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  • ザ・ボーイズ シーズン4 | The Boys Season 4 (2024)

    4.4/5.0 MARVELやDCといったコミック原作のスーパーヒーロー映画のキャラクター達を下敷きにしながら、もしそれらの思想が邪悪に染まっていたら… という物語を、極限レベルの暴力と下品で彩りながら描くドラマシリーズ。 観賞者の年齢や嗜好によっては不快な体験になってしまうリスクがかなり高いので、事前に注意が必要。 この作品もコミックの原作があるが、シーズンを重ねるごとにドラマ独自の展開になっていき、どんな結末になるのかの想像が全くつかない。 近似した設定の映画およびコミックに「ウォッチメン」があるが、「ウォッチメン」は終始重厚かつ真面目な語り口で、「ザ・ボーイズ」は笑いと激痛が交互に起きるような展開となっており、題材や着想がほとんど同じでも作り手によってこんなにも違ったトーンの作品になるものなのかと、あらためて驚く。 典型的なアメリカンヒーロー像のパロディとして浅く楽しむこともできるが、企画と製作総指揮を担うエリック・クリプキやセス・ローゲンが本当に描き出したいものは、アメリカという国家が持つ病や歪みそのもので、これは過激な風刺を通した現代社会のミラーリングなのではないかと感じる。 (ダーク) ヒーローやアメリカンカルチャーの描き方を意図的に重くなり過ぎないよう絶妙にバランスすることで乾いた笑いを誘いつつも、観賞後に振り返ると背筋が凍るようなおぞましさを感じるという、その読後感が製作者達の狙いなのだろう。 特に今シーズンの公開は2024年で、アメリカ大統領選挙のタイミングと完全に合致していたが、脚本の大きな軸に大統領選が組み込んであり、「アメリカという国家の現在地を極限までイジり倒す」といわんばかりの製作者達の覚悟に凄みを感じた。 シーズン4まで続いてきたシリーズだが、物語が弛緩することなく常に予想を上回る展開があり、今シーズンの最終話には次シーズンに向けての大きなクリフハンガーもあって、他のドラマではなかなか得られないレベルの興奮があった。 シーズン5で完結とのことなので、あまりにもヤバ過ぎて後追いする製作者が出てこないぐらいの物語を期待して待ちたい。 https://filmarks.com/dramas/5020/17906/reviews/14826665

  • マッドマックス: フュリオサ | Furiosa: A Mad Max Saga (2024)

    4.3/5.0 オーストラリア出身のジョージ・ミラー監督が手掛ける伝説的映画シリーズの1篇で、アカデミー賞にて大旋風を巻き起こし多数受賞した「マッドマックス 怒りのデス・ロード (2016)」の前日譚に位置する作品。 前作「怒りのデス・ロード」で目の当たりにした圧倒的過ぎる世界と物語の観賞記憶が強く残っていることもあり、前作を比較しながらの観賞がどうしても避けられなかったが、前作に匹敵するほどの衝撃は感じられなかったものの、続篇としても、前日譚としても、単独の映画としても、高い完成度を誇る作品だと感じた。 主人公のフュリオサを演じる俳優は、前作のシャーリーズ・セロンからアニャ・テイラー=ジョイに代わっているが、外見が似ている / 似ていないといった表層的な部分ではなく、キャラクターの実在感や凄みといった本質の部分が継承されており、主演俳優としてしっかり映画の軸になっていた。 今作で主人公の宿敵として新登場するディメンタスを演じたクリス・ヘムズワースは、新世界における超常的な存在 (カリスマ) になることへの渇望がありながらもそうなり切れない惨めさがあり、崩壊前の世界への未練も捨てきれないという、複雑かつ不安定なキャラクターを演じており、退廃した世界で人間がまともに生き続けることがいかに難しいかが素晴らしい演技で体現されていた。 前作から再登場となる悪役キャラクター達も、演じていた俳優達の逝去等もあって何人か交代されているが、リスペクトのある継承だった。 物語の展開としては、前作での中心人物のひとりだったフュリオサの幼少期から成人になるまでがじっくりと描かれており、「怒りのデス・ロード」におけるフュリオサの行動心理がより深く理解できる内容になっている。 ただ、前作と比較すればだけれど、本格的なアクションシーンが始まる中盤までは、やや退屈に感じてしまう人もいるかもしれない。 中盤以降は、この映画シリーズの持ち味である凶悪な車やバイクを中心としたとんでもない規模の死闘のシーンがたくさんあり、他の映画やドラマシリーズには滅多にないレベルの視覚的な興奮を味わうことができる。 物語のジャンルをあえて定義すればアクション満載のポストアポカリプスものといえるのだろうけれど、この映画シリーズにはそういった既成の枠組みをやすやすと破壊する超弩級のスケールがある。 黙示録後の世界で (再) 構築され、後の世に語り継がれていく神話とはどういったものか、という創作のテーマが作品に内包されているのだろう。 アポカリプス前の文明の遺産 (車やバイクとガソリン) が確かに存在しながら、荒廃した世界で展開する激動の物語が神話性を帯びていくという強烈なオリジナリティが、多くの映画ファンからこのシリーズが愛される理由のひとつであるように思う。 https://filmarks.com/movies/93424/reviews/178598996

