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  • アンテベラム | Antebellum (2020)

    3.9/5.0 アメリカという国家が未だ完全には乗り越え解決できていない人種差別問題について、その様々な種類の痛みも含めて描き出されていた作品だった。 物理的・肉体的な迫害のシーンは当然辛かったが、表面上はハッキリ見えずとも心理的に蔑まれていると気付くといったシーンの方が、自身の過去の体験が思い出されてより苦しい気持ちになった。 二つの物語が複層的に展開しながら、その二つが衝撃的に接続するシーンがあり、極めて映画的でドラマティックな演出に驚かされた。 強いメッセージ性を内包する脚本には、この映画のような強烈な跳躍があるものだなと感じた。 https://filmarks.com/movies/87926/reviews/168977530

  • エックス | X (2022)

    3.5/5.0 ホラー映画としての安定した面白さはありつつ、楽曲の使い方や編集のカッティングの入れ方、画面の割り方に独特なセンスがあって、わーかっこいいなと感じる部分がいくつかあった。 誰にでも勧められる傑作かというとそうでもないかも知れないけれど、単純にショッキングなホラー映画としても楽しめつつ、若さとは、老いとは、モラルとはといったテーマ性も少しだけあって、丁寧に作られた脚本だなとも感じた。 個人的には、自分の仕事にもいつか取り入れられそうなテクニックをいくつも見つけられて、何だか得をした気分になった。 https://filmarks.com/movies/101059/reviews/169082052

  • ソウルフル・ワールド | Soul (2020)

    4.2/5.0 主人公のジャズピアニストが持つ葛藤や願望にとても共感でき、また主人公が別世界で出会う自分の人生の指針が見いだせないキャラクターにも同じぐらい共感できた。 ピクサー作品は全般的に、一目で分かるハイレベルなアニメーション表現や安定的かつ卓越した演出を当然のように行いながら、人間性や人生観についての深いテーマを通底させているところが一味違う。 単純に楽しい映画体験を越える高みを目指すスタジオの姿勢が素晴らしい。 何より感心するのは、強く伝えたいメッセージであればあるほど、台詞で説明してしまわずに表情や風景の微細かつドラマティックな変化でそれを伝えようとし、そして成功しているところ。 画による表現の限りない可能性と、それを受け取る我々鑑賞者達の感受性を信じている集団だからこそ挑める高みなのだろうと思う。 前半〜中盤頃にいくつかある、歴史的著名人の名言いじり・天丼的に鳴る荘厳な音・超短尺なカットのつなぎで構成された笑いどころの演出がキレッキレで、何度か声を出して笑ってしまった。 https://filmarks.com/movies/84807/reviews/169641465

  • マイ・エレメント | Elemental (2023)

    3.7/5.0 ピクサー作品の多くは、表面上のモチーフや空想的な舞台設定の中に現実社会の私たちが抱える課題についての問いと解を巧みに組み込んで描出する物語が多いけれど、この物語のメタファーは明らかに異人種間の相互理解、特に移民といわれる人々についてのそれなのだろうと思う。 人は世代を越えて何を継承するのか、もしくはしないのかといった重いテーマも内包されていて、この作品で描かれる結末には心を打たれた。 単純に楽しい物語を観たいのに説教くさいなと感じる人もいそうだけれど、個人的にはそういった重い問題に直面する人々の立場を真剣に考えるいい機会になり、価値のある映画だと感じた。 4種のエレメントが共生する世界という設定がありつつ、主に描かれるのは火と水で、土と風のエレメントの出番がほとんどないところは少し気になったけれど… ピクサーがほぼどの作品でも何らかCG表現の進化に挑戦しているところも、クリエイター集団としてかっこいいなぁと尊敬の念を抱く。 この作品の火と水に関するリアリティとアニメーション的表現の融合レベルの高さには驚いた。 https://filmarks.com/movies/106662/reviews/169084903

  • うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー (1984)

    4.4/5.0 80〜90年代の押井守氏のアニメーション作品にはどれも神がかり的な凄みがあると思っているけれど、この作品も間違いなくそのひとつだなと感銘を受けた。 原作者が納得しなかったとかこれは自分のうる星やつらとは別物ですねと鑑賞後にコメントしたという逸話があり、原作準拠と創作的飛躍における乖離の問題に起因した昨今の痛ましい事件に少し思いが及んだけれど、ここまで明確に提示したい物語があって隙なく作られた作品には、素晴らしいと思わざるを得ない。 押井守氏の創作物はこの作品を含め基本的に、原作の物語的な骨格や登場人物の性格と行動原理を軸にしながら、古典小説や哲学者の言葉、果ては聖書等からの膨大な引用を組み合わせ、脚本を大きく飛躍させて構成するものがほとんどだ。 その借景的・再編集的な構成力の比類なき高さと、なおかつ賢しげで軽薄なパロディやオマージュにとどまらず個人の強烈なオリジナリティを確立できることこそが、押井守氏が持つ作家性なのだろうと思う。 https://filmarks.com/movies/28995/reviews/169176581

  • ラ・ジュテ | LA JETEE (1962)

