた点は、子どもの頃からの「スター・ウォーズ」の熱烈なファンのひとりだと自負する自分にとってはもちろん楽しかったが、そうではない多数の人々にとっては重要な要素ではないと思うので、深くはコメントしない。 何よりも残念だったのは、(シーズン2の構想が仮に当初からあったにせよ) 全8話で何らかの物語的決着がつくことを当然期待して観賞していたのだが、全然そうではなかったこと。 クリフハンガー的に次シーズンへの布石を残すぐらいであればワクワクしつつ待てそうだったが、1シーズンで起承転結をまとめるつもりはそもそもなかったのかと分かって、そりゃちょっと上品じゃないやり方じゃないの〜と感じてしまった。 過去はともかく現在はディズニーの巨大資本で製作されているシリーズなので、シーズン1で打ち切りになることはないのだろうけれど… シーズン2には期待よりも不安の方が大きい。 https://filmarks.com/dramas/10089/14140/reviews/14820820
- バーバラと心の巨人 | I Kill Giants (2017)
3.9/5.0 グラフィックノベルを原作とするファンタジー映画で、イラストレーターとしてのキャリアを持つアンダース・ウォルターが監督を担っていることもあり、全篇を通して色彩や構図の設計にセンスを感じる作品。 独自に構築した空想世界の設定に入り込み、現実世界との折り合いをつけられない主人公が、どのようにその状況と向き合って成長していくのかが描かれる。 主人公の境遇を慮って手を差し伸べる者もいれば、異物として排除しようとする者もいて、ファンタジーとリアルな世界が目まぐるしく入れ替わる。 子どもの頃に現実逃避の手段として小説や映画の世界へ没頭していた自分は、主人公の境遇や葛藤に強く共感できながら、懐かしくも辛い記憶が思い出されてしまった。 主人公が粛々と準備しながらいつか対峙しなければいけないと語り続ける巨人とは一体何なのか? 主人公が目を向け続ける空想の世界の物語が進展する一方で、目を逸らし続ける現実の世界では何が起きているのか? 終盤でそれらが全て提示され、ファンタジーとリアルの2つの世界を俯瞰した物語が分かる。 子どもにとってはこれ以上辛いことはないといえるほど過酷な現実との向き合いと、空想世界との訣別の演出が、悲壮ながら美しい。 派手な画づくりやダイナミックなスペクタクルがある作品ではなく、小さな街に暮らす少女の成長物語といったスケールではあるが、明確なテーマがあり結末までしっかり描き切る脚本と空想世界の美しさもあり、とても上質な作品にまとまっていると感じた。 https://filmarks.com/movies/72653/reviews/189695020
- スランバー・パーティー大虐殺 | The Slumber Party Massacre (1982)
1.3/5.0 2023年に日本初公開という情報と80年代感が強いビジュアルで、近年よく製作されている80'sリスペクトな最新の映画なのだろうと鑑賞したが、それは大きな勘違いで、実際には1982年にアメリカで公開されながら日本ではずっと未公開だっただけということに、鑑賞後やっと気づいた。 道理で80年代の再現レベルが異常に高いなと感じたわけだ、そもそも再現ではなく実際に80年代に撮られたのだから当たり前だ。 製作された時代はさておき中身が面白ければ問題なかったのだけれど、B級映画の帝王 (King of the Bs) と呼ばれるロジャー・コーマンが製作に関わっていることもあり、実に空虚で浅くチープなスラッシャーといった趣で、当時流行した「悪魔のいけにえ」「ハロウィン」「13日の金曜日」といった著名な映画に似せようとしつつも、良いところを見つけることが難しいほど全ての演出のレベルが低く、80分弱という比較的短い時間でもかなりしんどいと感じてしまうほどだった。 電気ドリルを武器に持つ殺人鬼が、パジャマパーティで盛り上がる女子達を襲う。それ以外に語るべきところはない。 殺人鬼の正体はかなりの序盤から明らかになるし、映画的な仕掛けも登場人物達の駆け引きもない。 くわえて、物語における主人公の立ち位置がよく分からないし、物語の展開に全然関連しないし、物語を牽引するような活躍もほぼない。 80年代の映画にはこれぐらいの緩さへの許容もあって牧歌的だったな〜と思い出せるという点では、僅かながら価値があるかも。 https://filmarks.com/movies/65227/reviews/189415190
