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- 朱の路 | Aka no Michi (2003)
4.4/5.0 アーティストの村田朋泰による13分の立体アニメーション。 ピアニストの男が見る幻想的な夢の世界の風景が圧倒的で、クレイアニメーション特有の独特な空気感もあいまって惹き込まれる。 ひとつひとつのアングル・カラーリング・ライティングのレベルが高く、まるで動く絵画のよう。 台詞が一切ないものの、控えめながら美しい劇伴と人形の微細な演技で、台詞で語る以上の物語を感じ取ることができる。 約20年ぶりに再鑑賞したが、初めて鑑賞した時以上に感動をおぼえたのには、自身が年齢と経験を重ねたことが関係しているのかも知れない。 https://filmarks.com/movies/19774/reviews/152934041
- シビル・ウォー アメリカ最後の日 | Civil War (2024)
4.4/5.0 「エクス・マキナ」「アナイアレイション」「MEN」等で脚本・監督を担った英国出身のアレックス・ガーランドによる戦争映画で、2024年における最注目映画のひとつといっても良いであろう作品。 政治暴走への反発から、米国を構成する50州のうち19州が分離独立を宣言し、内戦が勃発した米国が舞台。 脚本の中心人物はジャーナリスト達で、キルスティン・ダンストが演じる戦場フォトグラファーの主人公と、ケイリー・スピーニーが演じるキャリア駆け出しの写真家を軸に物語が展開する。 ホワイトハウスに立てこもり続ける大統領を取材すべく、主人公達がニューヨークからワシントンD.C.を目指し約1,400kmの旅をする。 シーンや風景が様々に切り替わるロードムービーの手法を取りつつ、現代社会における米国の内戦という状況描写のリアリティが凄まじく、これはフィクションだと理解していながらもドキュメンタリー映画を観ていると錯覚をしてしまいそうな瞬間がいくつもある。 脚本・監督のアレックス・ガーランドの意図は明らかで、これは2024年の米国大統領選挙を機にあらためて顕在する (された) 米国内の思想分断という現実を、物語として先鋭化したということだろう。 ただ、現実においては「保守主義 (コンサバティブ)」と「自由主義 (リベラル)」という2大主義が米国の政局バランスを握っているが、この映画において分離独立した19州と政府および大統領がそれぞれどちらの主義なのかについての描写は全くといっていいほど存在せず、これも製作者による意図的なものであることが分かる。 内戦という状況そのものを凄まじいリアリティによって具象化しつつ、その勃発が何に起因しているのかについては抽象化することで、どちらが正義でどちらが悪といった勧善懲悪的な単純理解を鑑賞者にさせず、その意識を国家の分断という現実そのものと向き合わざるを得ないようにするという意図がある。 これまで戦場フォトグラファーとして何度も死線をくぐり抜けベテランの落ち着きを備えていた主人公が、ワシントンD.C.への旅の過程で起きる極限状況で次第に疲弊し、自我が揺らいでいく展開が恐ろしい。 反対に、物語の序盤では主人公やその同僚に半人前と扱われていた駆け出しの写真家が、極限状況を生き延びながらその状況を記録し続けることを通して、次第に狂気にも似たプロフェッショナルの凄みを纏っていくという、主人公と対になった人格変遷の演出が面白い。 多くの批評家や鑑賞者が触れているシーンではあるが、ジェシー・プレモンスが演じる赤いサングラスをかけた兵士が登場する一連のシーンの静かな禍々しさは、映画史に残るレベルと感じた。 同じ言語を使っていて、会話が通じるのに意思は疎通できず、そんな存在に自分達の生殺与奪の権を握られているという恐怖。 現在の米国がどういう状況に陥っているかを、最も端的に描写しているといっても過言ではないのではないか。 アレックス・ガーランド監督には以前から注目していたものの、映画としてのエンタテインメントよりもアートへのこだわりに重きをおいている印象が強く、作品によって面白いと感じるものと全然刺さらなかったものがありその差が激しかったのだけれど、今作はエンタテインメントとアートの両立のみならず現代社会に対する痛烈なテーマの投げかけもあって、久々に素晴らしい完成度の映画を鑑賞したという読後感があった。 https://filmarks.com/movies/113906/reviews/187316467
- フォールガイ | The Fall Guy (2024)
