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Cinema Review

ゴジラ-1.0 | Godzilla Minus One (2023)



3.3/5.0

山崎貴監督が手掛けた作品でこれまで観賞してきたものについては、学芸会レベルの俳優達の演技、センス皆無なカメラワーク、陳腐極まる過剰で安直な劇伴の当て方、洗練とは程遠い脚本、直近でヒットしたハリウッド映画からの軽薄で表層的な剽窃、ほかもろもろ… 数分に一度レベルで観続けることが苦痛になるぐらいの興ざめポイントにぶち当たるため、自分とは最も相性が悪い監督のひとりとして意識的に敬遠していた。


が、この作品に関しては世間的な評判がこれまでになく高く、信頼のおける友人数人からも監督の過去作品の評価とは別にして観た方がいいと推奨されたこともあり、気持ちを切り替えて観賞してみた。

確かに、山崎監督の過去作品には見られなかった総合的な完成度の高さがあるように感じられた。


ゴジラ関連の映画はハリウッドでもすっかりお馴染みの超有力シリーズとなり、キングコングという好敵手なキャラクターも得て大ヒットしているが、それらは良くも悪くも日本で生まれたゴジラというキャラクターの原点からはだいぶ遠いところまでストーリーやキャラクター性が発展している。

それに対してこちらの作品は、描かれる時代と舞台を初代映画とかなり近いところに設定しながら、物語自体はこれまでのシリーズから独立しリセットされていて、かつ初代映画版にあったゴジラというモチーフに込められた隠喩的テーマについてはしっかり承継するという、とても巧みな原点回帰が成し遂げられている。


日本人ならその多くが聴いたことがあるであろうゴジラのテーマ曲を含む劇伴の当て方についても、これまでの山崎監督作品のような過剰さや安直さは控えめで、淡々としかし重々しいリフレインが要所で効果的に使われており、ドラマ全体の緊迫感の演出を下支えしている。

あのテーマ曲がどのシーンのどのタイミングで使われるのだろうという期待にも、ここで使うのがやっぱり正解だよねというところでしっかりと使われ、映画的興奮が確かにある。


俳優達の演技については、やはりやや過剰だったり演出的な未成熟が露呈している部分はあったけれど、それでも山崎監督の過去作品と比較すれば、監督による演出のコントロールが効いているように思う。

日本映画に出演する芸能人や俳優達の演技レベルのバラつきの問題は、自分が邦画を敬遠してしまう理由のひとつだけれど、俳優本人達の力量の問題というよりは、演出にどれだけの芯があるかの問題が大きいのだろうとあらためて感じた。


アカデミー賞でも高く評価された視覚効果についてはケチをつけるようなところはほとんどなく、ハリウッド映画とは比べるべくもない低予算でこれだけのダイナミックな映像を作り上げたスタッフの方々は、それこそ世界中の映画人から手放しで称賛されて然るべきだと思う。

ただ、山崎監督自身が視覚効果担当の出身でそこが氏の強みだという前提があるにしても、視覚効果ではなく俳優達の演技が画の中心になるシーンの演出については、もっともっと洗練されるべき余地があるように思う。


この作品単体に限っていえば高品質で興奮できる映画体験をさせてもらえたけれど、山崎貴監督の作品については、今後も疑心暗鬼で観賞することになるだろうなと感じている。

そう思わざるを得ないほど、山崎氏の過去作品に裏切られガッカリしたトラウマ的な体験があり、まだ払拭できていない。

何より、現在の日本における映画の第一人者といえばという話題になった時に、山崎氏の名前があがることが多いということ自体が、日本の映画業界として良いこととはどうしても思えない。

ただ、総合芸術ともいわれる映画の世界において、視覚効果という一点に限ってであっても、世界に認められたという実績は素晴らしく、その点においては山崎氏に敬意を表したい。

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