- マイ・オールド・アス 〜2人のワタシ~ | My Old Ass (2024)
3.6/5.0 カナダ出身の俳優でもあり映画監督でもあるミーガン・パークによるドラマ映画で、「アガサ・オール・アロング」で鮮烈な印象を残したオーブリー・プラザが出演していると知り鑑賞した。 主演のメイジー・ステラもカナダ出身で、これからスターとして輝いていきそうなオーラがある。 18歳の主人公が友人達とマジックマッシュルームでトリップすると、未来に生きる39歳の自分自身が目の前に現れ、幻覚だろうと思ったがそうではなく、今後の人生についての忠告を受ける… という導入が面白い。 未来の自分から過去の自分への警告というフォーマットはSF物語の基本型のひとつでもあるが、今作はタイムスリップ等のSF要素はほとんどなく、現代で暮らす18歳の主人公がこの先どういった決断をしていくかに物語の焦点があたる。 自分が正しいと信じる道を選択することで、未来における悲劇の発生が確定すると知った時、その選択を本当にすべきなのか? といった問が物語の大きなテーマで、オーブリーが演じる未来側の主人公の、明るく振る舞いながらも影が落ちるシーンがとても印象的。 その問に対して現代における18歳の主人公が自身の進む道を逡巡しながら決断する流れがとても青春で、その主人公の良き理解者である友人達や家族の存在もあたたかい。 未来の39歳の主人公がどんな世界に生きているのかについて、僅かなヒントはありつつほぼ描かれなかった点がやや消化不良に感じたが、現代の主人公及びその周辺人物の物語に焦点を絞って描き切るという意味では、90分弱という比較的短い時間でコンパクトな物語にまとまっていて良かった。 https://filmarks.com/movies/114172/reviews/189416812
- ホワット・イフ…? Season 3 | What If...? Season 3 (2024)
2.2/5.0 マーベル・シネマティック・ユニバース (MCU) に属するアニメーションシリーズの第3シーズンにして完結篇。 MCUの映画やドラマ作品で登場したキャラクター達や設定を軸に、いわゆるパラレルワールドのような並行宇宙ではこんなことが… という展開の数々を描く。 まずもって、映画やドラマ版のMCU作品の数々を観てきていない人にとっては何をどう楽しめばいいのかほとんど全く分からない内容になっている。 自分は長年のMCUファンなので、タイトルでもある「What if...? (もしも)」の世界がどう「もしも」なのかについて理解ができたが、それを踏まえても、シーズン3まで続くとやや食傷気味で、何でもあり過ぎる世界観に惹き込まれる瞬間がほとんどなかった。 映画やドラマは当然として、原作のコミックも全部読破しているレベルのMCUマニアでもない限り、没入するほど楽しい鑑賞体験にはならないのではと感じる。 とはいえディズニー資本のマーベル・スタジオ製作とあって予算は潤沢なようで、アニメーションの品質の高さや安定した演出レベルがあり、ほとんどのキャラクターの声優も映画やドラマ版における同役の俳優を起用していたりで豪華だけれど、その豪華さが逆に虚しく感じるというか… 色々ともったいないなという印象しか残らなかった。 2008年の映画「アイアンマン」からスタートして以来、それこそ宇宙的規模で広がる (広げられる) 世界観がMCUの特色ともいえるが、中心となる最近の映画やドラマシリーズで目立つ明らかな綻びや品質の低下については、ファンとして贔屓目に鑑賞しているであろう自分でも気になってしまう。 このアニメーションシリーズで活躍したキャラクター達が映画やドラマに逆輸入のような形で登場するといった構想も製作者達の中にあるのかも知れないが、まずはMCUの本筋 (やはり映画シリーズになるだろう) の品質回復が実現するといいなぁ… と、今作と全然関係ない感想を持ちながら鑑賞してしまった。 https://filmarks.com/animes/3037/6239/reviews/7012799
- ピエロがお前を嘲笑う | Who Am I (2014)