4.0/5.0 「アトミック・ブロンド」や「デッドプール2」といったエクストリームなアクション映画で有名監督の仲間入りをした、スタント出身という個性的な経歴をもつデヴィッド・リーチが監督・製作を担ったアクション映画で、1980年代に人気を博したテレビドラマが原作。 主演がライアン・ゴズリング、助演がエミリー・ブラント、クセのある役でアーロン・テイラー=ジョンソンが出演しており、すごく豪華。 優秀なスタントマンの主人公が、映画撮影中のアクシデントによって隠居生活を送ることになるが、かつて交際していた映画監督の作品の撮影のために復帰をするという導入。 ただ、そこには色々な思惑と陰謀があって… という展開が面白い。 監督がスタント出身かつ主人公の職業もスタントということで、その超人的な身体能力で映画やドラマ産業に貢献しながらも脚光が当たる機会が少ないスタントという職業に対する敬意と情熱が込もった脚本構成になっている。 当然というべきかアクションシーンのダイナミズムや演出の切れ味は最高峰レベルで、様々なアクション映画へのオマージュにも溢れた、見どころだらけの山場が何度もあり、とても楽しい。 とはいえやはりアクション以外のドラマ寄りなシーンは監督があまり演出が得意ではないことが見えてしまい、そういったシーンで少し退屈してしまったのがやや残念だった。 ライアン・ゴズリングは「ブレードランナー2049」や「ドライブ」でのシリアスな役柄の印象が強かったが、「バービー」で演じ切っていた超絶アホ全振りキャラでさらにファンになった俳優で、今作ではシリアスな格好良さとチャーミングな可愛さの両方が発揮されていて、この作品の主人公を担う俳優としてこれ以上の適役はいなかったのではないかと思うほど。 エミリー・ブラントも同じく「ルーパー」「オール・ユー・ニード・イズ・キル」「ボーダーライン」といったハードめな映画に出演していた印象だったが、今作ではこれまでに見たことがなかった可愛らしさがありながらもクヨクヨと弱気な役柄がとても新鮮で、ますますファンになってしまった。 アーロン・テイラー=ジョンソンの変幻自在な演技力にも毎度のことながら感心したし、カメオ出演の某俳優が登場するシーンでは爆笑してしまった。 80年代のドラマが原作ということもあってか、細部に関する大らかさも感じつつ大団円な結末が痛快で、とても楽しい映画体験だった。 https://filmarks.com/movies/104909/reviews/187197173
- 13F | The Thirteenth Floor (1999)
3.2/5.0 ダニエル・ガロイが1964年に発表した小説を原作とする米・独製作のSF映画で、ドイツ出身のジョセフ・ラスナックが監督を担っている。 ド派手なSFパニック映画が得意な監督として有名なローランド・エメリッヒが製作に携わっているが、今作においてはエメリッヒ風味はほとんどなく、むしろ真面目過ぎるのではと感じるほどの大人しいタッチになっている。 仮想現実を研究している開発者が主人公で、その上司が何者かによって殺害され、犯行の関与を警察に疑われた主人公が身の潔白を証明するために行動する。 古典的なフーダニット (Who-Done-It) 形式でミステリー/サスペンス映画の体裁を基本にしながら、主人公にとっての現実と仮想現実という複数の世界を行き来しつつ物語が展開するところがユニーク。 今作が公開された1999年は、映画の歴史に燦然と輝くSF映画「マトリックス」の1作目が公開された年でもあり、両作とも同じ仮想現実を扱っていながら、アプローチも展開も全く違っているところが面白い。 原作小説の良さもあってか先が気になる脚本構成で鑑賞中に退屈することはなく、仮想現実として存在する1930年代のロサンゼルスの風景や緻密なアンサンブルの丁寧な演出があって目を引くが、個人的にはカット間の切り替わりが突然すごく雑に感じたり、その視覚的移動の連続性があまり練られておらずパッチワークのような繋ぎ方になっているように感じ、たびたび没入感が削がれたところがやや不満に感じた。 脚本の中〜終盤でかなり大きな仕掛けがあり、そこまでの展開から半ば予想はできつつも、ケレン味豊かな見せ方の演出もあって驚きがあった。 また、そこで種を明かして終わりということではなく、映画冒頭で提示されたフーダニットの問に対するアクロバティックな解も含め、納得感のある物語の決着まで観ることができる。 出演俳優の中では、「フルメタル・ジャケット」や「デアデビル」で記憶に残るキャラクターを演じてきたヴィンセント・ドノフリオが最も印象に残る。 