  • シャッター アイランド | Shutter Island (2010)

    4.4/5.0 巨匠マーティン・スコセッシが手掛けた、同タイトルの小説を原作とするミステリー映画。 主演のレオナルド・ディカプリオをはじめ、その相棒役のマーク・ラファロ、医師役のベン・キングズレーほか、名俳優達が多数出演している。 シャッターアイランドという孤島と島内の精神病院を舞台に、そこを訪れた主人公とその相棒がある事件の捜査を進める形で物語が展開しながら、巧妙かつ丁寧に組み込まれた脚本と演出の仕掛けがいくつもあり、不気味な違和感のピースが積み上がっていく。 終盤でそれらのピースの全てがひとつの画としてピタッと合わさり、物語の全貌と真実が明らかになる演出がとても秀逸で、さすが名作といわれるだけある作品だなと驚いた。 小説や映画の叙述手法でいうところの「信頼できない語り手」スタイルに該当する物語でありそうなことは序盤から分かるが、後半ではその予想の範疇にとどまらない重層的な展開があり、かつ人が生きるということをどう捉えるかについての哲学的で正解のない問いが読後感として重く残る。 演出全般については、さすが巨匠スコセッシと感嘆するほどの重量感ある超本格派で、(映画製作当時の) 最新のVFXや編集技術を取り入れながらも、ミステリー映画のど真ん中の演出を堂々といくスタイルがすごくかっこいい。 鈍色中心で構成された精神病院内のシーンと、鮮色中心で構成された回想シーンの対比構造的な色彩設計もまた美しく、小説文章ではなかなか描ききれない部分を補完する映画演出の強さがある。 原作小説の完成度に拠るところが大きいとは思うが、映画脚本としてのレベルが非常に高く、名優達の演技レベルの高さもあって、何度も再観賞してその巧妙な仕掛けの数々を確かめてみたくなる。 ミステリー映画の名作として、この先も永く語られるであろう作品。 https://filmarks.com/movies/17452/reviews/178550383

  • 猿の惑星 / キングダム | Kingdom of the Planet of the Apes (2024)

    3.6/5.0 ルパート・ワイアットやマット・リーヴスが監督を担ったリブートシリーズの3部作がとても面白かったので、その続篇かつ新シリーズの1作目となる今作を期待半分、不安半分で観賞した。 鑑賞前に気になっていた点は監督の交代で、前シリーズにあった重量感と外連味が両立するハイレベルな画づくりを、今作を監督したウェス・ボールが引き継げているだろうか? という心配があったが、シリーズの持ち味は引き継ぎつつ、過去作の繰り返しにとどまらない斬新さや驚きのある画づくりもあって、新シリーズ開幕にあたっての世界観の提示に成功していたように感じた。 特に、リブートシリーズよりもさらに遡ったオリジナルシリーズの、1作目 (1968年) や2作目 (1970年) における新世界の描き方へのリスペクトが分かるダイナミックな画づくりには感心した。 高い知能と言語能力を得た猿達が地上を支配し、文明や言語を失った人類が下等生物として虐げられているという設定に、昨今のVFXの映画的表現技術が追いついてきたこともあって、あらためてそれを目の当たりにするとなかなか衝撃的で驚きがある。 人類文明の終焉から数百年が経過し、荒廃が進んで自然とほぼ同質化したその廃墟の描かれ方も、それらを捉えるそれぞれのショットのアングルやサイズも含めてアーティスティックで新鮮。 単に画として面白いだけではなく、その前文明の構造物と遺産が、猿達の住居をはじめとする新文明の拠りどころになっているという点にも、このシリーズ独特のセンス・オブ・ワンダーを感じてグッときた。 脚本の展開は期待していた内容にほぼ収まっていたが、主人公を中心に様々なキャラクターが登場しながらも、物語を大きく動かす人物 (ほとんどは猿だけど) の数が必要最小限に絞られていて、視点と舞台がコンパクトかつシンプルにまとまっており、分かりやすい。 単作品としてきちんと起承転結がありながら、次回作はどんな物語が展開するのだろうと期待が大きくなるフックも終盤にあり、新シリーズの1作目として誠実かつ丁寧に作られている作品だなと好感がもてた。 ウェス・ボール監督は「ゼルダの伝説」の実写化作品も手掛けると発表があったが、この作品をそういう周辺情報も込みで観賞すると、確かに監督が得意なジャンルなのかもしれないなと感じた。 良くも悪くも手堅くまとめるのが上手で、脱線したり冒険し過ぎず安定的な作風なので、重要なタイトルの映画化を託す任天堂としても不安が少なそう。 https://filmarks.com/movies/105841/reviews/178498138