1.9/5.0 ミステリーSFの「1899」を手掛けたスイス出身の脚本家・映画監督バラン・ボー・オダーによるドイツ製作のスリラー映画。 ハッキングの才能がありながら冴えない生活を送ってきた青年を主人公に、ウェブ社会におけるサイバー犯罪やその捜査にあたる人々も含めた攻防戦が描かれる。 具体的に書くと大きなネタバレになってしまうので避けるが、劇中の背景に登場する映画のポスター等から、この映画の脚本にどのようなツイストが仕掛けられているかを、鑑賞中から想像できる。 ほとんどのシーンが主人公と捜査官の取調室での会話と主人公の回想で構成されているが、いわゆる「信頼できない語り手 (Unreliable Narrator)」の叙述スタイルが取られており、何が真実で何がミスリードなのかを推測しながら鑑賞する楽しさがある。 どんでん返しに驚かされる映画として今作をあげる映画ファンが多いことにも納得できる。 ただ、あまりにもそのどんでん返しありきというか、脚本のツイストを越えてそれ自体が目的化しているのではと感じるほど、主人公やその周辺人物の動機や行動内容に説得力がなく、超人的な才能や思わせぶりな背景を持ちながら起こす犯罪の内容はチンピラの迷惑行為レベルというあたりも絶妙にダサく、登場する人物のほぼ誰にも感情移入できなかったのが残念。 ハッカー達やサイバー犯罪界の大物とのネット空間における邂逅のシーンの可視化に薄汚れた電車車両や仮面が用いられているが、一見スタイリッシュに見えて実にチープなその演出にも興ざめしてしまう。 細かいことはさておきどんでん返しだけを味わいたいという人には良いのかも知れないが、そこだけに振り切っているともいえる今作では、それ以外の部分の脚本や演出の稚拙さが気になってしまう。 終盤で何重にも仕掛けられたどんでん返しがあったとしても、で主人公達は結局最初から最後まで何がしたかったんだっけ? という置いてけぼりの読後感だけが残ってしまうように思う。 この映画の製作者達がリスペクトしながらもそれを越えようと参照したであろう映画達の完成度の高さを思い出してしまった。 https://filmarks.com/movies/60478/reviews/188895639
- 最後まで行く | A Hard Day (2014)
3.8/5.0 イ・ソンギュン主演のクライムサスペンス映画で、韓国で製作された今作の評価の高さから、中国・フランス・日本でもリメイクされている。 殺人課の刑事として働く主人公が自動車で人を轢いてしまい、その証拠を咄嗟に隠してしまったことから事態がどんどん悪化していくという導入がとても面白く、無駄がなくテンポがいい脚本と演出もあって惹き込まれる。 常に極限状況にある主人公が、じたばたと機転を利かせながらも切り抜けていくが、次々繰り出される悪知恵が面白い。 その悪知恵がめちゃくちゃに罰当たり過ぎてスリルと笑いが紙一重になるようなカオスなシーンも何度かあり、その高度な演出にも感心する。 主人公の職業を公僕としながら、その人物像を尊敬できるような存在と程遠い設定にすることでこんな展開が作れるという発想に、韓国映画らしいツイストのアイデアが見られる。 序盤では主人公による証拠隠滅が中心になるが、中盤では事件を知る謎の人物からの脅迫があって物語が大きく展開し、終盤ではさらに予測不能な展開があって、割と分かりやすく提示されてきた伏線のスマートな回収もあり、鑑賞していて飽きるタイミングがない。 脚本の面白さだけでなく、俳優達の迫真の演技はもちろん、照明・撮影・編集等の技術もとても高く、韓国映画業界の水準の高さに驚かされる。 これも韓国映画ならではの文化なのかも知れないが、政治や警察組織の腐敗と裏社会との癒着というモチーフが描かれることが多いなという印象がある。 実際の韓国の社会でも (映画ほどではないにせよ) そういった事実があって、国民のフラストレーションもあり、映画を通してそれが描かれることで溜飲を下げているといった側面があるのかも知れない。 現実社会においてそういった腐敗や癒着は当然許されるものではないが、一筋縄ではいかない物語を作り上げるためのモチーフとしてこれほど魅力的なものはなかなかない。 そこには、正義もしくは悪といった二元論では割り切れない、人間の内面の複雑性を描く材料がたくさんあるからだろう。 https://filmarks.com/movies/60169/reviews/188805617