繊細で優しそうにも見えながら狂気も抱えるという不安定な役を演じることにおいて、彼ほどの適任はいなかっただろう。 主人公にとっての上司の娘を名乗る謎の女性を演じたグレッチェン・モルの存在感も、今作の中では際立っている。 「マトリックス」のように派手だったり奇抜な画が必ずしも含まれていなくとも、脚本の面白さと俳優達の好演があれば良い映画になり得るという作品の好例だとは思うけれど、製作者達の映画演出技術の稚拙さが明らかに映画全体の風格と品質を下げてしまっていたところが個人的には残念だった。 https://filmarks.com/movies/30572/reviews/186862277
- ターミネーター4 | Terminator Salvation (2009)
3.6/5.0 有名過ぎるほど有名なSF映画シリーズの4作目で、「チャーリーズ・エンジェル」や「アグリーズ」を手掛けたマックGが監督を担っている。 「ターミネーター」シリーズは2024年現在まで計6作の映画が製作されているが、その創造主ともいえるジェームズ・キャメロンが監督を担った1作目と2作目の完成度があまりにも高いことから次回作へのファンの期待も大きくなり、新作が公開される度にネガティブな評価の方が目立ってしまうという、製作者達にとって挑戦の難易度が限りなく高いシリーズになっている。 自分自身もそのファンのひとりなので新作が公開される度に必ず観ていて、この4作目もやはり1作目・2作目と同じレベルの完成度には届いていないと感じながら、不思議と何度も観直してしまう魅力がある。 未来において高度な知能を得たマシンが反乱を起こし人類との全面戦争が勃発するという設定は、1作目が公開された1984年当時は新鮮だったし、AI技術が加速度的に進化している現在を予見していたテーマともいえる。 また、未来世界のセットを製作したり精密なマシンをたくさん動かす予算がなかったことからの逆転の発想から生まれた、人間に擬態したマシンが1体だけ現代に送り込まれてくるという1作目の設定は、制約をアイデアの跳躍に変えることにおいて類まれなる才能を持っていたジェームズ・キャメロンならではのものだった。 4作目の今作では、シリーズを通してはじめて、未来世界での戦争が全面的に描かれている。 ポストアポカリプスな世界の完全構築が簡単ではなかったことは明らかで、意地悪な視点で観れば突っ込みどころがないわけではないけれども、個人的には面白いと感じるモチーフやカットやアングルがたくさんあって、製作者達の挑戦心とセンス・オブ・ワンダーを感じることができた。 過去作品へのオマージュも主張し過ぎないバランスで物語に組み込まれていて、シリーズをずっと観てきたファンの自分には嬉しかった。 シリーズを通したキーパーソンとなるレジスタンスの部隊長のジョン・コナーと、マシンとの全面戦争よりも前の時代で重要な存在となるカイル・リースが物語の軸になってはいるが、今作品ではもう一人、一切の記憶を失って未来世界に目覚めた謎の男マーカス・ライトの存在が物語の展開を牽引する役目を担っている。 ジョンを演じたクリスチャン・ベールの迫真の演技はもちろん、マーカスを演じたサム・ワーシントンの俳優としての力量を感じることができる。 (サム・ワーシントンの絶叫演技がすごく個性的で個人的に好きなのだ) 脚本構成の完成度が高いとは言えないかも知れないが、冒頭の導入部分から終劇まで伏線やツイストがしっかり効いていて、娯楽作品としては十分に面白いレベルになっていると感じる。 カイル・リースを演じたアントン・イェルチンもまたサム・ワーシントンと同じぐらい魅力的で大好きな俳優だったが、2016年に不慮の事故で若くしてこの世を去ってしまったことが、とても悲しい。 たくさんの映画作品の中でこれからも生き続ける彼を、折に触れて観直していきたい。 https://filmarks.com/movies/35469/reviews/152618954
- 殻を破る | Out (2020)