  • ゴーストバスターズ / フローズン・サマー | Ghostbusters: Frozen Empire (2024)

    2.5/5.0 アイヴァン・ライトマンが手掛けた80年代の有名映画シリーズを、その息子であるジェイソン・ライトマンが直接的続篇として復活させた新シリーズの2作目で、前作にて脚本・監督を担ったジェイソンは、今作では脚本でのみクレジットされている。 前作「アフターライフ」の舞台はオクラホマ州の田舎町で、登場人物の数を必要最小限に抑え、ユーモアも控えめながらコンパクトで丁寧な人間ドラマが描かれていてとても楽しい作品だった。 今作「フローズン・サマー」の舞台は旧シリーズと同じニューヨークになり、登場人物がかなり増え、脚本も複雑になっているが、それがほとんど良い転換になっていないように感じて残念だった。 初代ゴーストバスターズのメンバーがゲスト扱いではなく物語の主軸にも関わってくるところは面白いのだけれど、新シリーズの主人公とその家族だけでなく、その周辺のキャラクター達も微妙な関与度ながら続投し、さらに新キャラクター達も登場して、結果的にそれぞれの役割が曖昧になってしまっている。 登場人物の多さも関係していると思うが、脚本の運びもあまりスマートではなく、メインの悪役が本格的に登場する終盤まで、場面は忙しく切り替わりながらも同じようなアングルやサイズの似たような場面の会話劇が続き、起伏と盛り上がりに欠けて退屈してしまった。 何もかも凍らせてしまうという今回のメイン悪役に対抗する人間側のキーパーソンに、炎を操るファイアマスターという存在があり、それは誰でどこにいるのかを探す展開があるのだけれど、ミスリードのようで別にそうでもない展開があったり、ファイアマスター以外に火を操る別の存在があったり、結果的にファイアマスターの能力は物語の重要な部分にそれほど関係しなかったりで… もう少し物語の展開と人物の役割をスマートに整理する方法があったのではと突っ込みたくなってしまった。 主演のマッケナ・グレイスやその兄役のフィン・ウルフハードを中心に、俳優達は皆それぞれの役割を好演しているだけに、何故こんなに散らかってまとまりがない作品になってしまったのだろうという気持ちになった。 前作の「アフターライフ」がとてもエモーショナルで清々しい読後感のある映画だったこともあって期待していたが、今作にはあまり満足できず残念だった。 アイヴァン・ライトマンから偉大な遺産を継承しているジェイソン・ライトマンには、絶対に作品をヒットさせなければいけないというプレッシャーもあったのか色々盛り込んだ結果として今作のような散漫な内容になってしまったのかもと想像するけれど… ゴーストバスターズって、あまり捻らず、もっと気楽で、とてもストレートで、とにかく景気がよくて痛快な映画シリーズだったし、シリーズのファンの多くが求めていた続篇もきっとそういうものだったはずなので、次回は原点回帰的にそんな続篇を観られるといいなと思う。 https://filmarks.com/movies/113337/reviews/178346540

  • ゴーストバスターズ / アフターライフ | Ghostbusters: Afterlife (2021)

