フォーガットン | The Forgotten (2004)
3.1/5.0
数あるハリウッド映画の中で、良くも悪くも想定外の展開や種明かしがある作品として話題にあがることが多いこの映画を、そろそろ自分も観てみようという気持ちで観賞してみた。
不幸な事故で子を失くし精神不安定な状況にある主人公が、その存在を忘れられず生前の子の写真やビデオを見て過ごすのだが、その写真やビデオがなぜか消失していき… というサスペンス的なつかみにはとても惹きつけられる力がある。
どんな物語が展開していくのだろうという期待が高まるが、それに応えるような脚本と、オーソドックスながら安定感のある演出が中盤頃まで続く。
主演を担ったジュリアン・ムーアの演技はいうまでもなく素晴らしく、子を失った母親の悲痛や、精神不安定な状況における「自分が正常なのか異常なのか、他者や社会が正常なのか異常なのか」という判断がグラつき危うくなる状態の表現も、高いレベルで実現されている。
ただ、この映画を観賞した人たちの多くが話題にする、物語の大転換点となる部分の脚本と演出は、良くいえば他に類を見ないほどの恐怖と衝撃度で、悪くいえばほとんどギャグもしくはコントにも見えるという、何とも形容しがたい複雑な驚きがあった。
M・ナイト・シャマラン監督のキャリア初期の作品にあったような、鑑賞中に予想することがかなり難しい物語の飛躍がこの映画にも確かにあり、脚本家はシャマラン監督作品に少なからずインスパイアされたのかも知れないと感じた。
中盤までは派手さはないながらも上質なサスペンス映画といってもいいと思うが、あるタイミングからは全く違うジャンルに飛躍し、そしてサスペンス映画に帰結することは二度となく終劇するという、かなり珍しい構造の作品のひとつであることは間違いがない。
個人的には、世間の評判以上にとんでもねえ映画だな! と驚かされたが、駄作だとは感じなかったし、多少の物語的な破綻はあるにしても、こういった挑戦的な映画の存在価値も認められるべきだと思う。