    4.6/5.0 伝説的SF映画とも言われるこの作品の、ほぼ全篇をモノクロスチル (静止画) の連続性とナレーションだけで構成するという演出に唯一無二ともいえる芸術性の高さを感じた。 あえて何もかもは見せない、聞かせない、説明し過ぎないことによって、映画というフレームの外の世界までを想像させる余地が鑑賞者の読後感に大きく残るであろうところにも感銘を受けた。 創作においては、制約・制御を最適に行うことで想像の翼が拡張・解放されていくのだということがよく言われるけれど、この作品はまさにその極北といえるのではないか。 90年代の名作SF「12モンキーズ」の脚本家がこの作品にインスピレーションを受けて物語を執筆したという前知識がある状態で鑑賞したが、なるほど確かに… と納得した。 インスピレーションというよりも、12モンキーズはほとんどこの作品を原作としたリメイクもしくは発展的創作なのだと理解する方が正確なのではと思えるほど。 仮にそう理解するとしても、12モンキーズという作品の素晴らしさと、それを形にしたテリー・ギリアム監督に対する自分の尊敬の念が揺らぐことはないけれど。 https://filmarks.com/movies/8667/reviews/169209683

  • 彼方に | The After (2023)

    2.3/5.0 主演のデヴィッド・オイェロウォの迫真の演技がこの短篇作品の成立を明らかに下支えしていると感じた。 ほぼ表情だけで主人公の様々な感情の移ろいを描き切っているラストシーンは特にそれが顕著。 ただ、良くも悪くも主演俳優の演技力に頼り過ぎていて、アングルやライティング、劇伴やカッティング等の様々な演出が急に凡庸だったり雑だなと感じる部分があり、少し残念だった。 主人公の境遇が、この物語はフィクションだと分かっていても自分ごとのようなリアリティのある話に感じられて、そういう意味では鑑賞していてとても辛かった。 願わくば、全ての善良な家族が安心して幸せに過ごせる世界であってほしい。当たり前過ぎる願いだけれど… https://filmarks.com/movies/112603/reviews/169222403

  • ザ・キッチン | The Kitchen (2023)

    2.3/5.0 俳優として注目しているダニエル・カルーヤの脚本・監督作品ということで、どんな物語が描かれるのか期待して鑑賞した。 個人的には面白いなと感じるシーンや演出がいくつかあったけれど、映画作品としてはやや完成度が足りていないように感じた。 物語を牽引できそうで面白そうなモチーフや人物達がいくつかありながら、どれも微妙に活きないまま終劇してしまうところが、何だかとても惜しい。 時代設定を近未来にすることで、2020年代の英国や欧州国家が抱える貧富の差の問題を直接的過ぎない形に昇華しながら描きたかったのかなと想像しつつ、その設定や抽象化があまり上手く活きていないというか… フィクショナルな現代劇として作っても良かったのではないかと感じた。 https://filmarks.com/movies/113934/reviews/169339670

  • THE WITCH / 魔女 -増殖- | The Witch: Part2. The Other One (2022)

    1.5/5.0 3部作構想だと知り、1作目を観ていたこともあってこの2作目も鑑賞した。 アクションシーンの斬新さや過激さを作品の見どころにしたいのだろうと分かり、いくつかへえと感じたシーンもあったが、そういった部分以上に演出全般の浅さというか子どもっぽさが目につき、観ているこちらが恥ずかしくなってしまった。 具体的には、今どきそんな書き割り的でマンガ的な人物の描き方ってどうなのと感じる点の数々。 精神的余裕がある人物はガムを噛む、やさぐれた人物は酒瓶をラッパ飲みする、まだ全力を出していない人物は口笛を吹く、只者ではない人物は母国語以外の言語 (韓国人にとっては英語) も話す、等… まるで、まだ世間や社会を知らない中学生が深夜にノートに殴り書きしたようなキャラクター設定。 韓国映画の品質水準はこの20年ほどで飛躍的に向上し、傑作だと思うものもたくさんあるが、それらの作品はこの作品のようにキャラクター造形・背景・心情を描くことに手抜きせず、複層的に描くことに取り組み、そして成功している。 個人的にはむしろ、人間が持つ複雑性の描き込みの深さこそが韓国映画の強みであり凄みだと思っているので、この作品のような韓国映画も一定の評価と興収を得ていることは理解しつつ、世間には色々な評価軸があるものだなとあらためて感じた。 観ていて辛くなっちゃいそうなので、続篇の3作目は観ないかも… https://filmarks.com/movies/103875/reviews/169494989

  • The Witch / 魔女 | The Witch: Part 1. The Subversion (2018)

    2.3/5.0 絵的な品質や基本的な演出が安定しているところに韓国映画界の基本レベルの高さを感じたが、これはちょっと脚本が勿体ぶらせ過ぎというか、子どもっぽいというか… アクションパートの演出には見るべきところも多くあったが、それと同じぐらい過度に漫画的・中二的でダサい部分もあり、合わない人もいそう。今どきそんな昔のジャンプ漫画みたいな演出を俳優につけちゃうの? という気持ちになって少し引いてしまった。 悪役の俳優が終盤で物語の重要な部分を上機嫌モードで何分にも渡ってペラペラ喋るシーンがあり、大事なこと全部台詞で説明させちゃう系の監督か〜… その割に物語の骨格はずっとスッキリ見えてこないし… という感じでガッカリしてしまった。 主人公の俳優の演技力、特に個性的な眼の演技はすごく印象的で、大物になるのだろうなと思って少し調べたら、既に大物になっていた。魅力的な俳優なので、注目していきたい。 https://filmarks.com/movies/79776/reviews/167521355

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