    4.0/5.0 80年代に大ヒットした2作の直接的な続篇ということで、旧シリーズの登場人物達からの世代交代と継承を脚本の軸にしつつ、初期2作の綺羅びやかなニューヨークからオクラホマ州の片田舎へ舞台を移してのコンパクトな物語になっている。 シリーズの特徴だったコメディタッチはかなり抑えめになっていて、良くも悪くも映画全体のトーンが旧シリーズから大きく変化している。 個人的には、脚本の現代的なアップデートは歓迎しつつも、このシリーズ特有の気楽なノリはしっかり残っていて欲しかったので、それを少しだけ寂しく感じた。 劇中に登場するゴースト達のVFXに関して、80年代の技術発展途上だった時代の質感をあえて再現しているところは、懐かしさもあいまってとても微笑ましかった。 旧シリーズを観たことがない若い世代には、そのオマージュの意味が伝わらず安っぽく見えてしまうかも? とも思ったけれど… キャリー・クーンやポール・ラッドといった大人役の俳優たちの役作りはもちろん良かったが、子役俳優たちの表情や佇まいがとても瑞々しく、ジュヴナイル映画的な輝きがあり、清々しい読後感が残る。 主演のマッケナ・グレイスは既に次代のスーパースターになりそうな存在感があり、そのお兄さん役のフィン・ウルフハードの憎めないナヨナヨ感も微笑ましく、どちらも間違いなく素晴らしい俳優だと感じた。 このシリーズのファン (自分もそのひとり) であればあるほど、旧シリーズの主役達やキャラクター達はいつ出てくるのだろうと期待しながら鑑賞することになると思うが、それにしっかり応えてくれる展開が終盤にあり、ファンにとってはメタ的な驚きもそこに加味されて、とても熱い演出だった。 何よりも、旧シリーズの監督を担ったアイヴァン・ライトマンが製作に関わった最後の作品 (遺作) であること、そしてその息子のジェイソン・ライトマンが先代の想いを受け継ぎ、かつ先代とは違うオリジナルな作風も組み込みながら、この続篇の監督を継承してくれたことが、ファンの自分にとってはしみじみと嬉しい。 世代を越えた継承が物語のテーマともリンクしているからこそ、その演出にも体重が乗り、良作になり得たのだろうと思う。 2024年に公開予定のシリーズ最新作では、今作のようなしんみりの繰り返しではなく良い意味での気楽で痛快な物語が戻ってくることを、楽しみに待ちたい。 https://filmarks.com/movies/82682/reviews/171344198

  • アキラ | AKIRA (1988)

    5.0/5.0 「大友克洋以前 / 以後」という言われ方もあるほどの偉人でもある漫画家の大友克洋が、自身の漫画作品をもとに製作したアニメーション映画。 自分にとっては、この映画の公開当時や漫画の連載当時に多大な影響を受けた大切な作品。 世界観やジャンルは20世紀後半に流行したサイバーパンクSFで、第三次世界大戦から数十年を経て復興しつつある日本の新首都「ネオ東京」を舞台に、健康優良不良少年である主人公達、反政府ゲリラ、軍人と軍隊、超能力の研究組織の研究員といった様々なキャラクター達の思惑が錯綜する。 未知の新型爆弾により (旧) 東京が一瞬にして壊滅する導入部分の衝撃が凄まじく、一気に引き込まれる。 アニメーション作品としての演出に関しては、歴史に残るレベルの画期的な見どころがいくつもある。 序盤における主人公達とその敵対チームのバイクチェイスとバトルにおけるテールランプの残像表現の、普遍的な斬新さ。 声優の声の収録を作画よりも先行し、それに作画を合わせるプレスコ方式をとることによって実現している、キャラクター達の演技の実在感。 アニメーションでありながら、実写映画のようにシーンごとに撮影レンズの切り替えがされているような構図の作り方。 いかにもSFといった電子的な楽曲ではなく、むしろ土着的な息遣いを感じる、芸能山城組が手掛けた劇伴。 作画枚数の膨大さとその緻密さにも驚かされるが、滑らかに動くかそうでないかといったレベルを遥かに超越した、人物達やモチーフの動きについての説得力と瑞々しさがある。 主人公達が乗りこなすバイクをはじめとするメカニックのデザインや、様々な彩度と色相が入り乱れつつシーン全体で絶妙なバランスでまとまっている色彩設計も、唯一無二といえるレベルの素晴らしさ。 大友監督は原作漫画の連載中にそれを一時中断してアニメ映画の製作に集中し、原作漫画については映画の公開後に連載再開し完結したという経緯もあって、映画版と漫画版ではおおもとの世界観や設定は同じものの、展開や結末についてはかなり違ったものになっている。 映画版を観賞するだけでも充分に価値ある体験ができながら、漫画版もあわせて読むことで、より深くこの作品の世界に浸ることができる。 日本国内にとどまらず世界中の映像製作に関わる人々に影響を及ぼしたという話も頷けるし、AKIRA以後の様々な映画やドラマにおいてそのオマージュだなと分かるシーンがあると、作品の本筋とはまた違った部分で、AKIRAに大きな影響を受けた人間のひとりとして楽しい気持ちになる。 小学生の時に初めて観賞して以来、既に何十回と観直したか分からないけれど、自分はこの先も繰り返しこの作品を観るのだろうと思う。 https://filmarks.com/movies/34781?mark_id=152637504