3.8/5.0 ピクサー製作による「SPARKSHORTS」シリーズの1篇。 恋人を両親に紹介したい主人公には、まだ親に打ち明けていないことがあり… という導入から、ディズニー / ピクサーらしい魔法のような出来事が起きる短篇アニメーション。 ピクサーならではの3DCGを手法にしつつ、アナログペイントのようなタッチで作画されていて、ピントの遠近等の描写も実験的な面白さがある。 作品のテーマはなかなか繊細でシリアスながら、ピンチな状況に陥った主人公が豹変する様子がとてもコミカルで、そのギャップがとても面白い。 主人公の事情を理解しその幸せを願ってドタバタと奮闘する飼い犬の姿も、これぞディズニーという切れ味の演出で微笑ましく、親が子に持つ愛の限りない深さも描かれていて、とても心温まる読後感が残る。 誰もがシンプルに楽しめるエンターテインメントを常に目指しながらも、この作品でも取り上げているような、社会が解決・前進していかなければいけない課題に対しても臆することなく向き合い続けるディズニー / ピクサーの企業姿勢は立派だと思う。 現実の社会においてはこの物語のように単純化できない事情を隠して息苦しく生きる人々の方がまだ多いだろうけれど、そういった人々の側に立ち続け、啓発し続ける企業があるという事実が、当事者にとって何よりの (殻を破る) 勇気になるのではないか。 https://filmarks.com/movies/90971/reviews/185867401
- ルックバック | Look Back (2024)
4.3/5.0 「チェンソーマン」や「ファイアパンチ」で大ヒットした漫画家、藤本タツキによる約150ページ程度の読切漫画を原作とするアニメーション映画。 原作者と同じく、漫画という創作に夢中になった2人の少女の人生が描かれる。 ギャグタッチの漫画の才能を周囲から絶賛され有頂天になっている藤野と、凄まじい風景画の才能を持つ不登校児の京本が出会い、2人がチャンスを掴んでいく展開がとても瑞々しく、地方都市の広い風景描写の美しさもあって惹き込まれる。 原作者の藤本タツキが育った東北地方の風景と学生時代の原体験がそこに大きく参照されているのだろう。 互いに欠けている部分を補完しながらコンビで活動してきた2人が、成長した結果 (成長するがゆえに避けられなかった) 岐路に立たされるシーンでは、自分自身にもかつてあった同様の経験が思い出され、心が痛くなった。 プロの漫画家として才能を発揮し成功していく藤野と、自分自身の才能をより高めるために袂を分かった京本に起きる事件は、日本で実際に起きてしまった大惨事が参照されていることが明らかに分かる。 起きてしまったことは覆せないのが常だが、物語の創作にひたすら向き合ってきた2人に、奇跡のような、あるいは幻のような「もしも」の物語が展開する一連のシーンでは、その儚さと限りない美しさに涙が溢れてしまった。 原作者は映画好きで有名だが、クエンティン・タランティーノ監督が近年の作品で行っているような、我々が知っている史実と違う結末が創作の中でだけで起きる、いわゆる歴史改変のアプローチを参照した展開なのだろうと感じた。 また、タイトルの「ルックバック」は英国のロックバンドのオアシスによる楽曲「ドント・ルック・バック・イン・アンガー」から取られているはず。 聴く人によって多様な解釈ができるといわれている曲だけれど、今作の物語と照らし合わせることで、作品に込められた想いを理解するヒントになる。 She knows it's too late / As we're walking on by / Her soul slides away / But don't look back in anger / I heard you say… 2人で共に歩くにはもう遅すぎると理解していても 怒りで過去を振り返るだけではいけない 私は君の言葉を聴いたから… 漫画原作をアニメーション化するにあたり、押山清高監督の演出は原作の持ち味を忠実に再現することに注力していると感じたが、藤野のギャグ漫画がアニメーションとして再現されるシーンの演出は少し冗長で、原作にあった荒々し過ぎる勢いと鋭利なアホさの角が丸まってしまっているように感じた。 haruka nakamuraによる劇伴も監督の演出と同様だが、こちらは少し過剰に鳴り気味で、鑑賞者の感情をコントロールしようとし過ぎているように聴こえる。 楽しいシーンでは楽しい曲を、悲しいシーンでは悲しい曲を… だけではない、やや客観的に登場人物の心理と距離を置いた劇伴の方が、原作と読者の間にある距離感により近しくなるように感じたが、これは鑑賞する側の好みの問題もあるかも知れない。 この作品は、原作者の藤本タツキによる、実際に起きた悲劇とその犠牲者達への鎮魂歌として生み出されたものであることは明らかだ。 ひたすら創作に向き合いそして喪われた人達に向けて、自身の創作をもって弔いの気持ちを示したということなのだろう。 理不尽かつ解釈不能な暴力のショッキングな描かれ方について、原作漫画掲載時にクレームが入った事実があり、その理由にも共感できる部分が少なからずあるが、原作者がきっと覚悟をして描き切ったであろうその勇気に、私は敬意を表したい。 その原作の意義がブレることなく忠実にアニメーション化されているところに、製作者達の想いを感じとることができた。 https://filmarks.com/movies/114872/reviews/185846939