  • 世界侵略: ロサンゼルス決戦 | Battle: Los Angeles (2011)

    2.6/5.0 地球外生命体による世界各国の主要都市への侵略が突如同時に開始され、惑星規模の戦争が発生するという設定でありながら、タイトルにもあるように、ロサンゼルスを舞台とした戦闘に限定し徹底的に描くという、かなりシンプルかつストイックな構成の戦争SF映画。 製作者達が実現したかったであろうことは本篇を観れば明らかで、これは主人公達にとって敵対する存在として高度な科学力を持つ異星人というフィクショナルなモチーフを置きながら、米国の主要都市における米軍とその敵対存在との戦争状況、特に容赦ない市街戦を存分に描きたいという意図だったのだろう。 そしてその意図においては、VFXの品質の高さや臨場感あるカメラワークおよびアングルの切り取り方も含め成功しているように感じる。 脚本については脆さが目立つ部分が多いが、人物達の心情よりは戦争という状況そのものが作品の主役なのだと解釈すれば、細かい部分を気にし過ぎずおおらかな心持ちで観賞できるようにも思う。 米軍の存在やその戦争行為を正当化・礼賛 (プロパガンダ) する映画だという批判の声もあるようだが、それはおそらく製作者達の裏テーマとして存在していたのだろうと、自分も思う。 俳優達は主人公役を演じたアーロン・エッカートをはじめ皆好演しているが、何しろ導入的な前段はほとんどすっ飛ばして本篇のかなり冒頭段階から戦争状況が始まるので、鑑賞者としてはそれぞれのキャラクターの理解が追いつかない。 軍人達の衣装が (軍隊なので当たり前ではあるが) ほとんど一緒なこともあり、誰がどんな性格で何の役割だったっけと混乱してしまう人もいそう。 ディープな映画ファンからの評判は決して高くない映画のようだけれど、現代における戦争状況を擬似的に体験できる作品として観れば、その緊迫感・恐怖感・没入感を充分に味わえる作品になっているのではないかと感じた。 https://filmarks.com/movies/17899?mark_id=152619439

  • ファイナル・インパクト | Mira (2022)

    3.1/5.0 日本に住んでいると観られる機会があまり多くないロシア製作の映画で、流星群の衝突によって甚大なダメージを受ける地上の人々および主人公の女性と、宇宙ステーションで働いているその父を中心に描くディザスターパニック。 予告篇でも観られるシーンで、本篇全体を通して最も予算と時間がかけられたであろうと想像できる流星群の衝突シーンと、主人公が必死でその災禍から逃れる一連のシーンの緊迫感溢れる演出レベルがとても高く驚いた。 ワンカット長回し (風) で、息をつく間もないまま恐ろしい状況が連続し、その混沌に自分も投げ込まれたような没入感がある。 地上で生き延びようとする娘と宇宙から何とかサポートしようとする父の、遥かな距離を越えたやりとりの方法とその見せ方の演出には、SF的観点でなるほど面白いと思える部分はありながら、フィクショナルな映画とはいえそれはちょっと荒唐無稽過ぎではと感じてしまう部分も少なからずある。 ただ、科学技術的考証の正確さだけがこういった種類の映画に求められるものではないので、そのあたりの感じ方は鑑賞者それぞれの好みの問題かなとも思う。 脚本としては、単に派手で豪快な画づくりとテンションだけで乗り切るような内容ではなく、主人公および主要登場人物達の関係性の変化や心の葛藤の描き方など人間中心の物語になっていて、その展開に意外性は多くないながら、結末も含め納得感がある。 ハリウッドだけが映画の最高峰だった時代は過ぎて、今や様々な国の映画でダイナミックな画づくりや演出が観られるようになったことは自分にとって楽しく、このロシア製作の映画もVFXの品質やカット割の演出が素晴らしいと感じる部分が何箇所もあった。 映画を通してではあるけれど、自分にとってあまり馴染みのないロシアの現代風景を見られたことも楽しい体験だった。 社会情勢的に仕方がないこととはいえ、この先しばらくの間はロシアの最新映画を観る機会が減ってしまうのかな… https://filmarks.com/movies/114738?mark_id=178192606

  • エクスペンダブルズ ニューブラッド | Expend4bles (2023)

    1.7/5.0 往年の個性豊かなアクションスター達が集結し、ド派手で豪快なバトルを繰り広げる映画シリーズの第4作目。 シリーズの仕掛け人であるシルヴェスター・スタローンは今作にもチームのリーダー役で出演しているが助演の立ち位置に引いており、実質の主演はこれまでサブリーダー的な役を演じていたジェイソン・ステイサムに世代交代している。 このシリーズが作られたきっかけには、スタローンのようにかつて映画の世界で輝いていたスーパースター達が時代の変化や流行に取り残され、「消耗品 (Expendable)」 のような扱いをされたように感じたことへの憤りがあったという。 1作目を立ち上げ、主演と監督を兼任したスタローンは、なかば自虐の意味も込めてそれをタイトルや脚本上のチーム名にも取り入れ、自分達は老いてもまだまだこの業界で活躍できるのだと証明する映画を製作した。 その心意気がとても共感できるものだったからこそ、かつてアクションスターとして一斉を風靡したドルフ・ラングレン、ミッキー・ローク、アーノルド・シュワルツネッガー、ジェット・リー、チャック・ノリス、ジャン=クロード・ヴァン・ダム、ハリソン・フォード、そしてブルース・ウィリスといった超豪華な俳優達がレギュラーまたは特別ゲスト的に出演してきた。 そして、鑑賞者側もその映画の外側の背景やコンセプトを理解したうえで楽しめる、いうなれば祝祭的な側面があった。 シリーズを重ねる上での宿命なのかも知れないが、4作目となる今作では、そのコンセプトが大きくブレているように感じた。 ゲスト的な役柄でミーガン・フォックス、イコ・ウワイス、トニー・ジャーといったスター俳優が出演しておりそれぞれの見せ場もあるが、いずれの俳優も「Expendable」どころか現役で活躍できる世代だし、何よりそれぞれの俳優が持つ本来的な魅力と迫力が充分に伝わってこない。 これは単純に、今作の製作者達の脚本・演出・撮影・編集の力量の不足が、俳優達の格とのアンバランスになっているのだと思う。 俳優のことはさておいても、今作はアクション映画ならではの興奮を感じられるシーンがほとんどなく、退屈なテンポの凡庸な画づくりが続き、鑑賞前の期待値が高かった分だけ余計にガッカリしてしまった。 人物と背景の合成VFXが作品への没入感を削ぐレベルの雑さで気になったが、一方でミーガン・フォックスの肌は度を越したレタッチがかかっていてその違和感に笑ってしまうレベルで、全篇を通して感じる編集のちぐはぐな印象に、今作の製作者達の立場と軸の弱さを想像してしまい、何だか興ざめしてしまった。 脚本については、もともと1作目から雑で大味だと言われながらもそれが往年の映画を思い出させて良いという評価もあったが、今作に関しては大味というよりも無味に近い印象で、意外性や気の利いた展開もなく、その点も残念だった。 この映画シリーズに関しては、ド派手で痛快な面白さはもちろんのこと、製作に至った経緯やコンセプトにも個人的に大きく共感していたので、スタローンがこのシリーズの最後の出演作となると発言している今作では、有終の美を飾って欲しかった。 https://filmarks.com/movies/71775/reviews/177657409

© 1998-2025 Shoji Taniguchi

Kazari
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