- エイリアン: ロムルス | Alien: Romulus (2024)
4.1/5.0 SFホラーの金字塔ともいえる「エイリアン」シリーズのスピンオフ作品で、「ドント・ブリーズ」の脚本・製作・監督を担当し一躍有名になったフェデ・アルバレスが今作の脚本・監督を、同シリーズの1作目を監督したシリーズの生みの親ともいえるリドリー・スコットが製作を担っている。 今作で描かれる出来事の時系列は1作目と2作目の間の22世紀半ばで、スピンオフという位置づけでありながら、1作目から直結する脚本。 人類が地球を飛び出し様々な惑星を開拓していく時代における、植民惑星で生きる若者たちの虐げられた環境からの脱出が物語の起点になっているが、これまでのシリーズでは貨物運搬業や職業軍人、あるいは科学者等の大人達が主要登場人物だったこともあり、シリーズのファンの自分にとっては新鮮に感じられた。 「エイリアン」シリーズの1〜4作目までは作品ごとに監督が代わり、世界観や主人公は共通ながらも、それぞれの監督の個性が強烈に反映された作風になっていてそこが魅力でもあったが、生みの親のリドリー・スコットが監督した前日譚 (「プロメテウス」と「エイリアン: コヴェナント」) では物語の規模と風呂敷が広がり過ぎた印象があって、このシリーズは一体どこへ向かいどのように終着するのだろうという気持ちになってしまっていた。 が、この「ロムルス」は良くも悪くも究極の原点回帰ともいえる内容で、シリーズの中でも特に高く評価する人が多い1作目と2作目の作風をベースに、フェデ・アルバレスによる過去シリーズ全作品へのオマージュが効いた、極めて上質な完全コピーといった作品に仕上がっている。 宇宙船や宇宙施設という閉塞的な限定空間という舞台で、異形の凶悪生物に襲撃されながら立ち向かうというシンプルな物語を、フェデ・アルバレス監督が得意とする極限状況の緊張演出と現代的なスピード感をもってテンポよく描いていて、冒頭から終劇までとても完成度高くまとまっている。 VFXは効果的に活用されながらもそれに頼り切っておらず、実物で製作されたという宇宙船内の美術セットやエイリアンの実在感と重量感は抜群で、映画表現技術が発達した時代においてもVFXと実物とでこれだけ説得力が違ってくるものなのかと驚いた。 70〜80年代のSF映画がそうだったように、宇宙船の外壁や船内のセットの全部には照明を当てず、暗部を漆黒のように沈ませるグレーディングが施されていたが、これは「見えない部分が視界にある」ことで引き起こされる恐怖のトリガーにもなっていて、すごく効果的に感じた。 けれど… 本当に良くも悪くも過去作の優等生的な完全コピーという印象でもあったのが正直なところで、シリーズの1〜4作目をそれぞれ初鑑賞した時のような、作風の大胆な変化や製作者の強烈な個性も観られたらさらに楽しかったな… という気持ちにもなってしまった。 主演のケイリー・スピーニーと助演のデヴィッド・ジョンソンの演技は素晴らしく、それぞれが持つ存在感も個性的で、これから色々な映画やドラマに出演してスターになっていくのではないかと感じた。 特にケイリー・スピーニーは、1〜4作目で主演を務めたシガニー・ウィーバーのカリスマ性との比較から避けられない役目ながら、その瑞々しいオーラと役作りで相当善戦していたと思う。 シリーズのファンにとっては嬉しいというか驚きの人物が中盤から登場するが、その詳細は未鑑賞の方のために伏せる。 今作と同じ体制による次回作の製作が決定しているとのことで、過去作のオマージュから脱却した新規性とシリーズならではの持ち味が両立された映画が鑑賞できることを、期待して待ちたい。 https://filmarks.com/movies/114886/reviews/185809357
- タイムカット | Time Cut (2024)
2.1/5.0 約20年前にある悲劇で姉を失った主人公が、姉が存命だった頃にタイムスリップしてしまい、悲劇を止めるために奮闘するという、スラッシャーな脚本にSFガジェットが組み合わさった作品。 姉を含む多数の命を奪ったシリアルキラーの犯行をその妹が阻止することを軸に物語が展開していくが、スラッシャー映画のお約束的な、仮面をつけた犯人の正体と動機が最後に分かる展開があり、このジャンルの基本型に忠実。 ただ、ガジェットとして登場するタイムマシンがそれらの予想のためのヒントであることには多くの人が気づくだろうし、その正体と動機の意外性や納得感は強くなかったところが少し残念だった。 タイムトラベルジャンルの作品の科学的考証において避けては通れないパラドックス問題やバタフライエフェクト問題について、主人公や他の登場人物達も悩む様子がありながら、終盤ではまるでその問題が最初から存在しなかったかのように放り投げられる展開をするところに驚いてしまった。 タイムマシンがなぜそこにあり、誰のどういう動機で開発されたのかについての提示がなかったところも物足りなかった。 そういった難しい問題の提示と解決の部分でなるほどと納得したかったし、そこがSFジャンルの作品でいちばんワクワクできるところなのでは… もったいない。 タイムスリップものらしい時代とギャップの違いを面白おかしく描く演出もあって、2024年現在で懐古的に盛り上がっているY2K (2000年近辺のカルチャー) が劇中でもたくさん扱われているが、当時のカルチャーも通ってきた自分にとってはそれほど面白いものにも思えず。 これは鑑賞者の年齢に大きく関係している気もして、現在の10〜20代にはこれらがすごく奇抜で新鮮に見えるものなのかも。 全体を通して作品の強烈な個性や突き抜けた面白さは少なかったけれど、90分程度でコンパクトにまとまっている作品なので、肩の力を抜いて楽しむB級映画としてはいいかも知れない。 https://filmarks.com/movies/118459/reviews/185697853
- ゴジラxコング 新たなる帝国 | Godzilla x Kong: The New Empire (2024)
3.3/5.0 映画製作会社のレジェンダリーが展開する「モンスター・ヴァース」の第5作めで、前作「ゴジラvsコング」を手掛けたアダム・ウィンガードが引き続き監督を担っている。 前作でその存在が明らかになった広大な地底空洞を舞台の中心として、多くの観客が期待する通りに、コングとゴジラが激烈なケンカをブチかましつつ、これも多くの観客の期待通り、2体に共通する強大な敵が現れ、多くの観客の期待に応えて2体が協力しながらその敵に対峙する。 地底だけでなく地表世界のいくつかの都市部でも怪獣達がド派手に暴れるシーンがあるが、これまた多くの観客の期待通りに、現実でそれが壊れたら大変だよねという重要な建築物や遺産が、思わず笑ってしまうぐらいにことごとく破壊される。 コング・ゴジラ・新たな敵達に加えて、怪獣映画シリーズのファンにはきっと嬉しいもう一体の有名怪獣が派手に登場するが、それについては詳細を書かない方が良さそうなので控える。 地底空洞という設定はいかにもSFだけれど、太陽光が届かない世界でなぜか植物が生い茂りまくっていたり、超未来技術で開発されたようにしか見えないガジェットが登場したり、未知の人類種族が地底世界で開発した重力を操る超技術が謎に登場したりなど、科学考証はとっくに諦めたんだぜといわんばかりの大胆さで、ツッコミ出すとキリがないと感じるほど。 そういう部分に目くじらを立てて鑑賞する種類の映画ではないのだろうと理解した。 とはいえ、コングとゴジラほどの巨大サイズの生き物の動きや重量感について、物理的に明らかにあり得ないであろう俊敏さで描かれている部分には、さすがにちょっとどうなんだろうと感じた。 製作者達はリアリティよりも演出のスピード感やスリルを重視したかったのだろうと想像しつつも、その部分についてはもう少しリアルさを追求して欲しかった。 科学的描写の正確さにこだわった作品だけがいい作品ということでは全くないと思うけれど、大胆な物語であればあるほど、鑑賞している間は上手な嘘に騙されたいなという気持ち。 コングやゴジラといった巨大怪獣が登場する映画は、彼らが作品の主役なのでそうなりがちだとは分かりつつ、その周辺の人間ドラマが陳腐で退屈という評価が多いが、この作品でもまた同様のことを感じた。 むしろ、製作者達はそういった評価を受け入れた上で完全に開き直り、今作では人間ドラマを意図的に雑に扱っているようにすら見える。 それぞれの人物に最低限の行動の動機づけや物語の展開がないわけではないが、言葉でいちいち説明してくれない怪獣達の行動理由を解説する役割にとどまっている印象だった。 まぁそれでも、こういった作品の構造を考えると、仕方ないと考えるべきなのか… https://filmarks.com/movies/107291/reviews/184471447









